Short stories

美希みなみ

文字の大きさ
5 / 13
咲き誇る花のように恋したい 光輝×麻衣

第五話

それからのわたしの行動は早かったと思う。
すぐに不動産屋に行き、職場から近いワンルームのマンションを契約した。


「あのね、私一人暮らししようと思うの」
めずらしく家族4人そろった夕ご飯の席で私は言葉を発した。
なごやかに最近の話題などをしていた、私以外の3人は急に言い出した私に、驚いた表情を見せた。

「麻衣?急にどうしたの?」
母の言葉に父も慌てて言葉を重ねた。

「一人暮らしをしたい理由はなんだ?」
まさか、結衣とこうちゃんを見たくないなど、そんな事を言えるわけもなく、私は曖昧に言葉を濁す。

「だって、もう成人だし、一人でいろいろやってみたいなと思っただけ」
ご飯を口に運びながら、視線を外した私に結衣は私の腕を取って。

「お姉ちゃんどうしてよ?お姉ちゃんいなくなったら私寂しいじゃない」

「服を借りれないからでしょ?」
呆れたように言った私に、結衣は「それだけじゃないよ」と言いながら、まだブツブツと言っていたが、私は聞く耳を持たなかった。

「もう決めたことだから」
静かに言った私に、これまで長女としていい子でいた私がこんなことを言い出すのが、意外だったのか、両親は困惑した表情を隠せないようだった。

「それで?場所はどの辺に?」
お母さんは小さくため息をつくと、箸をおいて私を見た。

「職場の近くのS駅」
その言葉にお父さんが私を見た。

「そんなに遠くないんだから、急いで家から出なくてもと思うけどな。でも麻衣には麻衣の考えがあるんだろ?」
お父さんの言葉に、心配をかけてしまう事に申し訳なさが募る。
でも、もう私も限界だった。

「ごめんなさい」
小さく呟くように謝った私に、沈黙が広がる。

「わかった。好きにしてみなさい。でも困ったらすぐに戻って来るんだぞ」

「そうよ、うちにもきちんと帰って来るのよ」
両親の言葉に、私は「ありがとう」と頷いた。


「お姉ちゃん、これはこっちの箱?」
結衣は明日、引っ越す私の荷物を段ボールに詰める手伝いをしながら、私に服を見せた。

「うん、そっちでお願い」
そう答えて、私も詰め作業に没頭する。

「ねえ、やっぱり光輝に手伝ってもらえば?」
結衣の光輝と呼ぶ言葉にすら、ズキンと心が痛んで返事が少し遅れた。

「私なんかの事で迷惑かけられないでしょ?」
何とか平静を装って言った私に、結衣は部屋を見渡した。

「でも、これだけの荷物運ぶの大変じゃない」

「そのために引っ越し屋さんがいるのよ」
私の返事にも納得がいかないようで、結衣はスマホを手に取った。

「もしもし」

うそ?本当に電話したの?

そう思って結衣を見た時には、もう通話中のようですでに遅かった。

感想 4

あなたにおすすめの小説

最近彼氏の様子がおかしい!私を溺愛し大切にしてくれる幼馴染の彼氏が急に冷たくなった衝撃の理由。

佐藤 美奈
恋愛
ソフィア・フランチェスカ男爵令嬢はロナウド・オスバッカス子爵令息に結婚を申し込まれた。 幼馴染で恋人の二人は学園を卒業したら夫婦になる永遠の愛を誓う。超名門校のフォージャー学園に入学し恋愛と楽しい学園生活を送っていたが、学年が上がると愛する彼女の様子がおかしい事に気がつきました。 一緒に下校している時ロナウドにはソフィアが不安そうな顔をしているように見えて、心配そうな視線を向けて話しかけた。 ソフィアは彼を心配させないように無理に笑顔を作って、何でもないと答えますが本当は学園の経営者である理事長の娘アイリーン・クロフォード公爵令嬢に精神的に追い詰められていた。

カモフラージュの恋

湖月もか
恋愛
容姿端麗、文武両道、しかも性格までよし。まるで少女漫画の王子様のような幼馴染な彼。 当たり前だが、彼は今年も囲まれている。 そんな集団を早く終わらないかなと、影から見ている私の話。 ※あさぎかな様に素敵な表紙を作成していただきました!

君に何度でも恋をする

明日葉
恋愛
いろいろ訳ありの花音は、大好きな彼から別れを告げられる。別れを告げられた後でわかった現実に、花音は非常識とは思いつつ、かつて一度だけあったことのある翔に依頼をした。 「仕事の依頼です。個人的な依頼を受けるのかは分かりませんが、婚約者を演じてくれませんか」 「ふりなんて言わず、本当に婚約してもいいけど?」 そう答えた翔の真意が分からないまま、婚約者の演技が始まる。騙す相手は、花音の家族。期間は、残り少ない時間を生きている花音の祖父が生きている間。

愚かな恋

はるきりょう
恋愛
そして、呪文のように繰り返すのだ。「里美。好きなんだ」と。 私の顔を見て、私のではない名前を呼ぶ。

あなたの秘密を知ってしまったから私は消えます

おぜいくと
恋愛
「あなたの秘密を知ってしまったから私は消えます。さようなら」 そう書き残してエアリーはいなくなった…… 緑豊かな高原地帯にあるデニスミール王国の王子ロイスは、来月にエアリーと結婚式を挙げる予定だった。エアリーは隣国アーランドの王女で、元々は政略結婚が目的で引き合わされたのだが、誰にでも平等に接するエアリーの姿勢や穢れを知らない澄んだ目に俺は惹かれた。俺はエアリーに素直な気持ちを伝え、王家に代々伝わる指輪を渡した。エアリーはとても喜んでくれた。俺は早めにエアリーを呼び寄せた。デニスミールでの暮らしに慣れてほしかったからだ。初めは人見知りを発揮していたエアリーだったが、次第に打ち解けていった。 そう思っていたのに。 エアリーは突然姿を消した。俺が渡した指輪を置いて…… ※ストーリーは、ロイスとエアリーそれぞれの視点で交互に進みます。

【完結】時計台の約束

とっくり
恋愛
あの日、彼は約束の場所に現れなかった。 それは裏切りではなく、永遠の別れの始まりだった――。 孤児院で出会い、時を経て再び交わった二人の絆は、すれ違いと痛みの中で静かに崩れていく。 偽りの事故が奪ったのは、未来への希望さえも。 それでも、彼を想い続ける少女の胸には、小さな命と共に新しい未来が灯る。 中世異世界を舞台に紡がれる、愛と喪失の切ない物語。 ※短編から長編に変更いたしました。

不器用な氷の王子は幼馴染を離さない。元婚約者は勝手に破滅中!

ムラサメ
恋愛
王太子エドワードから「無能な書類女」と蔑まれ、公開婚約破棄と国外追放を告げられた公爵令嬢エルナ。絶望する彼女の前に現れたのは、隣国の「氷の王子」アルフレッドだった。 強引に彼に連れ去られたエルナだが、実は彼はかつて彼女の後ろをついて回っていた泣き虫な幼馴染で……!? 「昔の俺は忘れろ」と冷徹に振る舞おうとする彼だけど、新生活の準備が過剰すぎて溺愛がダダ漏れ! 一方、エルナを失った母国は経済崩壊の危機に陥り、今さら「戻ってきてくれ」と泣きついてくるが――。

「氷の公爵子息は、平凡令嬢を手放さない」

白瀬しおん
恋愛
ただぶつかっただけのはずだった。 なのに気づけば、氷の公爵子息は隣に座り、手を取り、名前を呼ぶ。 そして—— 「逃げてもいい。でも、逃げ切れない」 平凡令嬢を静かに囲い込む、逃げ場なしの溺愛。 最後に待つのは、拒否権のない婚約だった。 ※初投稿のため、至らない点があるかもしれませんが、温かく見守っていただけると嬉しいです。