魔界戦記譚-Demi's Saga-

九傷

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第二章 森の平定

第44話 魔獣襲撃

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 ――――集落の広場



「結構集まったな……」


 広場にはレッサーゴブリンが約20名、オークが30名、トロールが9名が集まっている。
 そんなに広い広場では無いので、かなり窮屈な状況である。
 正直、ここまでの人数が集まるとは思っていなかった。
 特にオークに関しては、未だゴウの件で焼き付いた恐怖を拭えていない状況だというのに……


「こんなに集まってくれたのは助かるけど……、大丈夫なのかソク?」


 二頭のトロール、ゴウにより最も被害を被ったのがオーク達だ。
 彼らの中には家族を失った者も多いし、そう簡単に心の傷が癒えることは無いだろう。
 普通に考えれば、兵士に志願するような意識は持てないと思うが……


「トーヤ殿、ここに集まった者は正真正銘、トーヤ殿の力になることを望んだ者達ですよ。決して無理をしていたり、自暴自棄になっているワケではありません。私も含め、オーク族は今、希望に満ち溢れております。それもこれも、全てトーヤ殿のお陰なのです。だからどうか、我々にトーヤ殿の力にならせて下さい」


「ソク……」


 他のオーク達も、ソクに続くように頭を下げる。
 彼らの目には、諦観や無気力さなどは一切浮かんでおらず、そこには明確な意志の光を感じ取れた。
 そして、それはゴブリン達やトロール達も同様である。


「トーヤ殿、我々レッサーゴブリンもオーク達と同様、トーヤ殿の力にならせて頂きます。今回のような悲劇を繰り返さぬよう、どうか我々を導いて欲しい」


 ザルア達レッサーゴブリンも、オーク達に続くように頭を下げてくる。


「俺やイオは既に兵として任官されているから、やや事情は異なるが、志はオーク族、ゴブリン族と同じだ。元より、俺達の取り柄など戦いくらいしか無い。存分に使ってくれ」


 そして、ガウ達トロール族も、皆と同じように頭を下げてきた。

 ……やれやれ、皆、俺に期待し過ぎだな。
 盲目的というか、純粋というか……、まあ、要はみんな人が好いのである。
 はっきり言って、俺には荷が重い立場だと思っていたが、ここまでされてはな……
 最初からいい加減な気持ちだったワケでは無いが、皆の気持ちに押されて覚悟が決まった。


「……皆、ありがとう。正直、俺はまだ、こんな立場を任されるほどの器じゃないと思っている。しかし、皆に認められるよう努力はしていくつもりだ。それまでは済まないけど、不甲斐ない俺を支えてくれると助かる。どうか、力になって欲しい!」


「「「「「「「「「「「「「応!!!」」」」」」」」」」」」」




 ◇




「お疲れ様」


 広場を後にすると、ライが後ろから声をかけてきた。


「はは、流石に緊張したね。皆、真剣だったし」


「そうだね。でもまあ、そんなに気負わなくても良いと思うよ? 僕も助けになるしさ」


「……ありがとう。頼らせてもらうよ」


 ライの心遣いが胸に響く。
 本当に、心身ともにイケメンだなぁ……


「あ、そうだ。ライ、城の件だけど……」


「うん、良いと思うよ。僕も近衛兵長として、トーヤから離れるわけにはいかないし、引っ越しだね。でも、レイフさんはどうするのかな?」


「レイフには昨日話したけど、開拓にも協力してくれるとか言っていたな」


「開拓に協力……? それって、どういうこと……?」


「トーヤ殿!」


 ソクが慌てたような顔をして駆けてくる。


「ん、どうしたソク? そんな慌てて」


「い、いえ、昨日お話したトーヤ殿の城を建てる場所なのですが……、あれはトーヤ殿がやってくれたのでしょうか?」


「いや、何もしてないけど……」


「そ、そうですか……。いえ、先程、城の件を進めてくれとのことでしたので現地に向かったのですが……。既に木々が無くなっていまして……」


「……え?」




 ………………………………


 ………………………


 ………………




 現場に着いてみると、ソクの言う通り、広範囲に亘って生い茂っていた木々が丸々無くなっていた。
 その代わりに、妙にサイズの大きい大木が、端の方にそびえていた。


「これは……」


『おお、来たかトーヤ』


 出来上がった広大な敷地の前で茫然としていると、頭に声が響いてくる。


「え、まさかレイフか?」


『そうだ。昨日言っていた件、終わらせておいたぞ』


「ってこれ、レイフがやったのか!?」


『我以外に誰ができると言うのだ。お前らに任せると伐採されてしまうだろう? だからここら一帯の同士は我がまとめて吸収した。これなら問題ないだろう。後ろの木々は、取り込んだ際に不要となった体の一部だ。好きに使うと良い』


 とんでもないことを簡単に言ってのけるレイフ。
 開拓に協力とは言っていたが、ここまでの規模だとは全く思っていなかった。


「いや、てっきりこの辺の木々に話を付けてくれるだけだと思っていたから……」


『ふん、そんなことを言っても納得する訳があるまい。我が取り込むことで、無理やり納得させたのだ。それよりも、約束通り食料の提供はしてもらうぞ。何せ、今まで以上に栄養が必要になっているのでな』


「そ、そこは任せておけ。多分10人以上は住むことになると思うから」


『それは安心だ。では少し疲れたので寝るぞ』


 それっきり、レイフから反応が無くなる。
 それにしても、レイフってこれだけの力を持っていたのか……
 自らを森の名と同じ『レイフ』と名乗るだけある。
 もしかしたら、本当にこの森そのものになったりして……


 ソクやライに事情を説明すると、二人とも心底驚いた顔をしていた。
 そりゃそうだよな、俺もびっくりしたし。

 まあ、何はともあれ、開拓の手間や木材の準備などの手間が省けたのは有り難い。
 ソクは、すぐにでも築城を開始すると言い、作業者を集めに行った。
 ライも手伝うそうなので、俺も一緒に行こうとしたら止められてしまった。
 立場を考えろという事だが、なんとも窮屈な話である。


(はぁ……、手持無沙汰になってしまったな……。まあ、引っ越しの準備でもしておくか……)


 とは言っても、元々大した持ち物など無いので、準備などすぐに終わってしまうのだが。


「!? トーヤ! ここにいたか!」


 集落の出入り口付近まで戻ってきた辺りで、ゾノがこちらに気づいて駆けてくる。
 その焦りようから、何かがあった事が伺える


「どうしたゾノ。何があった?」


「近くにあった小人族の集落が、襲撃にあったらしい。逃げて来た者達がいるが、かなりの重症だ。来てくれないか」


「!? わ、わかったが、襲撃って一体何に……?」


 ゾノはその問いに苦い顔をして答える。


「……魔獣だ。それも、かなりの大群らしい」




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