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亡霊の脅しで教授を☓☓話②
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新城の背中が羽生の広い胸元に押し付けられ、二人の身体は密着している。耳元で囁く言葉は届かない。それでも羽生は、この状況を打開するため、唯一残された手段、「触覚」に全てを賭けた。
「ねぇ、先生。怖がってる?……でも、大丈夫。僕が、ちゃんと教えてあげるから」
羽生はそう呟くと、新城の耳たぶを優しく噛んだ。新城の身体がゾクッと震える。羽生は、その反応に確信を得て、ゆっくりと彼の首筋から顎のラインを伝い、唇へと向かった。
新城の口から、かろうじて言葉にならない喘ぎが漏れる。それは抵抗の言葉だったが、羽生には届かない。羽生は、新城の震える唇に自分の唇を重ねた。
最初は、ただ優しく。羽生の口はミネラルウォーターのような、みずみずしく透き通った味わいだ。それは、乾いた心に潤いを与えようとする、羽生の優しさを思わせる。
しかし、次の瞬間、羽生はキスの深さを変えた。ただの愛情表現ではない、何かを伝えようとする意図が、熱と湿度を帯びて唇から伝わってくる。
羽生は、ゆっくりと、そして深く、新城の唇を舐め、吸い、絡ませた。
(……このキス、いつもと違う……?)
新城は、目と耳が使えない状況で、羽生のキスの変化を敏感に感じ取っていた。普段の羽生の挑発的なキスとは違い、そこには焦りや、切実な何かがあった。
羽生は亡霊の囁きを思い出した。「ハヤク、ハヤク、イレロ」。
その言葉を、彼はキスで表現する。羽生はゆっくりと舌を絡め、奥へと進ませた。まるで、この呪われた空間から、二人で「出口」を探しているかのように。新城の身体に、このキスが持つ意味を伝えるかのように。
二人の唾液が混ざり合い、新城の口内に広がるタバコの苦味を溶かしていく。それは、彼が長年背負ってきた誇りと孤独が無力化されていくような感覚だった。同時に、羽生の涼しげな味わいの奥から、若さゆえの情熱と衝動を感じさせる、甘く、それでいて僅かに苦い、病的な熱が、新城の理性を焼き尽くしていく。
「……ん……っ、あ……」
新城の口から、理性では抑えきれない甘い喘ぎが漏れる。それは快楽だけではなかった。羽生の必死なキスに、彼もまた応えようと、口を開いた。その瞬間、羽生はさらに深く、舌を絡ませ、絡め取った。新城の口内に隠されていた、高カカオ分のチョコレートのような、抑制された甘みが引き出され、二人の味が混ざり合う。
それは、高カカオチョコレートが熱で溶けだし、そこに甘く苦い毒が滴り落ちるような味だった。理性の殻を打ち砕かれ、本能だけが残った新城の苦悩と、それを心から満足する羽生の歓喜が混ざり合った、二人だけの味。
「ねぇ、先生。わかってくれた?……」
羽生はそう呟くと、キスをさらに深く、まるで新城の魂に触れるかのように続けた。
(……クソ……っ、わかってる……!)
新城は、羽生からのキスの意味を悟った。この焦燥感は、この状況を脱するためのものだ。そして、羽生は、そのために俺に「協力」しろと伝えている。理解はできる。だが、こんな屈辱的な方法で、この生意気な年下の奴に主導権を握られるなんて、絶対に嫌だ。
この状況を解決するには、こいつの言う通りにするしかないと頭ではわかっている。だが、プライドが許さない。俺が抵抗すれば、事態は停滞する。それでも……!
新城は、羽生の背中に回した腕を、ぎゅっと強くした。それは、抵抗だった。
羽生は、新城の腕が自分の背中に回されたことを感じ取ると、少し戸惑ったように動きを止めた。しかし、すぐにその意図を理解し、安心したように息を吐き、囁いた。
「ありがとう、先生。これで、僕たち、もう逃げられないみたいだね」
その言葉は、まるで呪いのように、二人の身体を縛り付けた。羽生は、新城の細い腰に回した手を、ゆっくりと首筋へと滑らせた。無防備に晒された血管が脈打つ急所を、羽生の指先がぞっとするほど優しく、しかし執拗に弄んだ。
その時、羽生の耳に、再び亡霊の声が響き渡った。
「ハヤク、イレロ」
しかし、その声はもはや不気味な命令ではなく、まるで二人の行為を急かす、無邪気な観客の拍手のように聞こえた。
💗お知らせ💗
読んでいただきありがとうございます。
他にもこの二人が主人公のお話を投稿しているのでよかったら読んでみてくださいね。
「ねぇ、先生。怖がってる?……でも、大丈夫。僕が、ちゃんと教えてあげるから」
羽生はそう呟くと、新城の耳たぶを優しく噛んだ。新城の身体がゾクッと震える。羽生は、その反応に確信を得て、ゆっくりと彼の首筋から顎のラインを伝い、唇へと向かった。
新城の口から、かろうじて言葉にならない喘ぎが漏れる。それは抵抗の言葉だったが、羽生には届かない。羽生は、新城の震える唇に自分の唇を重ねた。
最初は、ただ優しく。羽生の口はミネラルウォーターのような、みずみずしく透き通った味わいだ。それは、乾いた心に潤いを与えようとする、羽生の優しさを思わせる。
しかし、次の瞬間、羽生はキスの深さを変えた。ただの愛情表現ではない、何かを伝えようとする意図が、熱と湿度を帯びて唇から伝わってくる。
羽生は、ゆっくりと、そして深く、新城の唇を舐め、吸い、絡ませた。
(……このキス、いつもと違う……?)
新城は、目と耳が使えない状況で、羽生のキスの変化を敏感に感じ取っていた。普段の羽生の挑発的なキスとは違い、そこには焦りや、切実な何かがあった。
羽生は亡霊の囁きを思い出した。「ハヤク、ハヤク、イレロ」。
その言葉を、彼はキスで表現する。羽生はゆっくりと舌を絡め、奥へと進ませた。まるで、この呪われた空間から、二人で「出口」を探しているかのように。新城の身体に、このキスが持つ意味を伝えるかのように。
二人の唾液が混ざり合い、新城の口内に広がるタバコの苦味を溶かしていく。それは、彼が長年背負ってきた誇りと孤独が無力化されていくような感覚だった。同時に、羽生の涼しげな味わいの奥から、若さゆえの情熱と衝動を感じさせる、甘く、それでいて僅かに苦い、病的な熱が、新城の理性を焼き尽くしていく。
「……ん……っ、あ……」
新城の口から、理性では抑えきれない甘い喘ぎが漏れる。それは快楽だけではなかった。羽生の必死なキスに、彼もまた応えようと、口を開いた。その瞬間、羽生はさらに深く、舌を絡ませ、絡め取った。新城の口内に隠されていた、高カカオ分のチョコレートのような、抑制された甘みが引き出され、二人の味が混ざり合う。
それは、高カカオチョコレートが熱で溶けだし、そこに甘く苦い毒が滴り落ちるような味だった。理性の殻を打ち砕かれ、本能だけが残った新城の苦悩と、それを心から満足する羽生の歓喜が混ざり合った、二人だけの味。
「ねぇ、先生。わかってくれた?……」
羽生はそう呟くと、キスをさらに深く、まるで新城の魂に触れるかのように続けた。
(……クソ……っ、わかってる……!)
新城は、羽生からのキスの意味を悟った。この焦燥感は、この状況を脱するためのものだ。そして、羽生は、そのために俺に「協力」しろと伝えている。理解はできる。だが、こんな屈辱的な方法で、この生意気な年下の奴に主導権を握られるなんて、絶対に嫌だ。
この状況を解決するには、こいつの言う通りにするしかないと頭ではわかっている。だが、プライドが許さない。俺が抵抗すれば、事態は停滞する。それでも……!
新城は、羽生の背中に回した腕を、ぎゅっと強くした。それは、抵抗だった。
羽生は、新城の腕が自分の背中に回されたことを感じ取ると、少し戸惑ったように動きを止めた。しかし、すぐにその意図を理解し、安心したように息を吐き、囁いた。
「ありがとう、先生。これで、僕たち、もう逃げられないみたいだね」
その言葉は、まるで呪いのように、二人の身体を縛り付けた。羽生は、新城の細い腰に回した手を、ゆっくりと首筋へと滑らせた。無防備に晒された血管が脈打つ急所を、羽生の指先がぞっとするほど優しく、しかし執拗に弄んだ。
その時、羽生の耳に、再び亡霊の声が響き渡った。
「ハヤク、イレロ」
しかし、その声はもはや不気味な命令ではなく、まるで二人の行為を急かす、無邪気な観客の拍手のように聞こえた。
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