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第10話 希望と絶望
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次の日、避難所の中で迷彩服の男達と俺が話をしていた。
「ところで…戦況はどうなんですか?」
正気を取り戻した俺は自衛隊の人達に状況を聞いている。
「最悪だよ、九州、四国、東北地方は既に奴ら妖怪に乗っとられている、我々のいるこの関東地方も時間の問題かも知れん…あの妖怪どもが強すぎるのだ…」
「妖怪と言いますと、俺の見たこの一帯を囲む青い壁、それから顔の化け物以外にもいるんですか?」
「ああ、いる、しかしその前に海人君、昨日の状況を説明してくれないか?」
「私達もどうやって奴らを君のような子供が倒せたのか知りたいのだ…」
「このまま殺られ続けるだけでは、本当に日本は、いいや世界は奴等のものにされてしまうだろう…」
「海外も我々と同じ状況で、あのギークと言うテロリストに手も足も出ない状況なんだ」
隊員の人達と情報共有すべく、俺はこの野良犬の情報を話す事にした。
「ゾンビはこの日本刀で、顔の化け物はこの野良犬が倒しました…何故か俺になついているようですが…」
「なるほど、ゾンビなら我々でもなんとか対処出来ている、しかしあの妖怪と呼ばれる奴等は無理なんだ、その犬、普通ではないな?」
「はい、どう考えても普通ではありません、あの空飛ぶ顔の妖怪の頭を噛み砕き、粉砕して倒しました。そんな事は普通の犬には出来ません」
「つまりだ、その犬も…妖怪で…あると?」
「はい、俺の見た限りはおそらく…しかし、この犬がいなければ、俺はとっくに殺されていました、ゾンビからも、青い顔からも…」
「こんな可愛い犬がなぁ、正直に言うと、今でも言葉だけでは信じられんよ…」
皆、考え込んでいる、今自分達が生き残るためにはどうするのが最善の策なのかを考えて答えが見付からないのだ。
仮に定められた期間あの妖怪達から生き残っても、次はあのテロリストどもに支配される未来が待っている。
地球上のすべての国を相手にする恐ろしきテロリスト、ギーク・ハザード、彼らを止める手段は今のところ無かった。
「ひとつ、話しておきたい事がある」
部屋の中に聞こえた見知らぬ声――
軍人達は辺りを見渡し誰か喋ったのかわからず、混乱していた。
「私は送り犬、妖怪のひとりだ」
隊員の1人が犬を指差して、悲鳴をあげていた。
「ぎゃああああああっ!!」
「おい!ここに妖怪がいるぞ!!」
「まさか本当に犬が!!!」
自衛隊員の皆がパニックになり、犬に向かい銃を構えた。
「待て、人間に危害を加えるつもりは無い」
すると海人も凄まじい形相で犬を睨んだ。
「喋れたのかお前、だったら何故今まで黙っていた!」
今まで一緒にいたのにこの犬は「わん」としか吼えなかった、言葉が話せる事を黙っていたのであれば信頼関係にも影響するだろう。
「あの顔の妖怪を食べる事で、言葉が話せるようになった、今では人間のことも少しは理解出来る。信じて欲しい」
「では、話とはなんだ」
銃を構えたままの1人が警戒したまま口を開いた。
「私は最初、妖怪として奴等に生み出された直後、人間を襲いたくて仕方がなかった。何かに命令されるように、人間どもを殺して食らい尽くせと、脳に直接、声が響いてきたのさ。」
「なんと、そんな恐ろしい事が…それで、今もそうなのか?」
隊員達は警戒を解かず、言葉を喋る犬に向かって銃を構える。
「助かったのは君達隊員のおかげだ、この耳を見て欲しい。これは隊員に打ち抜かれたんだよ」
見ると確かに、犬の耳が欠けている。
「銃で撃ち抜かれたとき、マイクロチップのような物が飛び出たんだ、そして私は彼らの支配から解けた」
「その後は、もう人間を食べたいとか思わないようになったと?」
「ああ、洗脳が解け、頭が軽くなった私は、自由に動けるようになった、今では人の肉になど興味がない。その辺のゾンビの死体、いや、出来ればドッグフードを食べたい…」
「つまり、あの妖怪どもは操られているだけで、チップを破壊すれば洗脳が解けると?」
「全部がそうだとは言い切れないが、可能性は高い、私がそうだったのだからな…」
隊員達の表情は少し明るくなり、銃を降ろした。
「今の話でだいぶ希望が見えたかも知れない、妖怪どもの洗脳を解けば、あるいは味方につけられるかも知れん」
――その後――
この情報は世界各地で共有される事となり「送り犬」は自衛隊員に協力すると申し出た。
「俺も戦います!今までその犬とやってこれたんだ!だったらこれからも」
しかし海人の申し出は、皆に危険だからと断られてしまった。
「いや、君はよく頑張ってくれた」
「もういいんだ、後は我々に任せて欲しい」
「避難所でゆっくり休んでいてくれ」
少しショックではあったが、やはり心のどこかに怖い気持ちもあった。
「送り犬」と隊員達は戦場へと向かって行ったが俺は避難所の施設に戻された。
その後、「送り犬」は戦闘に参加して彼ら隊員達にゾンビが傷薬を所持している事を伝える。
結果彼らはゾンビを殺した後すぐに焼き払うのではなく調べるようになった。
傷薬とは、傷ついた部分にかけるか、あるいは飲むと一瞬で直ってしまう魔法のような薬だった。
人間の常識では考えられない技術、これもギークと言うテロリストが作り出したものだろう。
避難所の施設に戻ると、もう外は真っ暗で時刻は夜中の0時だった。
部屋の中で眠りにつく俺だったが、どうも胸騒ぎがしてくる。
(本当に隊員達とあの犬だけで、大丈夫なのか?俺の剣の腕は何にも生かせないってのか?)
不安は増してくるばかりだが、俺はあまり考えないことにして目を瞑り眠りについた。
(しかし、やけに静かな夜だ、風も無い、まるで時間が止まったような感覚)
時計はちゃんと動いてるしそんな事はもちろんないのだが、不気味な空気を感じていた。
そんな俺の不安が的中するかのごとく、窓の外から歌が聞こえてきた。
「とおりゃんせ…とおりゃんせ…」
昔聞いたことのある歌だった、そして恐ろしいとも思った歌だ。
老婆のような声で、外で歌っているようだ、しかもその声は近づいてくる。
「いきはよいよいかえりはこわい、こわいながらも…」
歌がようやく終わる――
いったい誰が歌っているのだろう…
(ま、どーせ、施設内の頭がおかしくなった奴だろうな)
興味本位でベッドから起き上がる…すると…
「とーおーりゃんせー…とおりゃんせー」
この部屋の中に、見たこともない老婆のような妖怪が現れた。
「ところで…戦況はどうなんですか?」
正気を取り戻した俺は自衛隊の人達に状況を聞いている。
「最悪だよ、九州、四国、東北地方は既に奴ら妖怪に乗っとられている、我々のいるこの関東地方も時間の問題かも知れん…あの妖怪どもが強すぎるのだ…」
「妖怪と言いますと、俺の見たこの一帯を囲む青い壁、それから顔の化け物以外にもいるんですか?」
「ああ、いる、しかしその前に海人君、昨日の状況を説明してくれないか?」
「私達もどうやって奴らを君のような子供が倒せたのか知りたいのだ…」
「このまま殺られ続けるだけでは、本当に日本は、いいや世界は奴等のものにされてしまうだろう…」
「海外も我々と同じ状況で、あのギークと言うテロリストに手も足も出ない状況なんだ」
隊員の人達と情報共有すべく、俺はこの野良犬の情報を話す事にした。
「ゾンビはこの日本刀で、顔の化け物はこの野良犬が倒しました…何故か俺になついているようですが…」
「なるほど、ゾンビなら我々でもなんとか対処出来ている、しかしあの妖怪と呼ばれる奴等は無理なんだ、その犬、普通ではないな?」
「はい、どう考えても普通ではありません、あの空飛ぶ顔の妖怪の頭を噛み砕き、粉砕して倒しました。そんな事は普通の犬には出来ません」
「つまりだ、その犬も…妖怪で…あると?」
「はい、俺の見た限りはおそらく…しかし、この犬がいなければ、俺はとっくに殺されていました、ゾンビからも、青い顔からも…」
「こんな可愛い犬がなぁ、正直に言うと、今でも言葉だけでは信じられんよ…」
皆、考え込んでいる、今自分達が生き残るためにはどうするのが最善の策なのかを考えて答えが見付からないのだ。
仮に定められた期間あの妖怪達から生き残っても、次はあのテロリストどもに支配される未来が待っている。
地球上のすべての国を相手にする恐ろしきテロリスト、ギーク・ハザード、彼らを止める手段は今のところ無かった。
「ひとつ、話しておきたい事がある」
部屋の中に聞こえた見知らぬ声――
軍人達は辺りを見渡し誰か喋ったのかわからず、混乱していた。
「私は送り犬、妖怪のひとりだ」
隊員の1人が犬を指差して、悲鳴をあげていた。
「ぎゃああああああっ!!」
「おい!ここに妖怪がいるぞ!!」
「まさか本当に犬が!!!」
自衛隊員の皆がパニックになり、犬に向かい銃を構えた。
「待て、人間に危害を加えるつもりは無い」
すると海人も凄まじい形相で犬を睨んだ。
「喋れたのかお前、だったら何故今まで黙っていた!」
今まで一緒にいたのにこの犬は「わん」としか吼えなかった、言葉が話せる事を黙っていたのであれば信頼関係にも影響するだろう。
「あの顔の妖怪を食べる事で、言葉が話せるようになった、今では人間のことも少しは理解出来る。信じて欲しい」
「では、話とはなんだ」
銃を構えたままの1人が警戒したまま口を開いた。
「私は最初、妖怪として奴等に生み出された直後、人間を襲いたくて仕方がなかった。何かに命令されるように、人間どもを殺して食らい尽くせと、脳に直接、声が響いてきたのさ。」
「なんと、そんな恐ろしい事が…それで、今もそうなのか?」
隊員達は警戒を解かず、言葉を喋る犬に向かって銃を構える。
「助かったのは君達隊員のおかげだ、この耳を見て欲しい。これは隊員に打ち抜かれたんだよ」
見ると確かに、犬の耳が欠けている。
「銃で撃ち抜かれたとき、マイクロチップのような物が飛び出たんだ、そして私は彼らの支配から解けた」
「その後は、もう人間を食べたいとか思わないようになったと?」
「ああ、洗脳が解け、頭が軽くなった私は、自由に動けるようになった、今では人の肉になど興味がない。その辺のゾンビの死体、いや、出来ればドッグフードを食べたい…」
「つまり、あの妖怪どもは操られているだけで、チップを破壊すれば洗脳が解けると?」
「全部がそうだとは言い切れないが、可能性は高い、私がそうだったのだからな…」
隊員達の表情は少し明るくなり、銃を降ろした。
「今の話でだいぶ希望が見えたかも知れない、妖怪どもの洗脳を解けば、あるいは味方につけられるかも知れん」
――その後――
この情報は世界各地で共有される事となり「送り犬」は自衛隊員に協力すると申し出た。
「俺も戦います!今までその犬とやってこれたんだ!だったらこれからも」
しかし海人の申し出は、皆に危険だからと断られてしまった。
「いや、君はよく頑張ってくれた」
「もういいんだ、後は我々に任せて欲しい」
「避難所でゆっくり休んでいてくれ」
少しショックではあったが、やはり心のどこかに怖い気持ちもあった。
「送り犬」と隊員達は戦場へと向かって行ったが俺は避難所の施設に戻された。
その後、「送り犬」は戦闘に参加して彼ら隊員達にゾンビが傷薬を所持している事を伝える。
結果彼らはゾンビを殺した後すぐに焼き払うのではなく調べるようになった。
傷薬とは、傷ついた部分にかけるか、あるいは飲むと一瞬で直ってしまう魔法のような薬だった。
人間の常識では考えられない技術、これもギークと言うテロリストが作り出したものだろう。
避難所の施設に戻ると、もう外は真っ暗で時刻は夜中の0時だった。
部屋の中で眠りにつく俺だったが、どうも胸騒ぎがしてくる。
(本当に隊員達とあの犬だけで、大丈夫なのか?俺の剣の腕は何にも生かせないってのか?)
不安は増してくるばかりだが、俺はあまり考えないことにして目を瞑り眠りについた。
(しかし、やけに静かな夜だ、風も無い、まるで時間が止まったような感覚)
時計はちゃんと動いてるしそんな事はもちろんないのだが、不気味な空気を感じていた。
そんな俺の不安が的中するかのごとく、窓の外から歌が聞こえてきた。
「とおりゃんせ…とおりゃんせ…」
昔聞いたことのある歌だった、そして恐ろしいとも思った歌だ。
老婆のような声で、外で歌っているようだ、しかもその声は近づいてくる。
「いきはよいよいかえりはこわい、こわいながらも…」
歌がようやく終わる――
いったい誰が歌っているのだろう…
(ま、どーせ、施設内の頭がおかしくなった奴だろうな)
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