辺境のスローライフを満喫したいのに、料理が絶品すぎて冷酷騎士団長に囲い込まれました

腐ったバナナ

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12話

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 ミサキの料理による騎士団の驚異的な変化は、辺境の商人を経由して、ついに王都の貴族の耳にも届き始めた。王都では、「辺境の騎士団長が、奇跡の料理人を見つけた」という噂が、嫉妬と欲望の渦を巻いていた。

 ある晴れた午後、ミサキのログハウスに、騎士団の許可を得たと主張する、一組の男女がやってきた。彼らは王都の名門貴族、ヴァルディ家の使者だった。

「あなたが、辺境の騎士団長を虜にしたという料理人ですか」

 傲慢な態度の中年女性は、ミサキの地味な服装を見て鼻で笑った。

「ふん、噂ほどではない。しかし、その技術は王国の資産であるべきだ。騎士団長のような辺境の男が独占して良いものではない」

 ミサキは、彼らの傲慢さと、自分の才能を搾取しようとする意図に、過去の忙殺されていた会社員時代を思い出し、嫌悪感を覚えた。

「私は誰の専属でもありませんし、技術を売るつもりもありません。お帰りください」

 ミサキは毅然とした態度で拒否した。

 しかし、使者たちは引き下がらなかった。彼らは、王都の貴族社会の常識を盾に、ミサキを威圧した。

「辺境の者よ。あなたのような平民に拒否権はない。我々が技術を求めているのは、騎士団長のためではない。王都の貴族の晩餐会を豊かにするためだ。光栄に思うべきでしょう」

 彼らの言葉は、ミサキのスローライフと、ガイウスとの平穏な愛を脅かす、最も嫌な現実だった。

「私の料理は、平和な環境と純粋な心があって初めて成り立ちます。あなた方の欲望を満たすための道具ではありません」

 ミサキは強く言い返した。

 その時、殺気にも似た冷気がログハウス全体を包み込んだ。

 扉を開けて立っていたのは、巡回から戻ったガイウス・バルドだった。

 彼の黄金の瞳は氷のように冷え切り、その顔は怒りによって鉄仮面のように硬直していた。彼の背後には、「ミサキの敵は、我らの敵」と誓う、屈強な騎士団の姿があった。

「貴様ら……よくも私の領地に踏み入ったな」

 ガイウスの声は、地を這うように低かった。

「許可は得ていないはずだ。騎士団の警戒線を偽りで突破したな」

 使者たちは、ガイウスの恐ろしいまでの威圧感に震え上がった。

「が、ガイウス団長殿!これは公爵様のご意向で!この女の技術を、王都にお連れするために……」

「黙れ」

 ガイウスは、使者たちの目前で、彼の腰に差していた巨大な剣を、ログハウスの床に突き立てた。地鳴りのような音が響き、使者たちは怯えて後ずさりした。

「この者は、私の命の源だ。彼女の技術、彼女の心、彼女の全ては、私とこの辺境のものだ」

 ガイウスは、ミサキを背中に隠すように立ち、使者たちを睨みつけた。

「貴様らの傲慢な欲望のために、この地の平和と、私の愛する者の安寧を乱すことは許さない。今すぐ立ち去れ。二度とこの辺境の土を踏むな」

 ガイウスの絶対的な庇護と、冷酷なまでの威圧は、王都の使者たちに「この女を奪おうとすれば、この騎士団長と辺境全体を敵に回す」ことを痛感させた。

 使者たちは、屈辱に顔を歪ませながら、辺境を後にするしかなかった。ミサキは、ガイウスの命懸けの愛によって、スローライフの最大の脅威が排除されたことを悟った。
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