Blood Spare of Secret : The story of Creeds

千導 翼『ZERO2005』

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第四章 バルジェリア皇国編

騎士と奴隷

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 バンバと別れた光琳と清雅は四方匡の人間が何か話しかけに来ても、腕章を見せることで事なきを得ていた。

 「これだと腕章なしじゃ出歩けそうもないね。」

 「はい。腕章が無かったら変に襲われそうですし。」

 「それに、よく見て見なよ。光琳ちゃん。何人か首輪とか手錠を持ってる。外部の人間だから腕章が無かったら狙われる可能性が高いね。」

 清雅の言葉に光琳は奴隷を連れ歩いている四方匡の人間の陰に隠れるようにたたずむ。首輪や手錠、足枷を持っている紳士服の男や、鉄格子が少し見える馬車に乗っている貴婦人を見て、目を合わせないようにしながら無言で視線を外した。

 「皆、四方匡? の国章を着けてますね。」

 「うん。バルジェリアの国民はほとんど奴隷にされているんだろうね。」

 「王様とかはどうなってるんでしょうか?」

 「わからない。一応国王と妃は首を斬られて、王女と王子はどこかで生きてるって噂があるけど、所詮噂だしね。真偽はわからないよ。」

 光琳の質問に清雅は車に乗っているときや眠る前につけておいた知識と聞いた噂を織り交ぜながら答えた。

 「おらっ!! 立てや!! せっかく奴隷として生かしてもらってんだから死ぬまで働け!!」

 「そちらの奴隷はまだ反抗心がありますねぇ。私を見習ってほしいものだわ、ほらぁ! 奴隷が大人しくて礼儀正しいでしょう?」

 「流石ですね夫人。私もそれくらいしつけがうまくなるといいのですが。」

 奴隷の顔を執拗に蹴って躾としている男性に対して、豪華絢爛な服を身に纏った貴婦人は笑いながら自慢をする。それに対して貴婦人のご機嫌取りをしながら、自分の奴隷の腹を蹴る。

 「あれが、この国では日常的に行われているのでしょうか?」

 「わからない。でも、誰も何も言わないどころかいつも通りの光景という風にしてるだけあって、多分そうなんだろうね。」

 光琳が少し引きながら話すと、清雅はあまりに痛々しい光景に目を背けながら残念そうに同意した。

 「あら、あなたとても美しい顔をしてるじゃない。」

 その場を立ち去ろうとした瞬間に貴婦人が奴隷を制止させて清雅の元にやってきた。

 「あなた...外の国からやってきたのね?」

 「はい。シャインティアウーブからやってきました。」

 清雅を貴婦人の付き人が取り囲もうとしているところを光琳が前に出て警戒する。

 「あら、シャインティアウーブ! 科学大国ね! どうこの四方匡の植民地は! 素晴らしいでしょう?」

 「...そうですね。」

 「バルジェリアの民は揃いもそろってバカだから無謀な戦いで家族を失って、優秀な騎士たちも私の祖国に殺されたわ。最初から黙って植民地になっていればこんな事にはなっていなかったのにねぇ~本当に馬鹿よねぇ。あなたもそうは思わない?」

 「...当時のバルジェリア皇国の勢いを知っていると仕方がなかったのではないかとも思います。」

 貴婦人の言葉の応酬に清雅少し怯みながらも受け流すよう同意しない意思を見せる。すると付き人の数が更に増え、清雅どころか警戒している光琳すらも取り囲もうとする。

 「あらそう? わざわざ外国から来て、こんなおばさんの話を来てくれてありがとうね?」

 「いえ、おばさんなんてご自分をそんな謙遜なさらないで...」

 「私ね、気にいった子には自分から話しかけちゃうの。欲しいから。」

 貴婦人の言葉に反応して付き人の人たちは清雅と光琳の腕章を外して連れ去ろうとする。

 「ちょっと、止めてください!!」

 「一応外の人間ですよ?」

 「関係ないわ。外の人間だろうと、腕章を取ってしまえば奴隷にできるのよ。こんな美しい子ものにしたいに決まってるじゃない!! あなたも、この子ほどじゃないにしても可愛いわ。私のものにしてあげる。」

 貴婦人の突然の変貌に清雅と光琳は驚きながら、付き人の手を振り払おうとする。

 「(まずい。力を入れるとこの人たちを凍らせちゃう。)」

 「(どうしよう。トラブルを起こしたら師匠に怒られる。)」

 「おい。」

 清雅と光琳が対応に困っていると、後ろの方で威圧するような声が聞こえた。

 「ん?」

 「...ナイトメア...!!」

 「(ナイトメア...ナイトメア!?)」

 貴婦人の言葉に清雅は驚愕する。

 「ここで何をしている? 彼女たちはあなたの知り合いか?」

 「...ええもちろん。」

 「(違う!)」

 心の中で光琳が強く否定する。その様子が顔に出ていたのかナイトメアは貴婦人の顔をジッと見つめて問う。

 「...知り合いなのに連れ去ろうとしたのか?」

 「...連れ去ろうだなんてそんな。」

 「夫人。いくらあなた四方匡で力を持っている人間だとしても、ここが四方匡の植民地だとしてもバルジェリアの騎士がいるということだけは忘れないでいただきたい。」

 「...。」

 はぐらかそうとする貴婦人にナイトメアは更に威圧するような声で頼む。

 「それとも、ここで私とそこの付き人と奴隷に指示を出して問題を起こすか?」

 「...いえ、滅相もございません。無礼をお許しください。」

 作り笑いをする貴婦人を横目に清雅と光琳を見て訊く。

 「では、彼女たちはもう解放していいな?」

 「もちろんです。」

 一瞬だけ貴婦人は悔しそうな顔をするが、それを余所にナイトメアは清雅と光琳を連れてその場から離れる。

 「大丈夫でしたか?」

 「はい。助けていただきどうもありがとうございました。」

 「ありがとうございました!」

 「この国ではあ~いう奴ら大量にいます。出歩く際は十分気を付けてください。腕章をつけてさえいれば、無視しても彼らが強引に来ることはありません。では。」

 清雅と光琳のお礼にナイトメアは胸に拳を当てて敬礼することで答え、軽く注意をしてその場から立ち去ろうとする。

 「待ってください!」

 「どうかしましたか?」

 「紅騎士のナイトメア・クラインさんですよね!?」

 ナイトメアの足を止めた清雅が少し興奮気味で訊く。

 「...そうですが...?」

 「入院し始めたころ本を読んだんですよ! 稀代の天才剣士、ナイトメア・クライン! ぜひ話を聞かせてもらえませんか?」

 「話と言ってもそこまで面白い話はありませんよ?」

 清雅の興奮気味な態度に若干引きながらもナイトメアは訊かれた通り話をしようとちょうどいい階段に腰かけた。

 「そんな話聞くより...。」

 「しーっ! この国が何で負けたのとか聞けるかもしれない。情報収集よ情報収集...!」

 「...なるほど...!!」

 清雅と光琳がこそこそと話していると腰かけたナイトメアが清雅に

 「やっぱり訊かない?」

 と言うと、清雅は光琳の手を引っ張ってナイトメアの隣に腰かける。

 「聞きます!」

 「そ、そうですか...。...。」

 いざ話そうとした瞬間、ナイトメアは周りの光景を改めて見て黙ってしまった。

 「ん? どうかしましたか?」

 「いえ...。特に何でもありませんよ。では話しますか。」

 「「お願いします!!」」

 「(何か妙に熱量があるな。)」

 清雅の声で我に返ったナイトメアは清雅と光琳の熱量に引きながらも過去を回帰して話を始める。

 一方その頃バンバと別れた薫と花仙は清雅達のように誘拐されそうになることなく、街中を歩いていた。

 「何つうか...見どころねえなこの国。」

 「そんな事思っても言わないでくださいよ花仙さん。」

 花仙の大声で文句を言う態度に冷や冷やしながら薫は周りを見る。

 「だって何か特別なイベントが起こるわけでも、何か美味そうな飯があるとかもないんだぜ? 何かせっかく別の国に来たってのに、これじゃ田舎と何も...。」

 「花仙さん!」

 「!?」

 「私...一応国ではあったとはいえほぼ田舎出身ですよ?」

 「...そりゃ悪かった。」

 花仙の悪口に薫は半ギレで文句を言うと、その変わりようにびっくりしたのか反射的に謝った。

 「腹減ったから何か飯食いたいな?」

 「え? 朝食べたじゃないですか。」

 「...あたし結構食いしん坊なんだよね。」

 花仙のカミングアウトに薫は目を何度も瞬かせて、小声で言う。

 「もっと早く言ってくださいよ。」

 「いやぁ~バンバとクリードってさ...何か普段必要な会話しかしてない感じがあってさ。何か言い出しづらいんだよね。」

 「いや...まぁわからなくもないですけど。」

 クリードとバンバの寡黙な雰囲気に少し気圧されているのは薫も花仙も同じなようだ。そんな感じでしばらく歩いていると、前から誰か走ってくる。

 「助けてくれ!!!」

 男性が必死の形相で薫と花仙の元に来て叫ぶ。

 「この枷をはずしてくれよ!! 頼むよ!! 何でもする!! 約束するお願いだから!!」

 花仙はすぐに男性の頼みを受け入れて首輪を外そうとする。

 「...花仙さん!!」

 「責任はあたしが取る。こんな真正面から助けを求められたら断れねえよ。」

 躊躇いながらも一応止めようとする薫に花仙は言い聞かせるように説明して首輪に手をかけた瞬間...。

 「何をしてる!!」

 大柄な男が走ってきて花仙にそう怒鳴った。

 「何って首輪を外そうとしてんだよ。」

 大柄な男の質問に花仙は淡々と答えた。

 「止めろ!! そいつは俺の主人の奴隷だ!! 勝手な真似すんじゃねえ!! 行くぞヒッジ!!」

 花仙の答えに大柄な男は焦りながら助けを求めてきた男の名前を呼んで連れて行こうとする。

 「ふざけんな!!! 戻ったところで殺されるだけだ!! 解放されるチャンスが巡ってきたんだ!! 今を逃したら俺の一生は飼い殺しだ!!!」

 しかし、ヒッジは大柄な男にそう叫び、花仙の足をしっかりと掴んで離さない。

 「ヒッジ!! 俺達に自由何てねえ!! バルジェリアに生まれてきた時点で俺達は四方匡の道具だ!! 死ねと言われれば死に、靴を舐めろと言われれば靴を舐める。そういう人間だ!! あのお方はお優しいきっと誤れば許してくれる!!」

 「2人共落ち着いてください。」

 大柄な男が説得する。そうやってしだいにヒートアップしていく2人を薫が仲裁する。

 「自由を一度求めてしまった奴隷は許さない。」

 大柄な男が来た場所から優雅に清潔だが煌びやかな服装を身に纏った男性が歩いてきた。

 「ご主人様!!」

 大柄な男が男性の声を聞いた瞬間に片膝をついて首を垂れる。一方ヒッジは血の気が引いた顔で男性を見る。

 「うん? はずれねえな。」

 「花仙さん...。」

 男性とヒッジの間に流れるただならぬ雰囲気に薫が花仙の名前を呼んで距離を取ろうとする。

 「待っててくれよもう少しだからさ。」

 「ご主人...。」

 「ヒッジ...。私は教えたはずです。自由を求めればこの国では生きてはいけないと。バルジェリアで生まれ育った人間の血が流れている以上お前は奴隷であることが真の自由であると。それがわからなくなったお前にもう用はない。」

 「は?」

 男性の花仙が反応した瞬間、ヒッジの首輪が赤く光りだす。

 「あ...あぁ...。死にたくない!! 死にたくない!! 俺は自由になるんだ!! 自由になって!! 世界中を旅して!! 好きな女と結ばれて!! 家庭を築くんだ!!!」

 「そんなのはお前の自由ではない。」

 男性が冷たく言い放った瞬間。ヒッジの頭が首輪と共に吹き飛んだ。

 「お嬢さん。奴隷の首輪や足枷、手錠はそう簡単には外れないし壊せないようになっている。簡単に奴隷から抜け出してレジスタンスなんて作られたらたまったもんじゃないからね。」

 「...殺す必要...ありました?」

 たった今目の前で死んだヒッジの遺体を見て、声を震わせながら薫は訊く。

 「彼は自ら奴隷であることを拒み、奴隷であること以上の自由を望んだ。身の程を知らぬ者には罰を与える。それが四方匡の考え方です。彼がまだ四方匡の人間であれば殺すまではいきませんでしたが、所詮は敗戦国バルジェリアの人間。勝利した我々に反抗する態度が少しでもあれば殺す必要があります。復讐しに来られたらたまったものではないのでね。」

 「生まれた国が違うってだけでこれか?」

 男性の言葉に花仙が脅すような声音で問いかけながら睨みつける。

 「あなた方にそんな目で見られる筋合いはないのですが。あなた方はあくまで外国の腕章をつけているだけの部外者です。これ以上我々に関わるのは止めていただきましょう。もしこれ以上関わるというのなら、こちらもそれなりの対応をしなければなりません。」

 男性は威嚇するように薫と花仙に言う。

 「...くっ...(確かに私達は部外者だ。またトラブルを起こして問題になったらクリードさんに迷惑をかけてしまう。)」

 「それなりの対応? 一体どんなことするんだよ...? あ?」

 薫が冷静になりかけているところに花仙は真っ向から男性に近づいていき、近距離で睨みつける。

 「仕方ありませんね。そちらのお嬢さんは利口なようでしたがあなたは、年の割には馬鹿なようだ。」

 「は?」

 「ソフィア第二団長。」

 男性がそう言うと、上から軽そうな鎧を着けた水色の髪をしたポニーテールの女性が降りてきた。

 「どうしましたか?」

 「この者たちが私の奴隷を無断で解放しようとしたのです。それに加え私が見逃そうとしたのにも関わらず、悪びれる様子もない。しかも、解放できないとわかるや否や、私の奴隷の命を奪ったのです。」

 「は!? 命に関しちゃ奪ってねえよ!!」

 男性の主張に花仙が明確に否定すると、ソフィア第二団長は男性と花仙の目を交互に見て、背中の弓を取り出し矢をつがえる。

 「え!?」

 「マジかよ。」

 武器を向けられた薫と花仙は防御態勢を取ってソフィア第二団長と見つめ合う。

 「...そこから後退った後右手の道を真っ直ぐ逃げなさい...。」

 「「...え?」」

 ソフィア第二団長が小声で花仙と薫にそう言った。一瞬戸惑う2人だが、そんな事お構いなしでソフィア第二団長はつがえた矢を放つ。

 「聖転第二騎士団団長ソフィア・ローア直々にあなた方を逮捕します。」

 「お前たちも協力しなさい! 21号。20号...ヒッジの仇を取りなさい。」

 「...はい。ご主人様...。」

 「ちょっ!!」

 容赦なく矢を放ってくるソフィア・ローアの攻撃を避けながら花仙と薫は言われた通り、右手にある道を真っ直ぐ走る。そうしていくと、男性の外の奴隷達と大柄な男が2人を追う。

 「真っ直ぐ逃げたからって何だってんだよ!!」

 「わかりません。でも...あれを小声で言ってくれた時のあの人の目は優しかったです。」

 「それだけで信用していいのかちょっと迷うけどな!!」

 そうやって花仙と薫が走っていると、綺麗な庭のような場所に入る。

 「何だ? 木々の小道みたいなところは知ってたと思ったらすげえ整えられた庭みたいなところに出たぞ。」

 「木々の小道? それ言うなら路地裏じゃないです?」

 そうしていると、目の前に華やかな屋敷が立っていることに気づき立ち止まった。そうすると、追ってきた奴隷達も庭の中に入り、ソフィア・ローアは庭の直前で立ち止まる。

 「あこれ...。」

 「人の敷地に入っちゃいましたね。」

 花仙と薫がそう言っていると、優雅に歩いてきた男性は庭の直前で立ち止まっているソフィア・ローアを見て怒り出す。

 「何をやっているのですか? ソフィア第二団長! あの娘たちはすぐ目の前にいるではないですか!! ここであなたが矢を放てば、彼女たちを簡単に捕らえられるのになぜそうしないのです!?」

 「あなたはこの国に来たばかりなので知らないのでしょうがここの敷地で問題を起こすのは止めろと団長が直々に我らに命令しています。我らは団長の命令に背くことは何があってもできません。あなたも、さっさと奴隷を引き上げて立ち去った方が身のためですよ。」

 「そうですか...。やはりあなたも所詮バルジェリア皇国民。下らぬ命令を守る奴隷精神が根強いんですねえ。でも私からすればそんなこと知ったこっちゃありません!!」

 「お前たち!! さっさとその小娘たちを捕らえなさい!!」

 「忠告はしましたよ。」

 ソフィア・ローアは男性にそう言ってその場からゆっくりと立ち去る。そして、男性に命令された奴隷たちは必死に薫と花仙を捕まえようとする。

 「...クッソ気絶ぐらいさせちゃダメか?」

 「ダメですよ!」

 花仙のうんざりした声に薫が奴隷から逃げながら答える。しばらくそうしていると、男性は堪忍袋の緒が切れたのか大声で叫ぶ。

 「いい加減にしろ!! この役立たずどもめ!! そんな小娘2人捕まえられんのか!! あと10秒後に捕まえられなければ貴様らは今夜処刑だ!!」

 「は? 理不尽だろそりゃ!!」

 あまりの命令に花仙は思わず立ち止まって男性に抗議する。その瞬間を狙われて大勢の奴隷たちは花仙に群がり捕まえようとするが、花仙は馬鹿力で抜け出そうとする。

 「おい。」

 そうしていると、男性の背後から声がする。薫はよくわからないが、花仙からは聞き覚えのある声がする。血のように赤い髪と目に褐色の肌、黒い服を身に纏った首枷と足枷、手錠をつけた奴隷の男。

 「なぁあんたら不法侵入って言葉知ってるか?」

 「知ってるからなんだというのだね? まさか奴隷の分際でこの私に意見する気かね?」

 「意見ってか正当な主張だろ。ってかお前らそんなとこでじゃれ合ってんじぇねえよ。せっかく整えた庭が台無しになるだろうが。」

 男性の言葉を軽くあしらったのちに、花仙を捕まえようとしている奴隷に文句を言う。奴隷たちは花仙を捕まえようとしている状態で男性の方を見る。

 「奴隷の分際で馬鹿にするのも...。」

 「フレア!!」

 男性が怒りに声を震わせながら文句を言おうとした瞬間、花仙が名前を言った。その瞬間、場の空気が一気に凍り付く。

 「フレア...だと...? 誰のことを言っている?」

 「誰って俺の事だろ。フレアっつう名前はこの国には俺しかいねえよ。」

 怒りに震えていた男性の声が恐怖の震えに変わっていく。そんな中、フレアがさも当たり前のような態度で発言すると、男性は静かに距離を取って、真っ直ぐ目を見る。

 「フレア...。フレア・アステラ? あの...炎帝の?」

 「だからそうだって。ってか花仙だっけか? 何でこんなところいるんだよ。そして何でそんな状況になってんだよ。てめえこの国で早々に問題起こしたのか? トラブルメーカーの才能100だな。」

 男性の問いに鬱陶しく答えて自身の名前を呼んだ花仙に話題を振る。

 「うるせえな。いろいろ理由があって旅をすることにしたんだよ。その中でこの子のいる何でも屋ってところで協力してもらってんの。で、その男が変な言いがかりしてきたから反論したら追われたんだよ。」

 「へぇ~そりゃ災難だったな。でも俺所詮奴隷だからこいつらに文句は言えても状況は変えられねえよ。」

 「え~マジかよぉ~。」

 まるで旧友に会ったかのようなテンションのフレアと花仙に男性と奴隷達どころか薫すらも言葉が出ないほど困惑している。

 「(でもまぁ一応...) なぁ。」

 「何だ!?」

 「まぁそんな驚かなくていいよ。別に危害加えるわけじゃねんだから。あの赤髪の女と黒髪の子、俺の知り合いなんだどうかここは穏便に済ましちゃくれねえか?」

 フレアがそう言うと、男性は無言で奴隷達に指示を出す。それを聞いた奴隷達は無言で花仙から離れて男性の元に集まる。

 「良いだろう。私は寛大なんだ。許そうじゃないか。行くぞ君たち。」

 男性は強がりながらフレアにそう言い放った後に、奴隷を連れてその場を立ち去った。それを3人で見届けた後、フレアは花仙と薫を見て言う。

 「何突っ立ってんだお前らもだよ。」

 「...ああ~! すまんすまん。」

 「勝手に敷地に入ってすみませんでした! あの人たちから逃げるのに夢中になってしまって注意不足でした。」

 フレアの言葉を聞いてすぐに敷地内から出た花仙と薫は頭を下げて謝る。

 「別にいいよ。俺個人はな一応あいつに許可取っておかねえと後々面倒くさいからいったん出したってだけだ。ちょっと待ってろ許可取りに行ってくるから。」

 「おっけ~ありがとな~。」

 「別に気にすんな。俺もあの後の事をちょっと気になってたからちょうどいい。」

 そう言ってフレアは屋敷内に入っていった。

 「よしじゃあしばらくここで時間潰すか。」

 「どうやって潰します。」

 「ん? しりとり。」

 「...しりとり。」

 「リンゴ。」

 フレアが屋敷の主から許可を取りに行っている間、薫と花仙はしりとりをした。
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