38 / 128
第38話 大声の主
しおりを挟む「あ、あの、今、大丈夫ですか?」
「えっ!? な、何よ……まさか、私に文句でも言いに来たつもり!?」
エリザは俺を一目見るなり、動揺し身構える。
そこには以前の面影は全く見られず、あの震える程の恐怖心にも襲われる気配は無い。
(今なら普通に会話が出来そうだ……よし、聞いてみるか!)
思い切って、俺の髪色について聞いてみようと決心する。
「い、いえ、そうではなく……あの、エリザさんは俺の髪色について何か知りませんか?」
「!? なっ、何を急に!? あ、あなたの髪色の事なんて何も知らないわ!?」
俺の問い掛けにエリザは、先程よりも激しく動揺し焦り出す。
(やっぱり何か知ってる……でも、何故隠そうとする必要が……?)
幾ら考えても埒が明かず、やはりエリザから直接聞くしかないと判断。
どうしても知りたい俺は、声を上げてエリザに問い質す。
「エリザさん、お願いします! 俺はどうしても知りたいんです! この黒髪が俺自身と、どんな関係があるのかを!」
「そっ、そんな事を言われても、私には判断しかねるわ!? ……それに、知ったところでどうしようも無い事なのよ?」
「それでも俺はーー」
「そこまでだ!」
『!?』
問い質された事で返って冷静になるエリザ。
それでも食い下がろうと俺は言葉を発したが、その言葉は何者かの大声によって遮られてしまう。
そして突然の大声に俺とエリザは一瞬驚き、その後すぐに大声の主の方へ同時に振り向いた。
「その件については俺様が超教えてやる。だから超黙って付いて来い……勿論、エリザもな!」
「えっ!? そんな……はい……」
エリザは俯き落ち込みながら大声の主の元へ向かい、俺も考え事をしながらエリザの後を付いて行く。
(あの人、相変わらず偉そうだな……)
偉そうに俺達を連れて行こうとする人物は、先程の大声の主でもある、この冒険者ギルドのギルドマスター「シャカ」であった。
名前は穏やかそうな感じではあるが、当人自体は全くの真逆で荒々しく「超怪力」を持つ人物なのだ。
「確か、ギルマスの固有スキルも……」
「あん? なんか言ったか?」
「!? い、いえ、何も……」
(うぅ、この人も怖いんだよなぁ……)
「そうか……それより、なんでそんなにビクついてんだ?」
「べ、別にビクついてなんて……」
(それはあんたが怖いからだよ!)
「ふんっ、まぁいい、もうすぐ俺様の部屋に着くからな。もし通り過ぎでもしたら超ブッ飛ばす!」
「は、はい……」
(だから怖いって!)
確かにシャカは怖いがエリザの時とは違い、悪寒や身体の震えは一切無く、ただ絡まれているだけの様な感覚で特に嫌ではない。
それはきっと俺を見下し蔑む仕草や、嘲笑い貶す様子がシャカからは見受けられないからだろう。
「ほらよ、ここが俺様の部屋だ。Fランクが入るなんざ、前代未聞の事なんだならな? 超ありがたく思えよ?」
(この人、本当に偉そうだなぁ……)
そう思いながらシャカの部屋へ、きちんと最後に入る俺であった……
0
あなたにおすすめの小説
S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります
内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品]
冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた!
物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。
職人ギルドから追放された美少女ソフィア。
逃亡中の魔法使いノエル。
騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。
彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。
カクヨムにて完結済み。
( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )
最凶と呼ばれる音声使いに転生したけど、戦いとか面倒だから厨房馬車(キッチンカー)で生計をたてます
わたなべ ゆたか
ファンタジー
高校一年の音無厚使は、夏休みに叔父の手伝いでキッチンカーのバイトをしていた。バイトで隠岐へと渡る途中、同級生の板林精香と出会う。隠岐まで同じ船に乗り合わせた二人だったが、突然に船が沈没し、暗い海の底へと沈んでしまう。
一七年後。異世界への転生を果たした厚使は、クラネス・カーターという名の青年として生きていた。《音声使い》の《力》を得ていたが、危険な仕事から遠ざかるように、ラオンという国で隊商を率いていた。自身も厨房馬車(キッチンカー)で屋台染みた商売をしていたが、とある村でアリオナという少女と出会う。クラネスは家族から蔑まれていたアリオナが、妙に気になってしまい――。異世界転生チート物、ボーイミーツガール風味でお届けします。よろしくお願い致します!
大賞が終わるまでは、後書きなしでアップします。
スライムすら倒せない底辺冒険者の俺、レベルアップしてハーレムを築く(予定)〜ユニークスキル[レベルアップ]を手に入れた俺は最弱魔法で無双する
カツラノエース
ファンタジー
ろくでもない人生を送っていた俺、海乃 哲也は、
23歳にして交通事故で死に、異世界転生をする。
急に異世界に飛ばされた俺、もちろん金は無い。何とか超初級クエストで金を集め武器を買ったが、俺に戦いの才能は無かったらしく、スライムすら倒せずに返り討ちにあってしまう。
完全に戦うということを諦めた俺は危険の無い薬草集めで、何とか金を稼ぎ、ひもじい思いをしながらも生き繋いでいた。
そんな日々を過ごしていると、突然ユニークスキル[レベルアップ]とやらを獲得する。
最初はこの胡散臭過ぎるユニークスキルを疑ったが、薬草集めでレベルが2に上がった俺は、好奇心に負け、ダメ元で再びスライムと戦う。
すると、前までは歯が立たなかったスライムをすんなり倒せてしまう。
どうやら本当にレベルアップしている模様。
「ちょっと待てよ?これなら最強になれるんじゃね?」
最弱魔法しか使う事の出来ない底辺冒険者である俺が、レベルアップで高みを目指す物語。
他サイトにも掲載しています。
クラス転移して授かった外れスキルの『無能』が理由で召喚国から奈落ダンジョンへ追放されたが、実は無能は最強のチートスキルでした
コレゼン
ファンタジー
小日向 悠(コヒナタ ユウ)は、クラスメイトと一緒に異世界召喚に巻き込まれる。
クラスメイトの幾人かは勇者に剣聖、賢者に聖女というレアスキルを授かるが一方、ユウが授かったのはなんと外れスキルの無能だった。
召喚国の責任者の女性は、役立たずで戦力外のユウを奈落というダンジョンへゴミとして廃棄処分すると告げる。
理不尽に奈落へと追放したクラスメイトと召喚者たちに対して、ユウは復讐を誓う。
ユウは奈落で無能というスキルが実は『すべてを無にする』、最強のチートスキルだということを知り、奈落の規格外の魔物たちを無能によって倒し、規格外の強さを身につけていく。
これは、理不尽に追放された青年が最強のチートスキルを手に入れて、復讐を果たし、世界と己を救う物語である。
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
最上級のパーティで最底辺の扱いを受けていたDランク錬金術師は新パーティで成り上がるようです(完)
みかん畑
ファンタジー
最上級のパーティで『荷物持ち』と嘲笑されていた僕は、パーティからクビを宣告されて抜けることにした。
在籍中は僕が色々肩代わりしてたけど、僕を荷物持ち扱いするくらい優秀な仲間たちなので、抜けても問題はないと思ってます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる