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プロローグ!
しおりを挟む「──それでは生徒会長、久園寺こはるさんより、新学期のご挨拶です」
体育館に響き渡る拍手と共に、その少女は現れた。
俺は一瞬、現実感を失いそうになった。
壇上に出てきたのは、腰まで伸びた見事な金髪──
整った顔立ちもそうだが、それだけではない。
細い手足も、薄い唇も、真っ直ぐな眼差しも、白い肌も、歩く動作も、全てに気品がある。
男なら必ず振り返って視線を止めるような、そんな少女だった。
彼女は紙を両手に持って、背筋を伸ばした。
「──新たな命が萌え出づる、春の息吹の中、この輝かしい一学期をまた迎えることができました」
出だしの挨拶も、それは立派なものだった。
……はずだった。
「暖かな光に誘われて桜の花びらも散り始めた、きょ、今日の良き日……ひ……」
「た、太陽の光が満ち溢れ、命が、い、生き生きと活動を始め……め……め……」
紙を持つ手が、がくがくと震えていた。
まるで壊れたラジオカセットみたいに、言葉にならない声を繰り返している。
そして、少女は目を渦巻きにして、その場でよろめいた。
「ぎ、ぎえぴ……」
……ぎえぴ?
ばたん──と倒れる音と共に、少女はぶくぶくと泡を吹き始めた。
「久園寺さん!? 久園寺さん!!」
駆けつけた教員たちに運ばれながら、彼女は体育館から退場していった……。
水を打ったかのように、生徒たちは静まり返った。
この高校に転校してきて初日──。
それが初めてみた、久園寺こはるの姿だった。
学校というものには何かしらの七不思議が存在する。
夜になると音楽室のピアノが鳴り出すとか、一段だけ多い階段だとか、そんな古臭い怪談話だ。
しかしこの直弥高校には、七不思議……というよりも、ある「うわさ話」が立っている。
冗談めいているけれど、ひときわ異彩を放っている、そういう類の。
その内容は──「生徒会長は不登校」
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