淡色に揺れる

かなめ

文字の大きさ
2 / 86
前章

練習終わりの更衣室

「マジで今日の練習、えぐ鬼すぎ」

「顧問、合宿前になると脳内アスリートになるからなぁ~」

「しかも詩弦が本気出したら地獄じゃん!マジ膝ガクガクなんだけど!」

がちゃがちゃとロッカーが開く音、シャワーの音、そしてひときわ目立つ3年生たちの陽気な笑い声。テニス部の更衣室は、部員全員がのびのびと着替えられるくらい広い。
夕焼け色に染まる窓の外では、まだ誰かがランニングのラストメニューをこなしている。

「でさ、今年のインハイの選抜メンバーって、ぶっちゃけどうなると思う?」

「個人的には1年の神田ちゃん入ると思うなぁ。最近のスマッシュえぐいし」

「でも1年はまだ連携ヤバいって。ミス多すぎ~。ダブルスで組むの不安すぎ~」

「じゃあ誰と組みたいの?」

「うーん、やっぱ彩里?」

「え~ズルいっ!!彩里は全員の憧れ枠だから!早い者勝ちじゃん!」

「あはは、やめてよー。わたしみんなにモテても使い道ないよ~」

タオルで髪を拭きながら笑う彩里に、周囲から「きゃー!」という悲鳴と拍手が飛ぶ。その中心で、詩弦はタオル片手に、苦笑混じりにため息をついた。

「___騒がしい」

「そう言いつつ、笑ってんじゃん」

「うるさい」

軽口に、笑いがまたひとつ広がる。
詩弦が練習の時とオフモードで別人なのは、もはや誰もが知っている事実だった。

「は~い後衛のスターがデレました~!今夜は隕石注意報でーす!」

「やっぱ詩弦先輩、顔整いすぎでしょ、あれであの腹筋でしょ?無敵じゃん」

詩弦はすでに練習着を脱ぎ終え、スポブラに黒のショーツ姿で汗を拭いていた。引き締まった腹筋に加え、日の当たらない腹部の肌は白くてツヤがある。
そのくせ胸元は___控えめ。

ちらっと隣のロッカーにいる彩里を見ると、例のFカップを隠す気もなくスポブラ姿で「ドリンク足りなーい」とか言ってる。

「ほんとあいつ、バランスおかしい」

詩弦は小さく呟いて、自分の胸元にそっと目を落とした。
このへん、別に張り合う気はない、と毎回言い聞かせてるけど、毎回ちょっと引っかかる。

そんな視線にも気づかず、蓮は近くのベンチでスポーツタオルを両肩にかけて、黙々と汗を拭いていた。

彼女の姿は少し違っていた。
他の部員がさっさと上着を脱ぐ中、蓮はスポブラの上にまだタンクトップを着ている。

「ねえ蓮、そのタンク暑くない?脱いだら?」

「え?あ、うーん別にいいかな。これ空気抵抗減らしてくれるし」


「あのさ、それ上に着てるんだからむしろ増えてるんだけど」

ケロッとした顔で答える蓮に、広瀬はため息交じりに返す。

「でも、胸あると走る時ブレーキになりそうじゃん?私ないから助かってるんだ~」

「は?」

広瀬は目をしばたたかせたあと、爆笑した。

「何その理論!逆逆ぅ!」

「相変わらず蓮は何考えてるかわかんないねほんと」

「それな?もう蓮ワールド爆発!って感じでチョー好き」

「なにそれ笑」

同級生たちが楽しそうに笑う姿に交じって、蓮は鈴を転がすような笑顔で笑った。
感想 0

あなたにおすすめの小説

〈社会人百合〉アキとハル

みなはらつかさ
恋愛
 女の子拾いました――。  ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?  主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。  しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……? 絵:Novel AI

(完)百合短編集 

南條 綾
ライト文芸
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

名もなき春に解ける雪

天継 理恵
恋愛
春。 新しい制服、新しいクラス、新しい友達。 どこにでもいる普通の女子高生・桜井羽澄は、「クラスにちゃんと馴染むこと」を目指して、入学早々、友達作りに奔走していた。 そんな羽澄が、図書室で出会ったのは—— 輝く黒髪に、セーラー服の長いスカートをひらりと揺らす、まるで絵画から抜け出したような美しい同級生、白雪 汀。 その綺麗すぎる存在感から浮いている白雪は、言葉遣いも距離感も考え方も特異で、羽澄の知っている“普通”とは何もかもが違っていた。 名前を呼ばれたこと。 目を見て、話を聞いてもらえたこと。 偽らないままの自分を、受け入れてくれたこと—— 小さなきっかけのひとつひとつが、羽澄の胸にじわりと積もっていく。 この気持ちは憧れなのか、恋なのか? 迷う羽澄の心は、静かに、けれど確かに、白雪へと傾いていく—— 春の光にゆっくりと芽生えていく、少女たちの恋と、成長の物語。

**俺、東大院生の実験対象にされてた。**同居している美人家庭教師のやばい秘密

まさき
恋愛
 俺は今、東大院生の実験対象になっている。  ある雨の夜、アパートの前にずぶ濡れの美女が立っていた。  「家庭教師です。住まわせてください」  突然すぎる申し出に困惑しながらも、なぜか断れなかった。  桐島咲楽、東大大学院生。成績は天才、料理は壊滅的、距離感はおかしい。毎日転ぶ、焦がす、なぜか距離が近い。そのくせ授業は鬼のように丁寧で、俺のことを誰よりもよく見ていた。  偏差値42だった俺の成績は、気づけば上がっていた。でも、それより気になることがある。  咲楽さんが、研究ノートに何かを書いている。「被験者」という文字が、見えた気がした。  距離が近いのは、データのためか。褒めてくれるのは、実験のためか。でも、あの顔は。あの声は。  「データじゃなくて、私がそう思っています」  嘘をついているような顔じゃなかった。  偏差値42の俺に、東大院生の美女が押しかけてきた。ドタバタな毎日の中で、俺の心臓が休まる暇がない。これはドキドキなのか、心配なのか。それとも、もう恋なのか。  不器用な天才と、鈍感な高校生の、やばい同居生活。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

私がガチなのは内緒である

ありきた
青春
愛の強さなら誰にも負けない桜野真菜と、明るく陽気な此木萌恵。寝食を共にする幼なじみの2人による、日常系百合ラブコメです。

春に狂(くる)う

転生新語
恋愛
 先輩と後輩、というだけの関係。後輩の少女の体を、私はホテルで時間を掛けて味わう。  小説家になろう、カクヨムに投稿しています。  小説家になろう→https://ncode.syosetu.com/n5251id/  カクヨム→https://kakuyomu.jp/works/16817330654752443761

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。