気が付いたら異世界で孤児だったけど、立派な宇宙海賊になってみせます~貧民惑星から始める転生成り上がり銀河無双~

渋谷千立

文字の大きさ
21 / 68

ようこそ末期ギルド支部へ

しおりを挟む
ケルベロス・スロット宇宙ステーション、それはこの宙域で唯一と言っていいほど、数少ないまともな宇宙ステーションだ。
他のステーションはほとんどが非合法なものばかりで、とてもじゃないが行きたいとは思わない。

「ここがケルベロス・スロットの宇宙ステーションか。思ってた通りのところだな。まぁ、他のステーションよりはマシなんだろうけどさ」

「ずいぶんくたびれた場所だねぇ。ここ根城にするの?」

「他のとこよりマシなはずだ。非合法ステーションなんてキョウカを外に出せないだろ。危なくて」

「まぁ、そうだけどさぁ。ここも治安悪そうだよ?」

キョウカは、アイカに手を引かれて艦のタラップを降りていた。さっきまでのおやつテンションはどこへやら、見慣れない景色に目をぱちくりとさせている。

「おにいちゃん……ここ、くさい」

「それはな、治安が悪い場所あるあるだ」

マリナが苦笑いする。

「そもそも宇宙ステーションって言っても、華やかなとこばっかじゃないからね。汚れた空気に、路地裏には違法屋台、スラムの入口にはパーツ泥棒──定番ってやつ」

「お前、なんでそんなに詳しいんだよ……」

「えーと……前の仕事でちょっと?」

「“ちょっと”の規模じゃねぇよな……」

辺りを見渡せば、サビだらけの船体がむき出しになったままの整備ドック、壁面には剥がれかけのネオンサイン。所々で売買されているのは、パーツとも食材とも言い難い何か。

「やっぱ……宇宙の底辺って感じだな。だが、ここをうまく使えれば、しばらくの拠点にできる」

「問題は……このボロさと、こっちをジロジロ見てくる目線の多さだねぇ」

「心配するな。アイカ、ステーション内のセキュリティレベル確認」

「確認しました。この宙域にしては比較的良好。武装ギャングの数は平均以下、腐敗役人の比率はやや高めですが、賄賂次第で交渉余地はありそうです」

「……参考になるようなならないような分析だな」

「とりあえず、ギルドに向かうか。行くぞ、マリナ、キョウカ。アイカは留守を頼む」



そうしてたどり着いた星間海賊ギルド。そこは……

「ずいぶんと寂れてるな。人、いるのか?」

「一応OPENの看板あるよ。電球切れかけてるけど」

「ここも、きたない……」

「いくぞ」



「しゃーせ……ようこそ星間海賊ギルド……ケルベロス・スロット支部へ……」

出迎えてきたのは覇気のない受付嬢。

「依頼っすか……それならそこの端末に……」

受付嬢は、目の下にくっきりクマを浮かべたまま、機械的に指をさす。髪はボサボサ、制服はシワだらけ。お世辞にも“やる気”という単語は見当たらない。

「……すごい。これでやっていけてるのか……?」

「ギルドとしての機能は……一応、あるっぽいね」

「おなかすいてるのかな?」

「たぶん違うな、キョウカ。あれは“社会に疲れた大人”だ」

「そーっすよ……社会が悪いんすよ……」

「うわ、聞こえてた」

端末はというと、時代遅れのタッチパネル式。画面の反応がワンテンポ遅れるたびに、ギルドの財政状況が想像できてしまう。

「……ほとんど依頼ねぇな。緊急警備、貨物護送、賞金首のマークが数件……あとは……」

「“謎の生物調査協力”、ってのもあるね。報酬少なっ」

「どれも割に合わねぇな。ここ、支部ってより“末期”だな」

と、そこで受付嬢がぽつりとつぶやく。

「最近はもう、ギルドもなり手が減ってて……人も滅多に来ないし……」

「それにギルドを介さない依頼が多くて……」

「つまり、競争相手が少ないってことか」

「……逆に言えば、目立てば目立つほど狙われるとも言うっすけどね……」

「それは……まぁ、知ってる」

「でも、目立たなきゃ船も装備も維持できないからな。とりあえず──登録内容だけ確認しておくか」

端末に認証データを通すと、コウキたちの登録情報が表示される。

【艦名】ヘッジホッグ/ハイペリオン
【艦長】コウキ(海賊ランク:C)
【登録乗員】マリナ(本登録)、キョウカ(登録申請中)
【搭載火力】中口径レールキャノン、他多数、牽引ビーム、AIサポートシステム:A等級
【評価】準定期航行艦/独立運用可/拠点利用可

受付嬢がちょっと目を見開いた。

「あれ、思ったよりちゃんとしてるっすね……この艦。A等級AIって、今どき珍しいな」

「まあ、見た目はちょっとクセあるけどな。性能はいいぞ」

「ふーん……じゃあ、Bランク昇格審査、受けてみます? この宙域の実績と評価基準なら、通るかもですよ。それにCランクだと稼げないっすよ、ここ」

「Bランクか……」

マリナがぼそっと呟く。

「昇格できれば、もう少しマシな依頼も回ってくるようになるし……」

「キョウカの登録も、それで通しやすくなるな」

「うん……はやくいちにんまえになりたい」

「よし。なら、やってみるか。条件は?」

受付嬢は、端末をカチカチといじって言った。

「支部長、今昼寝してるんで、起きたら審査手続きしますね……しばらく待合スペースで待っててください」

「……昼寝」

「“やる気がない”のライン、超えてないか……?」



しばらくして、上の階からくたびれた男が降りてきた。

「……俺が支部長のオニックだ。Bランク昇格審査だな。……ふむ、戦闘評価は基準値越え、依頼達成率は……100%か。うん、問題ない。よし、昇格」

「嬉しいけど、いいのかそれで……」

「そこのちっこい嬢ちゃんのID登録も許可。……はい、登録完了。以上。解散」

そう言って、オニックはさっさと上の階へ戻ってしまった。

「……じゃあ、追加された依頼、見てみるか」

端末を操作すると、画面いっぱいに依頼リストがあふれ出す。

「なんだこの量……おかしいだろ。しかも、ほとんどが違法海賊の討伐って……」

「昇格おめでとうございます……ぶっちゃけ、稼げないのはCランクまでの話で……」
「Bランクからは、山ほど依頼だけはあるんすよ。受ける人がいないだけで……」

「それで、“稼げる”ってアイカは言ってたのか……Bランクになれなかったらどうするつもりだったんだ?」

俺がぼやくと、受付嬢がおそるおそる尋ねてくる。

「……あの、ほんとに依頼、受けてくれるんすか?」

「まあ、そのために来たんだしな」

俺は苦笑しながら端末に目を戻す。

「とりあえず、違法海賊狩りでも始めるか」

「おー」

俺たちは、ケルベロス・スロットを新たな拠点とし、活動を再開するのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

『急所』を突いてドロップ率100%。魔物から奪ったSSRスキルと最強装備で、俺だけが規格外の冒険者になる

仙道
ファンタジー
 気がつくと、俺は森の中に立っていた。目の前には実体化した女神がいて、ここがステータスやスキルの存在する異世界だと告げてくる。女神は俺に特典として【鑑定】と、魔物の『ドロップ急所』が見える眼を与えて消えた。  この世界では、魔物は倒した際に稀にアイテムやスキルを落とす。俺の眼には、魔物の体に赤い光の点が見えた。そこを攻撃して倒せば、【鑑定】で表示されたレアアイテムが確実に手に入るのだ。  俺は実験のために、森でオークに襲われているエルフの少女を見つける。オークのドロップリストには『剛力の腕輪(攻撃力+500)』があった。俺はエルフを助けるというよりも、その腕輪が欲しくてオークの急所を剣で貫く。  オークは光となって消え、俺の手には強力な腕輪が残った。  腰を抜かしていたエルフの少女、リーナは俺の圧倒的な一撃と、伝説級の装備を平然と手に入れる姿を見て、俺に同行を申し出る。  俺は効率よく強くなるために、彼女を前衛の盾役として採用した。  こうして、欲しいドロップ品を狙って魔物を狩り続ける、俺の異世界冒険が始まる。

ギャルい女神と超絶チート同盟〜女神に贔屓されまくった結果、主人公クラスなチート持ち達の同盟リーダーとなってしまったんだが〜

平明神
ファンタジー
 ユーゴ・タカトー。  それは、女神の「推し」になった男。  見た目ギャルな女神ユーラウリアの色仕掛けに負け、何度も異世界を救ってきた彼に新たに下った女神のお願いは、転生や転移した者達を探すこと。  彼が出会っていく者たちは、アニメやラノベの主人公を張れるほど強くて魅力的。だけど、みんなチート的な能力や武器を持つ濃いキャラで、なかなか一筋縄ではいかない者ばかり。  彼らと仲間になって同盟を組んだユーゴは、やがて彼らと共に様々な異世界を巻き込む大きな事件に関わっていく。  その過程で、彼はリーダーシップを発揮し、新たな力を開花させていくのだった!  女神から貰ったバラエティー豊かなチート能力とチートアイテムを駆使するユーゴは、どこへ行ってもみんなの度肝を抜きまくる!  さらに、彼にはもともと特殊な能力があるようで……?  英雄、聖女、魔王、人魚、侍、巫女、お嬢様、変身ヒーロー、巨大ロボット、歌姫、メイド、追放、ざまあ───  なんでもありの異世界アベンジャーズ!  女神の使徒と異世界チートな英雄たちとの絆が紡ぐ、運命の物語、ここに開幕! ※不定期更新。最低週1回は投稿出来るように頑張ります。 ※感想やお気に入り登録をして頂けますと、作者のモチベーションがあがり、エタることなくもっと面白い話が作れます。

田舎農家の俺、拾ったトカゲが『始祖竜』だった件〜女神がくれたスキル【絶対飼育】で育てたら、魔王がコスメ欲しさに竜王が胃薬借りに通い詰めだした

月神世一
ファンタジー
​「くそっ、魔王はまたトカゲの抜け殻を美容液にしようとしてるし、女神は酒のつまみばかり要求してくる! 俺はただ静かに農業がしたいだけなのに!」 ​ ​ブラック企業で過労死した日本人、カイト。 彼の願いはただ一つ、「誰にも邪魔されない静かな場所で農業をすること」。 ​女神ルチアナからチートスキル【絶対飼育】を貰い、異世界マンルシア大陸の辺境で念願の農場を開いたカイトだったが、ある日、庭から虹色の卵を発掘してしまう。 ​孵化したのは、可愛らしいトカゲ……ではなく、神話の時代に世界を滅亡させた『始祖竜』の幼体だった! ​しかし、カイトはスキル【絶対飼育】のおかげで、その破壊神を「ポチ」と名付けたペットとして完璧に飼い慣らしてしまう。 ​ポチのくしゃみ一発で、敵の軍勢は老衰で塵に!? ​ポチの抜け殻は、魔王が喉から手が出るほど欲しがる究極の美容成分に!? ​世界を滅ぼすほどの力を持つポチと、その魔素を浴びて育った規格外の農作物を求め、理知的で美人の魔王、疲労困憊の竜王、いい加減な女神が次々にカイトの家に押しかけてくる! ​「世界の管理者」すら手が出せない最強の農場主、カイト。 これは、世界の運命と、美味しい野菜と、ペットの散歩に追われる、史上最も騒がしいスローライフ物語である!

扱いの悪い勇者パーティを啖呵切って離脱した俺、辺境で美女たちと国を作ったらいつの間にか国もハーレムも大陸最強になっていた。

みにぶた🐽
ファンタジー
いいねありがとうございます!反応あるも励みになります。 勇者パーティから“手柄横取り”でパーティ離脱した俺に残ったのは、地球の本を召喚し、読み終えた物語を魔法として再現できるチートスキル《幻想書庫》だけ。  辺境の獣人少女を助けた俺は、物語魔法で水を引き、結界を張り、知恵と技術で開拓村を発展させていく。やがてエルフや元貴族も加わり、村は多種族共和国へ――そして、旧王国と勇者が再び迫る。  だが俺には『三国志』も『孫子』も『トロイの木馬』もある。折伏し、仲間に変える――物語で世界をひっくり返す成り上がり建国譚、開幕!

男女比1:15の貞操逆転世界で高校生活(婚活)

大寒波
恋愛
日本で生活していた前世の記憶を持つ主人公、七瀬達也が日本によく似た貞操逆転世界に転生し、高校生活を楽しみながら婚活を頑張るお話。 この世界の法律では、男性は二十歳までに5人と結婚をしなければならない。(高校卒業時点は3人) そんな法律があるなら、もういっそのこと高校在学中に5人と結婚しよう!となるのが今作の主人公である達也だ! この世界の経済は基本的に女性のみで回っており、男性に求められることといえば子種、遺伝子だ。 前世の影響かはわからないが、日本屈指のHENTAIである達也は運よく遺伝子も最高ランクになった。 顔もイケメン!遺伝子も優秀!貴重な男!…と、驕らずに自分と関わった女性には少しでも幸せな気持ちを分かち合えるように努力しようと決意する。 どうせなら、WIN-WINの関係でありたいよね! そうして、別居婚が主流なこの世界では珍しいみんなと同居することを、いや。ハーレムを目標に個性豊かなヒロイン達と織り成す学園ラブコメディがいま始まる! 主人公の通う学校では、少し貞操逆転の要素薄いかもです。男女比に寄っています。 外はその限りではありません。 カクヨムでも投稿しております。

ゲームコインをザクザク現金化。還暦オジ、田舎で世界を攻略中

あ、まん。@田中子樹
ファンタジー
仕事一筋40年。 結婚もせずに会社に尽くしてきた二瓶豆丸。 定年を迎え、静かな余生を求めて山奥へ移住する。 だが、突如世界が“数値化”され、現実がゲームのように変貌。 唯一の趣味だった15年続けた積みゲー「モリモリ」が、 なぜか現実世界とリンクし始める。 化け物が徘徊する世界で出会ったひとりの少女、滝川歩茶。 彼女を守るため、豆丸は“積みゲー”スキルを駆使して立ち上がる。 現金化されるコイン、召喚されるゲームキャラたち、 そして迫りくる謎の敵――。 これは、還暦オジが挑む、〝人生最後の積みゲー〟であり〝世界最後の攻略戦〟である。

【完結保証】僕の異世界攻略〜神の修行でブラッシュアップ〜

リョウ
ファンタジー
 僕は十年程闘病の末、あの世に。  そこで出会った神様に手違いで寿命が縮められたという説明をされ、地球で幸せな転生をする事になった…が何故か異世界転生してしまう。なんでだ?  幸い優しい両親と、兄と姉に囲まれ事なきを得たのだが、兄達が優秀で僕はいずれ家を出てかなきゃいけないみたい。そんな空気を読んだ僕は将来の為努力をしはじめるのだが……。   ※画像はAI作成しました。 ※現在毎日2話投稿。11時と19時にしております。 ※2026年半ば過ぎ完結予定。

異世界転生特典『絶対安全領域(マイホーム)』~家の中にいれば神すら無効化、一歩も出ずに世界最強になりました~

夏見ナイ
ファンタジー
ブラック企業で過労死した俺が転生時に願ったのは、たった一つ。「誰にも邪魔されず、絶対に安全な家で引きこもりたい!」 その切実な願いを聞き入れた神は、ユニークスキル『絶対安全領域(マイホーム)』を授けてくれた。この家の中にいれば、神の干渉すら無効化する究極の無敵空間だ! 「これで理想の怠惰な生活が送れる!」と喜んだのも束の間、追われる王女様が俺の庭に逃げ込んできて……? 面倒だが仕方なく、庭いじりのついでに追手を撃退したら、なぜかここが「聖域」だと勘違いされ、獣人の娘やエルフの学者まで押しかけてきた! 俺は家から出ずに快適なスローライフを送りたいだけなのに! 知らぬ間に世界を救う、無自覚最強の引きこもりファンタジー、開幕!

処理中です...