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最終章:偽りの果てに咲く
第89話:決裂の時
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「殿、これは……どういうことですか?」
早朝の政務の間。家老・柴田勝家が、眉をひそめて詰め寄ってきた。
机上には、新たに作成された命令書。
内容は「北陸軍の再編」と、「勝家の出兵権限剥奪」。
「俺が決めたことだ。異議があるか?」
十兵衛――“信長”は淡々と答えたが、その目にはあの夜の温もりはなかった。
「……これは余りにも急すぎます。まるで、俺が謀反でも起こすような扱いでは?」
「勝家。お前ほどの男なら、俺が“誰か”を恐れていると気づいているだろう」
「……“誰か”? それは、まさか……」
その瞬間、勝家は理解した。
――“信長”は、もはや“十兵衛”としての人間らしさを取り戻したはずだった。
だが、この政令は冷酷で、用心深く、まるで――
「……まるで“あの信長”のようだな」
勝家が呟くと、十兵衛は目を伏せ、言った。
「そうだ。俺はもう、“あの男”と変わらんのかもしれん」
その頃、城の離れにいたおみよのもとにも、密書が届いていた。
――「今夜、出よ。城は危うい。貴女の存在が、“殿”を弱くする」
送り主の名はない。しかし筆跡は、かつて彼女が城勤めをしていた頃に何度も目にした文字。
「……柴田様」
おみよは微かに震えながら、懐から小刀を取り出した。
「十兵衛を……信じると決めたのに」
夜。城の裏門。
黒装束の者たちが、おみよを馬に乗せて連れ出そうとした瞬間――
「やめろ」
“信長”が現れた。白装束のまま、剣を抜く。
「……どこへ行くつもりだ、おみよ」
「私を逃がそうとしたのは、貴方を守るため!」
「それは……俺のためにならん」
目を見開いたおみよの瞳に、もうひとつの影が映った。
“信長”の後ろに立つのは、かつての信長の影。いや、“信長”として生きる覚悟を固めた十兵衛。
「逃げるな。俺はもう……お前を、誰にも奪わせない」
剣を構えた彼の背に、かつての農夫の面影はなかった。
おみよは、馬から降りて一歩前へ出る。
「じゃあ、私も逃げない。あなたが“信長”でも、“十兵衛”でも……その魂を信じる」
静かに、夜が明けていく。
新たな決裂が、同時に新たな絆を生む。
早朝の政務の間。家老・柴田勝家が、眉をひそめて詰め寄ってきた。
机上には、新たに作成された命令書。
内容は「北陸軍の再編」と、「勝家の出兵権限剥奪」。
「俺が決めたことだ。異議があるか?」
十兵衛――“信長”は淡々と答えたが、その目にはあの夜の温もりはなかった。
「……これは余りにも急すぎます。まるで、俺が謀反でも起こすような扱いでは?」
「勝家。お前ほどの男なら、俺が“誰か”を恐れていると気づいているだろう」
「……“誰か”? それは、まさか……」
その瞬間、勝家は理解した。
――“信長”は、もはや“十兵衛”としての人間らしさを取り戻したはずだった。
だが、この政令は冷酷で、用心深く、まるで――
「……まるで“あの信長”のようだな」
勝家が呟くと、十兵衛は目を伏せ、言った。
「そうだ。俺はもう、“あの男”と変わらんのかもしれん」
その頃、城の離れにいたおみよのもとにも、密書が届いていた。
――「今夜、出よ。城は危うい。貴女の存在が、“殿”を弱くする」
送り主の名はない。しかし筆跡は、かつて彼女が城勤めをしていた頃に何度も目にした文字。
「……柴田様」
おみよは微かに震えながら、懐から小刀を取り出した。
「十兵衛を……信じると決めたのに」
夜。城の裏門。
黒装束の者たちが、おみよを馬に乗せて連れ出そうとした瞬間――
「やめろ」
“信長”が現れた。白装束のまま、剣を抜く。
「……どこへ行くつもりだ、おみよ」
「私を逃がそうとしたのは、貴方を守るため!」
「それは……俺のためにならん」
目を見開いたおみよの瞳に、もうひとつの影が映った。
“信長”の後ろに立つのは、かつての信長の影。いや、“信長”として生きる覚悟を固めた十兵衛。
「逃げるな。俺はもう……お前を、誰にも奪わせない」
剣を構えた彼の背に、かつての農夫の面影はなかった。
おみよは、馬から降りて一歩前へ出る。
「じゃあ、私も逃げない。あなたが“信長”でも、“十兵衛”でも……その魂を信じる」
静かに、夜が明けていく。
新たな決裂が、同時に新たな絆を生む。
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