17 / 81
17話
しおりを挟む
検問の列には並ばず完全気配遮断を使って西門からオーエンの町に入る。
俺はそのままルベン議長の邸宅に向かった。途中井戸水を汲み水筒に補充、水分補給をする。ついでに埃と汗まみれの頭に水をかけ汚れを落とす。
ルベン議長の邸宅に着くと、この間と同じ赤髪のお姉さんが門番をしていたので「緊急で報告しなければいけないことがある」と伝え通してもらった。
応接室で待っているとルベン議長がやってきた。
「ハイド殿、おはようございます。それで緊急の要件とは一体……」
「実は昨晩ですね……」
俺は昨晩銀鉱山で改革派議員2名と宿場町のとりまとめ役と思われるリビオという男がしていた会話をルベン議長に伝えた。
俺の話が進むにつれ、ルベン議長の顔が怒りで紅潮し、ぷるぷると震えだした。
「ふざけるなああ!! ルチアちゃんを誘拐するだけでは飽き足らず、あんなことや、こんなことまでするだとおおおおお!? ふざけるなあああああああ!!! 絶対に許さーーーーん!!!」
ルベン議長がドカーンと大噴火。
高そうなツボやら調度品を手あたり次第に投げており、俺はそれをひょいひょい避ける。調度品は後ろに控えているロマンスグレーの有能執事さんが手や足で器用にキャッチしている。
「お、落ち着いてください! まだ何も起きてませんから!!」
激昂するルベン議長を必死に宥める俺。ぜーはーぜーはーと髪を振り乱しながら、肩で息をする大の大人二人。
ロマンスグレーの有能執事さんは、慣れた手つきで何事もなかったかのように調度品を元の場所に戻し、再びドア横で涼しい顔をして控えている。プロだな。
「……取り乱してすまなかった」
「いえ大事に娘さんのことですから、怒って当然だと思います。それでこの件どうしましょうか? 俺に何かできることがあれば協力します」
「そうだな、だが冷静に考えてみると訴追しようにも証拠は何もない。ハイド殿という証人がいるだけだ。向こうは仮にも議員。リビオをしょっぴくにしても、全力で抵抗してくるだろう。どうしたものか……」
「……俺に考えがあります。ミゲル議員とヤフコフ議員の邸宅の場所、家族構成、わかることを全て教えてください。あと議会はいつ開催されますか?」
「議会は丁度明日からくだんの銀鉱山の件を審議する予定になっておるし、二人の情報を教えることはできるが……。だが何をするつもりだ……?」
「ああいう下衆でプライドだけが高い奴らの心をへし折ってやるんです。きっと奴らの方からルベン議長に土下座してくると思いますよ……」
「……わかった、ならばそちらはハイド殿に任せよう。娘のこともあるが、私はこの町の民の生活を守らなければならぬ。民の生活の糧をみすみす失うことなど、断じて許してたまるか。鉱山爆破の件は、こちらでなんとか防いでみせよう。頼みましたぞ、ハイド殿」
「ええ、乗りかかった船です。お任せを」
俺はこれどう考えても派生クエストだよなあ……と思いつつも、胸を叩いてルベン議長の依頼を快く請け負った。
俺はそのままルベン議長の邸宅に向かった。途中井戸水を汲み水筒に補充、水分補給をする。ついでに埃と汗まみれの頭に水をかけ汚れを落とす。
ルベン議長の邸宅に着くと、この間と同じ赤髪のお姉さんが門番をしていたので「緊急で報告しなければいけないことがある」と伝え通してもらった。
応接室で待っているとルベン議長がやってきた。
「ハイド殿、おはようございます。それで緊急の要件とは一体……」
「実は昨晩ですね……」
俺は昨晩銀鉱山で改革派議員2名と宿場町のとりまとめ役と思われるリビオという男がしていた会話をルベン議長に伝えた。
俺の話が進むにつれ、ルベン議長の顔が怒りで紅潮し、ぷるぷると震えだした。
「ふざけるなああ!! ルチアちゃんを誘拐するだけでは飽き足らず、あんなことや、こんなことまでするだとおおおおお!? ふざけるなあああああああ!!! 絶対に許さーーーーん!!!」
ルベン議長がドカーンと大噴火。
高そうなツボやら調度品を手あたり次第に投げており、俺はそれをひょいひょい避ける。調度品は後ろに控えているロマンスグレーの有能執事さんが手や足で器用にキャッチしている。
「お、落ち着いてください! まだ何も起きてませんから!!」
激昂するルベン議長を必死に宥める俺。ぜーはーぜーはーと髪を振り乱しながら、肩で息をする大の大人二人。
ロマンスグレーの有能執事さんは、慣れた手つきで何事もなかったかのように調度品を元の場所に戻し、再びドア横で涼しい顔をして控えている。プロだな。
「……取り乱してすまなかった」
「いえ大事に娘さんのことですから、怒って当然だと思います。それでこの件どうしましょうか? 俺に何かできることがあれば協力します」
「そうだな、だが冷静に考えてみると訴追しようにも証拠は何もない。ハイド殿という証人がいるだけだ。向こうは仮にも議員。リビオをしょっぴくにしても、全力で抵抗してくるだろう。どうしたものか……」
「……俺に考えがあります。ミゲル議員とヤフコフ議員の邸宅の場所、家族構成、わかることを全て教えてください。あと議会はいつ開催されますか?」
「議会は丁度明日からくだんの銀鉱山の件を審議する予定になっておるし、二人の情報を教えることはできるが……。だが何をするつもりだ……?」
「ああいう下衆でプライドだけが高い奴らの心をへし折ってやるんです。きっと奴らの方からルベン議長に土下座してくると思いますよ……」
「……わかった、ならばそちらはハイド殿に任せよう。娘のこともあるが、私はこの町の民の生活を守らなければならぬ。民の生活の糧をみすみす失うことなど、断じて許してたまるか。鉱山爆破の件は、こちらでなんとか防いでみせよう。頼みましたぞ、ハイド殿」
「ええ、乗りかかった船です。お任せを」
俺はこれどう考えても派生クエストだよなあ……と思いつつも、胸を叩いてルベン議長の依頼を快く請け負った。
11
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私
とうとうキレてしまいました
なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが
飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした……
スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます
男女比が1対100だったり貞操概念が逆転した世界にいますが会社員してます
neru
ファンタジー
30を過ぎた松田 茂人(まつだ しげひと )は男女比が1対100だったり貞操概念が逆転した世界にひょんなことから転移してしまう。
松田は新しい世界で会社員となり働くこととなる。
ちなみに、新しい世界の女性は全員高身長、美形だ。
PS.2月27日から4月まで投稿頻度が減ることを許して下さい。
↓
PS.投稿を再開します。ゆっくりな投稿頻度になってしまうかもですがあたたかく見守ってください。
高身長お姉さん達に囲まれてると思ったらここは貞操逆転世界でした。〜どうやら元の世界には帰れないので、今を謳歌しようと思います〜
水国 水
恋愛
ある日、阿宮 海(あみや かい)はバイト先から自転車で家へ帰っていた。
その時、快晴で雲一つ無い空が急変し、突如、周囲に濃い霧に包まれる。
危険を感じた阿宮は自転車を押して帰ることにした。そして徒歩で歩き、喉も乾いてきた時、運良く喫茶店の看板を発見する。
彼は霧が晴れるまでそこで休憩しようと思い、扉を開く。そこには女性の店員が一人居るだけだった。
初めは男装だと考えていた女性の店員、阿宮と会話していくうちに彼が男性だということに気がついた。そして同時に阿宮も世界の常識がおかしいことに気がつく。
そして話していくうちに貞操逆転世界へ転移してしまったことを知る。
警察へ連れて行かれ、戸籍がないことも発覚し、家もない状況。先が不安ではあるが、戻れないだろうと考え新たな世界で生きていくことを決意した。
これはひょんなことから貞操逆転世界に転移してしまった阿宮が高身長女子と関わり、関係を深めながら貞操逆転世界を謳歌する話。
ハズレスキル【地図化(マッピング)】で追放された俺、実は未踏破ダンジョンの隠し通路やギミックを全て見通せる世界で唯一の『攻略神』でした
夏見ナイ
ファンタジー
勇者パーティの荷物持ちだったユキナガは、戦闘に役立たない【地図化】スキルを理由に「無能」と罵られ、追放された。
しかし、孤独の中で己のスキルと向き合った彼は、その真価に覚醒する。彼の脳内に広がるのは、モンスター、トラップ、隠し通路に至るまで、ダンジョンの全てを完璧に映し出す三次元マップだった。これは最強の『攻略神』の眼だ――。
彼はその圧倒的な情報力を武器に、同じく不遇なスキルを持つ仲間たちの才能を見出し、不可能と言われたダンジョンを次々と制覇していく。知略と分析で全てを先読みし、完璧な指示で仲間を導く『指揮官』の成り上がり譚。
一方、彼を失った勇者パーティは迷走を始める……。爽快なダンジョン攻略とカタルシス溢れる英雄譚が、今、始まる!
大和型戦艦、異世界に転移する。
焼飯学生
ファンタジー
第二次世界大戦が起きなかった世界。大日本帝国は仮想敵国を定め、軍事力を中心に強化を行っていた。ある日、大日本帝国海軍は、大和型戦艦四隻による大規模な演習と言う名目で、太平洋沖合にて、演習を行うことに決定。大和、武蔵、信濃、紀伊の四隻は、横須賀海軍基地で補給したのち出港。しかし、移動の途中で濃霧が発生し、レーダーやソナーが使えなくなり、更に信濃と紀伊とは通信が途絶してしまう。孤立した大和と武蔵は濃霧を突き進み、太平洋にはないはずの、未知の島に辿り着いた。
※ この作品は私が書きたいと思い、書き進めている作品です。文章がおかしかったり、不明瞭な点、あるいは不快な思いをさせてしまう可能性がございます。できる限りそのような事態が起こらないよう気をつけていますが、何卒ご了承賜りますよう、お願い申し上げます。
美醜逆転世界の学園に戻ったおっさんは気付かない
仙道
ファンタジー
柴田宏(しばたひろし)は学生時代から不細工といじめられ、ニートになった。
トラックにはねられ転移した先は美醜が逆転した現実世界。
しかも体は学生に戻っていたため、仕方なく学校に行くことに。
先輩、同級生、後輩でハーレムを作ってしまう。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる