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微笑みの道化
しおりを挟む「とぉりゃっ!」
大剣が振り落とされると同時に魔物は屑へと変わった。
「リック隊長! 相変わらずの良い戦いっぷりです!」
隊員の一人がそう言うと
「まああれですね。リックの得意な分野ですから。おかげで僕はサボりですよ」
とハーグが笑う。それにつられるように皆も笑い
「まあハーグのサポートあっての私だからな。それに、旅で来てくれた彼らのおかげで魔物との戦う意欲というものも変わった。それも大いにあると思う」
リックの言葉に皆はうなずいた。
「それじゃあ交代としよう。後は任せた」
リックとやりとりした隊員は魔物の侵入を観察する体制に入る。
「僕らは家に戻りますかね」
「ああ、休憩も大事だ」
リックはハーグを誘導するように家へと向かう。扉を開けハーグを家に入れ、そして自らも入り扉に鍵を閉める。台所へと移動し、リックは椅子を引いてハーグを座らせる。背負っていた大剣を壁に立てかけるとリックは椅子に座り大きなため息をついた。
「はぁー……」
そのため息に口を開いたのはハーグだった。
「リック、いつもありがとう。私の芝居に付き合わせて、悪いね」
いつもとは違う口調。
「それはお互い様だろう? 俺だって冷静を装うのは結構気遣うんだ」
リックとハーグの口調はヴィッツたちが会ったとき、そして町の人たちとの接し方とは違っていた。
「それに約束したじゃないか。『私が道化を演じる代わりに、君は真面目なリーダーを演じてくれ』と。それがお前にとって一番気楽な生き方だから、俺はお前に協力して……いや共に生きていく上での大事なことだって。目が見えないことでからかわれるくらいなら、最初からからかわれる役を演じた方が良いって。まあ今となってはそれが染みついてしまったがな」
リックはフフッと笑いながら言う。
「うん。私を助けてくれたのはいつも君だった。でも君の背中で守られてばかりも違うかなって。幸い精霊と契約できて魔法が使えるようになったから、君の手助けと称してペアを組んでいる。私は君がそばに居ないと何もできないからね」
そう言ってハーグはリックの方を向く。
「町の人たちはぼんやりと形が見えるだけ。旅で立ち寄った彼らは精霊が強かったからもう少しはっきり見えた。でも私にとって一番目印でくっきりと見えるのは君だけなんだ。君が道しるべになってくれないと、私は何も出来ない、出来なかった。君と、リックと出会えたことは本当に良かったって思うよ」
ハーグはにこやかに笑う。
「よせよ。腐れ縁みたいなもんだろう? 俺だって嫌々付き合ってるわけじゃない。むしろお前と居る方が安心できる。迷惑だとかそういうことはこれっぽっちも思ってないんだ。遠慮なく頼れ。俺はお前を生かすためにいるようなもんなんだから」
リックもそう言って笑いながらハーグを見る。
「お互い様ってわけだね」
「そういうこった」
二人はクスクスと笑う。
「さあ、昼過ぎだ。今日は何が食べたい?」
リックの問いに
「そうだなぁ。じゃあ……」
ハーグはいろいろと悩みながら料理の注文をする。テキパキと下ごしらえを終え、リックは料理をする。そんな背中をハーグは見つめる。できあがった料理をハーグの前に並べ、リックは隣に座る。ある程度は物も察知出来るが完全ではない。人の手助けなしではハーグは料理を作ることは出来ない。リックに手伝ってもらってスプーンを手に取り、料理を口にする。
「相変わらず大雑把な味だね」
「悪かったな。料理はそんなに得意じゃないんでな」
「でもそういうところも合わせて、私はこの味が好きだよ」
「これでマズいなんて言われようものなら、俺じゃもうハーグの世話が務まらないからな。そう言ってもらえるだけありがたいよ」
こうしてひとときの「素の二人」の時間を過ごすのだった。
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