Blood Spare of Secret : The story of Creeds

千導 翼『ZERO2005』

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第四章 バルジェリア皇国編

堅牢な城塞、双剣の狩人

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 宿屋を包む氷の塔の前で、大勢の騎士と奴隷達が戦っている中で、大きく鈍重だが堅牢な盾と片手で持てる長さじゃない双剣がぶつかり合う。耳に鳴り響く金属音が両者の戦いの幕開けを告げる。

 「盾というか、使い方はまるで鈍器だな。」

 「まぁ武器じゃなく、防具だからな。盾は。」

 両者はそんな会話をしながら、バンバは背後に回って、刺そうとするがギアバシルは即座に振り返って防ぐどころかそのまま押しのけて吹っ飛ばす。吹っ飛ばされたバンバは受け身を取って体勢を立て直し、今度は正面から切りかかると見せかけて、背後からではなく、上からでもなく、下からでもなく正面にフェイントを高速で混ぜて切り上げるがそれも防がれる。

 「しかし、盾があるからこそ、私は堅実に、より確実に相手と戦うことができる。」

 「(攻撃が全く当たらない。背後に回っても、フェイントを加えても、動きを呼んで対応しても、あいつの防御が一歩先を行っている。下手にこの剣の力を使えば、あいつはすぐに気づいて阻止してくるだろう。)」

 バンバはそんなことを考えながら、ギアバシルと一定の距離を保ったまま睨みあっている。

 「(あくまであちらから仕掛けてはこない。しかし、地の利はあっちにある。下手に距離を取りすぎたり、逃げればあいつは姿をくらまして光琳や薫の元に行くだろう。)」

 「どうした? 来ないのか? まぁ来なくてもいいさ。私はあくまで騎士団の城塞。護ることが役目だ。お前が仕掛けてこないというのなら、このまま私は監視するだけだ。お前を仲間の元へは行かせないためにな。」

 ギアバシルの煽りにバンバは目を細めながら、剣を強く握る。

 「(だが、剣の力を使わなければ、俺の攻撃が直撃しても大した傷にはならない。じゃあやることは自ずと一つに絞られる。どんな手を使ってでも隙を作って、できた隙に確実に剣の力か、弓矢を当てる。)」

 「何か思いついたか?」

 ギアバシルはそう言いながら盾を握る。バンバは一定の間合いを崩し、低姿勢から猛攻を仕掛ける。

 「無駄だ。今更そんな猛攻が一体何になる?」

 無言で攻撃を続けるバンバをいぶかしんだギアバシルは盾を前に押してバンバを押しのけたのちに、背後から切りかかってきたバンバの剣を片手で受け止める。

 「...。」

 「防御は盾だけだと思ったか?」

 ギアバシルはそう言って、盾でバンバの顔面を殴り飛ばす。

 「私は騎士であるときも、傭兵であるときもずっと盾役だ。いついかなる時も、仲間を守る為に動きを見ている。どんな微かな動きも捉えて、敵の攻撃と仲間の位置や体勢を鑑みて行動を起こす。それによって、私が率いた騎士団や傭兵達からの死傷者なぞ1人もいない。」

 「...そうか。」

 ギアバシルの言葉に吹っ飛ばされたバンバは立ち上がって、袖で唇からの出血を拭い、剣を手首と指で軽々と回し始める。

 「ん?」

 次の瞬間、バンバはギアバシルの目の前から消え、真上に現れ双剣を叩きつける。ギアバシルは盾でそれを防ぎながら、押しのける。だがまたすぐにバンバは姿を消して、盾を上に向けたことによってできた横から攻撃を仕掛けるが、また受け止められそうになり、フェイントを仕掛けて、反対の方向に移動して切りかかるが、それは盾で防がれる。

 「まだ速度を上げられるようだな。」

 「そりゃ、まぁな。」

 ギアバシルの言葉に、バンバが適当に返す。そして、隙を作る為の猛攻の手を緩めず、更に速度を上げていく。

 「この一撃...この一振り...轟き、震え、界を断ち...」

 「...ん?」

 そうして、盾で防がせる事に集中させることで隙を作る。しかし、その作戦にギアバシルは気づきつつある。

 「絶える事なき骸の山を築く...。」

 バンバからは片方の剣を上空から叩きつける。その重みで少し沈んだところで、盾からギアバシルがバンバの姿を見た瞬間に目の前から姿を消す。そうして、完全に死角であり、見えたとしてもすぐには対応できない箇所に移動し、赤い剣身を輝かせる。

 「一撃絶骸。」

 「!?」

 完全な隙をついた一撃だった。しかし...

 「!!」

 ギアバシルは盾によって見事に一撃絶骸の剣を防いだ。その衝撃で、建物の多くが崩れたが、空間が割れそこから時間が歪み、何事もなかったかのように元に戻った。

 「くっ...(防がれたか...。一つ手の内がバレた。無意識に勝ちを急ぎすぎた。)」

 「(何だ...!? あの剣は...!? 盾で防いでなければ...もしこの手で受け止めていれば...間違いなく...死んでいた...。)」

 ギアバシルは剣の威力に驚愕しながらも、冷静に盾を下げて、剣を使ったことによって息を切らし始めているバンバを見る。

 「正直に言って今のは危なかった。あの威力といい、さっきの時空間の歪みといい、その剣は普通の武器ではないな?」

 「だとしたらどうする?」

 「そりゃ勿論警戒するとも。だが...今のお前の状態を目にしてそう易々と使えるものではないと考えている。」

 「...。」

 ギアバシルはバンバの目を見て淡々と話し出す。

 「今のがお前の出せる最大威力の攻撃であると仮定した場合。私との戦いで作った、最大限の隙を突いて、今の一撃で私を沈めることが作戦だったのだろうと思ったからだ。そうして、逃がした女性2人の加勢にいくつもりだったのだろう。だが...今の一撃だけでお前の手の内を全て晒したとも思えない。確かに最大威力だろうが...だからと言って、今の攻撃に匹敵するものをお前が持っていないとも思えない。」

 「ほう...?」

 「そうだな...例えば...〝あと2つ〟持ってたと仮定しよう。多分だが...もう片方の剣と...恐らくその弓だと考える。なぜなら...今の一撃を放った剣に対してもう一本が何もない無名の剣だとは考えられない。」

 「意外とそれがブラフかもしれないぞ?」

 「確かにその可能性はあるが、もし2つ仮定した場合。お前の持っているほかの小道具で今の一撃に匹敵する攻撃や効果を出せると訊かれると納得しかねる。」

 「じゃあなぜ弓だと思った? 弓より矢だと思うが。」

 バンバの疑問にも淡々と答えながら続ける。

 「確かに矢も目立つが...何より...お前の戦闘技術で剣での斬撃を飛ばせないとは思えないからだ。」

 「何?」

 「言ってしまえば...お前が弓を持つ必要性を感じない。お前の言った通り、矢の方が怪しい線もあるが...そんな矢を放てる弓の方が危険である線もあるというだけの話。」

 「なるほど。その予測が合ってることを願おう。」

 ギアバシルが話している間に息を整えたバンバは双剣を構えて一定の間合いを保って、動きをうかがう。そうすると、ギアバシルは盾を持っていた腕の紐をほどき始める。

 「まぁ...どの道。手の内の一つは晒されたことは事実だ。今のような攻撃がある。ほかにもそれに匹敵するものがあるかもしれない。その可能性だけで十分だ。」

 「本気を出すことにか?」

 「その通りだ。」

 ギアバシルはそう言って、盾を前に出してとてつもない速さで突撃し、反応できなかったバンバを吹っ飛ばして建物を3つ貫通させる。

 「ぐはっ...!!」

 「いつもは守りのために盾を右腕に固定して指先のみで対応している。しかし、様子見して技を出させること自体に予想以上のリスクがあると分かった今。俺の盾は仲間と自身を守る為の防具ではなく。仲間と自身を守る為の武器となった。名乗りはしたものの様子見で嘗めていたことは謝罪しよう。バンバ・キルラエル。」

 ギアバシルはそう言いながら壊れた建物の瓦礫の中で頭を押さえているバンバに盾の縁の先端で襲い掛かる。

 「反応が微妙に遅かったな? 再生能力は相当に落ちていると見える。」

 「落ちているが...2対1の時ほどじゃない。」

 「そうか...。それは結構...。」

 ギアバシルはそう言って、さっきとは比べ物にならない速度で間合いを詰めて、容赦なく盾で打ってくる。

 「ぐっ...。」

 一撃一撃が重くなった攻撃にしだいにバンバは追い詰められていく。

 「ゼクエクシェン。」

 そして、少し力を込めて打った一撃をギリギリでかわすと、盾を叩きつけたところから中心に大きな亀裂とクレーターができた。

 「一応守るべき国だろ。建物やら地面やら壊しすぎじゃないか?」

 「言ったろう? 仲間と自身のを守る為の武器になったと。」

 バンバの言葉にギアバシルはそう返しながら、盾で攻撃を仕掛けながらもう片方の手に移動させて、跳んで避けたバンバを叩き落とす。

 「弾丸クーゲル。」

 そして、一度距離を取って盾を前に向けて突撃してくる。

 「またか...!」

 今度はすぐに防御をしたものの、頭を掴まれて持ち上げられたことにより吹っ飛ばされ、そのまま他の建物を貫通しながら地面に叩きつけられる。

 「くっ...!!」

 バンバは悪あがきをするように剣を振って攻撃を当てるが、すぐに再生され攻撃の意味がない。そうして、ギアバシルは馬乗りになった状態で盾の縁を両手で持って顔面に突き立てようと落としてくる。

 「!!」

 寸前のところでバンバは剣で受け止めて、もう片方の剣で相手の目を刺そうとする。そして、避ける際にできた隙を狙って脱出し、喉元に向かって剣を薙ぎ払うが、それは片手で受け止められる。

 「喋る暇がなくなってきたな?」

 「そっちも本気を出してきた割には中々俺を殺せないな? それともまだ手を抜いているのか?」

 ギアバシルの言葉にバンバがそう返すと、ギアバシルは鼻で笑って、剣を片手で掴んだままもう一方の盾で攻撃を仕掛けるが、バンバはすぐさま、剣を掴んでいる手を斬り落とそうともう一方の剣を振り下ろす。

 「フッ...。」

 「...。」

 ギアバシルは振り下ろされた剣が当たる寸前で受け止めた剣から手を離し、それで体勢を崩したバンバにそのまま攻撃を当てるが、それと同時に倒れながら切り上げた剣に片目を斬られる。

 「ぐっ...!!」

 その痛みに一瞬だけ怯んだが、すぐにその傷は再生し元に戻る。

 「あの体勢から的確に攻撃を当てるとは大したものだ。だが、すぐにその意味もなくなる。」

 「はぁ...はぁ...。」

 「様子見の段階から動いて、あのような技も使って今度は私の攻撃を受け流しながら攻撃を加える。しかし、その攻撃も再生の前では無意味となり、疲れが蓄積されていく。肉体的にも、精神的にも限界はいずれ来る。それに、お前はもう私の動きについてこれていないし、対応はギリギリ間に合ってはいるものの、それが意味を成してない。もう...お前に勝ち目はない。諦めたらどうだ? それか、他の切り札でも見せたらどうだ?」

 「断る。」

 バンバがそう言うと、ギアバシルは捉えきれない速さで移動し、下から盾を突き出して顎を打って浮かせる。

 「ぐはっ...」

 「グリフ。」

 そこに自身を軸として盾を回し、その遠心力をそのままぶつける。

 「ヴゥォオア!!!!!」

 直撃したバンバは大量に吐血をしながら建物に叩きつけられ、座り込んでしまう。その建物に居た四方匡の国民たちはそのバンバを見て怯える。なぜなら、その時のバンバは全身が自身の血で赤く染まり、折れた骨が皮膚を貫いて飛び出していたからだ。だが、バンバはその状態であることにしばらく気づかず、立とうとした。そうして数秒経った後に自分の状態を自覚する。

 「(全身の骨が折れている。木端微塵とまで言わないが、動ける状態じゃ...なくなっている...。そこに散らばっているのは...俺の肉片か...。)」

 そうして、状況をやっと理解できている時に、ギアバシルが歩いて自身のやって来ている姿が見えた。

 「まずい...。」

 バンバは必死に立ち上がろうとするが、体が言うことを聞いてくれない。そんな中、盾を前に向けるギアバシルが見える。

 「(まさか!)」

 弾丸クーゲルを使ってくると考えたバンバは何とか動く手で落とした剣を掴む。掴んだのは...青い剣身の剣。

 「よりにもよってこれか (だが四の五の言ってる場合でもない。今の状態で使って生きていられるかは賭けだが。やらなきゃどの道死ぬ。)」

 迫ってくるギアバシルの速度が上がっていく。

 「禍々しき魔の者に告げる。否定する。己の死と敗北の可能性を。神々しき聖者に告げる。肯定する。己の生と勝利の可能性を。」

 「弾丸クーゲル。」

 「神聖...魔禍...。」

 バンバはそう告げて、剣を自身に突き立てる。

 「ん!?」

 その瞬間、バンバは青い光に包まれ、先ほどの傷がまるで無かったかのように完治し、ギアバシルの攻撃を受け止める。

 「はぁ...はぁ...。」

 「なるほど...読み通りだったな。では弓の可能性も上がったが...果たして...それを使うまでお前は私の攻撃に耐えられるか? さっきの赤い剣もそうだが、その力を使って回復したはずが...顔色が真っ青何てものじゃないぞ? 限界近いだろう? 代償か?」

 自身の攻撃を何とか受け止めたバンバにそう訊くギアバシルだが、限界近い顔を見て訊くことを止めて距離を取る。

 「ぅう...。」

 そうして、バンバは片膝をついて、座り込んでしまう。

 「いくら元々が同類といえど、その再生能力の落ち方といい、身体能力の劣化といい、弱体化は著しいな。さて、切り札と思われるもの2個使って、手の内を晒してしまっただけでなく、己を戦闘不能に己で追い詰めた。元々のお前がどれほどかは知らんが、今のお前と私ではこれほどの格差がある。もう一度言おう。お前に勝ち目はない。諦めろ。」

 「...。」

 ギアバシルがそう言うと、バンバは剣を突き立てて立ち上がる。

 「意外と往生際が悪いな。」

 「はぁ...はぁ...。すまないな。あれを使った直後は疲労が一気に来て動けたものじゃないんだ。助かった。」

 「だから何だ? 勝ち筋でもできたと?」

 「さぁな。」

 「一度目の再生した奇跡、二度目の剣を使った奇跡。三度目はないぞ?」

 「大丈夫だ。三度目のピンチはもうない。」

 自信に満ちた顔で言うバンバにギアバシルは首を傾げながらも、攻撃を仕掛けようとする。

 「...!!!」

 その瞬間に、ギアバシルの動きが止まり、口を押えて吐血する。

 「!?」

 それに驚いているギアバシルに対してバンバがいつもの顔に戻って訊く。

 「俺がただで手の内を晒したと思ってたのか?」

 それを聞いたギアバシルは自身の状態を見る。すると、鎧の関節部分の布が斬られている事に気付く。

 「お前と王女の2対1の時、一撃絶骸をあてるための隙を作る時、お前が本気を出してきた時、ずっと俺はお前に小さな傷をつけ続けてきた。気づかなかったろう? いや、気づいてはいたが、無意識に再生してただろう?」

 「何?」

 「おかげで、ここまでお前にバレることなく、作戦を実行できた。」

 「作戦だと? まさか、あの赤い剣で私に斬りかかったことも、その青い剣で自身の危機を脱することも全て作戦だったというのか?」

 「いや? そうは言わない。もちろん、あの時隙を作ったのはこの一撃絶骸を当てるためだったさ。もちろんその時もそこに比重を置いていたさ。もちろん、神聖魔禍を使わされたもの想定外ではある。だが、お前の言った通り、俺は手の内を全て晒したわけではないし、ましてや晒すにしても只では晒さない。もちろん、盾使いの頂点なんだ。防がれる可能性も考慮していた。だからこその今、お前の身に起こったことがその防がれた場合の考慮だ。」

 「毒でも仕込んだか?」

 「ああ。お前に傷をつける度、俺は少量の猛毒を投与し続けた。再生しきる前に、死滅しきる前に、何度も何度も猛毒を投与し続けた。そして、その中で、少し多い分量で、麻痺の猛毒を織り交ぜて投与した。その結果、長年の戦ってきた経験による無意識下での再生が、機械でいうところのバグのような現象を起こした。脳が、お前の体内にある猛毒と麻痺毒を再生しきった勘違いした。だから、その後に投与し続けた猛毒や麻痺毒は再生されなかった。されたのは傷口のみ。」

 バンバがそう言い終えると、ギアバシルは本当に心の奥底から笑って問う。

 「それを教えてよかったのか? 俺の意識下ならば再生は可能になる。」

 「それが狙いだ。」

 バンバの予想外の反応にギアバシルは首を傾げながらも笑っている。

 「何?」

 「麻痺の猛毒は血鎖狩人ブラッティソルの持つ再生能力と感覚の麻痺だ。その状態で、長い間猛毒に侵され続けた体を再生するのにはどのくらいかかる?」

 「そこまでかからんぞ。」

 バンバが斬りかかってくるそれをギアバシルがギリギリで受け止める。

 「!?」

 「戦いながら、麻痺した感覚と再生能力を頼りに、猛毒を治す。その間、反応が鈍るんじゃないか? 言ったな? 今のお前と私ではこれほどの格差がある。お前では勝ち目はないと。さて、俺の土俵の下ろしてきたが、これでも勝ち目がないといえるか? ギアバシル・レインアズ。」

 「ふふふ。なるほど、考えたな。だが甘いな。5分もあれば、完治できるぞ。」

 「5分もかかるのか。充分だ。」

 「(ティル...。お前の気持ちが今わかった気がするぞ。確かに...騎士団入ってからの戦いはつまらなかった。命を懸けて、仲間を守る必要もなければ、出向けばあっさりと終ってしまうほどの弱い敵。騎士になってからはずっと義務で戦っていたが...バンバ・キルラエル。覚えておこう。私の...傭兵たる魂を呼び覚ましたことを...!!!!)」

 ギアバシルは心の中で叫び、バンバに攻撃を仕掛ける。

 「攻撃や防御の硬さは微塵も変わらんぞ!!」

 「だが動きは鈍い!!」

 バンバの剣とギアバシルの盾が激しくぶつかり合う。

 「「うおおおおおおおお!!!!」」

 両者の咆哮と共に、速度はどんどん加速していき、ギアバシルの鎧は壊れ始め、バンバの体からは血が噴き出す。そうしている間に刻々と時間は過ぎていく。

 「はぁ!!!」

 「ぐぼぁっ...!!!」

 そうして、5分が経過した。麻痺も猛毒も完全に再生させたギアバシルはバンバを吹っ飛ばして、盾を構える。

 「見事だ。全力を出せぬ身でありながら、よくもここまで私を追い詰めたものだ。私がこれまで戦ってきた血鎖狩人ブラッティソル異能力者スペアネルにも匹敵する。いや、一部はそれを超える苦戦を強いられた。バンバ・キルラエル。覚えておこう。」

 ギアバシルはそう言って、バンバに盾を叩きつける。

 「ふっ...。」

 「ん!?」

 その寸前で閃光と手榴弾を同時に投げる。それをギアバシルは後ろに跳びながら目を押さえて距離を取る。一方投げたバンバは手榴弾の爆風で後ろに跳んで更に距離を取り、弓を手に取り、矢をつがえずに引く。

 「回る刻限、変える領域、作られるは世界。」

 青い弓は藍色に輝きだす。それを見たギアバシルは弾丸クーゲルで間合いを詰めてくる。

 「定められた掟、縛り付ける秩序、捻じ曲げるはこの一矢。」

 「させるものかぁ!!」

 「界時曲空かいじきょっくう。」

 そうして、ギアバシルの攻撃が当たる直前で弓は引かれる。次の瞬間、ギアバシルの全身から血が吹き出た。

 「ぐぼぁ!!」

 「お前が再生を終わらせて、俺に止めを刺してくるだろうと踏んでいたさ。だからこそ、ここまで来た。一撃絶骸も防がれ、俺の土俵まで下ろしてきても倒せなかった場合の手段として、この弓の力があった。」

 「くっ...!!」

 「この弓の能力は時間と空間に干渉することによって、未来と過去の出来事を現在に持ってくる力。まぁそんな大それたことをすれば、俺もどうなるかわからん。だからこそ、この戦いでお前につけた傷口、猛毒、麻痺、それらを全て今の時間に持ってきた。それによって、体力がほぼ0に近いお前は再生ができなくなる。再生もあれはあれで疲れるからな。これが俺の最後の作戦だ。これすら破られれば、死ぬことも覚悟していた。だが、うまくはまったようだ。」

 バンバはそう言って、赤い剣を構える。

 「!!」

 「この作戦は神聖魔禍を使わずとも2つに武器を使う事になる。しかも一撃絶骸を2回だ。とんでもなくリスキーだからこそやりたくはなかったが、やらざる終えなかった。だが、詠唱有りきでこの武器を振るうことはできない。だから、名称のみでの決着だ。」

 「(あれを...今の私に...!? いや...今、あんなものを振るわれればティルにも衝撃波が飛ぶ可能性がある! 立て! ギアバシル! お前はティルジェイ傭兵団の副団長だろう? ティルの右腕だろう!)」

 「何...!?」

 起き上がろうとするギアバシルを見てバンバは驚愕しながらも赤い剣身を輝かせる。

 「一撃絶骸!!!」

 「命界ローボスト・フェスタング!!!」

 ギアバシルがそう叫んだ瞬間、盾を軸に透明な光のような巨大な盾が現れ、一撃絶骸の剣とぶつかる。

 ヴォォォォォォォォォン!!!!!!

 凄まじい轟音と共に、空間がひび割れ、時間が巻き戻る現象が起こる。

 「何!?」

 「初めて動揺したな? バンバ・キルラエル!」

 「(まずい。もう手はないぞ!?)」 

 「見事だ。」

 「ん?」

 「私の...負けだ...。」

 その瞬間、透明な盾の壁は割れ、盾で防いでいたギアバシルは立ったまま気を失っていた。

 「...はぁ...はぁ...。ぅ...待っていろ...光琳...薫...すぐに...向かう...ぞ...。」

 それを見届けたバンバは一撃絶骸の剣を鞘に戻して、フラフラになりながらもその場を離れた光琳たちの元に向かおうと歩みを進めたが、すぐに倒れた。

 ギアバシル・レインアズ vs バンバ・キルラエル

 勝者:バンバ・キルラエル
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