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第11話 聖女、夜の聖堂で“お祈りごっこ”
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夜。
王都の喧騒が遠くで静まっていく。
聖堂の奥、キャンドルが揺れる回廊を、私はスリッパのまま歩いていた。
「……寝れない。」
ふかふかのベッドなのに、なぜか目が冴えてしまったのだ。
昼寝しすぎたせいかもしれない。いや、きっとそうだ。
そんなとき――。
「聖女さま?」
振り向くと、そこにいたのはユウヒ。
手に灯りを持ち、驚いたように目を瞬かせていた。
「どうされたんですか、こんな時間に。」
「うーん、寝れないだけ。」
「……お祈りでもしてみますか?」
「お祈り?」
「眠れない夜には、神に心を委ねるのです。」
「いや、神様たぶん寝てると思うけど。」
「い、いえ! 神は常に見守っておられます!」
「……じゃあ、付き合ってよ。」
「えっ」
ユウヒの耳まで真っ赤になった。
◇ ◇ ◇
聖堂の中央。
祭壇の前に並んで座る。
夜風がステンドグラスを通り、淡い光が差し込む。
「まずは、両手を合わせて……」
ユウヒが静かに言う。
私は真似をして、目を閉じた。
(……両手を合わせて、ね。)
でも、指先が冷たくて、なんだか落ち着かない。
すると――。
ユウヒの手が、そっと私の手の上に重なった。
「……冷たいです。少し、失礼します。」
そのまま包み込むように、両手を重ねて温めてくれる。
神聖な静けさの中で、手のひらから心臓にまで、熱が伝わってくる。
「ユウヒくん……あったかいね。」
「聖女さまの手が小さいだけですよ。」
「……うまいこと言って照れ隠ししないの。」
「し、してません!」
思わず笑ってしまう。
その笑い声が、夜の聖堂に小さく響いた。
◇ ◇ ◇
「……お祈りって、何を祈るの?」
「人の幸せ、世界の平穏、そして――」
彼は少し言葉を詰まらせ、私を見た。
「あなたの安らぎを。」
心臓が、一拍跳ねた。
「……私の?」
「はい。聖女さまが安らげば、世界が安らぐ。
だから、あなたが笑っていることが、いちばん大切なんです。」
その言葉は、まるで魔法のようだった。
胸の奥がじんわりと熱くなる。
思わず、彼の指を少し強く握り返した。
「……ユウヒくん。」
「はい。」
「そうやって言われると、寝れなくなるんだけど。」
「えっ……!?」
「ドキドキして。」
ユウヒの顔が一瞬で真っ赤になる。
耳まで染まって、言葉が詰まっていた。
「そ、そんなつもりでは……っ」
「うん、知ってる。でも、うれしいよ。」
彼は何も言えず、ただ微笑んだ。
蝋燭の灯が揺れて、その笑顔をやさしく照らした。
◇ ◇ ◇
祈りのあと、ふたりで並んで外の夜空を見上げた。
星が瞬いて、空は深い青に沈んでいる。
「綺麗だね。」
「はい。まるで聖女さまの――」
「顔って言ったら殴るよ?」
「……微笑み、です。」
「正解。」
二人の笑い声が重なる。
静かな夜に溶けるように響いて、
いつの間にか眠気が、また少しだけ戻ってきた。
「……そろそろ寝ようか。」
「はい。おやすみなさい、聖女さま。」
「うん。おやすみ、ユウヒくん。」
そして、彼の手を離さないまま、
私はそのまま、彼の肩に頭を預けた。
「……!?」
「いいでしょ、ちょっとだけ。」
「……はい。」
肩に伝わる鼓動が、静かな子守歌みたいに響いた。
夜の聖堂に、ふたりだけの祈りがそっと灯る。
――その夜、聖女の夢は、なぜかやさしい光に包まれていた。
次回予告
第12話 「聖女、風邪をひく(おでこタッチ注意報)」
――お楽しみに!
王都の喧騒が遠くで静まっていく。
聖堂の奥、キャンドルが揺れる回廊を、私はスリッパのまま歩いていた。
「……寝れない。」
ふかふかのベッドなのに、なぜか目が冴えてしまったのだ。
昼寝しすぎたせいかもしれない。いや、きっとそうだ。
そんなとき――。
「聖女さま?」
振り向くと、そこにいたのはユウヒ。
手に灯りを持ち、驚いたように目を瞬かせていた。
「どうされたんですか、こんな時間に。」
「うーん、寝れないだけ。」
「……お祈りでもしてみますか?」
「お祈り?」
「眠れない夜には、神に心を委ねるのです。」
「いや、神様たぶん寝てると思うけど。」
「い、いえ! 神は常に見守っておられます!」
「……じゃあ、付き合ってよ。」
「えっ」
ユウヒの耳まで真っ赤になった。
◇ ◇ ◇
聖堂の中央。
祭壇の前に並んで座る。
夜風がステンドグラスを通り、淡い光が差し込む。
「まずは、両手を合わせて……」
ユウヒが静かに言う。
私は真似をして、目を閉じた。
(……両手を合わせて、ね。)
でも、指先が冷たくて、なんだか落ち着かない。
すると――。
ユウヒの手が、そっと私の手の上に重なった。
「……冷たいです。少し、失礼します。」
そのまま包み込むように、両手を重ねて温めてくれる。
神聖な静けさの中で、手のひらから心臓にまで、熱が伝わってくる。
「ユウヒくん……あったかいね。」
「聖女さまの手が小さいだけですよ。」
「……うまいこと言って照れ隠ししないの。」
「し、してません!」
思わず笑ってしまう。
その笑い声が、夜の聖堂に小さく響いた。
◇ ◇ ◇
「……お祈りって、何を祈るの?」
「人の幸せ、世界の平穏、そして――」
彼は少し言葉を詰まらせ、私を見た。
「あなたの安らぎを。」
心臓が、一拍跳ねた。
「……私の?」
「はい。聖女さまが安らげば、世界が安らぐ。
だから、あなたが笑っていることが、いちばん大切なんです。」
その言葉は、まるで魔法のようだった。
胸の奥がじんわりと熱くなる。
思わず、彼の指を少し強く握り返した。
「……ユウヒくん。」
「はい。」
「そうやって言われると、寝れなくなるんだけど。」
「えっ……!?」
「ドキドキして。」
ユウヒの顔が一瞬で真っ赤になる。
耳まで染まって、言葉が詰まっていた。
「そ、そんなつもりでは……っ」
「うん、知ってる。でも、うれしいよ。」
彼は何も言えず、ただ微笑んだ。
蝋燭の灯が揺れて、その笑顔をやさしく照らした。
◇ ◇ ◇
祈りのあと、ふたりで並んで外の夜空を見上げた。
星が瞬いて、空は深い青に沈んでいる。
「綺麗だね。」
「はい。まるで聖女さまの――」
「顔って言ったら殴るよ?」
「……微笑み、です。」
「正解。」
二人の笑い声が重なる。
静かな夜に溶けるように響いて、
いつの間にか眠気が、また少しだけ戻ってきた。
「……そろそろ寝ようか。」
「はい。おやすみなさい、聖女さま。」
「うん。おやすみ、ユウヒくん。」
そして、彼の手を離さないまま、
私はそのまま、彼の肩に頭を預けた。
「……!?」
「いいでしょ、ちょっとだけ。」
「……はい。」
肩に伝わる鼓動が、静かな子守歌みたいに響いた。
夜の聖堂に、ふたりだけの祈りがそっと灯る。
――その夜、聖女の夢は、なぜかやさしい光に包まれていた。
次回予告
第12話 「聖女、風邪をひく(おでこタッチ注意報)」
――お楽しみに!
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