転生を繰り返してたら神様に惚れられました

丸太

文字の大きさ
22 / 57
1章 

14.5 side男性陣

しおりを挟む
女性陣が晩餐の準備に入った夕食前の時間、男性陣は慣れた早さで正装へと身なりを整え、辺境伯の執務室に集まった。

辺境伯であるエドガーライト・シルエット、その長男のアレクサンドライト、次男のアドライト、そして賓客であるレオン・フォレスト侯爵子息、加えてシルエット家筆頭執事のセバスチャンという人払いされたメンバーである。

セバスチャンの手で紅茶が給仕される中でも話は尽きない。

「ファルコ・フォレスト候から伝言だ」

エドガーが小さな羽を机の上に置く。
その青い羽が風魔法でふわりと浮かぶと小さな風が巻き起こり、まるでそこにいるかのような音量で男の声が響いた。

『エドガー、腹をくくれよ! レオンが了承したぞ。話を進めよう。
とりあえず15人、手先の器用な者を派遣する。ソフィア嬢のために使ってくれ。
来月の誕生パーティーはもちろん参加する。私も妻も行くからな。その場で話を詰めよう! 
ではな。レオンをよろしく頼む』

レオンの父親でありエドガーライトにとっては聞きなれた同僚の声だ。
毎日共に働いている友だが、その声はからかいの色が含まれていてつい眉間に皺がよってしまう。

「早すぎだ、レオン」

アレクサンドライトがレオンに詰め寄る。

「兄様が決める事じゃないでしょ」

アドライトがまだ子供の声でアレクサンドライトよりも冷静に場を制す。
カチャリと控えめな食器の音に、全員の紅茶が配られたことに気が付いた。

「ソフィア様のお気に入りのお菓子です」

セバスチャンの用意したワゴンの上には上品な底上げの皿に、指先で摘まめる小さなお菓子が山のように盛られていた。

「少し落ち着こうか」

エドガーライトがお菓子を1つ摘まんだので、勧められるままレオンも茶色いお菓子を素手で摘まんで口にする。

「―――? えぇ? なにこれ? チョコレート?」

自分の認識しているチョコレートと違ったのか、レオンが驚きの声を上げる。

「固くなくて甘すぎなくて美味しいでしょ? ソフィアの知恵を借りて作ったんだ」

アドライトは自慢げに言う。

「アド君が?」

レオンはもう一つチョコを口にした。

「うちの料理はソフィアの発案、アドライトのレシピ化が多いんだ」

アレクサンドライトは言いながらポイポイとチョコを口に放り込む。

「すごい才能だねぇ、アド君。謝礼弾むからうちにもレシピ流してよ。もちろん口外しないから。わぁ、お茶も美味しい。チョコと合うねぇ」

レオンはセバスチャンの淹れる紅茶の美味しさにまたも感動しながらチョコとのハーモニーを楽しんでいる様子だ。

「レシピは公開できないんだよ。火力調節で魔力を大量消費するからね。このレシピは魔石への魔力充填が安定して出来る我が家での限定レシピなんだ」

アドライトが残念そうに言う。

「昼間セバスチャンが言っていた公開できない理由ってそれ?」

会話しながらも音もない上品さでティーカップをソーサーに置くレオンの所作はさすがだ。
意地悪いようだが、エドガーライトもアレクサンドライトもその辺のチェックは欠かさない。

「なら、うちは問題ないよ。俺、魔石への魔力充填得意だし」

相変わらずの人をたらす笑顔でレオンはとんでもない事を言う。
魔石への魔力充填はそれなりの魔力持ちが何日もかけて行う作業だ。体力も精神力も削られる。それを得意とは。

シルエット家の男ももれなく魔力持ちだが、魔力の充填にはそれなりに備えて取り掛かっている。恵まれた魔力量なのでなんとかなっているが、他の貴族は魔力の確保に四苦八苦しているのだ。

「ソフィアの了解が出たらな」

エドガーライトの言葉にレオンは喜びアレクは嘆いた。

「レオンのおかげでもう、両家の壁は取っ払われたも同然だ。後々のソフィアのためだ。検討するしかないだろう」

エドガーライトの追い打ちにアレクサンドライトは頭を抱えて

「今回は様子見だったはずでしょう? まだソフィアは10歳にもなってない!」

と諦めきれず抵抗する。

「来月には10歳でしょ? お披露目パーティーもあるし魔力発現の儀式も受けるし、もう世間から隠しておけない年齢になるよ。
何よりもあの容姿じゃ、目立って仕方ないし、一度見たら忘れられるものじゃない。
俺なら都合の良い壁になれるよ?」

レオンは優しい口調だが、あくまでアレクサンドライトをたたみかける内容だ。

「都合の良い壁に収まる気なんてないだろうが」

忌々しくアレクサンドライトが言うも

「それは当然」

とレオンはエドガーライトの前でも飄々としたものだ。

アドライトはレオンの図太いのか大物なのかわからない神経に感心する。
あのソフィアの懐に難なく入り込めるのだから後者なのだろう。

「あ、今日のソフィア嬢のエスコートは俺にお任せ下さいね」

突然レオンはエドガーライトに向かって晩餐の大役を申し出る。

「ちょっと待て。それは家族で持ち回りしている。帰郷したからには俺とアレクサンドライトの役目だ」

思いもよらなかった申し出にエドガーライトは珍しく慌てた。

「俺も権利を得たってことですよ。ここまできて家族にエスコートさせるなんて無粋な事しないで下さいよ」

これにはエドガーライトも苦虫を噛み潰したような表情になる。
アレクサンドライトに至っては外聞もなく無礼だ横暴だと騒ぎ立てている。

アドライトはレオンの評価を「図太い」に改めた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

転生したら悪役令嬢になりかけてました!〜まだ5歳だからやり直せる!〜

具なっしー
恋愛
5歳のベアトリーチェは、苦いピーマンを食べて気絶した拍子に、 前世の記憶を取り戻す。 前世は日本の女子学生。 家でも学校でも「空気を読む」ことばかりで、誰にも本音を言えず、 息苦しい毎日を過ごしていた。 ただ、本を読んでいるときだけは心が自由になれた――。 転生したこの世界は、女性が希少で、男性しか魔法を使えない世界。 女性は「守られるだけの存在」とされ、社会の中で特別に甘やかされている。 だがそのせいで、女性たちはみな我儘で傲慢になり、 横暴さを誇るのが「普通」だった。 けれどベアトリーチェは違う。 前世で身につけた「空気を読む力」と、 本を愛する静かな心を持っていた。 そんな彼女には二人の婚約者がいる。 ――父違いの、血を分けた兄たち。 彼らは溺愛どころではなく、 「彼女のためなら国を滅ぼしても構わない」とまで思っている危険な兄たちだった。 ベアトリーチェは戸惑いながらも、 この異世界で「ただ愛されるだけの人生」を歩んでいくことになる。 ※表紙はAI画像です

主人公の義兄がヤンデレになるとか聞いてないんですけど!?

玉響なつめ
恋愛
暗殺者として生きるセレンはふとしたタイミングで前世を思い出す。 ここは自身が読んでいた小説と酷似した世界――そして自分はその小説の中で死亡する、ちょい役であることを思い出す。 これはいかんと一念発起、いっそのこと主人公側について保護してもらおう!と思い立つ。 そして物語がいい感じで進んだところで退職金をもらって夢の田舎暮らしを実現させるのだ! そう意気込んでみたはいいものの、何故だかヒロインの義兄が上司になって以降、やたらとセレンを気にして――? おかしいな、貴方はヒロインに一途なキャラでしょ!? ※小説家になろう・カクヨムにも掲載

幼い頃に、大きくなったら結婚しようと約束した人は、英雄になりました。きっと彼はもう、わたしとの約束なんて覚えていない

ラム猫
恋愛
 幼い頃に、セレフィアはシルヴァードと出会った。お互いがまだ世間を知らない中、二人は王城のパーティーで時折顔を合わせ、交流を深める。そしてある日、シルヴァードから「大きくなったら結婚しよう」と言われ、セレフィアはそれを喜んで受け入れた。  その後、十年以上彼と再会することはなかった。  三年間続いていた戦争が終わり、シルヴァードが王国を勝利に導いた英雄として帰ってきた。彼の隣には、聖女の姿が。彼は自分との約束をとっくに忘れているだろうと、セレフィアはその場を離れた。  しかし治療師として働いているセレフィアは、彼の後遺症治療のために彼と対面することになる。余計なことは言わず、ただ彼の治療をすることだけを考えていた。が、やけに彼との距離が近い。  それどころか、シルヴァードはセレフィアに甘く迫ってくる。これは治療者に対する依存に違いないのだが……。 「シルフィード様。全てをおひとりで抱え込もうとなさらないでください。わたしが、傍にいます」 「お願い、セレフィア。……君が傍にいてくれたら、僕はまともでいられる」 ※糖度高め、勘違いが激しめ、主人公は鈍感です。ヒーローがとにかく拗れています。苦手な方はご注意ください。 ※『小説家になろう』様『カクヨム』様にも投稿しています。

「25歳OL、異世界で年上公爵の甘々保護対象に!? 〜女神ルミエール様の悪戯〜」

透子(とおるこ)
恋愛
25歳OL・佐神ミレイは、仕事も恋も完璧にこなす美人女子。しかし本当は、年上の男性に甘やかされたい願望を密かに抱いていた。 そんな彼女の前に現れたのは、気まぐれな女神ルミエール。理由も告げず、ミレイを異世界アルデリア王国の公爵家へ転移させる。そこには恐ろしく気難しいと評判の45歳独身公爵・アレクセイが待っていた。 最初は恐怖を覚えるミレイだったが、公爵の手厚い保護に触れ、次第に心を許す。やがて彼女は甘く溺愛される日々に――。 仕事も恋も頑張るOLが、異世界で年上公爵にゴロニャン♡ 甘くて胸キュンなラブストーリー、開幕! ---

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

そのご寵愛、理由が分かりません

秋月真鳥
恋愛
貧乏子爵家の長女、レイシーは刺繍で家計を支える庶民派令嬢。 幼いころから前世の夢を見ていて、その技術を活かして地道に慎ましく生きていくつもりだったのに—— 「君との婚約はなかったことに」 卒業パーティーで、婚約者が突然の裏切り! え? 政略結婚しなくていいの? ラッキー! 領地に帰ってスローライフしよう! そう思っていたのに、皇帝陛下が現れて—— 「婚約破棄されたのなら、わたしが求婚してもいいよね?」 ……は??? お金持ちどころか、国ごと背負ってる人が、なんでわたくしに!? 刺繍を褒められ、皇宮に連れて行かれ、気づけば妃教育まで始まり—— 気高く冷静な陛下が、なぜかわたくしにだけ甘い。 でもその瞳、どこか昔、夢で見た“あの少年”に似ていて……? 夢と現実が交差する、とんでもスピード婚約ラブストーリー! 理由は分からないけど——わたくし、寵愛されてます。 ※毎朝6時、夕方18時更新! ※他のサイトにも掲載しています。

甘い匂いの人間は、極上獰猛な獣たちに奪われる 〜居場所を求めた少女の転移譚〜

具なっしー
恋愛
「誰かを、全力で愛してみたい」 居場所のない、17歳の少女・鳴宮 桃(なるみや もも)。 幼い頃に両親を亡くし、叔父の家で家政婦のような日々を送る彼女は、誰にも言えない孤独を抱えていた。そんな桃が、願いをかけた神社の光に包まれ目覚めたのは、獣人たちが支配する異世界。 そこは、男女比50:1という極端な世界。女性は複数の夫に囲われて贅沢を享受するのが常識だった。 しかし、桃は異世界の女性が持つ傲慢さとは無縁で、控えめなまま。 そして彼女の身体から放たれる**"甘いフェロモン"は、野生の獣人たちにとって極上の獲物**でしかない。 盗賊に囚われかけたところを、美形で無口なホワイトタイガー獣人・ベンに救われた桃。孤独だった少女は、その純粋さゆえに、強く、一途で、そして獰猛な獣人たちに囲われていく――。 ※表紙はAIです

処理中です...