偶像は神に祈る夢をみる

なめこ玉子

文字の大きさ
18 / 30

ミカガミシンヤの物語 1

しおりを挟む
始まりは突然のように見えた。
だが、その認識は誤りであると、後の支配者たちは教えてくれた。

果たしてそれがどういう結末を迎えたのを俺は正確には知らない。
世界が終わりを迎えるよりもだいぶ前に、俺は俺自身を繭に閉じ込めたからだ。
不完全なままに繭となった俺は、二度と目覚めることはない…、

はずだった。

***

目が覚めたときに意識に浮かんだことは山ほどある。
ここはどこだ?あれからどれだけたった?
世界はどうなってる?

…彼女は無事なのか?

でも、そのどれも言葉にできないほど俺は弱っていた。
混濁する意識の中で、誰かが甲斐甲斐しく俺の世話を焼いてくれていることだけがわかった。

歩けるほどに回復すると、不思議な少女と引き合わされた。
厚くおしろいをを塗って化粧をしたその顔には、少女とは思えないほど大人びた表情が宿っていて彼女は相当に地位の高い人間だとだと俺は直感した。

「神よ」
と俺を見て彼女は口にした。

この頃になれば俺もなんとなく、自分の置かれている状況を理解し始めていた。
誰もが俺に畏怖と尊敬の念を向けている。

少女と話ができたことは幾分かは実りがあった。
彼女は見た目にそぐわず聡明で、俺の質問には何でも答えてくれる。
だが困ったことに俺の方が彼女の話すことの一割も理解できなかった。

かろうじて理解できたことから推測すると、
俺が眠りについてから千年を優に超える時間が流れたらしい。

ここにはこの少女を中心とした国のようなものがあって、
俺はそこで神様として敬われていたようだ。
かつての俺の生きた文明ははとっくに、滅んでいた。

少女とは数日後に再び合うことになった。
俺の身柄はそこで三人の男女に引き渡された。

彼らが俺の世話係ということだ。

その言葉通り彼らは俺に必要なものをすべて手配してくれた。
家、食事、衣服、日常生活に必要なものはすべて。
そして予想に反して俺は自由に街を出歩くことができた。

世界はまるで変わったようにはみえない。
与えられた家も、衣服も、食事も俺の暮らしていた世界ぁらそっくり持ってきたようだ。

ただ一つ、すべての人が俺を尊敬している。
まるでパラレルワールドにでも迷い込んだような奇妙な感覚だった。

不完全なままに繭のまま眠りについた俺は、二度と目覚めることはないはずだった。
ありえないことが起こっている。

突然与えられた新しい世界はいつまでも現実感を持たず、脳みそは思考を放棄した。ただ流されるままに漫然と日々を消費した。そうやって心が追いつくのを待った。

何不自由のない生活が、数週間続いた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

性別交換ノート

廣瀬純七
ファンタジー
性別を交換できるノートを手に入れた高校生の山本渚の物語

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

意味が分かると怖い話(解説付き)

彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです 読みながら話に潜む違和感を探してみてください 最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください 実話も混ざっております

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

処理中です...