荷物持ちを追放したら、酷い目にあった件について。

しばたろう

文字の大きさ
23 / 46

23喧騒一方、寡黙一方(けんそういっぽう、かもくいっぽう)

しおりを挟む
 翌日。
 俺たちは明日の洞窟攻略に向けて装備を整えるため、
 街の武具店を訪れていた。

 昨日、飲みすぎたせいか――少し頭が重い。
 どうやらエリオットもジルドも同じらしい。

 アヤメとスズナは眠そうにあくびを噛み殺していた。
 どうやら短剣のレッスンを夜更けまでやっていたらしい。

 一方――
 バルナとオルフィナはというと、ケロッとしてる。
 昨晩は“しつこい男の撃退法”なんかでふたり盛り上がりながら、
 エールをグビグビ飲んでいたのだが。
 よくあれだけ飲んで平気だな……と心の底から感心する。



 今日はクエストがないので、全員が普段着だ。

 ジルドは、賢者らしい落ち着いた装い。
 落ち着いた雰囲気の、上品で整った服装がよく似合っている。

 バルナは戦士らしく、動きやすいかっこいい冬服。
 男勝りでありながら、意外とスタイルが良いので妙に似合う。

 スズナは清楚。
 森に溶けそうな落ち着いた緑系のコートを身にまとい、
 静かなオーラを放っている。

 エリオットはいつもの司祭らしい服装。
 厚手の外套を羽織っても、上品さが消えないのはさすがだ。

 オルフィナは……“おしゃれ”。
 冬の流行をしっかり押さえた服に、ふわふわのストール。
 どこにいても視線を集める。

 アヤメは――シンプルなのに可愛い。
 いや、むしろシンプルだからこそ可愛い。
 毛糸の帽子からのぞく耳が赤くて、なんだか守りたくなる。

 ちなみに俺は、本当に“鎧を脱いだだけ”の普段着だ。



 武具店の大きな扉をくぐると、鉄と皮の匂いがした。

 鍛冶場の熱がほんのり漂い、壁いっぱいに並ぶ短剣、盾、胸当て――
 どれも丁寧に手入れされ、光を放っている。

「明日は洞窟攻略だからな。装備の準備を怠るわけにはいかない」

 俺は皆を振り返り、そう告げた。

 全員の表情が引き締まる。

 明日には――
 サラマンダー、そして大量の大トカゲとの戦いが待っている。

 今日中に、完璧に整えておかねばならない。
 


 広めの更衣室では、女子たちがすでに大盛り上がりしていた。

「まかせて! 明日の洞窟クエスト用の服、私たちが選んであげるわ!」
 バルナとスズナが鼻息荒く宣言する。

「まずは、オルフィナからね!」
 スズナの号令で、試着タイムが幕を開けた。



 最初に着せられたのは、
 紫がかったパーカーに森色のトレッキングスカート、
 軽い魔導ブーツを合わせた“山ガール仕様”の装備。

「おしゃれです。」
 アヤメが目を輝かせる。

「しかし、私の魔道のイメージとは、ちょっと違う気がするぞ。」
 オルフィナが真顔でつぶやく。

「とても似合ってはいるのだがな。」
 バルナが腕を組む。

「ええ。おもしろみにかけるわね。」
 スズナが残念そうに言う。

「却下だ!」

「採用基準がよくわからないのだが。」

「気を取り直して、次よ!」
 スズナがぴしっと仕切り直す。



 次に着せられたのは、黒のケイビングスーツ。
 ハーネスを装着し、頭には防衝撃ヘルム、腰にはロープと工具が揺れる。

「かわいくないです!」
 アヤメが悲鳴を上げる。

「私の魔道のイメージからどんどん離れていっている気がするぞ。」
 オルフィナが真顔でつぶやく。

「実用的ではあるが。魔法使いというより、もはや、特殊部隊だな。」
 バルナが腕を組む。

「ええ。これは、さすがに気の毒になるわね。」
 スズナが申し訳なさそうに言う。



「じゃあ、最後に――この 『春風の誘惑ピクニックコーデ』 で!」
 スズナが満面の笑みで差し出す。

 桜色のショートブラウスは肩を大胆に見せるオフショルで、
 胸元のリボンがほどけそうな危うい揺れを生む。

 白のフレアミニは光を受けてふわりと舞い、
 脚線を艶やかに強調する。

 淡いピンクのシアーニーソは太ももに妖しい境目をつくり、
 視線を奪う“甘い罠”そのもの。

 花飾りの麦わら帽子が影を落とし、
 可憐さと誘惑が混ざり合う――
 小悪魔じみた春風のピクニック姫が、そこに立っていた。

「……すごいです、オルフィナ様。
 同性の私から見ても……ちょっと、どきっとします……」

「ふむ……これは、なかなか悪くないのでは?」
 オルフィナはポーズをとってみる。

「これは、けしからんな」
「ええ、ジルドの目の色が変わるわね」
「却下だ!!」

 結局、オルフィナには
「服の下に着る鎖帷子くさりかたびら
 が選ばれた。



「じゃあ次はアヤメね!」
 スズナが振り返った瞬間、アヤメは思わず一歩後ずさった。
 おねえさまがた三人の気迫に押されている。

「まずは、森の妖精がモチーフの緑のレンジャー衣装! 
 ふわっと揺れるミニスカートがチャームポイントよ!」

 着替えたアヤメを見た瞬間――

「天使だな」
「これは、ジルドのアヤメ愛が再燃してしまうわね」
「却下だ!!」



 次の衣装は、深いボルドーのジャケットに、
 黒の細身パンツとショートブーツを合わせていた。

 洞窟探索とは思えないほどシックで、
 落ち着いた大人の雰囲気をまとっている。

「うん。かわいい。」
「これもだめ! 却下!!」
「却下だ!!」

「アヤメの服は難しいわね?」

「では、最後に……『春風の誘惑ピクニックコーデ』 で!」
 スズナがにやりと笑う。

「それは、ご勘弁ください!!!」
 アヤメは全力で拒絶した。

 こちらも結局、
「服の下に着る鎖帷子くさりかたびら
 でまとまったのだった。



 更衣室からは、女子たちの大はしゃぎする声が聞こえる。
 
「……よくも、防具選びだけで、あんなにも盛り上がれるものだな」
 俺は呆れ半分でつぶやいた。

「まったくです」
 ジルドが静かにうなずく。
 「エリオット殿は、この鎖帷子くさりかたびらになさるとよいでしょう。」
 
 「では、俺は、あちらで、短めの剣を見てこよう」
 
 男三人の武具選びは――実に静かだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

異世界の貴族に転生できたのに、2歳で父親が殺されました。

克全
ファンタジー
アルファポリスオンリー:ファンタジー世界の仮想戦記です、試し読みとお気に入り登録お願いします。

勇者パーティーに追放された支援術士、実はとんでもない回復能力を持っていた~極めて幅広い回復術を生かしてなんでも屋で成り上がる~

名無し
ファンタジー
 突如、幼馴染の【勇者】から追放処分を言い渡される【支援術士】のグレイス。確かになんでもできるが、中途半端で物足りないという理不尽な理由だった。  自分はパーティーの要として頑張ってきたから納得できないと食い下がるグレイスに対し、【勇者】はその代わりに【治癒術士】と【補助術士】を入れたのでもうお前は一切必要ないと宣言する。  もう一人の幼馴染である【魔術士】の少女を頼むと言い残し、グレイスはパーティーから立ち去ることに。  だが、グレイスの【支援術士】としての腕は【勇者】の想像を遥かに超えるものであり、ありとあらゆるものを回復する能力を秘めていた。  グレイスがその卓越した技術を生かし、【なんでも屋】で生計を立てて評判を高めていく一方、勇者パーティーはグレイスが去った影響で歯車が狂い始め、何をやっても上手くいかなくなる。  人脈を広げていったグレイスの周りにはいつしか賞賛する人々で溢れ、落ちぶれていく【勇者】とは対照的に地位や名声をどんどん高めていくのだった。

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

【土壌改良】で死の荒野がSランク農園に!食べただけでレベルアップする野菜で、世界最強ギルド設立

黒崎隼人
ファンタジー
「え? これ、ただのトマトですよ?」 「いいえ、それは食べただけで魔力が全回復する『神の果実』です!」 ブラック企業で働き詰めだった青年は、異世界の名門貴族の三男・ノアとして転生する。 しかし、授かったスキルは【土壌改良】という地味なもの。 「攻撃魔法も使えない役立たず」と罵られ、魔物すら寄り付かない死の荒野へ追放されてしまう。 だが、彼らは知らなかった。 ノアのスキルは、現代の農業知識と合わせることで、荒れ果てた土地を「Sランク食材」が溢れる楽園に変えるチート能力だったことを! 伝説の魔獣(もふもふ)をキュウリ一本で手懐け、行き倒れた天才エルフを極上スープで救い出し、気づけば荒野には巨大な「農業ギルド」が誕生していた。 これは、本人がただ美味しい野菜を作ってのんびり暮らしたいだけなのに、周囲からは「世界を救う大賢者」と崇められてしまう、無自覚・最強の農業ファンタジー!

勇者パーティーにダンジョンで生贄にされました。これで上位神から押し付けられた、勇者の育成支援から解放される。

克全
ファンタジー
エドゥアルには大嫌いな役目、神与スキル『勇者の育成者』があった。力だけあって知能が低い下級神が、勇者にふさわしくない者に『勇者』スキルを与えてしまったせいで、上級神から与えられてしまったのだ。前世の知識と、それを利用して鍛えた絶大な魔力のあるエドゥアルだったが、神与スキル『勇者の育成者』には逆らえず、嫌々勇者を教育していた。だが、勇者ガブリエルは上級神の想像を絶する愚者だった。事もあろうに、エドゥアルを含む300人もの人間を生贄にして、ダンジョンの階層主を斃そうとした。流石にこのような下劣な行いをしては『勇者』スキルは消滅してしまう。対象となった勇者がいなくなれば『勇者の育成者』スキルも消滅する。自由を手に入れたエドゥアルは好き勝手に生きることにしたのだった。

念願の異世界転生できましたが、滅亡寸前の辺境伯家の長男、魔力なしでした。

克全
ファンタジー
アルファポリスオンリーです。

転生者は力を隠して荷役をしていたが、勇者パーティーに裏切られて生贄にされる。

克全
ファンタジー
第6回カクヨムWeb小説コンテスト中間選考通過作 「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。 2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門日間ランキング51位 2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門週間ランキング52位

転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。

克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります! 辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。

処理中です...