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第一章 レイフの森
第30話 宣戦布告
しおりを挟む「ま、おう……?」
魔王ってあれだよな。あの魔王だよな?
想像ではもっと悪魔的な容姿だったんだけど……、ってそんな事はどうでもいい!
なんで魔王がこんな所に?
「悪かったなぁ。本当は隠すつもりなんて無かったんだぜ? ただ、俺のことを知らないって奴等に会うのが新鮮でな! 目的を忘れて騒いじまったぜ……」
目的? 目的って……、まさかガウ達か?
ゴウは獣人達相手に、かなり暴れまわったというし、もしかしたらその報復なのかもしれない。
いや……、それにしたって魔王直々に出向くなんてちょっとおかしいと思うが……
「あ、ちなみに芸人って言うのも別に嘘じゃないぜ。こんな立場になる前は芸で稼いでいたからな。悪くなかったろ?」
咄嗟に声が出なかったため、俺はコクコクと頷いて返す。
「キバさ……、陛下は、どうしてこちらへ?」
ライが尋ねる。それは、ここにいる誰もが気になっていることだ。
固まっている俺達を気遣ってか、ライが代表して確認してくれるらしい。
「偵察……、になるのか? 元々は違ったんだがな。まぁ、とりあえず座れよ。おい、そこのトロール達も突っ立てないで、コッチ来て座れよ! 別に暴れたりしないからよ!」
そんな事を言われても到底信じられないが、逆らえば何をされるかわかったものではない。
ガウ達もそれを感じてか、何も言わずに素直に応じる。
「本当はな? 部下達が手を焼いているっていう、二頭のトロールの討伐が目的だったんだよ。だが、俺が意気揚々と戦闘準備をしていたら、先行していた部下から二頭のヤツが討たれたと報告が入ってな。最初は俺の楽しみを奪いやがって! と思ったりもしたんだがよ、よくよく考えてみりゃ数人がかりとはいえ、多頭のトロールをやったってのは大したもんだ。俄然興味をひかれた俺は、単身ここに乗り込んで調査を開始したってワケだ」
心底楽しそうに語る魔王様。
いやいや、それがどうして単身乗り込むことになるのさ……
恐らく、部下の人は止めたのだと思うけど……
見たことも無いはずの部下達の心労が、ひしひしと伝わってくる気がする。
「しかし、先程のような演舞を披露する必要は無かったのでは?」
魔王の奔放さに緊張がほぐれたのか、俺もようやく声を出すことができるようになった。
「いやいや、俺も初めはそんなつもりは無かったんだが、めでたい席だそうじゃねぇか。そりゃあ盛り上げるしかないだろ?」
盛り上げるしかないって……
この人、本当に魔王なのか……?
ちょっと流石に自由すぎやしないだろうか。
「まあ、それはそれとしてだ、情報を集めるのは今も昔も飲みの席が一番ってやつだ。実際、俺の知りたかった情報はたんまり手に入れられたぜ?」
確かに、酒が入れば口も軽くなるし、信頼関係も築きやすくなってくる。
ゲームや小説でも、情報収集の場といえば酒場というイメージがあるが、実際理に適っていると言えるだろう。
……ただ、それを王様がやるってのはどうなんだろうか?
実際、魔王なんて有名人じゃなければ、正体もバレずに最後まで偵察出来た気がする……
……あれ、何だろうこの疲労感は?
俺が困っているわけじゃ無いんだけど、部下の心労を考えるとなんだか胃の辺りがキュルキュルする。
「……では、此度の陛下の目的は、集落の偵察ということですね? ……陛下は、結論としてこの集落をどう判断されたのでしょうか?」
ライの表情が少し険しくなる。
確かに、魔王の判断次第では俺達に何か要求される可能性もあるのだ。。
魔王の最初の目的は二頭、ゴウの討伐だったと言っていた。
それに従っていたガウ達を引き渡せと言われる可能性は、十分にある。
それ所か、最悪の場合討伐対象になっていてもおかしくは無いのだ。
「……そうだな。とりあえず他のトロール達は、二頭のような危険思想に捕らわれているワケでもないようだし、問題ないだろ」
……良かった。
最大の心配ごとが取り除かれ、少し安堵する。
「が、しかしだ。この森は前々から結構危険視されていてなぁ……、その勢力が増強されるってのは、やはり俺達にとっちゃ脅威なんだよ。ってことで、悪いがこの集落は攻め落とさせて貰うぜ?」
「っ!?」
さっきまで和やかな雰囲気を発していた魔王が、突如威圧感を放ち始める。
余りの圧力に、俺の体に震えが走る。
「……まあ、俺も鬼ってワケじゃないし、折角の宴をぶち壊すことはしねぇよ。攻めるのは明日にしてやる。だから今日の所は、十分に楽しむと良いぜ? ま、最後の晩餐になっちまうかもしれないがな!」
がっはっはっ! と笑いながら話す魔王。
先程の安堵から、急転直下で一気に絶望感が増していく。
「ちなみに安心していいぞ? 今回攻めるのは俺だけだ。お前達がしっかり準備すりゃ、もしかしたら俺を返り討ちにすることもできるかもしれねぇ。……だが、逃げるのはお勧めしないぜ? 逃がす気は無ぇからな」
……無茶苦茶だ。
はっきり言って、この魔王が言っていることは無茶苦茶である。
宴を壊す気は無いと言うが、この時点で宴など続けられる空気ではなくなっていた。
しかも、しっかり準備しとけと言いながら、猶予はたった一日だって?
余りにも支離滅裂過ぎる。
一人で攻めるという話だって、本当かどうか怪しいところだ。
そんなこと、普通に考えてあり得ない。
まず間違いなく、他の戦力も出張ってくるハズだ。
(……いや、この滅茶苦茶な魔王であれば、その可能性は十分あるか?)
そもそも、ここに単騎で偵察に来ている時点でおかしいのだ。
部下に話を通していない可能性は十分にあり得る。
明日攻めるという短い時間設定も、あるいはそれが関係しているのかもしれない。
それ以上時間を空ければ、本人の意思とは関係無く、部下が合流してしまうだろうからな。
……この魔王は、どこまでも自分が楽しむことだけを考えているのだろう。
全く、頭が痛い話だ……
俺は思わず頭を抱え込んでしまった。
「お、そのポーズ! 俺の部下も良くやってるぜ」
でしょうね!
「んじゃ、そういうことなんで、また明日な! 夜更かしし過ぎて戦力がた落ちとかになるんじゃねぇぞ! 楽しみが減るからな!」
そう言い残し、魔王は去っていった。
まるで嵐のように、静けさを残して……
「何をやっているんですか? あなた達は?」
合流したイオ達がその沈黙を破るまで、俺達は一言も喋ることができなかった。
その間も俺の頭は回転をし続けていたが、未だ良い解決策は浮かんでいない。
さて、本当にどうしたものか……
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