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光の宮殿
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その夜は美しく澄んでいた。ラングリンドの清らかな夜気に満月の光が皓々と冴え渡っていた。
一日をかけてラングリンド中を巡り、その光あふれる美しい国土と人々、妖精たちの姿を目に焼き付けたかつてのラングリンド女王は、今まさに自分がただ一人の光に立ち返っていることに気がついていた。それは彼女の心になつかしさを思い起こさせると共に、不思議な清々しさを生んだ。
彼女は美しい満月の輝く空に、眩しい光の翅をひらめかせて舞い上がった。
彼女が自ら作り上げ、抱え込んでいた重荷のすべては、満月の清冽な光のうちに溶け出し、きらめく泡となって夜の空に吸い込まれた。
何者でもない生まれたばかりの光の存在に戻った彼女は、高い空からラングリンドに向かって腕を広げた。星々をすべて集めたかのようなきらめく光が、夜のしじまに身を横たえるラングリンドに降り注いだ。
彼女はにっこりと微笑むと、遥か遠い昔に築いた妖精の国ではなく、地平線の彼方、冷たい暗黒の世界において尚、炎々と燃え上がる聖なる火焔を目指し、振り返ることなく飛び始めた。
穏やかな静けさの満ちた月の光が降り注ぐ宮殿のバルコニーに寄り添って立ち、かつてのラングリンド女王の最後の祝福と守護の光を受け取ったフロイントとアデライデは、夜空の彼方に向かって一つの妙なる光が軽やかに飛び去って行く姿を見ていた。二人は何も語らないまま、様々な想いが湧き起こる体を蔦の絡まるバルコニーの柱に凭せ掛け、美しく静謐なその光景を心に刻むかのように、やわらかな夜の空気に溶け込んで行く光を、ただいつまでも見送り続けた。
光の妖精女王が去ったその夜、城のはずれの森の泉──妖精女王の「光の鏡」には、世にも珍しく美しい、光と炎を宿した花が乱れ咲き、泉の表面を覆い尽くした。フロイントはこの花をラングリンドの国の花とし、アデライデと共に大切に守っていくことを決めたのだった。
そして──。
一日をかけてラングリンド中を巡り、その光あふれる美しい国土と人々、妖精たちの姿を目に焼き付けたかつてのラングリンド女王は、今まさに自分がただ一人の光に立ち返っていることに気がついていた。それは彼女の心になつかしさを思い起こさせると共に、不思議な清々しさを生んだ。
彼女は美しい満月の輝く空に、眩しい光の翅をひらめかせて舞い上がった。
彼女が自ら作り上げ、抱え込んでいた重荷のすべては、満月の清冽な光のうちに溶け出し、きらめく泡となって夜の空に吸い込まれた。
何者でもない生まれたばかりの光の存在に戻った彼女は、高い空からラングリンドに向かって腕を広げた。星々をすべて集めたかのようなきらめく光が、夜のしじまに身を横たえるラングリンドに降り注いだ。
彼女はにっこりと微笑むと、遥か遠い昔に築いた妖精の国ではなく、地平線の彼方、冷たい暗黒の世界において尚、炎々と燃え上がる聖なる火焔を目指し、振り返ることなく飛び始めた。
穏やかな静けさの満ちた月の光が降り注ぐ宮殿のバルコニーに寄り添って立ち、かつてのラングリンド女王の最後の祝福と守護の光を受け取ったフロイントとアデライデは、夜空の彼方に向かって一つの妙なる光が軽やかに飛び去って行く姿を見ていた。二人は何も語らないまま、様々な想いが湧き起こる体を蔦の絡まるバルコニーの柱に凭せ掛け、美しく静謐なその光景を心に刻むかのように、やわらかな夜の空気に溶け込んで行く光を、ただいつまでも見送り続けた。
光の妖精女王が去ったその夜、城のはずれの森の泉──妖精女王の「光の鏡」には、世にも珍しく美しい、光と炎を宿した花が乱れ咲き、泉の表面を覆い尽くした。フロイントはこの花をラングリンドの国の花とし、アデライデと共に大切に守っていくことを決めたのだった。
そして──。
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