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11話
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ルベン議長の邸宅を後にした俺は、先ほどのやり取りを思い出していた。
結局ルベン議長からは、銀鉱山の掘削許可証と大銀貨5枚の謝礼金をいただいた。堀った銀鉱石を売れるように鉱業ギルドの紹介状と地図も書いてくれた。何か困ったことがあったらいつでも相談してほしい、と言ってくれた。
なんだかんだ良い人だったと思うので、こういった縁は大切にしていかなきゃな。
ステータスウィンドウを開くとレベルが1から3になっていた。
ルベン議長から謝礼をいただいた瞬間、どこか聴き馴染みのあるチープなファンファーレ音が聴こえたがレベルアップの音か。クエストクリアをすると経験値を取得できることもゲームと同じようだ。
今ジョブはビギナーという初期ジョブになっており、今回のクエストクリアでジョブレベルが上限の3に。ジョブレベルがあがり【死んでるふり】と【民間療法】を取得。
【死んでるふり】は30%の確率で自分にターゲッティングした敵に見逃してもらえるスキルで、【民間療法】は傷口にツバをかけスキルを発動するとわずかだけHP回復ができるスキルだそうだ。MP消費なしで使えるようだが、お察しスキルだろう。
さて、気を取り直して銀鉱山に行ってみるか。まずは、鉱業ギルドに行って色々準備が必要だ。
ルベン議長からもらった地図を頼りに町を歩き、商業地区の一角に鉱石にツルハシマークの看板の鉱業ギルドがあった。
中に入ると、筋骨隆々の鍛冶師や鉱夫とみられる人たちでごった返していた。
売店ではハンマーやツルハシ、カンテラといった道具や種々の鉱石類が並んでいるようだった。
俺は女性ギルド職員さんのいるカウンターに行き、ルベンさんからの紹介状を出した。
「なるほど、ルベン議長からのご紹介ですね……。確認できました! ハイド様、当鉱業ギルドへようこそいらっしゃいました! それではさっそくですが、当ギルドのご説明をさせていただいてもよろしいでしょうか?」
オリーブ色の髪色が美しいスタイル抜群な陽キャ美女の視線がキツイ。眩しくて目がつぶれそうだ。
「……あ、はい! お願いします!」
はきはきしゃべる職員さんの陽の気にあてられ、若干目が泳ぐ俺であったが、それでも何とか職員さんの目を見つつ、引きつった笑顔を頑張って作りながら話を聞けたと思う。
職員さんの説明によると鉱業ギルドは鍛冶ギルドも兼ねており、マイナー(鉱夫)とブラックスミス(鍛治師)のジョブを得ることができる。ジョブ取得をするためには本来はジョブ試験に合格する必要があるが、ルベン議長の取り計らいで一つのジョブは無償で得ることができるとのこと。
銀鉱山を掘るなら、マイナーの初期スキル【マイニング】が固い岩盤を掘削するのにおすすめとのことだった。
ジョブは一つしか選べないが、ジョブレベルを上げて得たスキルはジョブを変更したとしても消えずに残る、というのがアルカナ・オンラインのジョブシステム。
マイナーは鍛冶素材を集めたり加工したりができるジョブで、ブラックスミスは武器や防具を作ることができるジョブ。
これから銀鉱山に向かうのならジョブはマイナーがいいだろうね。
「ではマイナーのジョブでお願いします!」
陰キャを克服するための教えその1。返事はハキハキと。
「かしこまりました! それではジョブの書き変えとギルドカードの発行を行いましょう。こちらへどうぞ~」
ニコッと笑う女性職員さんに連れられ入ったのは、ジョブクリスタルが設置された祈祷所だった。祈祷所の中には色違いの2つのクリスタルが並んで設置されてあった。
ジョブクリスタルというのはアルカナの神々の加護がある神聖な石であり、祈りが届くことでジョブが与えられる、というもの。
要は神像に祈りを捧げ願いが届けば、ジョブにふさわしい者(転職条件を満たした者)にジョブの加護が与えられるもので、ゲームの中でもそうなっていた。
「では、こちらのマイナークリスタルに両手を組んで跪き祈祷をお願いいたします」
俺は土気色に光るクリスタルに向かって跪き目を瞑って両手を組み祈りを捧げてみた。
しばらくして目を開けてみると何やら自分の体が光っているような気がする。
「おめでとうございます~! 無事ジョブチェンジができたようですね!」
職員のお姉さんがマイナークリスタルになにやら機械のようなものを近づけると、ジジジ……ガガガと音がした。そして機械から排出されたのは俺のギルドカードだった。
「はいどうぞ、ギルドカードになります! 身分証明書になるのでなくさないでくださいね~」と差し出されたギルドカードを受け取って見てみると、レベル、ステータス(残ポイント)、ジョブなどが書いてあった。
Name:Hide(BaseLv3)
Job:miner(JobLv1)
HP:19
MP:37
Status:S(筋力)1、V(持久力)1、A(素早さ)1、D(器用さ)1、I(知能)9、L(運)1(Rest8)
ギルドカードに書いてないスキルをステータスウィンドウを開いて確認すると、マイナーのジョブを得たことで、スキル【マイニング】をゲットしていた。鉱物を掘る際、威力が3倍になるとスキルの説明文に書いてあった。
ついでなので、未振りだったポイントをS(筋力)に8ポイント全振りしておいた。銀を掘りにいくのだから限界所持重量を増やしたいこと、ツルハシの掘削力がS(筋力)依存だからだ。
「ありがとうございました!」
「はい、またのお越しお待ちしております!」
陰キャを克服するための教えその2。礼儀正しくあれ、である。
俺はお姉さんにアドバイスしてもらった通り、売店で銀掘りに必要な道具を揃えることにした。炭鉱夫のイメージでしかないけど、ツルハシとカンテラ、ヘルメット、ゴーグル、マスクはいるイメージ。
売店では鉄のツルハシか青銅のツルハシかで迷ったけど、奮発してより硬い鉄製のものを選んだ。また灯りを松明にするかカンテラにするかで迷ったが、取り回しが利きそうなカンテラを選んだ。しめて大銀貨1枚、小銀貨2枚と大銅貨3枚。
マスクなど足りないものは、布などで代用しよう。
財布の残金は大銀貨4枚、小銀貨1枚、大銅貨3枚、小銅貨3枚。ステータスウィンドウでは所持している貨幣が表示されるようで、そのまま4133arcと表示されていた。
当面の目標はその日暮らしにならず、まともに生計が立てられるようになることだな。
俺は鉱業ギルドを後にした。
結局ルベン議長からは、銀鉱山の掘削許可証と大銀貨5枚の謝礼金をいただいた。堀った銀鉱石を売れるように鉱業ギルドの紹介状と地図も書いてくれた。何か困ったことがあったらいつでも相談してほしい、と言ってくれた。
なんだかんだ良い人だったと思うので、こういった縁は大切にしていかなきゃな。
ステータスウィンドウを開くとレベルが1から3になっていた。
ルベン議長から謝礼をいただいた瞬間、どこか聴き馴染みのあるチープなファンファーレ音が聴こえたがレベルアップの音か。クエストクリアをすると経験値を取得できることもゲームと同じようだ。
今ジョブはビギナーという初期ジョブになっており、今回のクエストクリアでジョブレベルが上限の3に。ジョブレベルがあがり【死んでるふり】と【民間療法】を取得。
【死んでるふり】は30%の確率で自分にターゲッティングした敵に見逃してもらえるスキルで、【民間療法】は傷口にツバをかけスキルを発動するとわずかだけHP回復ができるスキルだそうだ。MP消費なしで使えるようだが、お察しスキルだろう。
さて、気を取り直して銀鉱山に行ってみるか。まずは、鉱業ギルドに行って色々準備が必要だ。
ルベン議長からもらった地図を頼りに町を歩き、商業地区の一角に鉱石にツルハシマークの看板の鉱業ギルドがあった。
中に入ると、筋骨隆々の鍛冶師や鉱夫とみられる人たちでごった返していた。
売店ではハンマーやツルハシ、カンテラといった道具や種々の鉱石類が並んでいるようだった。
俺は女性ギルド職員さんのいるカウンターに行き、ルベンさんからの紹介状を出した。
「なるほど、ルベン議長からのご紹介ですね……。確認できました! ハイド様、当鉱業ギルドへようこそいらっしゃいました! それではさっそくですが、当ギルドのご説明をさせていただいてもよろしいでしょうか?」
オリーブ色の髪色が美しいスタイル抜群な陽キャ美女の視線がキツイ。眩しくて目がつぶれそうだ。
「……あ、はい! お願いします!」
はきはきしゃべる職員さんの陽の気にあてられ、若干目が泳ぐ俺であったが、それでも何とか職員さんの目を見つつ、引きつった笑顔を頑張って作りながら話を聞けたと思う。
職員さんの説明によると鉱業ギルドは鍛冶ギルドも兼ねており、マイナー(鉱夫)とブラックスミス(鍛治師)のジョブを得ることができる。ジョブ取得をするためには本来はジョブ試験に合格する必要があるが、ルベン議長の取り計らいで一つのジョブは無償で得ることができるとのこと。
銀鉱山を掘るなら、マイナーの初期スキル【マイニング】が固い岩盤を掘削するのにおすすめとのことだった。
ジョブは一つしか選べないが、ジョブレベルを上げて得たスキルはジョブを変更したとしても消えずに残る、というのがアルカナ・オンラインのジョブシステム。
マイナーは鍛冶素材を集めたり加工したりができるジョブで、ブラックスミスは武器や防具を作ることができるジョブ。
これから銀鉱山に向かうのならジョブはマイナーがいいだろうね。
「ではマイナーのジョブでお願いします!」
陰キャを克服するための教えその1。返事はハキハキと。
「かしこまりました! それではジョブの書き変えとギルドカードの発行を行いましょう。こちらへどうぞ~」
ニコッと笑う女性職員さんに連れられ入ったのは、ジョブクリスタルが設置された祈祷所だった。祈祷所の中には色違いの2つのクリスタルが並んで設置されてあった。
ジョブクリスタルというのはアルカナの神々の加護がある神聖な石であり、祈りが届くことでジョブが与えられる、というもの。
要は神像に祈りを捧げ願いが届けば、ジョブにふさわしい者(転職条件を満たした者)にジョブの加護が与えられるもので、ゲームの中でもそうなっていた。
「では、こちらのマイナークリスタルに両手を組んで跪き祈祷をお願いいたします」
俺は土気色に光るクリスタルに向かって跪き目を瞑って両手を組み祈りを捧げてみた。
しばらくして目を開けてみると何やら自分の体が光っているような気がする。
「おめでとうございます~! 無事ジョブチェンジができたようですね!」
職員のお姉さんがマイナークリスタルになにやら機械のようなものを近づけると、ジジジ……ガガガと音がした。そして機械から排出されたのは俺のギルドカードだった。
「はいどうぞ、ギルドカードになります! 身分証明書になるのでなくさないでくださいね~」と差し出されたギルドカードを受け取って見てみると、レベル、ステータス(残ポイント)、ジョブなどが書いてあった。
Name:Hide(BaseLv3)
Job:miner(JobLv1)
HP:19
MP:37
Status:S(筋力)1、V(持久力)1、A(素早さ)1、D(器用さ)1、I(知能)9、L(運)1(Rest8)
ギルドカードに書いてないスキルをステータスウィンドウを開いて確認すると、マイナーのジョブを得たことで、スキル【マイニング】をゲットしていた。鉱物を掘る際、威力が3倍になるとスキルの説明文に書いてあった。
ついでなので、未振りだったポイントをS(筋力)に8ポイント全振りしておいた。銀を掘りにいくのだから限界所持重量を増やしたいこと、ツルハシの掘削力がS(筋力)依存だからだ。
「ありがとうございました!」
「はい、またのお越しお待ちしております!」
陰キャを克服するための教えその2。礼儀正しくあれ、である。
俺はお姉さんにアドバイスしてもらった通り、売店で銀掘りに必要な道具を揃えることにした。炭鉱夫のイメージでしかないけど、ツルハシとカンテラ、ヘルメット、ゴーグル、マスクはいるイメージ。
売店では鉄のツルハシか青銅のツルハシかで迷ったけど、奮発してより硬い鉄製のものを選んだ。また灯りを松明にするかカンテラにするかで迷ったが、取り回しが利きそうなカンテラを選んだ。しめて大銀貨1枚、小銀貨2枚と大銅貨3枚。
マスクなど足りないものは、布などで代用しよう。
財布の残金は大銀貨4枚、小銀貨1枚、大銅貨3枚、小銅貨3枚。ステータスウィンドウでは所持している貨幣が表示されるようで、そのまま4133arcと表示されていた。
当面の目標はその日暮らしにならず、まともに生計が立てられるようになることだな。
俺は鉱業ギルドを後にした。
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