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第2話

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「私のこと罵って欲しいの。」


そう言ってからほんの数秒が経ったあと返信が返ってきた。

「いいよ、でも初めてそんなこと頼まれたから下手かもw」

夜だったから彼も断らなかったのかもしれない。多分朝や昼なら断られていただろう。理由も聞かずに気持ちを込めて彼は私の事を罵ってくれた。
気持ちを込めて罵るなんて変な言葉だが人のことを酷く言うなんて慣れてないだろうな、という感じが滲み出ていて彼の優しさを感じると共になんだか申し訳なくなった。後々考えると本当に申し訳無いことをした。しかしその時の私はそこまで頭が回らなかったので更に追加の要求をした。

「貴方の声で罵ってほしい、良いなら言って欲しいセリフ送るから良いって言って欲しい。」

どうしても人肌恋しかった。そう言い訳をすれば許されるだろうか。いやいくら弁明しても有罪だろう。既読がつく、入力中……と表示される画面。

「良いよ、セリフ送って。」

回らない頭でも100%断られるだろうと思っていたのに。帰ってきた返事は良いよの3文字。嬉しいという感情に脳が支配される。しかも0時を回っていた。冷静に考える頭なんて無い。

「死ね、クソゴミドM女って言って欲しい。」

昼間なら絶対に言わない、いや夜でも言わない。なんとも言えない甘美で重い雰囲気のせいにしておく。また既読がつく。少し時間が経ってボイスメッセージが送られる。その後すぐ追加のメッセージ。

「誰にも言わないでね?」

言うわけない、絶対に。そう送ったあと声を聞く。直接話したことがないため彼の声をはっきり聞くのはこれが初めてだと言っても過言では無い。

高めの声。高めといってもキンキンする感じの耳をつんざく声ではなくバニラとハチミツを混ぜ合わせたような甘さのある耽美な声。

「どんな感じで言えばいい?」
と言われたとき、

「蔑むような感じ……かな。」
とリクエストした感じも短いボイスメッセージの中に含まれていてそれが可愛らしい声と組み合わさって心の何処かが満たされるような気がした。

「ごめん、こんなこと頼んでしまって」
お礼の前に謝ってしまう。私の悪い癖だ。その後お礼の言葉を付け足す。

「どういたしましてw役にたてたなら良かった、また何かあれば言ってよ。もう寝るねおやすみなさい。」

「おやすみなさい。」

そう返し録音した声を何回も反芻して聞く。普通の精神だと死ねなんて言われたら悲しくなるが精神が普通じゃない時に聞くと何かが満たされる気がした。被虐欲(そんな言葉があるか知らないが)だろうか。何度もイヤホンを付けて聞いているうちに体の下腹部、子宮あたりが疼く。気持ちよくなるのときゅっとなるのが繰り返される。

理性がそれ以上先に進むのを抑えようとするが深夜テンションは偉大だ。少しの抑制心ではもう止まれない。

衣服の上から子宮を少し力を入れて押す。何度か押すと脳が蕩けてくるような快感が襲ってくる。まだ何も触っていないのに愛液が溢れだしてくる。指がぬるぬるし出す。包皮を剥いてクリトリスに触れる。触れただけで絶頂しそうにイキそうになるがギリギリのところで寸止めする。ポルチオとクリトリスを同時に刺激して痺れるような快感を得る。好きな人に目の前で自慰を強制されていて、それで罵倒されていると考えるとこの上無い気持ちよさだ。中に指を入れたり電マを敏感な部分にあてたりして更に刺激を加える。一番気持ちいいところがわかってきたところで寸止めを辞める。頭がふわっと白くなって体全体に電流が走ったような衝撃。
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