海賊少女と大海秘宝を巡る海航譚。

紅薔薇棘丸

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第1話「異世界転移する」

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 私はいつもと変わらない日常を送っていた。

 ほのぼのとした日常は私を安心できる生活を保証してくれる。中学校に通いながら夢を追い駆ける日々を過ごして行くうちに取り出したプロットシートが埋められてから少し不安を抱く。それは脳に来た激痛が物語る。

「うぅ……。な、何これ……?」

 頭痛が激しくなってベッドに横たわろうとするが、地面に倒れてから視覚は暗闇で染まった。

「うぁぁぁあああ⁉︎」

 甲高い悲鳴が響き渡る。耳を痛めてしまうような声が家中に響いて意識が戻った後で周辺の変化が分かる。

「あれ……? 何で浜辺にいるんだろう? 可笑しいなぁ」

 取り敢えず辺りをキョロキョロと見渡す。私は確か自室で過ごしていたはずだと思って不安になる。
 不安を抱かせる周辺を見渡す限りの浜辺が疑問だった。浜辺を特別視したことなど心当たりがない時点で行き着かないはずだと考える。しかし、視界に映る光景は少しも変わる気配を感じさせなかった。

(ど、どうして……? 何で私は浜辺にいるの?)

 考えても仕方がないと周辺探索を試みる。しばらく歩いてみれば何か変化が起きて夢なら覚めるかも知れないと思った。

 そして目的もなく歩いた。どこを歩いても繰り返して波が打たれる音と景色が見えるだけ。
 踏み進める度に砂が裸足に熱を感じる。砂は足を砂利が踏んで行く感覚は不慣れが故に心地良いと言えるほどでもなかった。それと目前は砂浜が無限に続いて後ろを振り向いても同じく他は見当たらない。

「これじゃあ受験勉強が出来ないじゃん! どうしてくれるのぉ!」

 そんな時、一人の老若不明の男性から声を掛けられる。

『君は海を目指しなさい。いずれ出会う仲間と航海して秘宝を巡る旅に尽くせ……!』

 その人は姿を認識させなかったが、凄い寛大なる雰囲気と謎めいた一言を残してから再び視界が開かれた。

「な、何が起きてるんだろう……?」

 そうやって私は止まった足を再び動かして歩み進めた。浜辺を渡る足は次第に疲労感が生じて来る。けれど、そんな状況が覆る瞬間を迎える。

「あ、あれは……!」

 かなり遠い場所に港町が見える。それは現状から脱出して進展させるための希望として捉えた。内心が多少の希望で溢れ返って行く瞬間に巡れて気持ちが待ち望んでいた展開を迎えて明るくなる。

 とにかく港町を目指して歩いた。そこで何か探れるかも知れないと考えて歩みは進められた。少しずつ港町が近付いて来ると疲労感を伴いながら色んな予測が頭を過ぎる。

 これは単純に好きだったアニメとか漫画で良くある異世界転移だと言う思考に至る。異世界転移なら見たことがないような場所にいても説明が出来る。しかし、異世界転移は一般だと科学証明が出来ないため、今まで過ごして来た世界に戻れないケースが殆どである。

(もう帰れないはずだよね? それならこっちで生きる力を付けなきゃ駄目でしょ。それを踏まえると最初に行き着いた場所は重要性が高いはずだよ!)

 取り敢えず歩いて辿り着く先に港町はちゃんと存在している。これが急に目前から消えないで欲しいと願いながら進もうと一歩を踏み出す。

「待って!」
「……え?」

 私は背後から呼び止められる。それは同性だと思われる声で間違いない。転移してから初めて話す人が女性だと少しだけ期待感を抱く。

 後ろを振り返った。ここに来て初めて対面する女性はどんな人物か楽しみだった。かなり期待した先で待ち受ける運命に心を踊らされる。不思議と異世界転移だとしても良いんじゃないかと思えてしまう。

 振り返ると声を掛けて来た女性と視線が合う。彼女はまだ若いと印象を持たせるような容姿が窺える。

 整った顔立ちと長くて黒いサラッとした髪が腰よりも下に伸びている。さらに引き締まったウエストや綺麗に着こなされた服装は私がいた世界と少し異なるデザインを取り入れていた。
 そんな彼女と視線を合わせると青い瞳を向けながら私に尋ねて来る。

「どうしましたか? どうやら見掛けない顔ですね?」
「––––はっ⁉︎   え、えーと⁉︎」
「もしかして違うところから来た方ですか? それなら港町を案内しても良いですよ? あの港町は凄く良いところで沢山の人が賑わっているんです」
「そ、そうなんですか……。それじゃあ案内をお願いしようかなぁ~」

 私は真面に彼女が見れなかった。何だか恥ずかしくなって正面から話を窺えなかったのだ。

 そんな様子を窺える私でも彼女は平然と対応する。手慣れている様子から知らない人でも話が出来るタイプだろう。慌ただしい私を前にしても可笑しいとも思わないところは羨ましいぐらいである。

「私の名前はアリサ・ホワイトです。あそこの港町でカフェを開いています。生まれた時から過ごして来た場所なので馴染み深いです。取り敢えず中まで案内しますね?」
「あ、ありがとうございます……」

 丁寧に案内してくれると自ら名乗り出たアリサは先頭を歩く。その後ろを共に歩み始めて港町を案内される。

 アリサを先頭に歩いて行くと彼女が通り掛かった道の両脇を歓声が上がる。それはアリサ自身が巻き起こした歓声だと気付いた時に疑問として抱かれた。

「実は貴方から聞きたいことが一つだけ。貴方は魔法が使えますか? 魔法は普段から使い込んでいる者は操作技術が高い。それ故に修行を積み上げる者がいるんです」
「へぇ? まさか魔法が与えちゃうのかぁ。それは凄いね!」
「あれ? 魔法を知らないんですか? 今だと海を出て大海秘宝が欲しいと海賊は山ほど存在します。そこで動く政府は【魔法海軍】と呼ばれていますね?」
「秘宝? それって凄い面白そう!」
「––––辞めなさい」

 ふと耳が捉えた声は自然と脳内を思考停止させる。何故だか辞めるように指示した言葉は大きく脳内に響かせて来る。

「秘宝を探したくて海賊となった者は全員が海に沈みました。それは海賊同士が潰し合う以外にも海から成る掟が関係している」
「それって何?」
「海王龍様の降臨。秘宝と繋がる【海王龍キングシーデス】は降臨すると世界滅亡を遂げるまで暴れ回る。これは禁忌秘宝として探す行為が禁じられています。あの方が目覚めた矢先に世界が滅ぶんです」

 耳を疑う話だった。何で【海王龍】などが共に眠っているのか疑問が生じた。秘宝なら番人を倒さないと通れない方針が取り入れていたとしても問題は起きない。

 あれこれ考えて行くうちに私は混乱して来た頭を休ませようとした。

 しばらくは思考力が鈍くなっていた。それがちゃんと復帰するまで様子を見ると再び浜辺が気になる。
 すると、波から聞こえる音が耳に入るとボーッとさせる。意識が遠くなって行く感覚を味わって最後はスッと気絶するような作用が及ぶ前に呼び止められた。

「ちょっと待った!」

 私を後ろから抱き締めて我に返す。彼女は先ほど港町を案内してくれた方よりも若くてか弱い声で呼び止めていた。
 さらに私から離れて振り返ってみると今度は私と同年代の少女が立っている。

「さっきアリサさんが案内した人でしょ? 少し私ち近い匂いがするね!」
「え? 匂い……?」

 自分は転移してから風呂に入れていないことを思い出した瞬間に匂っているかも知れないと認識する。匂いを自身で嗅いでみるが、それで正確に分かるはずもなかった。
 すると、目前で指摘した少女がクスクスと笑う。リアクションだけで風呂が入りたいと思ったようで一言が掛けられる。

「うちで風呂はどうですか? 臭いたくないなら入浴は必須ですよね!」

 彼女から提案を受けて一呼吸が空けられてから返事する。

「––––はい!」

 そうやって私は少女と仲良くなった。これから語られる物語を大きく左右する人物として掲げる少女は今後も私と関係性を築き上げて行く。それは今から描かれる内容に記されている。

 彼女はノゾカ・エガク。どうやら絵を描くことが好きでアリサから買い取ってもらっているらしい。買われた絵は店内で飾られて客人が偶に高値を出して持って帰ると聞いた。

 ノゾカが描いて見せた絵から抱いた印象は私が転移する前に住んでいた世界で流行したキャラクターと似ている。つまり、現代で描かれるキャラクターデザインと似た感じを強く思わせる。

「これはノゾカちゃんが描いたオリジナルキャラクターか……。凄く現代イラストっぽい感じがするんだよなぁ~」

 ただ現代と似ているかは比べないと分からない。対比して似ていると言った訳でもないことから大きく現代イラストと近いなんて断定は難しい。それでも何となく思うところがあるんだと私は思っていた。

 風呂から上がるとノゾカを見かける。ノゾカは下着姿で絵を描いている様子だ。ノゾカが絵を手がける際は下着姿がベストらしい。けど、人前で描く場合は別だと教えてくれた。

「風呂は言われたように整えてから出たけど、本当に私なんか泊めてもらって大丈夫かな?  だって本当はアリサさんが泊めてくれるはずだったじゃん!」
「んぅ? それは気にしなくて良いよ。私たちは年齢が一個差で姉妹みたいで良かったから引き受けたんだもん。それに食料は少しだけ頂けるなら引き受けても良いと思ったんだよねぇ~」
「はぁ……。良く分からないかも……」

 そこで私は私は理解不能だと告げた。けど、実際は分かっていた。私を引き取りたい理由は一人よりも二人で過ごせると思ったから自らが受け持ったんだと言う話は何となく理解した。

 取り敢えず転移してから住まう場所は確保できた。後は今度から生活を維持するために労働を考える必要性がある。いつまでも食べさせてもらう生活は自分を駄目にする。だから、自身でも食べられる術を身に付けたいと考えた。

 一方で最近は私が身を置くところから離れた場所で強盗が多発していた。

「待ってぇ!」

 一人の警備員が男を追い駆ける。しかし、遅れて後を追い始めた警備員は捕まえることが難しかった。

 距離を空けて走る泥棒は宝石箱を抱えながら見事に逃げ切れっている。そこから警備員と離れるために魔法を発動した。

 ぼわぁぁぁ!

「なっ⁉︎   ぐわぁぁぁあああ⁉︎」
「ふっ。チョロいじゃん!」

 炎が吹き荒れる。警備員は炎から身を避けると泥棒が見えなくなって追跡を絶たれる。これで同じ泥棒の被害が何度も繰り返して各地で起こる。これは放って置けないと思って軍人を要請する。

「今度は軍隊から特別に要請した者が配置される。つまり、奴はどれだけ魔法が扱えても軍人なら容易く捕らえて見せるはずだ。くっくっく、覚えてろよぉ!」

 隠し切れない笑みが溢れるが、本人は大して気にする様子も窺わせない。奴が捕まえられた時は酷い目に遭わせると誓った金持ちは強盗犯を思い知らせることで頭がいっぱいだった。
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