Blood Spare of Secret : The story of Creeds

千導 翼『ZERO2005』

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第一章 クルードフォーミア編

クルードフォーミア

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 15分前

 俺と入町はバンバと薫が青葉の元に行っている間に、この深夜の中、金庫を探していた。

 「流石にないか...。あの衝撃に耐えられる金庫なんざ聞いたことないしなぁ。それに、この夜中に探そうと思っている時点で間違っている。明日に回した方がまだいいか。」

 そう俺が、今日の捜索を中断しようとしていると...

 「ん? (黒くて、四角い...そして何か頑丈そう....) これかな? あの~!! 多分見つけたかもしれません!!」

 と入町が大声でそう言った。俺はすぐさまそこに向かい、黒く四角い塊に勢いよく、短剣の柄で何度か殴りつけた。すると、鈍い金属音が周りに微妙に響く。だが、周りを見てもダイヤルのようなものが見当たらなかったため、入町と共に黒く四角い塊をひっくり返すと、数字の並んだダイヤルが5つあった。

 「これだ。この暗い中よく見つけたな。」

 俺がそう言うと、入町は胸を拳で叩いて、まるで「どんなもんですか」と自慢げな表情をする。

 「私、夜目が効きますからね。」

 「そうか、それはこれからも役に立ちそうだな。期待してるぞ。」

 「...!! はい! 任せてください!!」

 入町の反応に最初、無反応で返そうと思ったが、一応職務上の部下の為、少し褒めると、わかりやすく笑顔でそう答えた。

 その後、この荒れ地と化した国だった場所に、和服を着た女性がこちらに来て、周りを見渡した後に俺達に一礼する。

 「この国に...何でも屋という店があったのですが...移転してしまったのでしょうか?」

 「いえ、移転はしていません。ただ、前の店員や店長は誰一人としておりません。今は、私が何でも屋の店長をしております。」

 「...その前の人達の動向はわからないのでしょうか?」

 「全くわかりません。私が来た時には、書置きがなされており、書置きからは「誠に勝手ながら、何でも屋は閉店いたしました。あとは建物を壊すなり、勝手に引き継ぐなり、ご自由にどうぞ」とだけ書かれておりました。なので、私は店を勝手に引き継いで、ここを営業しているというわけです。」

 女性の質問に俺は淡々と答えた。すると、女性は少し残念のそうな顔をする。

 「今、営業してもらうことは...可能でしょうか?」

 「ええ、可能です。ですが、今は拠点がないので、どんな依頼でも、本来請け負う価格より高額になります。」

 「構いません。私の主人の護衛を依頼したいのです。」

 「護衛?」

 女性に俺はあまりされたことのない依頼を言われ、少し眉間にしわを寄せて、首をかしげる。

 「はい。私の主人はとある客船の船長をしているのですが、近々その客船を貸し切って、船上パーティーが行われるのです。出席者もすでに決まっており、軽く5000人を超えます。それに、もうお金を払って貸切る準備ができており、止めるに止められない状況になった矢先に、私たちの家に三通の手紙が届いたのです。」

 「三通の手紙。」

 「手紙の内容はこうです。「アルベルト・マキュレル。組織の裏切り者よ、大雪の満月の午後10時に貴様をこの世から消す。抵抗すれば家族の命はない。甘んじて滅びを受け入れよ。」と、三通とも全く同じ内容で、違ったのは、私の名前と、行方知れずの息子の名前が書かれてあったのです。」

 「手紙の内容に何か心当たりは?」

 「いえ、私も主人も何一つ心当たりがないのです。ですが、私と息子の名前が書かれていた手紙より、主人の名前の書かれた手紙の方が血の滲んだ様な文字で書かれていたため、主人が特に関わっているのではないかと考え、主人の護衛を依頼したのです。」

 女性はなぜこの依頼をするに至ったかの経緯と、自身の考えを述べて依頼した理由を話した。

 「あなたの主人と話し合って決めたわけではないのですか?」

 「はい。私の独断で、今依頼をしています。」

 「では、この依頼を受ける場合、私たちはあなたの主人とそれに降りかかる脅威に勘付かれることなく、依頼を達成してもらいたいということですね?」

 「はい。そうしてもらえると助かります。」

 「わかりました。その依頼...受けましょう。 (依頼自体は、依頼人の主人を護衛するだけだが、同時に依頼人の護衛もしなければ、勘付かれた際にどういう出来事が起こるかわからない。手紙の内容から考えても、引っかかるのは、ご主人も依頼人も心当たりがないということ、主人の手紙が血の滲んだ様な文字で書かれていたこと。そして、「この世から消す」「滅びを受け入れよ」という、直接的に「死」という言葉を使わないこと。ここで手に入る情報が少なすぎて、予測は立てられないが、仮説は立てておくことにしよう。) 料金は依頼達成後に支払ってもらうので、今は支払わなくても大丈夫ですよ。」

 「ありがとうございます。私は、虎牙 八千代と申します。達成次第、報酬は多く支払います。どうか主人をお願いします。」

 俺の言葉に女性は心の底から感謝する声と顔で、頭を深々と下げた。そんな中で、バンバと橘が戻ってきた。俺はそんな2人に少し大声で話しかけた。

 「信じられないだろうが、この荒れ地に依頼人が来た。」

 「はぁ?」

 俺の言葉にバンバはどういう反応をしたのか、珍しくわかりやすく反応をとった。

 その後、依頼人が俺達に話した内容をバンバと橘に説明する。すると、バンバが顎に手を当てて、周りを少し見渡した後に依頼人に訊く。

 「前の何でも屋に世話になったのかもしれませんが、こんな深夜の中で、店があった国がこんな状態なのであれば、引き返して別のところに依頼してもよかったのでは?」

 「確かに、その方がよかったのだと思います。ですが昔、私と主人が結婚する前、もう22年も前になりますか...。前の何でも屋の子に救われたんです。」

 「救われた?」

 依頼人は過去を懐かしむように、温かい笑顔を浮かべながら話す。

 「私はとある国の出で、そこは神として三つ首の大蛇を祀っており、そこでは100年に一度だけ、美しい娘を生贄として捧げ、その代わりに国を大蛇に護ってもらうという風習がありました。その風習に、私が生贄として選ばれ、当時私を愛してやまなかった主人が、国の長に楯突き、牢に入れられたのです。その時、私は主人を救ってほしく、私は必死に国の長に懇願したのです。「どうか、彼を許してあげてください。元はと言えば、私が彼のことを愛してしまったのが、間違いだったのです。」と、それでも私の生贄の儀が終わるまでは、牢から出してもらえませんでした。」

 「...(なんで生贄なんか捧げる必要があるの? 護ってもらうって...それは護ってもらってるんじゃなくて、大蛇の襲撃を恐れてただけなんじゃ....。)」

 依頼人の話を聞いて、橘が視線を下に落としながら考え込む。

 「そして、生贄の儀の当日、牢に入れられた彼が手に錠をつけられた状態で、すぐにも大蛇に喰われてしまう私の目の前に座らされました。その時、私は彼の目の前で生贄になるんだなと思いました。その瞬間、たった一人の青年が、私の目の前に現れ、私を喰らおうとしていた大蛇を一撃で殴り飛ばしたんです。その光景を見た住民たちはしばらく、青年を非難しました。国の長も護衛を引き連れて、青年を即時抹殺しようとしたのです。そうしたら、青年が怒りを込めた目で、国の長を指差した後に、こう言ったんです。」

 ―――国をまとめる奴が、国民をだまし続け、生贄という名の自分の奴隷を作り続けて、他国に売ってんじゃねえよ。

 「「え?」」

 依頼人の話の予想していない展開に橘と光琳が同時に驚いた声を出す。その様子を見た依頼人は上品に笑った後に話を続ける。

 「青年の言葉に住民はざわつき始め、国の長は白々しい態度を取り始めました。すると、青年は殴り飛ばした大蛇を目の前で破壊し、自身の手に入れた情報を住民にばらまき、国の長に渡しました。すると、国の長は顔色がどんどん悪くなっていき、動揺を隠せなくなりました、その後、国の長は住民たちから非難の嵐を受け、国の長は牢に入れられました。その後、私は国を出ることができるようになり、主人と婚約に至ったのです。その時のお礼を青年にしに行くと、青年は爽やかな笑顔で」

 ―――幸せならそれが一番のお礼ですよ。

 「と答えて、私と主人に『何でも屋』という名の入った名刺を受け取ったんです。その後に、「また何かあったら、気軽に頼ってきてください。」と言われ青年はその場を去りました。長話をして申し訳ありません。ですが、これが荒れ地になったとしても、別のところに依頼をしに行かなかった理由...私の命と主人の心だけでなく、国をも救ってくれた青年のいる...いえ、いた店を頼りたかったのです。...駄目でしょうか?」

 「いえ、とんでもありません。そこまでの思いがあったとは知らず。大変失礼いたしました。」

 「いえいえ。」

 依頼人の話とそこに詰まった思い、それを聞いたバンバは依頼人に深々と頭を下げた。

 「この言葉は先ほど聞いたかもしれませんが、私からも...。この依頼...受けさせていただきます。」

 「ありがとうございます。」

 バンバの言葉に、俺にも見せた、心の底から感謝する声と顔で深々と頭を下げた。その様子を見ていた光琳は歯を食いしばって頷いた。

 「では明日の夜、あなた方を迎えに参ります。それまで準備をお願いします。」

 その後、依頼人はそう言って、この場を立ち去った。

 その様子を見届けた後に、バンバが俺の後ろにある金庫に目を移す。

 「見つかったのか...。ダイヤルの数列は覚えてるのか?」

 「もちろんだ。少々時間がかかるが、まぁ待っててくれ。あと、光琳と橘は眠ってもらって構わない。見張りは俺がやっておく。」

 俺がそう言うと、光琳と橘は互いを見合わせた後に、バンバの方に目をやる。それに気づいたバンバは周りを少し整えた後に、持っていたシートを地面に敷く。

 「ちゃんとした寝床は無理だ。これで我慢してくれ。」

 「「はい。」」

 光琳と橘は同時に返事をした後にシートの上に寝転んで、すぐに眠りにつく。俺はその間にダイヤルを回し、金庫を開ける。

 「よし、開いたな。」

 「思いの外早かったな。...これ...一体何億あるんだ?」

 「ざっと9百億くらいじゃないか?」

 「貯まり過ぎだろ。どんだけだ。」

 金庫の中身を知ったバンバは苦笑いを浮かべ、呆れ声で言う。

 「こんだけあったら、持ち運びが面倒だ。盗まれる危険性があるぞ。」

 「一応、中身を確認するためにあけただけだ。実際は金庫を運びながらの移動になる。」

 俺はそう言いながら、無言でバンバの目を見る。その瞬間に察したのか、金庫の扉を閉めて俺の方を見る。

 「俺が持ち上げろということだろう? まぁそりゃそうだな。光琳やお前が持ち上げられる訳がない。消去法で運搬担当が俺になるわけだ。」

 「すまんな。移動式の大型店舗が完成さえすれば、その面倒もなくなる。それまでの辛抱だ。」

 「その辛抱の中に、今回の依頼が含まれているとなると、面倒だな。」

 バンバはそう言いながら、光琳と橘の隣に座る。俺はその間にダイヤルを回して、金庫を開かないようにする。

 「俺とお前で、互い違いに仮眠を取り合いながら見張るか。」

 「あぁ。それに賛成だ。」

 俺とバンバはそう言いながら光琳と橘が起きるまで見張り続けた。

 翌日の夜

 依頼人は大型車に乗って、日の入りと共に付き人と現れた。

 「今日はよろしくお願いします。一応、後ろの金庫を乗せれるように大型の車出来ましたので、ぜひここに乗せてもらえると。」

 「ご親切にありがとうございます。では、お言葉に甘えて。」

 依頼人の言葉にすぐバンバが受け答えをし、金庫を片手で持ち上げた後に大型車の後ろに乗せる。その後、俺たちは依頼人と共に車に乗る。

 「では、これから船上パーティーの開かれる大型客船に向かいます。その際に、あなた方にはそのパーティーの出席者として侵入してもらい、主人の護衛に当たってもらいます。」

 車が発進するとともに、依頼人はそう言い、黒と赤と白のドレスと黒の紳士服を俺たちに渡した。

 「あの、私は...。」

 「...。」

 橘が依頼人に何か言おうとした瞬間にバンバが肩を軽く叩いて止める。すると、橘は小首をかしげながらも、黙って窓から景色を見る。移り変わる景色に、光琳は心なしか無邪気に喜んで見える。

 30分後

 目的地に到着すると、俺と光琳と橘は車の中で、バンバは外で着替えた。着替えた後は、橘と光琳はお互いに無邪気にドレスを着た自分の姿に喜んでいる。俺とバンバは今回の仕事を行う場である、大型客船に見ている。周囲を昼のように明るく照らし、7つの階層に分かれていると思われる大型の客船、依頼人はその名を俺たちに聞かせるように静かな声音で言った。

 ―――豪華客船...クルードフォーミア号
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