離婚と記憶のお話し

erieri

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離婚と記憶のお話し

『ヨウコソ、キオクノセカイへ。』
午前三時、寝ているはずの私の脳が喋った。
まるでワレワレハ宇宙人だ、のような片言で。
事実、その後身に覚えはないけれども、確かに私の記憶だと悟夢を何度も見た。そういえば、そんな事もあったな、とか、全くの嘘でも無い記憶が、それを機に徐々にエスカレートして行く。
昔から大事な事ほど忘れる癖があって、それこそ記憶喪失かと言うくらい綺麗さっぱり忘れるのだ。悪い記憶は心が傷つかないように、フィルターが自動的に掛かるのだけれど、私の場合、恥ずかしいと感じた時もそれが発動するみたい。からくりはわからない。
とにかく寝ているときですら記憶の破片がつき刺さる。日中はずっとその記憶に出てくる彼の事が気になって仕方がない。
彼は私の初めての人で、男としてのプライドが高く、そこが男らしくて胸キュンしていたのだけれど、私よりも20歳上で、大人だった。
幼い私の思考ではついていくのが誠意一杯だった。あとからの記憶で思い出したのが、彼は私と結婚を前提にお付き合いをしていたつもりだったらしい。だけど幼い私は信じ切る事が出来なかった。それは大学生の時の記憶だった。
好きすぎて、大事すぎて、手も出せないくらい愛してくれていた。愛している、のひとごとを私に伝えていたつもりでいたらしい。心の中で呪文のように唱えているうちに、口に出すのを忘れていたのだろう。恋は盲目になると言う、まさにそれだったと思う。
記憶は彼がいかに私を大切に思っていたか、どれだけ愛しくて、恋しくて、それらが私を包む。それは他の男性と結婚をする前の記憶。

違う男性と結婚し、月日が流れ、子供達も日に日に成長し、私が40歳手前の時にそれらの記憶が総まとめに天から降ってきたかのように、私の脳が記憶という武器で私の心を抉る。同時に嵐の揺さぶりで心が乱れる。既婚の身である私は浮気をしたいと考えた事もなく、ただ日々を忙しく過ごしていた。その中で、記憶が暴走し始めた。それが現在の私。
離婚した。
精神をかなり削られ、えげつない程現状は最悪だ。
はっきり言って生き地獄だね。
内はボロボロで、外は冷たい風が吹く。これぞ離婚。
女性アラフォーの最終就職は厳しい上に、家借りるのも一苦労。何より子供の親権を元夫に譲ったのが、世間では冷たい母親として後ろ指刺される。私にも問題があるから離婚に至るので、弁解の余地もない。が憶測はやめてほしいものだ。子供達を預けたのは、理由はちゃんとある。
元々統合失調症という心の病を患っており、人間付き合いが苦手で、コミュニケーションの取り方が下手で、仕事が長続きしないのだ。自分の生活すら危ういため、子供たちの環境も変えたくなかったからだ。(他にも理由はあるが、ここでは省略します。)
色々と複雑な心境で、毎日毎晩不安と恐怖感に襲われている。
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