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25 一難去って?
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廃教会を出ると外は薄闇に染まっていた。
「神様に呼ばれると時間の感覚がおかしくなるな」
と、空を見上げると月の色が変化しているのに気づいた。
「おお?いつの間に。そっかもう秋かぁ」
この世界は、月の色によって1ヶ月が分かれている。その為、一年は四ヶ月。1ヶ月は90日。一週間は7日である。
ちなみに、金(日曜)→火(月曜)→氷(火曜)→水(水曜)→土(木曜)→木(金曜)→風(土曜)である。
涼しくなった風に秋を感じながら、腹ペコのラグのために急いでギルドへ足を進めた。
ギルドへ戻り、部屋の確認を取り、空いている部屋を借りると少し混んでいる食堂へ向かった。
「うーん。ラグ達を出すとなると少し開けた所がいいよな」
とキョロキョロしていると、後ろから声をかけられた。
「お前がヨミか?」
後ろを振り返ると、三十代くらいの男性がいた。しかも、片足がなかった。
その事に驚いて思わず凝視していたら
「うん?ああ。これな。若気の至りよ。で、ヨミであってるな」
「え?あっはい、、あっ!すみません。驚いたあまり凝視してしまいました」
「ハハ、いいってことよ。食事は運ばせるから、ちとついてきてくれるか」
と言って歩きだしてしまった。しかも、杖を使っているけれどその歩みは早く、俺が呆然としている間に三階の階段の上まで行っていた。俺は慌ててその後を追った。
着いていった先は、予想を裏切りマスターの部屋だった。
俺はドアのプレートと男性を何度も見てしまった。
「ほら、早く入れ。なんだ、冒険者ギルド長と思ったか?まぁ、あながち間違いではないけどな。何せマスターになったのはつい最近だからな。それまではここの冒険者ギルド長だったからな」
促されるまま部屋へ入った。そこで初めて部屋の現状に気づいた。
書類らしき紙や丸めてくしゃくしゃになった紙、インクのシミなどかなり乱雑な状況だった。
マスターは杖で道を作り、机の上のモノを下へ落とした。
「ソファの上のモノをどかしてそこに座ってくれ」
進められたソファを見ると、色々なモノが山積みになっていた。
俺はひきつる顔をそのままマスターに向け、許可を求めた。
「この部屋にあるもの全てに触れてもいいですか?書類関係は決して見たりしないので」
マスターは部屋を見渡し
「ああ、かまわないが」
言質を取ってすぐに、部屋のモノを全て収納へ納め、丸まってない紙と丸めた紙に即座にまとめ、丸まってない紙は執務机の上に、丸めた紙も勝手に捨てるわけにはいかないので執務机の左下にまとめて出した。
そして、明らかにゴミと思えるものも、勝手に捨てるわけにはいかないけど、手持ちのゴミ袋に分別して入れ執務机の前に置いた。
さすがに、絨毯のシミまで手を出せばきりがないのでそこまではしなかった。
かなりスッキリした部屋を見て俺は満足し、進められたソファにこっそりクリーンをかけ座った。
この間わずか10秒。あまりの早さにマスターは、部屋が片付いたのに気づくまで許可を出した姿勢のまま固まっていた。
「・・・はっ!」
マスターは部屋を見渡し、きれいに片付けられ部屋を見て
「おぉ。数日ぶりの床だ」
そういえば、マスターがマスターになったのって最近って、、、
「あの、、」
俺が具体的にいつからマスターになったのか聞こうとしたら、ノックもなしにドアが開いた。
「なかなか来ないと思えば、なんでここに案内してんですか!会議室空けるからそこに案内しろって言いましたよね!!」
ものすごい形相の美人が、乱暴なのか丁寧なのかわからない言葉使いで怒鳴り込んできた。
俺は驚いて、無意識にレティ達のいるバッグを抱えていた。マスターはのほほんと
「おお、丁度良かった茶を頼む」
あっ、額の青筋が濃くなった
「このおバカ!茶を頼むじゃない!皆待ってるんです!行きますよ!君、着いてきて」
と、マスターを引きずるように部屋を出ようとした足を止めた美人。その場で首を傾げ、ゆっくりと振り返り部屋を見渡した。
マスターは今だ!と言うように、美人の手から逃れた。
しかし、また即座にしかも、その場に正座をさせられていた。
(動きがまったく見えなかった、、、しかし、ここの人は器用だな。笑顔で怒れるって)
俺はソファから動けずに、その場で二人を見ていることしか出来なかった。
「珍しいですね?あなたが就任してこの5週間。就任初日から部屋を散らかして、掃除しても、片付けてもすぐに汚すあなたが、部屋を片付けたのですか?それとも、お客様に、片付けさせたのですか?」
マスターはものすごく目を泳がせて、なにも言えずに見ていた俺と目が合うと
「彼の善意だ!俺が強要した訳ではない!」
まぁ、確かに強要されてはいないけど、そこまで強調しなくても、、、
俺は意を決して口を開いた。
「マスターの言うように、強要はされてはいませんが、、足の踏み場もなく、座る場所もなければ、まず片付けますよね?」
念のためにマスターの許可も取ったし、収納があるからやっただけで、収納がなければソファまでの道とソファの上だけしか片付けなかったよ。さすがに部屋全体の片付けはしなかったよ。時間的にも
美人は一度マスターを睨みつけてから、俺に向き直り頭を下げた。
「お手を煩わせて申し訳ありませんでした。こちらの手違いでこの汚部屋に通してしまい、重ねてお詫びいたします。そして、申し訳ないのですが本来のお部屋へご案内いたしますので、ご移動をお願いします」
マスターが逃げないように押さえつけながらも、俺に丁寧に対応してくれた。
しかし、がたいの良いマスターを女性の細腕で、それも片手で押さえつけられるなんて、相当強いんだろうな
「いえ、マスターの許可を取ったとは言え勝手して申し訳ありませんでした。誓って書類の中身は見ていませんので」
といって、俺はソファから立った。美人さんはマスターを睨み
「いつまで座ってるんですか。さっさと立って行きますよ」
押さえつけられていたのに理不尽だと思わなくもないけど、あえて俺は何も言わず二人についていった。
「神様に呼ばれると時間の感覚がおかしくなるな」
と、空を見上げると月の色が変化しているのに気づいた。
「おお?いつの間に。そっかもう秋かぁ」
この世界は、月の色によって1ヶ月が分かれている。その為、一年は四ヶ月。1ヶ月は90日。一週間は7日である。
ちなみに、金(日曜)→火(月曜)→氷(火曜)→水(水曜)→土(木曜)→木(金曜)→風(土曜)である。
涼しくなった風に秋を感じながら、腹ペコのラグのために急いでギルドへ足を進めた。
ギルドへ戻り、部屋の確認を取り、空いている部屋を借りると少し混んでいる食堂へ向かった。
「うーん。ラグ達を出すとなると少し開けた所がいいよな」
とキョロキョロしていると、後ろから声をかけられた。
「お前がヨミか?」
後ろを振り返ると、三十代くらいの男性がいた。しかも、片足がなかった。
その事に驚いて思わず凝視していたら
「うん?ああ。これな。若気の至りよ。で、ヨミであってるな」
「え?あっはい、、あっ!すみません。驚いたあまり凝視してしまいました」
「ハハ、いいってことよ。食事は運ばせるから、ちとついてきてくれるか」
と言って歩きだしてしまった。しかも、杖を使っているけれどその歩みは早く、俺が呆然としている間に三階の階段の上まで行っていた。俺は慌ててその後を追った。
着いていった先は、予想を裏切りマスターの部屋だった。
俺はドアのプレートと男性を何度も見てしまった。
「ほら、早く入れ。なんだ、冒険者ギルド長と思ったか?まぁ、あながち間違いではないけどな。何せマスターになったのはつい最近だからな。それまではここの冒険者ギルド長だったからな」
促されるまま部屋へ入った。そこで初めて部屋の現状に気づいた。
書類らしき紙や丸めてくしゃくしゃになった紙、インクのシミなどかなり乱雑な状況だった。
マスターは杖で道を作り、机の上のモノを下へ落とした。
「ソファの上のモノをどかしてそこに座ってくれ」
進められたソファを見ると、色々なモノが山積みになっていた。
俺はひきつる顔をそのままマスターに向け、許可を求めた。
「この部屋にあるもの全てに触れてもいいですか?書類関係は決して見たりしないので」
マスターは部屋を見渡し
「ああ、かまわないが」
言質を取ってすぐに、部屋のモノを全て収納へ納め、丸まってない紙と丸めた紙に即座にまとめ、丸まってない紙は執務机の上に、丸めた紙も勝手に捨てるわけにはいかないので執務机の左下にまとめて出した。
そして、明らかにゴミと思えるものも、勝手に捨てるわけにはいかないけど、手持ちのゴミ袋に分別して入れ執務机の前に置いた。
さすがに、絨毯のシミまで手を出せばきりがないのでそこまではしなかった。
かなりスッキリした部屋を見て俺は満足し、進められたソファにこっそりクリーンをかけ座った。
この間わずか10秒。あまりの早さにマスターは、部屋が片付いたのに気づくまで許可を出した姿勢のまま固まっていた。
「・・・はっ!」
マスターは部屋を見渡し、きれいに片付けられ部屋を見て
「おぉ。数日ぶりの床だ」
そういえば、マスターがマスターになったのって最近って、、、
「あの、、」
俺が具体的にいつからマスターになったのか聞こうとしたら、ノックもなしにドアが開いた。
「なかなか来ないと思えば、なんでここに案内してんですか!会議室空けるからそこに案内しろって言いましたよね!!」
ものすごい形相の美人が、乱暴なのか丁寧なのかわからない言葉使いで怒鳴り込んできた。
俺は驚いて、無意識にレティ達のいるバッグを抱えていた。マスターはのほほんと
「おお、丁度良かった茶を頼む」
あっ、額の青筋が濃くなった
「このおバカ!茶を頼むじゃない!皆待ってるんです!行きますよ!君、着いてきて」
と、マスターを引きずるように部屋を出ようとした足を止めた美人。その場で首を傾げ、ゆっくりと振り返り部屋を見渡した。
マスターは今だ!と言うように、美人の手から逃れた。
しかし、また即座にしかも、その場に正座をさせられていた。
(動きがまったく見えなかった、、、しかし、ここの人は器用だな。笑顔で怒れるって)
俺はソファから動けずに、その場で二人を見ていることしか出来なかった。
「珍しいですね?あなたが就任してこの5週間。就任初日から部屋を散らかして、掃除しても、片付けてもすぐに汚すあなたが、部屋を片付けたのですか?それとも、お客様に、片付けさせたのですか?」
マスターはものすごく目を泳がせて、なにも言えずに見ていた俺と目が合うと
「彼の善意だ!俺が強要した訳ではない!」
まぁ、確かに強要されてはいないけど、そこまで強調しなくても、、、
俺は意を決して口を開いた。
「マスターの言うように、強要はされてはいませんが、、足の踏み場もなく、座る場所もなければ、まず片付けますよね?」
念のためにマスターの許可も取ったし、収納があるからやっただけで、収納がなければソファまでの道とソファの上だけしか片付けなかったよ。さすがに部屋全体の片付けはしなかったよ。時間的にも
美人は一度マスターを睨みつけてから、俺に向き直り頭を下げた。
「お手を煩わせて申し訳ありませんでした。こちらの手違いでこの汚部屋に通してしまい、重ねてお詫びいたします。そして、申し訳ないのですが本来のお部屋へご案内いたしますので、ご移動をお願いします」
マスターが逃げないように押さえつけながらも、俺に丁寧に対応してくれた。
しかし、がたいの良いマスターを女性の細腕で、それも片手で押さえつけられるなんて、相当強いんだろうな
「いえ、マスターの許可を取ったとは言え勝手して申し訳ありませんでした。誓って書類の中身は見ていませんので」
といって、俺はソファから立った。美人さんはマスターを睨み
「いつまで座ってるんですか。さっさと立って行きますよ」
押さえつけられていたのに理不尽だと思わなくもないけど、あえて俺は何も言わず二人についていった。
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