魂替(たまがえ)の主

雨門ゆうき

文字の大きさ
6 / 7

知らない家に帰宅する 裕介(現大地)

しおりを挟む
 裕介は、ある家の前に立っていた。目の前には大きな門。表札には“神谷”の文字。そう、裕介は今日から神谷大地として生きることになったのだ。門の前で一呼吸、深呼吸をした後、意を決してインターホンを鳴らした。

 「はい、神谷ですが。」「お、俺。大地だけど。開けてもらっていい?」大地の母は少し緊張した息子の声に多少違和感を感じた。「何言ってるの。鍵があるでしょう?なくしたの??」そう言われ我に返る裕介(現大地)。急いでリュックを探るといくつか束ねられた鍵を見つけた。「ごめん母さん、あったわ。普通に入るよ。」「まったく、何を訳の分からないこと言ってんの。」そういって母はインターホンを切った。

 そして裕介(現大地)は、改めて門を通って少し歩くと、自分の実家とは比較にならない敷地の家が。これはもう、家と言うよりは屋敷と表現したほうがいい、バイトもしてないのに金周りがいいとは思っていたが、大地(現裕介)はどうやらとんでもないボンボンだったようだ。

 戸惑いながら鍵を開け、扉を開いた。玄関も広い。エントランスから螺旋階段が伸びており、正直どこに行けばいいのかわからず、これにも戸惑いながら、とりあえず二階にあがってみた。部屋がいくつもある。こんなことなら家の中の詳細を大地(現裕介)に聞いておくべきだった、と少し後悔しながらいくつかの扉をみて周ったあと、とりあえず廊下の一番奥の部屋のドアを開けてみた。

 中の様子はと言うと、整ってはいるが男性の部屋、という印象。ギターも置いてある。大地(現裕介)はアコースティックギターが趣味だと知っていたので、ここが彼の部屋だと気づいた裕介(現大地)は、とりあえずベッドに腰掛けた。「まあ、大地(現裕介)は、俺の一人暮らしのアパートに帰るだけだし、何の問題もなさそうだな。」と一人でつぶやき寝転がると、天井を仰いだ。天井も高い。

 自分ばかりいい立場になってしまうようで少し気が引ける。でも今日から俺は神谷大地なのだ。誰に気を使うこともない、堂々と大地として生きていく。途中、母から夕飯を食べるか聞かれたが、この日はいらないと言って断った。あまりに同時に非現実的な目にあって、少し疲れてしまっていた裕介(現大地)は、大地(現裕介)に電話しようかとも思ったが、この日はこれからのことを考えながら、眠りについた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

いまさら謝罪など

あかね
ファンタジー
殿下。謝罪したところでもう遅いのです。

三十年後に届いた白い手紙

RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。 彼は最後まで、何も語らなかった。 その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。 戴冠舞踏会の夜。 公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。 それは復讐でも、告発でもない。 三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、 「渡されなかった約束」のための手紙だった。 沈黙のまま命を捨てた男と、 三十年、ただ待ち続けた女。 そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。 これは、 遅れて届いた手紙が、 人生と運命を静かに書き換えていく物語。

腹違いの妹にすべてを奪われた薄幸の令嬢が、義理の母に殴られた瞬間、前世のインテリヤクザなおっさんがぶちギレた場合。

灯乃
ファンタジー
十二歳のときに母が病で亡くなった途端、父は後妻と一歳年下の妹を新たな『家族』として迎え入れた。 彼らの築く『家族』の輪から弾き出されたアニエスは、ある日義母の私室に呼び出され――。 タイトル通りのおっさんコメディーです。

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

【完結短編】ある公爵令嬢の結婚前日

のま
ファンタジー
クラリスはもうすぐ結婚式を控えた公爵令嬢。 ある日から人生が変わっていったことを思い出しながら自宅での最後のお茶会を楽しむ。

冷遇王妃はときめかない

あんど もあ
ファンタジー
幼いころから婚約していた彼と結婚して王妃になった私。 だが、陛下は側妃だけを溺愛し、私は白い結婚のまま離宮へ追いやられる…って何てラッキー! 国の事は陛下と側妃様に任せて、私はこのまま離宮で何の責任も無い楽な生活を!…と思っていたのに…。

女神に頼まれましたけど

実川えむ
ファンタジー
雷が光る中、催される、卒業パーティー。 その主役の一人である王太子が、肩までのストレートの金髪をかきあげながら、鼻を鳴らして見下ろす。 「リザベーテ、私、オーガスタス・グリフィン・ロウセルは、貴様との婚約を破棄すっ……!?」 ドンガラガッシャーン! 「ひぃぃっ!?」 情けない叫びとともに、婚約破棄劇場は始まった。 ※王道の『婚約破棄』モノが書きたかった…… ※ざまぁ要素は後日談にする予定……

断罪後のモブ令息、誰にも気づかれずに出奔する

まる
ファンタジー
断罪後のモブ令息が誰にも気づかれないよう出奔して幸せを探す話

処理中です...