26 / 61
第26章 SE、再会を果たす。
しおりを挟む
ジョーの叫びを聞きつけ、
外にいた村人たちが一斉に駆け込んでくる。
「どうした! 何があった!」
「おい、ジョー!? お前ら、ジョーになにをした!!」
「――あれ? ジョー、起きてる!? 本当に起きてるぞ!!」
狭い部屋の中は、たちまち混乱の渦と化した。
床板が軋み、壁に掛けられたランプが揺れる。
外から吹き込む風が、干し草を舞い上げる。
ルナが村人に突き飛ばされてよろめく。
「ちょっ、落ち着けって!」
レオがすぐに間に入り、両手を広げて制止する。
「待て! 俺たちは何もしてねぇ! むしろ助けたんだ!」
その横で、リオンが慌てて杖を構える。
「くそ、治癒が先だ!」
淡い光がジョーの身体を包む。
回復魔法の粒子が、夏の夕陽の中でほのかにきらめいた。
混乱の渦の中――
ジョーは、ゆっくりと上体を起こした。
荒い息を整えながら、
俺の顔を見つめる。
しばらくの沈黙。
やがて、ジョーの頬を一筋の涙が伝った。
その瞳が、確かに“俺”を見ている。
何も言わずに、ただ俺の手を握った。
震える手だった。
俺も、言葉にならなかった。
ただ、その手を強く握り返す。
再会の喜びも、安堵も、
すべての感情が涙に溶けていく。
二つの世界を越えて、
ようやく、再び出会えたのだ。
その日、ジョーが意識を取り戻したことは、
あっという間に村中に広まった。
夕方にはもう「ジョー全快祝いの宴」が開かれていた。
樽を抱えた村人たちが次々と集まり、
焚き火のまわりには、笑い声と乾杯の音が鳴り止まなかった。
「ジョーの復活に乾杯だ!」と誰かが叫ぶたびに、
女房達が眉を吊り上げて怒鳴り散らしていた。
「ちょっと! 病み上がりの人にお酒飲ませないで!」
その剣幕に、
屈強な男たちが一斉に背筋を伸ばしたのは言うまでもない。
もっとも、ジョーの体調が万全であろうことは、
俺にはわかっていたが。
焚き火の炎が静かに揺れていた。
赤い火の粉が夜風に舞い、星の瞬きと混ざり合う。
ジョーは丸太に腰を下ろし、
久しぶりのエールを手にしていた。
「……うまいな。」
彼は笑いながら、泡を指で拭い、もう一口飲んだ。
その表情には、確かな“生”の色が戻っていた。
やがてジョーは、ゆっくりと語り始めた。
あの日、突然、俺が目の前から消えたこと。
森の中で、どれだけ探しても見つからなかったこと。
夜になっても戻らず、朝が来てもその気配がなかったこと。
どうしても埋まらない“空白”に、何度も心が折れそうになったこと。
そして――
俺と再び出会えた瞬間、
言葉より先に、直感で「迎えに来てくれた」とわかったという。
「……ありがとうな、マイト。」
ジョーは小さくつぶやいた。
それだけで、焚き火の音が少し遠くに聞こえた。
宴が続く中、
村人たちは、興奮気味にジョーを取り囲み、
この二年間に何があったのかを口々に伝えた。
ジョーが倒れたあと、村人たちは交代で看病を続けたこと。
毎朝、火を絶やさぬように小屋を温め、
毎晩、彼の手を握って祈りを捧げたこと。
二度の冬を越えても、誰ひとり諦めなかったこと。
ジョーは、その話を聞いて目を見開いた。
「……二年も、俺は……眠ってたのか。」
その声は震えていた。
俺は、静かに頷いた。
「詳しい理屈は、今は話せない。
でも……俺が“向こうの世界”から戻ったあと、
お前を呼び戻す方法を見つけたんだ。」
ジョーはしばらく黙っていたが、
やがてゆっくりと笑い、頭を下げた。
「そうか。……ありがとうな、マイト。」
何度も、何度も、礼を言った。
夜が更ける。
焚き火の火が小さくなっていく。
夜の風が吹き抜け、
灰が舞い、静寂が戻った。
俺は、火の残り香を見つめながら思った。
俺の仮説は、正しかった――。
夢と現実の層は連動している。
強い刺激が、眠る意識を階層の上へ押し戻す。
それを、いま、俺は自分の手で証明したのだ。
だが――
それは同時に、ひとつの問いを突きつける。
俺は、これから、この世界にどう向き合うべきなのか。
翌朝。
俺は、ジョーとの名残を惜しみつつ、村を後にした。
「なあに、同じ世界で生きてるんだ。
また、いつでも会えるさ。」
そう呟きながら、振り返ると、
朝の光の中で、ジョーが小さく手を振っていた。
――ジョーの森で過ごした三日間を、
俺は、生涯、忘れることはないだろう。
外にいた村人たちが一斉に駆け込んでくる。
「どうした! 何があった!」
「おい、ジョー!? お前ら、ジョーになにをした!!」
「――あれ? ジョー、起きてる!? 本当に起きてるぞ!!」
狭い部屋の中は、たちまち混乱の渦と化した。
床板が軋み、壁に掛けられたランプが揺れる。
外から吹き込む風が、干し草を舞い上げる。
ルナが村人に突き飛ばされてよろめく。
「ちょっ、落ち着けって!」
レオがすぐに間に入り、両手を広げて制止する。
「待て! 俺たちは何もしてねぇ! むしろ助けたんだ!」
その横で、リオンが慌てて杖を構える。
「くそ、治癒が先だ!」
淡い光がジョーの身体を包む。
回復魔法の粒子が、夏の夕陽の中でほのかにきらめいた。
混乱の渦の中――
ジョーは、ゆっくりと上体を起こした。
荒い息を整えながら、
俺の顔を見つめる。
しばらくの沈黙。
やがて、ジョーの頬を一筋の涙が伝った。
その瞳が、確かに“俺”を見ている。
何も言わずに、ただ俺の手を握った。
震える手だった。
俺も、言葉にならなかった。
ただ、その手を強く握り返す。
再会の喜びも、安堵も、
すべての感情が涙に溶けていく。
二つの世界を越えて、
ようやく、再び出会えたのだ。
その日、ジョーが意識を取り戻したことは、
あっという間に村中に広まった。
夕方にはもう「ジョー全快祝いの宴」が開かれていた。
樽を抱えた村人たちが次々と集まり、
焚き火のまわりには、笑い声と乾杯の音が鳴り止まなかった。
「ジョーの復活に乾杯だ!」と誰かが叫ぶたびに、
女房達が眉を吊り上げて怒鳴り散らしていた。
「ちょっと! 病み上がりの人にお酒飲ませないで!」
その剣幕に、
屈強な男たちが一斉に背筋を伸ばしたのは言うまでもない。
もっとも、ジョーの体調が万全であろうことは、
俺にはわかっていたが。
焚き火の炎が静かに揺れていた。
赤い火の粉が夜風に舞い、星の瞬きと混ざり合う。
ジョーは丸太に腰を下ろし、
久しぶりのエールを手にしていた。
「……うまいな。」
彼は笑いながら、泡を指で拭い、もう一口飲んだ。
その表情には、確かな“生”の色が戻っていた。
やがてジョーは、ゆっくりと語り始めた。
あの日、突然、俺が目の前から消えたこと。
森の中で、どれだけ探しても見つからなかったこと。
夜になっても戻らず、朝が来てもその気配がなかったこと。
どうしても埋まらない“空白”に、何度も心が折れそうになったこと。
そして――
俺と再び出会えた瞬間、
言葉より先に、直感で「迎えに来てくれた」とわかったという。
「……ありがとうな、マイト。」
ジョーは小さくつぶやいた。
それだけで、焚き火の音が少し遠くに聞こえた。
宴が続く中、
村人たちは、興奮気味にジョーを取り囲み、
この二年間に何があったのかを口々に伝えた。
ジョーが倒れたあと、村人たちは交代で看病を続けたこと。
毎朝、火を絶やさぬように小屋を温め、
毎晩、彼の手を握って祈りを捧げたこと。
二度の冬を越えても、誰ひとり諦めなかったこと。
ジョーは、その話を聞いて目を見開いた。
「……二年も、俺は……眠ってたのか。」
その声は震えていた。
俺は、静かに頷いた。
「詳しい理屈は、今は話せない。
でも……俺が“向こうの世界”から戻ったあと、
お前を呼び戻す方法を見つけたんだ。」
ジョーはしばらく黙っていたが、
やがてゆっくりと笑い、頭を下げた。
「そうか。……ありがとうな、マイト。」
何度も、何度も、礼を言った。
夜が更ける。
焚き火の火が小さくなっていく。
夜の風が吹き抜け、
灰が舞い、静寂が戻った。
俺は、火の残り香を見つめながら思った。
俺の仮説は、正しかった――。
夢と現実の層は連動している。
強い刺激が、眠る意識を階層の上へ押し戻す。
それを、いま、俺は自分の手で証明したのだ。
だが――
それは同時に、ひとつの問いを突きつける。
俺は、これから、この世界にどう向き合うべきなのか。
翌朝。
俺は、ジョーとの名残を惜しみつつ、村を後にした。
「なあに、同じ世界で生きてるんだ。
また、いつでも会えるさ。」
そう呟きながら、振り返ると、
朝の光の中で、ジョーが小さく手を振っていた。
――ジョーの森で過ごした三日間を、
俺は、生涯、忘れることはないだろう。
33
あなたにおすすめの小説
【完結】発明家アレンの異世界工房 ~元・商品開発部員の知識で村おこし始めました~
シマセイ
ファンタジー
過労死した元商品開発部員の田中浩介は、女神の計らいで異世界の少年アレンに転生。
前世の知識と物作りの才能を活かし、村の道具を次々と改良。
その発明は村の生活を豊かにし、アレンは周囲の信頼と期待を集め始める。
異世界転生したおっさんが普通に生きる
カジキカジキ
ファンタジー
第18回 ファンタジー小説大賞 読者投票93位
応援頂きありがとうございました!
異世界転生したおっさんが唯一のチートだけで生き抜く世界
主人公のゴウは異世界転生した元冒険者
引退して狩をして過ごしていたが、ある日、ギルドで雇った子どもに出会い思い出す。
知識チートで町の食と環境を改善します!! ユルくのんびり過ごしたいのに、何故にこんなに忙しい!?
異世界召喚された俺の料理が美味すぎて魔王軍が侵略やめた件
さかーん
ファンタジー
魔王様、世界征服より晩ご飯ですよ!
食品メーカー勤務の平凡な社会人・橘陽人(たちばな はると)は、ある日突然異世界に召喚されてしまった。剣も魔法もない陽人が頼れるのは唯一の特技――料理の腕だけ。
侵略の真っ最中だった魔王ゼファーとその部下たちに、試しに料理を振る舞ったところ、まさかの大絶賛。
「なにこれ美味い!」「もう戦争どころじゃない!」
気づけば魔王軍は侵略作戦を完全放棄。陽人の料理に夢中になり、次々と餌付けされてしまった。
いつの間にか『魔王専属料理人』として雇われてしまった陽人は、料理の腕一本で人間世界と魔族の架け橋となってしまう――。
料理と異世界が織りなす、ほのぼのグルメ・ファンタジー開幕!
家ごと異世界転移〜異世界来ちゃったけど快適に暮らします〜
奥野細道
ファンタジー
都内の2LDKマンションで暮らす30代独身の会社員、田中健太はある夜突然家ごと広大な森と異世界の空が広がるファンタジー世界へと転移してしまう。
パニックに陥りながらも、彼は自身の平凡なマンションが異世界においてとんでもないチート能力を発揮することを発見する。冷蔵庫は地球上のあらゆる食材を無限に生成し、最高の鮮度を保つ「無限の食料庫」となり、リビングのテレビは異世界の情報をリアルタイムで受信・翻訳する「異世界情報端末」として機能。さらに、お風呂の湯はどんな傷も癒す「万能治癒の湯」となり、ベランダは瞬時に植物を成長させる「魔力活性化菜園」に。
健太はこれらの能力を駆使して、食料や情報を確保し、異世界の人たちを助けながら安全な拠点を築いていく。
オレの異世界に対する常識は、異世界の非常識らしい
広原琉璃
ファンタジー
「あの……ここって、異世界ですか?」
「え?」
「は?」
「いせかい……?」
異世界に行ったら、帰るまでが異世界転移です。
ある日、突然異世界へ転移させられてしまった、嵯峨崎 博人(さがさき ひろと)。
そこで出会ったのは、神でも王様でも魔王でもなく、一般通過な冒険者ご一行!?
異世界ファンタジーの "あるある" が通じない冒険譚。
時に笑って、時に喧嘩して、時に強敵(魔族)と戦いながら、仲間たちとの友情と成長の物語。
目的地は、すべての情報が集う場所『聖王都 エルフェル・ブルグ』
半年後までに主人公・ヒロトは、元の世界に戻る事が出来るのか。
そして、『顔の無い魔族』に狙われた彼らの運命は。
伝えたいのは、まだ出会わぬ誰かで、未来の自分。
信頼とは何か、言葉を交わすとは何か、これはそんなお話。
少しづつ積み重ねながら成長していく彼らの物語を、どうぞ最後までお楽しみください。
====
※お気に入り、感想がありましたら励みになります
※近況ボードに「ヒロトとミニドラゴン」編を連載中です。
※ラスボスは最終的にざまぁ状態になります
※恋愛(馴れ初めレベル)は、外伝5となります
異世界ほのぼの牧場生活〜女神の加護でスローライフ始めました〜』
チャチャ
ファンタジー
ブラック企業で心も体もすり減らしていた青年・悠翔(はると)。
日々の疲れを癒してくれていたのは、幼い頃から大好きだったゲーム『ほのぼの牧場ライフ』だけだった。
両親を早くに亡くし、年の離れた妹・ひなのを守りながら、限界寸前の生活を続けていたある日――
「目を覚ますと、そこは……ゲームの中そっくりの世界だった!?」
女神様いわく、「疲れ果てたあなたに、癒しの世界を贈ります」とのこと。
目の前には、自分がかつて何百時間も遊んだ“あの牧場”が広がっていた。
作物を育て、動物たちと暮らし、時には村人の悩みを解決しながら、のんびりと過ごす毎日。
けれどもこの世界には、ゲームにはなかった“出会い”があった。
――獣人の少女、恥ずかしがり屋の魔法使い、村の頼れるお姉さん。
誰かと心を通わせるたびに、はるとの日常は少しずつ色づいていく。
そして、残された妹・ひなのにも、ある“転機”が訪れようとしていた……。
ほっこり、のんびり、時々ドキドキ。
癒しと恋と成長の、異世界牧場スローライフ、始まります!
セーブポイント転生 ~寿命が無い石なので千年修行したらレベル上限突破してしまった~
空色蜻蛉
ファンタジー
枢は目覚めるとクリスタルの中で魂だけの状態になっていた。どうやらダンジョンのセーブポイントに転生してしまったらしい。身動きできない状態に悲嘆に暮れた枢だが、やがて開き直ってレベルアップ作業に明け暮れることにした。百年経ち、二百年経ち……やがて国の礎である「聖なるクリスタル」として崇められるまでになる。
もう元の世界に戻れないと腹をくくって自分の国を見守る枢だが、千年経った時、衝撃のどんでん返しが待ち受けていて……。
【お知らせ】6/22 完結しました!
【完結】そして異世界の迷い子は、浄化の聖女となりまして。
和島逆
ファンタジー
七年前、私は異世界に転移した。
黒髪黒眼が忌避されるという、日本人にはなんとも生きにくいこの世界。
私の願いはただひとつ。目立たず、騒がず、ひっそり平和に暮らすこと!
薬師助手として過ごした静かな日々は、ある日突然終わりを告げてしまう。
そうして私は自分の居場所を探すため、ちょっぴり残念なイケメンと旅に出る。
目指すは平和で平凡なハッピーライフ!
連れのイケメンをしばいたり、トラブルに巻き込まれたりと忙しい毎日だけれど。
この異世界で笑って生きるため、今日も私は奮闘します。
*他サイトでの初投稿作品を改稿したものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる