神様を育てることになりました

菻莅❝りんり❞

文字の大きさ
18 / 55

14 ギルドマスター

しおりを挟む
翌朝。昨夜はアリアちゃんを不安にさせたと聞いたので、午前中はアリアちゃんとアルフレッド君、ラグ達と一緒に遊んだ。

そして、お昼を食べた後ウィルさんに出かける事を伝えてギルドへ向かった。

そして、昨日の受付のお姉さんがいたので、お姉さんに声をかけた。

「あの、ウィルさんはいますか?」

お姉さんは俺の事を覚えていたらしく、

「すぐにお呼びしますね」

と言って、席を立った。そしてすぐにお姉さんとウィルさんがやってきて

「ヨミさん、お待ちしてました。それでは三階に案内しますので、ついてきてください」

そう言って俺の前を歩いていった。

俺はウィルさんについて三階に行く。ウィルさんはギルド長の部屋を通りすぎ、さらに奥へと進んだ。

そして、ウィルさんが足を止めた場所のドアの見ると、ギルドマスターとプレートに書かれていた。

ウィルさんがドアをノックして

「マスター、ヨミさんをお連れしました」

と言うと

「入れ」

と渋めの低い声がした。

ウィルさんに続いて部屋にはいると、50代位の紳士なおじ様という表現が合う男の人がいた。
その他に、小柄な女性とメガネをかけた真面目そうな男性も部屋のソファに座っていた。

「君がヨミか?ウィルに聞いていたがAランクとは思えぬ容姿だな。」

小柄な女性から発せられた言葉とは思えない、男勝りな言い方に一瞬脳が混乱した。

「レミ、人は見た目ではないですのよ。冒険者ギルドの長なら見た目で判断してはいけません。それに貴女が言えることですか?」

「ふん!」

左右の一人用のソファに座っていた男女の言い合いで少し部屋の空気が重くなった気がした。

「君たちそのくらいにしなさい。お客人が困っていますよ。お客人、気にせずにどうぞお座り下さい」

何か書類仕事をしていたマスターは、その書類をウィルさんに渡し、受け取ったウィルさんはそのまま部屋から出ていった。

「え?あれ?ウィルさん?」

ギルドのトップ3と一人で立ち向かえと?

「そんな顔をしなくても、とって食いはしませんから、安心して下さい。どうぞ」

マスターが奥の一人用のソファに座り、メガネの男性が、マスターとその向かいの席にお茶を置きながら言った。
俺は促されるまま席に座った。

「そう緊張しなくてもいいですよ。といっても無理ですかね?まずは自己紹介からしましょう。私はここのギルドマスターを任されています、タジールと言います。そして、ギルド長のレミと商業ギルド長のアシムです。以後よろしくお願いしますね」

と前置きをし、マスターはなぜ俺がここに呼ばれたのかを話した。

曰く、ビルナの冒険者ギルドのギルド長からビルナのギルドマスターを通じて、俺のファローを頼まれたとのこと。

でも一人の冒険者を特別扱いするわけにはいかないので、俺の為人を見て判断すると返事をしたこと。

ビルナのギルドマスターの意見で、Aランクが無期限になり、それにあわせてAランクでも指名依頼が義務付けられたこと。など、一つ一つ丁寧に説明された。

「一つ、質問いいでしょうか?」

説明の後に、マスターがそう言ってきた。

「はい。答えられることなら」

俺が頷くと

「あなたが望む未来とは何ですか?」

ギルドのトップ3の真剣な目が俺を見ていた。
質問の意図は分からないけど、戸惑いながらも俺なりに真剣に考えて

「綺麗事だと、無責任な理想論だと理解してはいるのですが、やっぱり争いもなく、誰も飢えることも差別される事もない未来ですかね。欲を言えば、誰もが手を取り合える世界が理想ですが、そんなことは無理だと知っているのでそこまでは望みません」

消えたはずの生前の記憶なのか。誰かに罵倒されて、殴られている記憶がぼんやりと浮かんで、すぐに消えた。

俺の答えに誰も反応しないことに、いつの間にかうつむいていた頭を上げると、マスターは笑顔のまま固まり、レミさんは苦虫を噛み潰したよう顔をして、アシムさんはメガネを指で押さえて目を瞑っていた。

そんな三者三様の反応から最初に声を発したのは、レミさんだった。

「本っ当に綺麗事だね。あんた相当平和な国から来たんだね。というかそんな国、この世界に無いけど、どっから来たのさ」

物凄い嫌悪感丸出しでレミギルド長が言った。

『ヨミ!ここ嫌!邪心が渦巻いてきてる!』

『あの子、相当な闇を抱えているわね。でもコントロールは出来ていたわ。今まで邪心を感じなかったもの。ヨミの話があの子の何かに触れたのね』

俺は怖がってるラグをポケットの上から撫で、レティの言葉に唇を噛み締めた。
わざとじゃなくても、誰かの心の傷を抉ったのだ。

俺が自分を責めていると

「レミ、やめなさい。ヨミさん、すみません。ヨミさんに悪気があったわけではないことは分かっています。それにこちらの事情なども知らないのですからなにが悪いのかも分からないですよね」

アシムさんはレミさんの側へ行き、俯いて何かに耐えるように拳を握りしめているレミさんの背中を優しく撫でていた。
そこには初対面での犬猿な仲は微塵も感じられなかった。

俺が二人の様子に驚いていると

「フッ、驚くのも無理はありません。ですが二人は夫婦なんです。顔を見合わせれば口喧嘩ばかりしているのに、人の縁とは不思議なものですね」

まるで子供を見守るように目を細めて二人を見ていたマスターは、すぐに俺に向き直り

「なにがあったから詳しくは言えませんが、言えるのはレミは孤児だったということです。アシムも」

一瞬、なんとも言えない表情をしたマスターはすぐに笑顔を作り

「ヨミさんの考えは分かりました。我がギルドもあなたのフォローをしましょう。ただし、表立っては出来ないので、こっそりとになってしまいますが、全力でフォローはしますよ」

こっそりなのに全力って、矛盾してない?してないのか?どっちだ?とりあえず俺はお礼を言って、レミさんとアシムさんには一礼だけをして部屋を出た。自分のなにが悪かったのか分からないまま謝ったって、逆にレミさんをまた怒らせることになりそうだったから。

それから数日はアケルで依頼をしながらのんびりとした。本当はギルドでの出来事のあと、翌日にはアケルを出るつもりで夕食の席で話したのだが、アリアちゃんが大泣きしてしまい、フレッド君も寂しそうな顔をしたので、慌ててあと数日お世話になると言ってしまったのだ。

ギルドの依頼をしつつ、アリアちゃんとフレッド君とも遊び(主にラグとレティが)、リアさんやセドリックさん(本人からなぜか様は要らないと言われた)とも、お茶をしながらのんびりと過ごしていたけど、西の方から不穏な気配を感じ、ラグ達もそわそわしだしたので、アリアちゃんに泣かれながらもアケルを出発した。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

神の加護を受けて異世界に

モンド
ファンタジー
親に言われるまま学校や塾に通い、卒業後は親の進める親族の会社に入り、上司や親の進める相手と見合いし、結婚。 その後馬車馬のように働き、特別好きな事をした覚えもないまま定年を迎えようとしている主人公、あとわずか数日の会社員生活でふと、何かに誘われるように会社を無断で休み、海の見える高台にある、神社に立ち寄った。 そこで野良犬に噛み殺されそうになっていた狐を助けたがその際、野良犬に喉笛を噛み切られその命を終えてしまうがその時、神社から不思議な光が放たれ新たな世界に生まれ変わる、そこでは自分の意思で何もかもしなければ生きてはいけない厳しい世界しかし、生きているという実感に震える主人公が、力強く生きるながら信仰と奇跡にに導かれて神に至る物語。

おいでよ!死にゲーの森~異世界転生したら地獄のような死にゲーファンタジー世界だったが俺のステータスとスキルだけがスローライフゲーム仕様

あけちともあき
ファンタジー
上澄タマルは過労死した。 死に際にスローライフを夢見た彼が目覚めた時、そこはファンタジー世界だった。 「異世界転生……!? 俺のスローライフの夢が叶うのか!」 だが、その世界はダークファンタジーばりばり。 人々が争い、魔が跳梁跋扈し、天はかき曇り地は荒れ果て、死と滅びがすぐ隣りにあるような地獄だった。 こんな世界でタマルが手にしたスキルは、スローライフ。 あらゆる環境でスローライフを敢行するためのスキルである。 ダンジョンを採掘して素材を得、毒沼を干拓して畑にし、モンスターを捕獲して飼いならす。 死にゲー世界よ、これがほんわかスローライフの力だ! タマルを異世界に呼び込んだ謎の神ヌキチータ。 様々な道具を売ってくれ、何でも買い取ってくれる怪しい双子の魔人が経営する店。 世界の異形をコレクションし、タマルのゲットしたモンスターやアイテムたちを寄付できる博物館。 地獄のような世界をスローライフで侵食しながら、タマルのドキドキワクワクの日常が始まる。

念願の異世界転生できましたが、滅亡寸前の辺境伯家の長男、魔力なしでした。

克全
ファンタジー
アルファポリスオンリーです。

異世界に転生した社畜は調合師としてのんびりと生きていく。~ただの生産職だと思っていたら、結構ヤバい職でした~

夢宮
ファンタジー
台風が接近していて避難勧告が出されているにも関わらず出勤させられていた社畜──渡部与一《わたべよいち》。 雨で視界が悪いなか、信号無視をした車との接触事故で命を落としてしまう。 女神に即断即決で異世界転生を決められ、パパっと送り出されてしまうのだが、幸いなことに女神の気遣いによって職業とスキルを手に入れる──生産職の『調合師』という職業とそのスキルを。 異世界に転生してからふたりの少女に助けられ、港町へと向かい、物語は動き始める。 調合師としての立場を知り、それを利用しようとする者に悩まされながらも生きていく。 そんな与一ののんびりしたくてものんびりできない異世界生活が今、始まる。 ※2話から登場人物の描写に入りますので、のんびりと読んでいただけたらなと思います。 ※サブタイトル追加しました。

捨て子の僕が公爵家の跡取り⁉~喋る聖剣とモフモフに助けられて波乱の人生を生きてます~

伽羅
ファンタジー
 物心がついた頃から孤児院で育った僕は高熱を出して寝込んだ後で自分が転生者だと思い出した。そして10歳の時に孤児院で火事に遭遇する。もう駄目だ! と思った時に助けてくれたのは、不思議な聖剣だった。その聖剣が言うにはどうやら僕は公爵家の跡取りらしい。孤児院を逃げ出した僕は聖剣とモフモフに助けられながら生家を目指す。

オバちゃんだからこそ ~45歳の異世界珍道中~

鉄 主水
ファンタジー
子育ても一段落した40過ぎの訳あり主婦、里子。 そんなオバちゃん主人公が、突然……異世界へ――。 そこで里子を待ち構えていたのは……今まで見たことのない奇抜な珍獣であった。  「何がどうして、なぜこうなった! でも……せっかくの異世界だ! 思いっ切り楽しんじゃうぞ!」 オバちゃんパワーとオタクパワーを武器に、オバちゃんは我が道を行く! ラブはないけど……笑いあり、涙ありの異世界ドタバタ珍道中。 いざ……はじまり、はじまり……。 ※この作品は、エブリスタ様、小説家になろう様でも投稿しています。

処理中です...