風のスクリーン

風のスクリーン 2

世界は試みの積み重ねで

成立している。

わたしは初潮がきた頃から

そんな考えにとらわれている。

今この瞬間　

どこかのキッチンで

今度こそ　上手くできますように　と

祈るように　

オムライスの玉子を焼く母親。

次のカーブを　この速度で曲がりきれるか

確信がないままに突っ込む

シンナー臭い少年。

さまざまな試みは

地平線のかなたから

巨象の集団のように　ゆっくりと

ゆっくりと

わたしに向かってくる。

わたしは　息つくひまもなく

それらを　避け　飛びこえ　

かわしながら　走り続ける。

………………


Ｃが起きたとき

ＪＮは「お祭り」の

真っ最中だった。

肩の上に

帽子かけを　載せた

筋肉だけの　ものたちが

意味もなく

走り　跳び　踊る。

憐れな　筋肉たち

帽子かけの　お祭り。

「お祭り」に　疑念をもったものは


排除された。


「お祭り」は神聖。


「お祭り」は伝統。


そして「お祭り」が

おこなわれた。


小さなときから

それしかできない　筋肉たちが

意味なく　意味わからず

踊り　走り　飛び

そして消えた。

帽子かけにメダルを下げて

ニタニタと　気味悪く　笑い

そして　消えた。

「お祭り」のあと

ＪＮは消えた。

ＪＮはＣＮになった。

………………

ＡＣが消えたあと

Ｑができた。

ＣＮはＱをそのままにした。

危険すぎて手がつけられない

そう考えたという。

………………

わたしは９９。

タハラを殺る。

硬い金属の棒で真正面から殴る。

棒が顔面に食い込む。

タハラはカエルみたいな声で

叫んで倒れる。

続けざまに

タハラの身体を

ヒールで踏みつける。

あばら骨が折れて陥没する。

手足を踏みつける。

壊れた人形のように

床で踊るタハラ。

「タハラ、タハラ」

私は呪文を唱える。

わたしの「お祭り」。

……………

世界はＣＮになった。

Ｃの後

ひとがたくさん消えた世界は

ＣＮになった。

「最初に言葉があった」と

昔のひとが言った。

わたしたちの最初の言葉は

ＣＮの言葉。

……………

わたしは９９。

わたしは二階の窓から侵入した。

キクマの家。

キクマを殺すため。

ＣＷを殺す。

寝ている首を掻き切る。

熟れた西瓜のように。

ＣＭも殺す。

顔をつぶす。

熟れすぎた桃のように。

……………

ＪＮの北の方

ＣＮはＦＭもそのままにした。

そばによることができないから。

だから　

ＦＭはレジスタンスたちのものになった。

……………

ＦＭには　崩れかけた城がある。

城の奥深くに　聖櫃があると言われる

青白く光り　近寄るものを　消す

…………

貴方には何も出来ない

エキゾが囁いた。

夏服は向日葵のプリント。

プアゾンの香り。

図書館にプアゾンは不釣合だろうか。

図書館に相応しい香りは

何。

……………………………

１９９４年４月。

武道館。

正装した大勢のミュージシャンの前に

犬の散歩の途中みたいな

Ｔシャツを着て

格好なんてどうでもいいだろと

言いたげに

ジェイ・グレイドンは現れた。

貴方には何も出来ない。

ギターソロの前に

ジェイは手に唾をつけた

ように見えた。

リップシンクだね、これは。

………………………………



エキゾはＣＰのエージェントだという。

政府の。

ＣＮの。

わたしたちはみんなＣＰだ。

それ以外は

存在できない。

あなたにはなにもできない。

……………

ＣＭは「口腔性行」でしか

快感を得ることができない。

つまり

「生殖行為」としての

性行しかできない。

できない。

できない、できない。

 ＣＭは子供を作るため

ＶＷの生殖器官に挿入して

射精するが

それは手を洗ったり

歯を磨いたりするのと

何らかわらない

感情を伴わない

行為にすぎない。

Ｃが起きたころ

Ｃを被ると

味覚がなくなると

言われた。

それは　前触れに　すぎなかった。

性器に挿入しても

まったく　感覚がない

不感症以下の状態が現れ

それは　固定化した。