婚約破棄された令嬢、商才と魅力で運命を変える

腐ったバナナ

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13話

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 朝日が窓から差し込む書斎。エリスは昨日届いた書簡を慎重に開封した。封筒には、王家の紋章が刻まれている。

「……王家からの依頼?」

 彼女は目を見開き、手紙の内容を読み進める。内容は、王都の新たな貿易路の整備に伴う物資調達と管理の依頼だった。規模はこれまでの取引の数倍。リスクも大きい。しかし、それ以上に得られる経験と信頼は計り知れなかった。

 カイが静かに隣に座り、書簡を覗き込む。

「これは……本当に大きな話です、エリス様。失敗は許されません」

「ええ、でも逃げる理由もありません。やるしかないわ」

 エリスの声には迷いがない。むしろ胸の奥に、胸躍るような興奮が混ざっていた。

 午後、エリスはすぐに準備に取りかかる。
 材料の確保、運搬の手配、作業員や協力者のスケジュール調整。書斎の机はあっという間に地図や帳簿、契約書で埋め尽くされた。

「カイ、まずは港からの輸送経路を確認して。荷物が遅れたら計画が狂う」

「了解です。書類と地図を整理して最適ルートをまとめます」

 カイの手際の良さに、エリスは心強さを感じながらも、緊張が胸を締め付ける。

 その夜、エリスは一人机に向かい、計算を繰り返す。

「材料費……輸送費……人件費……利益は……うん、大丈夫、いける」

 しかし数字を何度見ても、完全に安全とは言えない。リスクの大きさが、彼女の胸を押し潰すように感じられた。

「でも……挑戦しなければ、何も得られない」

 小さく呟く声は、決意のこもった強い声になった。

 数日後、港にて最初の大規模搬入が始まる。作業員たちは緊張と期待の入り混じった表情。エリスは一歩一歩、指示を出しながら現場を巡る。

「ここは慎重に……あの荷物は先に船に積み込んで」

「了解!」

 指示は明確、声はしっかりと通る。エリスの姿に、作業員たちの信頼も自然と生まれた。

 午後、船の積み込みが完了し、エリスは港の端に立ち、遠ざかる船を見送る。波の音と風の中、彼女の心は緊張と達成感で満たされる。

「これで……一歩、また前に進めた」

 その日の夜、書斎に戻ったエリスにカイが言った。

「今日の作業、問題はありませんでした。これで契約の半分は順調に進みました」

「ありがとう、カイ。でも残り半分も気を抜かずに……ね」

 エリスは微笑むが、目は鋭く光る。挑戦はまだ始まったばかりだ。

 窓の外には、夜空に浮かぶ星々。エリスはそっと手を伸ばし、未来を思い描く。

 ――これからの道は、ただの成功ではなく、確実な成果と信頼を積み重ねる戦い。
 彼女は胸の奥で燃える挑戦心を、決して消さないと誓った。
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