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23喧騒一方、寡黙一方(けんそういっぽう、かもくいっぽう)
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翌日。
俺たちは明日の洞窟攻略に向けて装備を整えるため、
街の武具店を訪れていた。
昨日、飲みすぎたせいか――少し頭が重い。
どうやらエリオットもジルドも同じらしい。
アヤメとスズナは眠そうにあくびを噛み殺していた。
どうやら短剣のレッスンを夜更けまでやっていたらしい。
一方――
バルナとオルフィナはというと、ケロッとしてる。
昨晩は“しつこい男の撃退法”なんかでふたり盛り上がりながら、
エールをグビグビ飲んでいたのだが。
よくあれだけ飲んで平気だな……と心の底から感心する。
◇
今日はクエストがないので、全員が普段着だ。
ジルドは、賢者らしい落ち着いた装い。
落ち着いた雰囲気の、上品で整った服装がよく似合っている。
バルナは戦士らしく、動きやすいかっこいい冬服。
男勝りでありながら、意外とスタイルが良いので妙に似合う。
スズナは清楚。
森に溶けそうな落ち着いた緑系のコートを身にまとい、
静かなオーラを放っている。
エリオットはいつもの司祭らしい服装。
厚手の外套を羽織っても、上品さが消えないのはさすがだ。
オルフィナは……“おしゃれ”。
冬の流行をしっかり押さえた服に、ふわふわのストール。
どこにいても視線を集める。
アヤメは――シンプルなのに可愛い。
いや、むしろシンプルだからこそ可愛い。
毛糸の帽子からのぞく耳が赤くて、なんだか守りたくなる。
ちなみに俺は、本当に“鎧を脱いだだけ”の普段着だ。
◇
武具店の大きな扉をくぐると、鉄と皮の匂いがした。
鍛冶場の熱がほんのり漂い、壁いっぱいに並ぶ短剣、盾、胸当て――
どれも丁寧に手入れされ、光を放っている。
「明日は洞窟攻略だからな。装備の準備を怠るわけにはいかない」
俺は皆を振り返り、そう告げた。
全員の表情が引き締まる。
明日には――
サラマンダー、そして大量の大トカゲとの戦いが待っている。
今日中に、完璧に整えておかねばならない。
◇
広めの更衣室では、女子たちがすでに大盛り上がりしていた。
「まかせて! 明日の洞窟クエスト用の服、私たちが選んであげるわ!」
バルナとスズナが鼻息荒く宣言する。
「まずは、オルフィナからね!」
スズナの号令で、試着タイムが幕を開けた。
◇
最初に着せられたのは、
紫がかったパーカーに森色のトレッキングスカート、
軽い魔導ブーツを合わせた“山ガール仕様”の装備。
「おしゃれです。」
アヤメが目を輝かせる。
「しかし、私の魔道のイメージとは、ちょっと違う気がするぞ。」
オルフィナが真顔でつぶやく。
「とても似合ってはいるのだがな。」
バルナが腕を組む。
「ええ。おもしろみにかけるわね。」
スズナが残念そうに言う。
「却下だ!」
「採用基準がよくわからないのだが。」
「気を取り直して、次よ!」
スズナがぴしっと仕切り直す。
◇
次に着せられたのは、黒のケイビングスーツ。
ハーネスを装着し、頭には防衝撃ヘルム、腰にはロープと工具が揺れる。
「かわいくないです!」
アヤメが悲鳴を上げる。
「私の魔道のイメージからどんどん離れていっている気がするぞ。」
オルフィナが真顔でつぶやく。
「実用的ではあるが。魔法使いというより、もはや、特殊部隊だな。」
バルナが腕を組む。
「ええ。これは、さすがに気の毒になるわね。」
スズナが申し訳なさそうに言う。
◇
「じゃあ、最後に――この 『春風の誘惑ピクニックコーデ』 で!」
スズナが満面の笑みで差し出す。
桜色のショートブラウスは肩を大胆に見せるオフショルで、
胸元のリボンがほどけそうな危うい揺れを生む。
白のフレアミニは光を受けてふわりと舞い、
脚線を艶やかに強調する。
淡いピンクのシアーニーソは太ももに妖しい境目をつくり、
視線を奪う“甘い罠”そのもの。
花飾りの麦わら帽子が影を落とし、
可憐さと誘惑が混ざり合う――
小悪魔じみた春風のピクニック姫が、そこに立っていた。
「……すごいです、オルフィナ様。
同性の私から見ても……ちょっと、どきっとします……」
「ふむ……これは、なかなか悪くないのでは?」
オルフィナはポーズをとってみる。
「これは、けしからんな」
「ええ、ジルドの目の色が変わるわね」
「却下だ!!」
結局、オルフィナには
「服の下に着る鎖帷子」
が選ばれた。
◇
「じゃあ次はアヤメね!」
スズナが振り返った瞬間、アヤメは思わず一歩後ずさった。
おねえさまがた三人の気迫に押されている。
「まずは、森の妖精がモチーフの緑のレンジャー衣装!
ふわっと揺れるミニスカートがチャームポイントよ!」
着替えたアヤメを見た瞬間――
「天使だな」
「これは、ジルドのアヤメ愛が再燃してしまうわね」
「却下だ!!」
◇
次の衣装は、深いボルドーのジャケットに、
黒の細身パンツとショートブーツを合わせていた。
洞窟探索とは思えないほどシックで、
落ち着いた大人の雰囲気をまとっている。
「うん。かわいい。」
「これもだめ! 却下!!」
「却下だ!!」
「アヤメの服は難しいわね?」
「では、最後に……『春風の誘惑ピクニックコーデ』 で!」
スズナがにやりと笑う。
「それは、ご勘弁ください!!!」
アヤメは全力で拒絶した。
こちらも結局、
「服の下に着る鎖帷子」
でまとまったのだった。
◇
更衣室からは、女子たちの大はしゃぎする声が聞こえる。
「……よくも、防具選びだけで、あんなにも盛り上がれるものだな」
俺は呆れ半分でつぶやいた。
「まったくです」
ジルドが静かにうなずく。
「エリオット殿は、この鎖帷子になさるとよいでしょう。」
「では、俺は、あちらで、短めの剣を見てこよう」
男三人の武具選びは――実に静かだった。
俺たちは明日の洞窟攻略に向けて装備を整えるため、
街の武具店を訪れていた。
昨日、飲みすぎたせいか――少し頭が重い。
どうやらエリオットもジルドも同じらしい。
アヤメとスズナは眠そうにあくびを噛み殺していた。
どうやら短剣のレッスンを夜更けまでやっていたらしい。
一方――
バルナとオルフィナはというと、ケロッとしてる。
昨晩は“しつこい男の撃退法”なんかでふたり盛り上がりながら、
エールをグビグビ飲んでいたのだが。
よくあれだけ飲んで平気だな……と心の底から感心する。
◇
今日はクエストがないので、全員が普段着だ。
ジルドは、賢者らしい落ち着いた装い。
落ち着いた雰囲気の、上品で整った服装がよく似合っている。
バルナは戦士らしく、動きやすいかっこいい冬服。
男勝りでありながら、意外とスタイルが良いので妙に似合う。
スズナは清楚。
森に溶けそうな落ち着いた緑系のコートを身にまとい、
静かなオーラを放っている。
エリオットはいつもの司祭らしい服装。
厚手の外套を羽織っても、上品さが消えないのはさすがだ。
オルフィナは……“おしゃれ”。
冬の流行をしっかり押さえた服に、ふわふわのストール。
どこにいても視線を集める。
アヤメは――シンプルなのに可愛い。
いや、むしろシンプルだからこそ可愛い。
毛糸の帽子からのぞく耳が赤くて、なんだか守りたくなる。
ちなみに俺は、本当に“鎧を脱いだだけ”の普段着だ。
◇
武具店の大きな扉をくぐると、鉄と皮の匂いがした。
鍛冶場の熱がほんのり漂い、壁いっぱいに並ぶ短剣、盾、胸当て――
どれも丁寧に手入れされ、光を放っている。
「明日は洞窟攻略だからな。装備の準備を怠るわけにはいかない」
俺は皆を振り返り、そう告げた。
全員の表情が引き締まる。
明日には――
サラマンダー、そして大量の大トカゲとの戦いが待っている。
今日中に、完璧に整えておかねばならない。
◇
広めの更衣室では、女子たちがすでに大盛り上がりしていた。
「まかせて! 明日の洞窟クエスト用の服、私たちが選んであげるわ!」
バルナとスズナが鼻息荒く宣言する。
「まずは、オルフィナからね!」
スズナの号令で、試着タイムが幕を開けた。
◇
最初に着せられたのは、
紫がかったパーカーに森色のトレッキングスカート、
軽い魔導ブーツを合わせた“山ガール仕様”の装備。
「おしゃれです。」
アヤメが目を輝かせる。
「しかし、私の魔道のイメージとは、ちょっと違う気がするぞ。」
オルフィナが真顔でつぶやく。
「とても似合ってはいるのだがな。」
バルナが腕を組む。
「ええ。おもしろみにかけるわね。」
スズナが残念そうに言う。
「却下だ!」
「採用基準がよくわからないのだが。」
「気を取り直して、次よ!」
スズナがぴしっと仕切り直す。
◇
次に着せられたのは、黒のケイビングスーツ。
ハーネスを装着し、頭には防衝撃ヘルム、腰にはロープと工具が揺れる。
「かわいくないです!」
アヤメが悲鳴を上げる。
「私の魔道のイメージからどんどん離れていっている気がするぞ。」
オルフィナが真顔でつぶやく。
「実用的ではあるが。魔法使いというより、もはや、特殊部隊だな。」
バルナが腕を組む。
「ええ。これは、さすがに気の毒になるわね。」
スズナが申し訳なさそうに言う。
◇
「じゃあ、最後に――この 『春風の誘惑ピクニックコーデ』 で!」
スズナが満面の笑みで差し出す。
桜色のショートブラウスは肩を大胆に見せるオフショルで、
胸元のリボンがほどけそうな危うい揺れを生む。
白のフレアミニは光を受けてふわりと舞い、
脚線を艶やかに強調する。
淡いピンクのシアーニーソは太ももに妖しい境目をつくり、
視線を奪う“甘い罠”そのもの。
花飾りの麦わら帽子が影を落とし、
可憐さと誘惑が混ざり合う――
小悪魔じみた春風のピクニック姫が、そこに立っていた。
「……すごいです、オルフィナ様。
同性の私から見ても……ちょっと、どきっとします……」
「ふむ……これは、なかなか悪くないのでは?」
オルフィナはポーズをとってみる。
「これは、けしからんな」
「ええ、ジルドの目の色が変わるわね」
「却下だ!!」
結局、オルフィナには
「服の下に着る鎖帷子」
が選ばれた。
◇
「じゃあ次はアヤメね!」
スズナが振り返った瞬間、アヤメは思わず一歩後ずさった。
おねえさまがた三人の気迫に押されている。
「まずは、森の妖精がモチーフの緑のレンジャー衣装!
ふわっと揺れるミニスカートがチャームポイントよ!」
着替えたアヤメを見た瞬間――
「天使だな」
「これは、ジルドのアヤメ愛が再燃してしまうわね」
「却下だ!!」
◇
次の衣装は、深いボルドーのジャケットに、
黒の細身パンツとショートブーツを合わせていた。
洞窟探索とは思えないほどシックで、
落ち着いた大人の雰囲気をまとっている。
「うん。かわいい。」
「これもだめ! 却下!!」
「却下だ!!」
「アヤメの服は難しいわね?」
「では、最後に……『春風の誘惑ピクニックコーデ』 で!」
スズナがにやりと笑う。
「それは、ご勘弁ください!!!」
アヤメは全力で拒絶した。
こちらも結局、
「服の下に着る鎖帷子」
でまとまったのだった。
◇
更衣室からは、女子たちの大はしゃぎする声が聞こえる。
「……よくも、防具選びだけで、あんなにも盛り上がれるものだな」
俺は呆れ半分でつぶやいた。
「まったくです」
ジルドが静かにうなずく。
「エリオット殿は、この鎖帷子になさるとよいでしょう。」
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男三人の武具選びは――実に静かだった。
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