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第226回 金印学園のポルターガイスト
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都市伝説レポート 第226回
「金印学園のポルターガイスト」
取材・文: 野々宮圭介
昭和48年(1973年)の秋、福岡県内の私立女子高校で起きた一連の怪現象は、当時の新聞各紙を賑わせ、今なお語り継がれている未解決事件の一つである。問題となったのは金印学園(現・福岡女子商業高校)の校舎内で発生した、いわゆる「ポルターガイスト現象」だった。
筆者がこの事件に興味を抱いたのは、福岡の古書店で偶然手に入れた当時の地方紙の切り抜きがきっかけだった。「机が宙に浮く」「椅子が勝手に動き回る」といった見出しが躍る記事は、一見すると三流週刊誌の記事のようにも思えたが、記載されている証言者の多さと具体性が尋常ではなかった。
筆者は現在の福岡女子商業高校を訪ね、当時を知る関係者への聞き取り調査を行った。幸い、事件当時に新任教師として赴任していた元国語教諭の田中氏(仮名、当時25歳)が健在で、貴重な証言を得ることができた。
「最初は生徒のいたずらだと思っていました」と田中氏は当時を振り返る。
「しかし、あの現象を実際に目の当たりにしたとき、常識では説明のつかないことが起きているのだと理解せざるを得ませんでした」
田中氏によれば、現象は10月中旬頃から始まったという。2年A組の教室で授業中、突然後方の机が「ガタガタ」と音を立てて揺れ始めた。生徒たちは最初笑っていたが、その机に座っている生徒は手を膝に置いたまま、机には一切触れていないことが明らかだった。
事態は日を追うごとに深刻化していった。当時の校内報告書(筆者が教育委員会で閲覧を許可された資料)には、以下のような記録が残されている。
- 10月18日:2年A組で椅子が教室の端から端まで滑るように移動
- 10月22日:同教室で黒板消しが誰もいない状況で落下
- 10月25日:職員室で書類が机から飛び散る現象を教師5名が目撃
- 11月2日:体育館で跳び箱が一列に整然と並んでいたにも関わらず、翌朝には散乱
特に注目すべきは、11月5日の出来事である。この日、現象の検証のため地元新聞社の記者とカメラマンが学校を訪れていた。午後2時頃、2年A組で行われていた数学の授業中、教室後方の机が突然30センチほど浮上し、約3秒間その状態を保った後、静かに元の位置に降りたという。この様子は複数の目撃者によって証言され、新聞記事にも詳細に記録されている。
事件が報道されると、九州大学の物理学教授らが現地調査を行った。床下の構造、地盤の状況、電磁波の測定など、考えられる物理的要因を徹底的に検証したが、現象を説明できる科学的根拠は発見されなかった。
心理学者の見解では「集団ヒステリー」や「暗示効果」という説明が提示されたが、現象を直接目撃した教師や新聞記者らの証言は一貫しており、単純な心理的要因では説明しきれない側面があった。
当時の校長だった山田氏(故人)は、後に週刊誌のインタビューで「生徒たちによるいたずらの可能性も徹底的に調査したが、現象が起きている最中の生徒の様子を見る限り、人為的な操作は不可能だった」と語っている。
11月下旬になると、現象は次第に収まっていった。最後に記録された現象は12月3日の「廊下で雑巾が宙に浮いた」というもので、それ以降、金印学園で超常現象が報告されることはなかった。
興味深いことに、現象が最も活発だった2年A組には、当時「内気で目立たない」と評されていた一人の女子生徒がいた。同級生の証言によると、この生徒の周囲で現象が起きることが多かったという。しかし、本人への直接的な取材は、プライバシー保護の観点から実現していない。
ポルターガイスト現象については、世界各地で類似の事例が報告されている。多くの場合、思春期の少年少女が関与しているとされ、心理的ストレスや無意識の念力が原因とする仮説もある。しかし、科学的な証明には至っていないのが現状である。
金印学園の事例で注目すべきは、現象の目撃者が生徒や教師に留まらず、外部の報道関係者や研究者にまで及んでいることである。これは集団幻覚や記憶の歪曲では説明困難な要素と言えるだろう。
また、現象が約2か月間という比較的短期間で終息している点も特徴的である。何らかの外的要因の変化、あるいは関係者の心理状態の変化が影響した可能性も考えられる。
筆者は今回の調査を通じて、科学では解明しきれない現象が確かに存在する可能性を改めて感じている。金印学園で起きた出来事が、物理法則を超越した何らかの力によるものだったのか、それとも未知の科学的現象だったのか。その答えは、今も福岡の地に眠ったままである。
現在も同校の校舎は使われ続けており、在校生たちに聞く限り、特異な現象は起きていないという。しかし、古い校舎の片隅で、時折聞こえる「ガタガタ」という音に、かつての記憶を重ねる教職員もいるのだとか。
事実か幻想か、その判断は読者諸氏に委ねたい。ただ一つ確かなのは、1970年代の福岡で、多くの人々が「説明のつかない何か」を確かに目撃したということである。
(了)
*本誌では読者の皆様からの都市伝説情報を募集しています。身近な不思議体験がありましたら、編集部までお寄せください。
「金印学園のポルターガイスト」
取材・文: 野々宮圭介
昭和48年(1973年)の秋、福岡県内の私立女子高校で起きた一連の怪現象は、当時の新聞各紙を賑わせ、今なお語り継がれている未解決事件の一つである。問題となったのは金印学園(現・福岡女子商業高校)の校舎内で発生した、いわゆる「ポルターガイスト現象」だった。
筆者がこの事件に興味を抱いたのは、福岡の古書店で偶然手に入れた当時の地方紙の切り抜きがきっかけだった。「机が宙に浮く」「椅子が勝手に動き回る」といった見出しが躍る記事は、一見すると三流週刊誌の記事のようにも思えたが、記載されている証言者の多さと具体性が尋常ではなかった。
筆者は現在の福岡女子商業高校を訪ね、当時を知る関係者への聞き取り調査を行った。幸い、事件当時に新任教師として赴任していた元国語教諭の田中氏(仮名、当時25歳)が健在で、貴重な証言を得ることができた。
「最初は生徒のいたずらだと思っていました」と田中氏は当時を振り返る。
「しかし、あの現象を実際に目の当たりにしたとき、常識では説明のつかないことが起きているのだと理解せざるを得ませんでした」
田中氏によれば、現象は10月中旬頃から始まったという。2年A組の教室で授業中、突然後方の机が「ガタガタ」と音を立てて揺れ始めた。生徒たちは最初笑っていたが、その机に座っている生徒は手を膝に置いたまま、机には一切触れていないことが明らかだった。
事態は日を追うごとに深刻化していった。当時の校内報告書(筆者が教育委員会で閲覧を許可された資料)には、以下のような記録が残されている。
- 10月18日:2年A組で椅子が教室の端から端まで滑るように移動
- 10月22日:同教室で黒板消しが誰もいない状況で落下
- 10月25日:職員室で書類が机から飛び散る現象を教師5名が目撃
- 11月2日:体育館で跳び箱が一列に整然と並んでいたにも関わらず、翌朝には散乱
特に注目すべきは、11月5日の出来事である。この日、現象の検証のため地元新聞社の記者とカメラマンが学校を訪れていた。午後2時頃、2年A組で行われていた数学の授業中、教室後方の机が突然30センチほど浮上し、約3秒間その状態を保った後、静かに元の位置に降りたという。この様子は複数の目撃者によって証言され、新聞記事にも詳細に記録されている。
事件が報道されると、九州大学の物理学教授らが現地調査を行った。床下の構造、地盤の状況、電磁波の測定など、考えられる物理的要因を徹底的に検証したが、現象を説明できる科学的根拠は発見されなかった。
心理学者の見解では「集団ヒステリー」や「暗示効果」という説明が提示されたが、現象を直接目撃した教師や新聞記者らの証言は一貫しており、単純な心理的要因では説明しきれない側面があった。
当時の校長だった山田氏(故人)は、後に週刊誌のインタビューで「生徒たちによるいたずらの可能性も徹底的に調査したが、現象が起きている最中の生徒の様子を見る限り、人為的な操作は不可能だった」と語っている。
11月下旬になると、現象は次第に収まっていった。最後に記録された現象は12月3日の「廊下で雑巾が宙に浮いた」というもので、それ以降、金印学園で超常現象が報告されることはなかった。
興味深いことに、現象が最も活発だった2年A組には、当時「内気で目立たない」と評されていた一人の女子生徒がいた。同級生の証言によると、この生徒の周囲で現象が起きることが多かったという。しかし、本人への直接的な取材は、プライバシー保護の観点から実現していない。
ポルターガイスト現象については、世界各地で類似の事例が報告されている。多くの場合、思春期の少年少女が関与しているとされ、心理的ストレスや無意識の念力が原因とする仮説もある。しかし、科学的な証明には至っていないのが現状である。
金印学園の事例で注目すべきは、現象の目撃者が生徒や教師に留まらず、外部の報道関係者や研究者にまで及んでいることである。これは集団幻覚や記憶の歪曲では説明困難な要素と言えるだろう。
また、現象が約2か月間という比較的短期間で終息している点も特徴的である。何らかの外的要因の変化、あるいは関係者の心理状態の変化が影響した可能性も考えられる。
筆者は今回の調査を通じて、科学では解明しきれない現象が確かに存在する可能性を改めて感じている。金印学園で起きた出来事が、物理法則を超越した何らかの力によるものだったのか、それとも未知の科学的現象だったのか。その答えは、今も福岡の地に眠ったままである。
現在も同校の校舎は使われ続けており、在校生たちに聞く限り、特異な現象は起きていないという。しかし、古い校舎の片隅で、時折聞こえる「ガタガタ」という音に、かつての記憶を重ねる教職員もいるのだとか。
事実か幻想か、その判断は読者諸氏に委ねたい。ただ一つ確かなのは、1970年代の福岡で、多くの人々が「説明のつかない何か」を確かに目撃したということである。
(了)
*本誌では読者の皆様からの都市伝説情報を募集しています。身近な不思議体験がありましたら、編集部までお寄せください。
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