転生を繰り返してたら神様に惚れられました

丸太

文字の大きさ
49 / 57
1章 

36. 婚約式

しおりを挟む
鏡の中には、いつもより3割、いえ、5割は増し増しの自分がいる。
編み込まれたハーフアップの髪と、ほんのりお化粧した肌はキラキラと輝き、唇の紅のせいで、肌が白磁のようにも見えます。
毎度のことながら、私の侍女たち、すごいです。

ドレスはシルエットカラーの青。上等の生地やシフォンがいつくも重ねられ、複雑なグラデーションを描いている。胸元には金の豪華な刺繍。子供らしく露出の少ないプリンセスラインのドレスだが、腰のシフォンと袖のレースにボリュームがあり、それが逆に私の身体を華奢に見せている。

「素敵、素敵です!」

「まるでお人形さんのようにお可愛らしい・・・」

専属侍女のシャロンも、他の侍女たちも、目を輝かせて褒めてくれます。
貧相には見えないかしら?
ちょっと不安なのですが、ここでそれを口にするのは侍女の腕を疑うことになるので言えません。



2日前、お父様とアレク兄様が帰郷しました。
そして昨日、先触れがあり、今朝、王都からフォレスト侯爵様とそのご家族が我が邸に入りました。
予定通りです。

そして午前中には婚約式を終わらせ、そのままお昼の会食となる。

「緊張なさっていますか?」

「気持ちを落ち着けるハーブティーです」

シャロンもセイセイも、甲斐甲斐しく世話をしてくれます。
でも私、あまり緊張していません。
なんでかな?
本当に緊張していたり、ストレスで身体が悲鳴を上げる時はこんなものではない、という記憶がなんとなくあるのです。
いつだったか夢でも見たのでしょう。
自分の妄想力のお陰で人生の大事な日に緊張しないでいられるって、なんて効率の良い心身なのでしょう。



窓辺の椅子に座ってお迎えを待つ。
春真っ盛りの風が気持ちいい。
嫌な感じが少しもしないこの空間に、私は今日が最高の日になる確信をした。

コンコンとノックと同時に扉が開かれ、濃紺の衣装に金の刺繍が華々しい衣装のお父様が、素敵な笑顔で私に向かってきてくれます。

「さあ、私のお姫様。何も不安はないかい?」

私の気持ちをおもんばかった言葉と共に、手をとられ立ち上がる。

「凄く素敵だよ。この家を明るく照らす太陽のようだ。フォレスト家の奴らに、その眩しさを見せつけてやろう!」

そういう意気込みで行くのですね!
わかりました。
気合いの入ったお父様に私はコクリと頷き、差し出された腕に手を絡めます。
正式なエスコートです。

廊下にはこの日のために敷かれた深紅のカーペット。
柱という柱に、豪華な花が飾れている。
カーテンは特別な日のたたみ方で美しいドレープが描かれ、風にながれてローズの香りが漂ってくる。

「わあ、全てが特別仕様ですね」

お父様に気さくに声を掛けると

「全く緊張していないようだね」

と呆れられました。

「ふふふ、緊張はしない質のようです」

足取りに不安もなく、軽々と階段を下りる。

「大したもんだよ、お前は。」

お父様から褒められました。



広い食堂に入ると、長いテーブルを挟んで、左にフォレスト家、右にシルエット家の面々が既に並んでいます。
私はお父様にエスコートされて2番目の上座に通される。
お兄様もお母様も抜いてこの席か!
主役感が半端ないです。

でもお向かいにはレオン様。
黒にシルバーのお衣装がいつにも増して凛々しいです。
首のスカーフピンが青い。
気付いて私はピンから視線を上げると、レオン様は私の胸元のブローチを見ている。
そのまま視線が合って微笑みが漏れます。
私もシルバーを身に付けたのですが、気付いて頂けたようです。

にこにこにこにこ。

「こほん。えー、ご覧の通り、この1ヶ月で二人は随分と親交を深めました。」

お父様が、見つめ合ってただ笑顔の私とレオン様をからかうので、私は表情を引き締めます。

「では、婚約式を始めます。この度はわざわざブレスまでお越しいただき・・・」

お父様が歓迎のご挨拶をし、相手方もお招きのお礼を言い合う。
私は令嬢らしく、視線を伏せてお父様の言葉を聞いていた。
そして家族が紹介される。
最初に私。やっぱり主役感がすごいです。

私は視線を上げて初めてレオン様のご両親とお兄様を見た。
なんとまた、美しい家族なのでしょう。
偉丈夫なお父上、線の細い可愛らしいお母上、精悍な兄上。
皆さまなんだか目を見開いて私を見ていますよ。
ど、どこか変かな?
やっぱり貧相な子供でびっくりさせてしまったかしら?

「見すぎ!」

レオン様がご家族を窘めました。
ありがとうございます。
穴が開きそうでした。

レオン様のお父上からもフォレスト家の面々が紹介され、やっとのことで席へ着く。
そして順調に婚約の条件が、両家の間で確認されていく。
目を伏せて一つ一つ聞いているが、「それ、必要か?」という条件も多々あります。形式だから仕方ない。

「58、この婚約はソフィアの13歳の誕生日に広く知らしめるものとする。59、この婚約は・・・」

セバスチャンによって読み上げられていく婚約条件項目。58番。なんで13歳まで公表しないのかしら? お母様の考えらしいけれど、これってレオン様に申し訳ない項目な気がする。もう、変更は出来ないけれど。

婚約条件の読み上げが終わり、両家で相違ない事を確認すると、正式な契約書にサインが交わされた。

「これにて、レオン・フォレストとソフィア・シルエットは正式に婚約者と相成りました」

お父様の声。
家族たちの拍手。

あ、今、私はレオン様の婚約者になったのね。
改めて今この時が記念すべき瞬間なのだと実感する。
ずっと伏せていた視線を上げると、レオン様の優しい、温かい、笑顔があります。
この笑顔をみると、私も笑顔になってしまうのです。

「よろしくね、婚約者殿」

レオン様の小さな声が聞こえます。
私は更に笑顔を深めるのでした。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

転生したら悪役令嬢になりかけてました!〜まだ5歳だからやり直せる!〜

具なっしー
恋愛
5歳のベアトリーチェは、苦いピーマンを食べて気絶した拍子に、 前世の記憶を取り戻す。 前世は日本の女子学生。 家でも学校でも「空気を読む」ことばかりで、誰にも本音を言えず、 息苦しい毎日を過ごしていた。 ただ、本を読んでいるときだけは心が自由になれた――。 転生したこの世界は、女性が希少で、男性しか魔法を使えない世界。 女性は「守られるだけの存在」とされ、社会の中で特別に甘やかされている。 だがそのせいで、女性たちはみな我儘で傲慢になり、 横暴さを誇るのが「普通」だった。 けれどベアトリーチェは違う。 前世で身につけた「空気を読む力」と、 本を愛する静かな心を持っていた。 そんな彼女には二人の婚約者がいる。 ――父違いの、血を分けた兄たち。 彼らは溺愛どころではなく、 「彼女のためなら国を滅ぼしても構わない」とまで思っている危険な兄たちだった。 ベアトリーチェは戸惑いながらも、 この異世界で「ただ愛されるだけの人生」を歩んでいくことになる。 ※表紙はAI画像です

主人公の義兄がヤンデレになるとか聞いてないんですけど!?

玉響なつめ
恋愛
暗殺者として生きるセレンはふとしたタイミングで前世を思い出す。 ここは自身が読んでいた小説と酷似した世界――そして自分はその小説の中で死亡する、ちょい役であることを思い出す。 これはいかんと一念発起、いっそのこと主人公側について保護してもらおう!と思い立つ。 そして物語がいい感じで進んだところで退職金をもらって夢の田舎暮らしを実現させるのだ! そう意気込んでみたはいいものの、何故だかヒロインの義兄が上司になって以降、やたらとセレンを気にして――? おかしいな、貴方はヒロインに一途なキャラでしょ!? ※小説家になろう・カクヨムにも掲載

「25歳OL、異世界で年上公爵の甘々保護対象に!? 〜女神ルミエール様の悪戯〜」

透子(とおるこ)
恋愛
25歳OL・佐神ミレイは、仕事も恋も完璧にこなす美人女子。しかし本当は、年上の男性に甘やかされたい願望を密かに抱いていた。 そんな彼女の前に現れたのは、気まぐれな女神ルミエール。理由も告げず、ミレイを異世界アルデリア王国の公爵家へ転移させる。そこには恐ろしく気難しいと評判の45歳独身公爵・アレクセイが待っていた。 最初は恐怖を覚えるミレイだったが、公爵の手厚い保護に触れ、次第に心を許す。やがて彼女は甘く溺愛される日々に――。 仕事も恋も頑張るOLが、異世界で年上公爵にゴロニャン♡ 甘くて胸キュンなラブストーリー、開幕! ---

幼い頃に、大きくなったら結婚しようと約束した人は、英雄になりました。きっと彼はもう、わたしとの約束なんて覚えていない

ラム猫
恋愛
 幼い頃に、セレフィアはシルヴァードと出会った。お互いがまだ世間を知らない中、二人は王城のパーティーで時折顔を合わせ、交流を深める。そしてある日、シルヴァードから「大きくなったら結婚しよう」と言われ、セレフィアはそれを喜んで受け入れた。  その後、十年以上彼と再会することはなかった。  三年間続いていた戦争が終わり、シルヴァードが王国を勝利に導いた英雄として帰ってきた。彼の隣には、聖女の姿が。彼は自分との約束をとっくに忘れているだろうと、セレフィアはその場を離れた。  しかし治療師として働いているセレフィアは、彼の後遺症治療のために彼と対面することになる。余計なことは言わず、ただ彼の治療をすることだけを考えていた。が、やけに彼との距離が近い。  それどころか、シルヴァードはセレフィアに甘く迫ってくる。これは治療者に対する依存に違いないのだが……。 「シルフィード様。全てをおひとりで抱え込もうとなさらないでください。わたしが、傍にいます」 「お願い、セレフィア。……君が傍にいてくれたら、僕はまともでいられる」 ※糖度高め、勘違いが激しめ、主人公は鈍感です。ヒーローがとにかく拗れています。苦手な方はご注意ください。 ※『小説家になろう』様『カクヨム』様にも投稿しています。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

そのご寵愛、理由が分かりません

秋月真鳥
恋愛
貧乏子爵家の長女、レイシーは刺繍で家計を支える庶民派令嬢。 幼いころから前世の夢を見ていて、その技術を活かして地道に慎ましく生きていくつもりだったのに—— 「君との婚約はなかったことに」 卒業パーティーで、婚約者が突然の裏切り! え? 政略結婚しなくていいの? ラッキー! 領地に帰ってスローライフしよう! そう思っていたのに、皇帝陛下が現れて—— 「婚約破棄されたのなら、わたしが求婚してもいいよね?」 ……は??? お金持ちどころか、国ごと背負ってる人が、なんでわたくしに!? 刺繍を褒められ、皇宮に連れて行かれ、気づけば妃教育まで始まり—— 気高く冷静な陛下が、なぜかわたくしにだけ甘い。 でもその瞳、どこか昔、夢で見た“あの少年”に似ていて……? 夢と現実が交差する、とんでもスピード婚約ラブストーリー! 理由は分からないけど——わたくし、寵愛されてます。 ※毎朝6時、夕方18時更新! ※他のサイトにも掲載しています。

甘い匂いの人間は、極上獰猛な獣たちに奪われる 〜居場所を求めた少女の転移譚〜

具なっしー
恋愛
「誰かを、全力で愛してみたい」 居場所のない、17歳の少女・鳴宮 桃(なるみや もも)。 幼い頃に両親を亡くし、叔父の家で家政婦のような日々を送る彼女は、誰にも言えない孤独を抱えていた。そんな桃が、願いをかけた神社の光に包まれ目覚めたのは、獣人たちが支配する異世界。 そこは、男女比50:1という極端な世界。女性は複数の夫に囲われて贅沢を享受するのが常識だった。 しかし、桃は異世界の女性が持つ傲慢さとは無縁で、控えめなまま。 そして彼女の身体から放たれる**"甘いフェロモン"は、野生の獣人たちにとって極上の獲物**でしかない。 盗賊に囚われかけたところを、美形で無口なホワイトタイガー獣人・ベンに救われた桃。孤独だった少女は、その純粋さゆえに、強く、一途で、そして獰猛な獣人たちに囲われていく――。 ※表紙はAIです

処理中です...