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14話
「陛下、そんなにムキにならないでください。子犬さんも、陛下も、私にとっては大切なお客様……いえ、もふもふ仲間なんですから」
ニーナは苦笑しながら、右手に「幻の聖獣」の子犬を、左手に「帝国最強の狼王」ヴォルフの耳を抱えていました。
「……仲間だと? 俺は、こいつと同じ括りにされるのは納得がいかん」
ヴォルフ陛下は不満げに鼻を鳴らしますが、ニーナの指が耳の裏の「禁断のツボ」を刺激するたびに、その声は弱々しくなっていきます。
その時でした。
ニーナが、ふと思ったのです。
(この子犬さんも、陛下たちも……みんな、もっと幸せな気持ちになってほしいな)
心からの慈しみと、これまでの感謝を込めて、ニーナが二人の「もふもふ」を同時に、深く、優しく撫で上げた瞬間――。
「――っ!?」
ニーナの指先から、温かく柔らかな、黄金の光が溢れ出しました。
それは、偽物の聖女が放っていた刺々しい光とは全く別物の、まるで春の陽だまりのような、命を育む光。
その光はヴォルフ陛下の全身を包み込み、彼の体内に残っていたわずかな「魔力の澱」を、一瞬にして霧散させてしまいました。
「なんだ……体が、軽い……。今までの『浄化』とは、次元が違う……」
ヴォルフ陛下だけではありません。周囲にいたタイガ将軍の虎の模様が鮮やかに輝き出し、ハヤテ宰相の羽根の一枚一枚が、まるで宝石のような光沢を放ち始めました。
「この光……まさか、古の伝承にある『魂の伴侶』の目覚め……?」
ハヤテ宰相が、驚愕のあまり眼鏡をずらして絶句しました。
彼が慌てて持ってきた古文書には、こう記されていたのです。
『獣人の魂を真に理解し、愛を以てその理性を繋ぎ止める者。その指先が光を放つ時、彼女は一国の主の伴侶となり、国に永遠の安寧をもたらす聖妃となるだろう』
「せ、聖妃……? 私が、ですか?」
ニーナが目を丸くしていると、光を浴びた子犬が、驚くべき変化を見せました。
ポンッ、という音と共に、子犬が眩い光の粒子となり、ヴォルフ陛下の胸元へと吸い込まれていったのです。
「な……っ。聖獣が、俺と一体化した……?」
「陛下! 聖獣はニーナ様の純粋な愛の力に反応して、陛下に『真の王としての守護』を与えたのです! これは、ニーナ様が陛下にとって、運命が定めた唯一無二の番であるという何よりの証拠……!」
タイガ将軍が叫び、その場に跪きました。
ハヤテ宰相も、震える手で胸元を押さえ、ニーナを見上げます。
「……ニーナ。貴女は、ただの侍女ではありませんでした。……この国そのものを、そして、荒ぶる獣である我々の魂を救うために舞い降りた、真の女神だったのですね」
「女神だなんて、そんな……! 私はただ、皆様をなでなでするのが好きなだけで……」
顔を真っ赤にするニーナ。
しかし、ヴォルフ陛下は無言でニーナを抱き寄せると、その額に、誓いを立てるような深い口づけを落としました。
「……もう、逃がさないぞ、ニーナ。……お前が俺の番だというなら、たとえ神が相手でも譲るつもりはない」
ヴォルフ陛下の黄金の瞳に、これまでの嫉妬とは違う、一人の男としての「覚悟」が宿りました。
しかし、ニーナの本当の試練――「侍女」としてではなく「一人の女性」として、この熱すぎる愛に向き合う日々は、ここから始まったばかりなのです。
ニーナは苦笑しながら、右手に「幻の聖獣」の子犬を、左手に「帝国最強の狼王」ヴォルフの耳を抱えていました。
「……仲間だと? 俺は、こいつと同じ括りにされるのは納得がいかん」
ヴォルフ陛下は不満げに鼻を鳴らしますが、ニーナの指が耳の裏の「禁断のツボ」を刺激するたびに、その声は弱々しくなっていきます。
その時でした。
ニーナが、ふと思ったのです。
(この子犬さんも、陛下たちも……みんな、もっと幸せな気持ちになってほしいな)
心からの慈しみと、これまでの感謝を込めて、ニーナが二人の「もふもふ」を同時に、深く、優しく撫で上げた瞬間――。
「――っ!?」
ニーナの指先から、温かく柔らかな、黄金の光が溢れ出しました。
それは、偽物の聖女が放っていた刺々しい光とは全く別物の、まるで春の陽だまりのような、命を育む光。
その光はヴォルフ陛下の全身を包み込み、彼の体内に残っていたわずかな「魔力の澱」を、一瞬にして霧散させてしまいました。
「なんだ……体が、軽い……。今までの『浄化』とは、次元が違う……」
ヴォルフ陛下だけではありません。周囲にいたタイガ将軍の虎の模様が鮮やかに輝き出し、ハヤテ宰相の羽根の一枚一枚が、まるで宝石のような光沢を放ち始めました。
「この光……まさか、古の伝承にある『魂の伴侶』の目覚め……?」
ハヤテ宰相が、驚愕のあまり眼鏡をずらして絶句しました。
彼が慌てて持ってきた古文書には、こう記されていたのです。
『獣人の魂を真に理解し、愛を以てその理性を繋ぎ止める者。その指先が光を放つ時、彼女は一国の主の伴侶となり、国に永遠の安寧をもたらす聖妃となるだろう』
「せ、聖妃……? 私が、ですか?」
ニーナが目を丸くしていると、光を浴びた子犬が、驚くべき変化を見せました。
ポンッ、という音と共に、子犬が眩い光の粒子となり、ヴォルフ陛下の胸元へと吸い込まれていったのです。
「な……っ。聖獣が、俺と一体化した……?」
「陛下! 聖獣はニーナ様の純粋な愛の力に反応して、陛下に『真の王としての守護』を与えたのです! これは、ニーナ様が陛下にとって、運命が定めた唯一無二の番であるという何よりの証拠……!」
タイガ将軍が叫び、その場に跪きました。
ハヤテ宰相も、震える手で胸元を押さえ、ニーナを見上げます。
「……ニーナ。貴女は、ただの侍女ではありませんでした。……この国そのものを、そして、荒ぶる獣である我々の魂を救うために舞い降りた、真の女神だったのですね」
「女神だなんて、そんな……! 私はただ、皆様をなでなでするのが好きなだけで……」
顔を真っ赤にするニーナ。
しかし、ヴォルフ陛下は無言でニーナを抱き寄せると、その額に、誓いを立てるような深い口づけを落としました。
「……もう、逃がさないぞ、ニーナ。……お前が俺の番だというなら、たとえ神が相手でも譲るつもりはない」
ヴォルフ陛下の黄金の瞳に、これまでの嫉妬とは違う、一人の男としての「覚悟」が宿りました。
しかし、ニーナの本当の試練――「侍女」としてではなく「一人の女性」として、この熱すぎる愛に向き合う日々は、ここから始まったばかりなのです。
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