Blood Spare of Secret : The story of Creeds

千導 翼『ZERO2005』

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第二章 シャインティアウーブ編

光界

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10分前

シャインティアウーブ役所

 ーーーアスカさん。

 書類をまとめていると、1人の社員が話しかけてきた。

 「どうしたの?」

 私は床に降りながらそう訊くと、その社員は少し回りを見た後に少し小さい声で答える。

 「えっと、ルーク市長ってまだ戻らないんですか?」

 「...戻ってないよ。でも、遅いね。連絡もないし、何してるんだろうね。何か入り用があったら私が対応しようか?」

 「いえ、俺個人のこれといった入り用はないんです。ただ、空を見たときに、なんか違和感がありまして...。」

 私の答えに、社員は申し訳なさそうに断ったのちに、私を窓まで誘導するように手招きしながら移動した。

 「俺...生まれつき目が良いんですけど...今日はなんか変なのか、あの辺に人影が見えるんです。」

 「人影?」

 そして、太陽の近くを指差す。私はそれを屈んで見てみると、確かに影のようなものが浮かんでいるのが見える。ただ、人影なのかは判別できない。私はそれをよりはっきりと見るために、眼鏡のフレームを右の人差し指で叩いて、ライレトに変形させる。

 「ラブ、レンズを遮光型にして、私の視力を上げて。」

 「OK!! アスカさま!!」

 AIのラブは元気よく返事をしたのちに、レンズが光を遮るように加工し、私の視力を段階的に強化した。そのお陰で、よく見えなかった影がより鮮明に見えるようになる。その結果、見えた影は実体として目に写り、ボロボロの服を見にまとった、傷とアザだらけの、白髪の入り交じった金髪の女性であることがわかった。

 「空中に浮いて、いったい何をする気?」

 私は小声でそう言ったのちに、心配そうに私の方を見ている社員の方に目を向けて言う。

 「ごめん。私もちょっとの間、留守にする。だから、今日は特別に早上がりで良いよ。残業代は引かないから。その代わり、市民を避難させておいて、警報を鳴らしなさい。何か起こる。...まだ予感だけど。」

 「「「「はい、わかりました。...それでは、お疲れさまでした!!」」」」

 私の言葉に、社員たちは急いで荷物を整えて、役所を後にした。私も同じように荷物をまとめて、役所を出ながら、ライレトでラブに指示を出す。

 「ラブ、一応アヌビスの準備をお願い。」

 「OK!! 任せな、アスカさま。そんなのちょちょいのちょいよ!!」

 「ありがとう。」

 ラブの返事に私は感謝しながら、車の電源を入れてナビを作動させた後に、ハンドルをもって、もう一度、今度はライレトでルークに連絡を入れる。

 「.........やっぱり出ない。」
 
 私は別れて以来、一切姿を見ないどころか、電話にもでなければ、折り返しの連絡も何もないルークに不安を感じながらも、車を走らせて空中に立っているように浮かぶ、女性の方を捕捉しながら、自分の装備のある家に真っ直ぐに向かう。

 「(何の装備もなく空中に浮かぶなんて、スペアネル...異能力者以外のなにもでもない。それが、ちょうど国の中心に位置するところの真上に浮かんでいるなんて、何かが起きる予兆にしか感じない。)」

同時刻

シャインティアウーブ付近 魔工車レグス

 ーーーん?

 私は不意に訪れた悪寒に反応し、動きを止めて回りを見渡した。すると、それに気づいた光琳さんが私のもとに駆け寄ってくる。

 「どうしたの?」

 「...いえ...何か悪寒がして...。」

 光琳さんに私がそう答えると、バンバさんが空の方に目を向けながらこちらに歩いてきた。

 「師匠?」

 「確かに、辺りの雰囲気が物々しくなったな。特に、シャインティアウーブから漂う空気感がさっきより重い。だが、それにしては、クリードからの連絡もない。何かあったのかもしれないな。それか、これから何かが起こる予兆なのか。」

 バンバさんがそう言った瞬間、シャインティアウーブの方が少し騒がしくなっているのを感じた。不意に私はバンバさんが見ていた空の方に目を向ける。すると、黒い点のようなものが見えた。その点が何なのかははっきりとはわからないが、ただ1つ感じることがある。それは強い復讐心。

 「復讐...。」

 「え?」

 私の無意識の呟きに、光琳さんは首を傾げながら、私の見ている方向に目を向ける。でも、私はそれに気を止めず、ただあの点に意識を集中させる。すると、復讐心の中に強い憎悪と怒り、ただただ何かを破壊したいという欲望を感じ、そこからそれが過去に起因するものだというところまで辿り着いた。だが、それ以上は強い頭痛に襲われ、その場で膝から崩れ落ちてしまう。それを見た光琳さんはすぐさま私の方に駆け寄ってきて支えてくれる。

 「何かを感じたか?」

 バンバさんが優しく私に訊いてくる。私は無言でゆっくりと頷いた後に、感じたことを伝えた。すると、バンバさんは顎に手を当てながら黒い点を見つめて言う。

 「では、あの女はこの国に対しての復讐が目的で動いている可能性が高いわけだな。」

 「いえ、この国に対してと言うよりかは...ただ無差別に攻撃したいという方が近いかなと。」

 「そこまでわかるのか。これも純血の効果というやつか。...じゃああの女の目的は恐らく復讐の延長で行う無差別の殺戮。だがここまえ気配を消していたのを今になって現したのは機会が来たからか。そうなら、協力者がいるか、または雇われの身である可能性も出てくる。その可能性があるのなら、そいつは何らかの技術や情報を持っている。」

 私の反論にバンバさんは驚きながらも冷静に私の言ったことを一言でまとめた後に、考えられる可能性を提示した。

 「何らかの技術とは? ...というか女?」

 私は気になった部分を質問すると、バンバさんはシャインティアウーブと黒い点のようなものを順に見た後に説明する。

 「女というのは、お前が見えているものは俺からすれば人影に見える。なんなら具体的に姿が見える。ボロ切れのような布を纏った傷だらけの白と金の髪色の女にな。そして、何らかの技術というのは恐らくだがハッキング技術だ。証拠としてこれだけシャインティアウーブ内が物々しい雰囲気になっていて騒がしくなっているというのに、自動警備システムが全く作動していない。それどころか、放送で何か報告なりなんなりすれば良いものを、それさえ聞こえてこない。本来の状態であれば、あの女が上空に現れる前に気づいて迎撃システムも動くはずだ。これは明らかにおかしい。」

 「詳しいですね。」

 「まぁ昔、仕事でここに来たことがあってな。...光琳、何してる?」

 私の言葉に、すぐに答えた後に、視界に入ったのか武装している最中の光琳さんに話しかける。すると、光琳さんは武装を完了させたと同時に、当然のごとく聞き返す。

 「え? 行かないんですか?」

 「別に行く義理はないだろ。放っておいてもいずれ収まるだろうしな。」

 バンバさんはシャインティアウーブを一度見た後に答えた。その後、光琳さんを見てみると、納得していない表情で首を傾げる。それを見て、私はバンバさんの方に顔を向けて、真剣な表情で言う。

 「行きましょう。クリードさんからの連絡が無いですし、それに......ここで役に立てば、お礼をもらえるかもしれません。」

 私の言葉を聞いた後に、バンバさんは見定めるような目で見つめてくる。私は視線を一切ずらさずに、バンバさんの目をじっと見つめ返した。すると、バンバさんは置いていた武器を手に取る。

 「お礼がもらえるなんてらしくないことは言うもんじゃない。ここが自分の国のようになるのが怖いんだろう?」

 「...はい。」

 バンバさんの言葉に私が少し顔を下げて返事をした。それを聞いてからバンバさんは光琳さんにも説明するように淡々と話す。

 「まぁ実際、クリードがシャインティアウーブに行ってから何1つ音沙汰がないのは気になる。何かあれば、鷹が勝手に俺たちの方に来るはずだしな。それに元々、お前たちを残して1人で向かってみるつもりだったが、行きたいと言ってるなら、それを止める権限は無い。」

 「...じゃあ。」

 私が目を見開くと、間髪いれずにバンバさんが指示を出す。

 「すぐに武装しろ。シャインティアウーブに入る。」

 「「はい。」」

 私と一緒に光琳さんも返事をして、一緒に武装の準備を始める。

 「(何と言うか、さっき妙な寒気がするな。中と外に...。)」

シャインティアウーブ上空

 太陽が眩しいなんてのは、この体になってから一切感じなくなった。通信機から声が聞こえてくる。あの人は何処で一体何をしてるのか、まぁいいや。やっときた出番だ。

 ーーー暴れて良いぞ。ヒカリ。

 思いっきりやってみよう。壊せるだったら。殺せるんだったら。

 「死ね。」

 あたしはそう言って、体から無数の光線をこの国に向かって放つ。止めてみろ。あたしを...!!!!

ミラージュタワー展望台

 退勤した社員たちがシャインティアウーブ全地区で警報を鳴らす音が聞こえる。国民たちが逃げ惑う声、避難誘導をしている職員の声が聞こえる。同時に不安を圧し殺した表情、必死に家族をつれて逃げる姿が目に写る。ミラージュタワーの展望台から何やら女が動き始めているのを見つけた。私は展望台のガラスを開けて、外に出る準備する。

 「ラブ、アヌビスVer.10を起動。装着を開始。」

 黒を基調とした鎧が全身を包み、うなじの部分から8本の棒状の垂れ下がった翼、腰に二挺のライフルブレード、ふくらはぎから太ももの裏にかけて突出しているスピードエンジン、顔全体を覆うサーチシステムを搭載したヘルメットに変形。終わると、所々から青いライン状の光が循環し始める。足は特に光が強く、スピードエンジンを動かす音が聞こえる。

 「装着完了! いつでも行けるぜぇ、アスカさま!!」

 「よし、行こう。ボスが帰ってくる前に終わらせるのを目標に...。」

 ラブの言葉に、私は深く頷きながら、深呼吸をした後に、スピードエンジンと翼で飛び立つ。そして、腰に差しているライフルブレードを抜いて、勢いよく接近していく。

 「ラブ。 シャインティアウーブ全体にバリアを展開。迎撃システムを作動させて、私の援護を。それと平衡してシャインティアウーブに今いる戦力を集めて。」

 「了解! ...あれ?」

 「ん? どうしたの?」

 「電波が遮断されて通信ができねぇ。」

 想定していなかった問題に私は一瞬動きを止める。

 「(あの女がハッキングができるようには見えない。じゃあ、あの女は陽動で協力者と思われる人物が存在する。でも、これから探そうにもあの女を放っておけば、国が危機にさらされる。)」

 私は動きを止めている間、脳内で思考を巡らせた。

 「ラブ。ハッキングはできる?」

 「できなくないすけど、さすがにアスカさまよりは時間がかかるっす。それに、国全域となると、俺だけじゃあ...たぶん間に合わないっす。」

 「でも、できなくはないんでしょ? それなら、私が戦い続けるからハッキングをやってみて。どのみち救援を呼べないのなら、私達だけで何とかするしかない。」

 「...了解。」

 私の指示にラブは少しだけ重たく返事をして、ハッキングに集中するために私との会話機能を切断した。

 「これで動体視力のAIサポートは見込めない。なら、直接五感と運動能力を強化し、スピードエンジンをフル稼働して、この国を守る。」

 私はそう言って、ライレトによる五感と運動能力を強化し、スピードエンジンの出力をあげる。すると、スピードエンジンの青い光に白が入り交じるようになり、翼の先端にある銃口から青白い炎が噴射する。

 「よし...。」

 私がそう言った瞬間、強化された視力によって、3秒後に起こる事象が見えた。私はそれを元に動き始める。そうしたタイミングで、女は突如光だし、体から無数の光線を放ってくる。

 「させない...!!」

 そして、その光線の全て先に動いていたことにより、ライフルブレードと蹴り、翼による射撃で相殺し、そうやって少しずつ女との距離を詰めていき、目の前まで来たところで、ライフルブレードを相手の首元に当てる。

 「まだ止められてないよ。」

 「何?」

 「なんたってあたしは...光...だからね。」

 女がそう言った瞬間、私は女の背後でいつも通り光を放つ太陽が目に入った。

 「(引き付けられた。)」

 私が気づいて即座に、女を気絶させようとしたが、女は光速で距離を取り、太陽を指差す。

 「残念! 光界こうかい。」

 女がそう言った瞬間、太陽の光が全て高熱を帯びた熱になり、その光を浴びた逃げ惑っている人たちが一斉に倒れていく。私は即座に戻って、国民たちを助けに行こうとするが、女が一瞬で目の前に現れ、立ちふさがる。

 「今から殺戮が始まるんだから邪魔しないでよ。」

 「邪魔しなかったら、私は何のためにこの国にいるんですか。」

 女の言葉に、私は反論しながら、動きの先読みとスピードを生かして、女に攻撃を仕掛けながら隙を見て、国に戻ろうとする。しかし、何度やっても女はいとも容易く追い付いてくる。

 「(このままでは多数の命が死ぬことになる。)」

 私1人だけで戦うことになってて、ルークとは連絡がとれず、リーフはそもそも今国にいないと言う現状に、冷や汗をかいている。

 「(やはり、私1人だけでは...いや...弱音を吐いても意味ない。こういうときこそ冷静になること。)」

 それに気づくと、私は落ち着いて深呼吸をして焦りを取り除いて、冷静且つ迅速に考える。その最中、シャインティアウーブ内で、倒れた国民を高速で光の当たらない場所に移動させている影が見えた。

 「(味方? いや、わからない。でも、国民を助けてくれているのは事実。なら...) これで行こう。」

 私はライレトで現在時刻を確認し、太陽を見る。そして、女をじっと見据えて、翼の銃口の機能を2ずつ変化させて、1つだけ通常の状態にしておく。

 「?」

 何をしようとしているのかわからないのか、女は首を傾げる。私は考える隙を与える前にライフルブレードで切りかかる。すぐさま光速で避けた女は私の背後に移動してバカにしたような笑みを浮かべる。

 「国民を見捨てる気?」

 「あなたを倒す方が先と考えただけです。」

 女の言葉に、私は適当に反論する。そして、他の翼の機能が変わったことを確認すると、ライレトでストップウォッチをかける。

 「制限時間以内に現状を打開する。」
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