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2話
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「お、おろしてください、公爵様……っ」
エリスの細い体は、アルカードの逞しい腕によって軽々と抱き上げられました。 案内されたのは、公爵邸の最上階にある主寝室。豪華な装飾が施されていますが、どこか冷たい空気が漂うその部屋の大きなベッドに、エリスは静かに横たえられました。
「……怖いか。私が、噂通りの『死神』だからか?」
アルカードが覆いかぶさるように顔を近づけます。銀色の瞳が、暗闇の中で獣のように鈍く光っていました。
「いえ……。私は、いつ死んでもおかしくない身です。ですから、公爵様が私をどうされようと、それは当然の権利ですわ」
エリスは静かに微笑みました。その微笑みは、自分を「モノ」として扱うことに慣れきった、悲しいほどに美しい諦念でした。
しかし、その言葉がアルカードの逆鱗に触れました。
「黙れ。二度と私の前で、自分を投げ出すような口を利くな」
彼は荒々しく、エリスの寝衣の襟元を掴んで引き開けました。 露わになった白い肌。その中央に、心臓へ向かって不気味に根を伸ばす「黒い百合」の痣がありました。
「……酷いな。一族の栄華のために、これほどの呪いを一人の少女に押し付けていたのか」
アルカードの指先が、痣の表面をなぞります。その指が触れた瞬間、エリスの体中に電流が走ったような衝撃が走りました。
「あ、っ……!?」
「呪いが、君の生命力を喰らっている。……いいか、エリス。今から私の魔力を君の体内に注ぎ込む。私の魔力は強大だ。君の呪いを一時的に抑え込み、命を繋ぎ止めることができる」
「魔力を、注ぐ……? どうやって……」
エリスが問い終わる前に、彼の唇が彼女の唇を塞ぎました。
「ん……む……っ」
それは、愛の囁きよりも重く、強引な略奪でした。 アルカードの口内から、熱を帯びた膨大な魔力が、エリスの喉を通って体中へ流れ込んできます。氷のように冷え切っていたエリスの五臓六腑が、内側から焼き焦がされるような熱に満たされていきました。
呪いの痣が、彼の魔力に抗うように激しく脈打ち、エリスは苦しげに涙をこぼしました。 しかし、アルカードは彼女を離しません。それどころか、彼女の腰を強く引き寄せ、逃げ場を塞ぐように全身で押し潰します。
「……ふはっ、はあ……」
ようやく唇が離れた時、エリスの瞳は熱に浮かされ、とろんと潤んでいました。 不思議なことに、いつも彼女を苦しめていた胸の締め付けが、嘘のように消えていました。
「……寿命が、一時間分だけ延びたな」
アルカードは、乱れた呼吸を整えながら、エリスの額にじっとりと滲んだ汗を指で拭いました。
「一時間、だけ……ですか?」
「そうだ。私の魔力を君の呪いが食らい尽くす。だから、毎日……いや、数時間おきに、こうして私から魔力を受け取ってもらう。……死ぬ暇など、一秒たりとも与えないと言っただろう」
アルカードの瞳には、救済者としての慈悲などありません。そこにあるのは、獲物の死を強引に書き換え、自分の支配下に置こうとする、狂気的なまでの執着心でした。
エリスはこの時、初めて気づきました。 この「死神」は、自分の命を奪う者ではなく、自分をこの世という地獄に永遠に繋ぎ止めようとする、最も恐ろしい支配者なのだということに。
エリスの細い体は、アルカードの逞しい腕によって軽々と抱き上げられました。 案内されたのは、公爵邸の最上階にある主寝室。豪華な装飾が施されていますが、どこか冷たい空気が漂うその部屋の大きなベッドに、エリスは静かに横たえられました。
「……怖いか。私が、噂通りの『死神』だからか?」
アルカードが覆いかぶさるように顔を近づけます。銀色の瞳が、暗闇の中で獣のように鈍く光っていました。
「いえ……。私は、いつ死んでもおかしくない身です。ですから、公爵様が私をどうされようと、それは当然の権利ですわ」
エリスは静かに微笑みました。その微笑みは、自分を「モノ」として扱うことに慣れきった、悲しいほどに美しい諦念でした。
しかし、その言葉がアルカードの逆鱗に触れました。
「黙れ。二度と私の前で、自分を投げ出すような口を利くな」
彼は荒々しく、エリスの寝衣の襟元を掴んで引き開けました。 露わになった白い肌。その中央に、心臓へ向かって不気味に根を伸ばす「黒い百合」の痣がありました。
「……酷いな。一族の栄華のために、これほどの呪いを一人の少女に押し付けていたのか」
アルカードの指先が、痣の表面をなぞります。その指が触れた瞬間、エリスの体中に電流が走ったような衝撃が走りました。
「あ、っ……!?」
「呪いが、君の生命力を喰らっている。……いいか、エリス。今から私の魔力を君の体内に注ぎ込む。私の魔力は強大だ。君の呪いを一時的に抑え込み、命を繋ぎ止めることができる」
「魔力を、注ぐ……? どうやって……」
エリスが問い終わる前に、彼の唇が彼女の唇を塞ぎました。
「ん……む……っ」
それは、愛の囁きよりも重く、強引な略奪でした。 アルカードの口内から、熱を帯びた膨大な魔力が、エリスの喉を通って体中へ流れ込んできます。氷のように冷え切っていたエリスの五臓六腑が、内側から焼き焦がされるような熱に満たされていきました。
呪いの痣が、彼の魔力に抗うように激しく脈打ち、エリスは苦しげに涙をこぼしました。 しかし、アルカードは彼女を離しません。それどころか、彼女の腰を強く引き寄せ、逃げ場を塞ぐように全身で押し潰します。
「……ふはっ、はあ……」
ようやく唇が離れた時、エリスの瞳は熱に浮かされ、とろんと潤んでいました。 不思議なことに、いつも彼女を苦しめていた胸の締め付けが、嘘のように消えていました。
「……寿命が、一時間分だけ延びたな」
アルカードは、乱れた呼吸を整えながら、エリスの額にじっとりと滲んだ汗を指で拭いました。
「一時間、だけ……ですか?」
「そうだ。私の魔力を君の呪いが食らい尽くす。だから、毎日……いや、数時間おきに、こうして私から魔力を受け取ってもらう。……死ぬ暇など、一秒たりとも与えないと言っただろう」
アルカードの瞳には、救済者としての慈悲などありません。そこにあるのは、獲物の死を強引に書き換え、自分の支配下に置こうとする、狂気的なまでの執着心でした。
エリスはこの時、初めて気づきました。 この「死神」は、自分の命を奪う者ではなく、自分をこの世という地獄に永遠に繋ぎ止めようとする、最も恐ろしい支配者なのだということに。
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