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35話
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それから俺とオリビアさんは暇を見つけては友達としてデートを楽しむようになった。鉱業ギルド職員は週休二日のシフト制。元の世界でいうところの水曜日と土曜日がオリビアさんのお休みの日だそうだ。
仕事終わりのお食事デートに加え、週二日の丸一日使ってのデート。
ギルドで鍛冶仕事をしているとき基本オリビアさんは普通の職員として接してくれているが、お弁当を渡されたときはヒヤヒヤした。
それからはギルドに行く日はこっそりと受け取り、西の高台で岩盤を掘る日は宿屋まで持って来てくれたりという感じで、オリビアさんの手作り弁当を毎日食べるのが日課になっていった。
友達としてデートを重ねる中、きっと友達は友達に対して隠し事はしないもんだよなと考えた俺は、なるべくオリビアさんに秘密を作らないことにしようと思った。きちんと相談すべきことはしなくては。
ある時のオリビアさんは炉で燃え盛る激しい炎のごとし。
「ちょっと相談があるんだけど……」
「急にどうしましたか? 私、仕事柄人の相談によく乗るので何でも言ってください!」
胸を叩く仕草をして任せてと言うオリビアさん。今日はとても機嫌がよろしいみたいなので、あのことを相談しても怒らないで聞いてくれるだろう。
「前にカーミラさんに夜這いをかけられたことがあったんだよね……。その時は彼女を傷つけないように上手くかわせたと思うけど、こないだの感じだと、まだ自分のこと好きでいてくれるみたいですし、やっぱ宿屋を出……」
「なんですって!?」
まで言ったところで、言葉を被せられた。
ギンッ! メラメラメラメラ……。オリビアさんが目がナイフのように鋭く、瞳に青白き炎が揺らめいた、ような気がした。あまりの恐ろしさに喉の奥やいろんなところがひゅっと縮みあがる俺。
「そんなフシダラな宿屋、今すぐ出るべきです! 即刻退去しなくちゃっ!! どこかにアテは……」
鬼気迫る表情でオリビアさんがブツブツ何かを呟いている。
「いえ、あの、それは友達のライン越えでは……」
「友達は友達の身の安全を心配するものですっ!」
間髪入れずにピシャリ。
「……あ、はい。わかりました」
うむ、逆らわないのが吉だ。男は女という川の激流に抗わず岩のごとくそこにただ在るべし。まあ簡単に言うと、女の前で他の女の話はするな、ということだ。
ちなこれ、男性諸君は絶対に覚えておいてくれ。俺みたいに女友達と修羅場りたくないのならなおさらな。
こうしてオリビアさんに斡旋されたのは女っ気の一切ない、ムサイ男が経営する漢の汗が滲む宿屋であった。合掌。
ある時のオリビアさんは冷徹で計算高いコンピューターのごとし。
「ルチアお嬢様の件どうしましょう。今日もアルフレドさんと一緒にお弁当持ってきたんですよね……」
「それは考えどころね……。相手は町の有力者。下手に機嫌をそこねると、私の未来の夫が不利益を被ることに……。ルチアお嬢ちゃんはあと5年で結婚年齢まで18歳と考えると5年の猶予があるわ……。ハイドさん。ルベン議長には、婚姻は受けても良いが、5年後ルチアお嬢様が大人になったとき改めて自分で良いか判断してくださいと申し出てください。自分がその時独り身でなければ諦めていただき、もちろん、落ちぶれていればなかったことにしてください。と……」
「なるほど……、わかりました……!」
一部の暴走した発言が腑に落ちないものもあるが、概ね権力者は丁寧に扱うべきという点で納得させられる俺であった。
ある時のオリビアさんは強欲な大海賊のごとし。
「この金鉱石、シルバーモールカード(逆位置)がガープ銀鉱山で奇跡的に出たおかげで手に入ったんですよ~」
「なんですって! やっぱり私の目に狂いはなかったようだわ……。それで金鉱石はどこで掘れるんですか??」
ちょっとオリビアさん? 目が金貨になってますよ!
「……じゃあ今度実演してみますか?」
「はい、是非お願いします!!」
今度俺が試し掘りをしているあの場所で実演して見せる約束をする羽目になる俺であった。
そんなこんなのハプニングがありつつも、デートを重ねるうちオリビアさんの色々な一面を見ることができて、俺にとってはそれも楽しみの一つになっていた。
完全気配遮断は……、まだ言わなくてもいいか。いざとなったら、オリビアさんを守るために使えばいいんだし。虎の子は隠してこその虎の子。言うことで逆にオリビアさんもろともピンチに陥る可能性だってあるのだから。
俺が別の世界から来た人間だということも、いずれ話せるときがきたら話せたらいいな。
何でも話しができる友人がいるということは、生きていく上で本当に必要なことなんだ……。それに気付かせてくれた神様に感謝しないといけないな。
……
オリビアさんとお友達になってから20日間ほど経ったが、もちろんただ遊んでいたわけじゃない。オリビアさんがギルドで仕事をする間、俺は俺でコツコツと仕事をしていた。
鍛冶と採掘仕事をしていたらそれなりにお金も経験値も貯めることができたと思う。
Name:Hide(BaseLv11)
Job:blacksmith(JobLv7)
HP:47
MP:77
Status:S(筋力)15+2、V(持久力)5+1、A(素早さ)3、D(器用さ)5+2、I(知能)19、L(運)2+1(Rest0)
Skill:完全気配遮断、言語理解、鑑定、マイニングLv4、鉱石ドロップ、所持重量限界増加(鉱石)、武器製作Lv3、防具製作Lv3、メルトダウン(Rest0)
鍛冶熟練度:FランクLv6、EランクLv4、DランクLv2
所持金:76843arc
装備はDランクのメテオライト製の防具とメテオライト製のツルハシ、ハンマー、鍛冶道具にランクアップしている。品質は全て【劣化品】ではあるが、まだまだこれからだ。結構鉱石の売却代金があるのにお金が貯まらないのは、鍛冶道具を揃えたりDランクのレシピが高額だったりしたためだ。
メルトダウンはDランク以上の精錬製造をするのに必要なスキル。インベントリ内の石炭を消費し超高温の炎を出し、溶解した金属をハンマーで叩いて精錬するみたいな使い方をする。炎を飛ばしたりとかはできないので、ファイアーボールのような攻撃魔法的な使い方はできないようだ。
ちなみに処分できなかったCランクの金やらミスリルやらは、オリビアさんに入居させられた男臭い宿屋の物置で保管していて、中々出ないとはいえ増えていってる。
オリビアさんには鬼畜レアカードのことはまだ半信半疑ではあるものの伝えてあるし、何よりその道のプロだ。彼女と相談しつつ処分すれば問題ないだろう。
頼れる良い友人がいて本当に良かった。
仕事終わりのお食事デートに加え、週二日の丸一日使ってのデート。
ギルドで鍛冶仕事をしているとき基本オリビアさんは普通の職員として接してくれているが、お弁当を渡されたときはヒヤヒヤした。
それからはギルドに行く日はこっそりと受け取り、西の高台で岩盤を掘る日は宿屋まで持って来てくれたりという感じで、オリビアさんの手作り弁当を毎日食べるのが日課になっていった。
友達としてデートを重ねる中、きっと友達は友達に対して隠し事はしないもんだよなと考えた俺は、なるべくオリビアさんに秘密を作らないことにしようと思った。きちんと相談すべきことはしなくては。
ある時のオリビアさんは炉で燃え盛る激しい炎のごとし。
「ちょっと相談があるんだけど……」
「急にどうしましたか? 私、仕事柄人の相談によく乗るので何でも言ってください!」
胸を叩く仕草をして任せてと言うオリビアさん。今日はとても機嫌がよろしいみたいなので、あのことを相談しても怒らないで聞いてくれるだろう。
「前にカーミラさんに夜這いをかけられたことがあったんだよね……。その時は彼女を傷つけないように上手くかわせたと思うけど、こないだの感じだと、まだ自分のこと好きでいてくれるみたいですし、やっぱ宿屋を出……」
「なんですって!?」
まで言ったところで、言葉を被せられた。
ギンッ! メラメラメラメラ……。オリビアさんが目がナイフのように鋭く、瞳に青白き炎が揺らめいた、ような気がした。あまりの恐ろしさに喉の奥やいろんなところがひゅっと縮みあがる俺。
「そんなフシダラな宿屋、今すぐ出るべきです! 即刻退去しなくちゃっ!! どこかにアテは……」
鬼気迫る表情でオリビアさんがブツブツ何かを呟いている。
「いえ、あの、それは友達のライン越えでは……」
「友達は友達の身の安全を心配するものですっ!」
間髪入れずにピシャリ。
「……あ、はい。わかりました」
うむ、逆らわないのが吉だ。男は女という川の激流に抗わず岩のごとくそこにただ在るべし。まあ簡単に言うと、女の前で他の女の話はするな、ということだ。
ちなこれ、男性諸君は絶対に覚えておいてくれ。俺みたいに女友達と修羅場りたくないのならなおさらな。
こうしてオリビアさんに斡旋されたのは女っ気の一切ない、ムサイ男が経営する漢の汗が滲む宿屋であった。合掌。
ある時のオリビアさんは冷徹で計算高いコンピューターのごとし。
「ルチアお嬢様の件どうしましょう。今日もアルフレドさんと一緒にお弁当持ってきたんですよね……」
「それは考えどころね……。相手は町の有力者。下手に機嫌をそこねると、私の未来の夫が不利益を被ることに……。ルチアお嬢ちゃんはあと5年で結婚年齢まで18歳と考えると5年の猶予があるわ……。ハイドさん。ルベン議長には、婚姻は受けても良いが、5年後ルチアお嬢様が大人になったとき改めて自分で良いか判断してくださいと申し出てください。自分がその時独り身でなければ諦めていただき、もちろん、落ちぶれていればなかったことにしてください。と……」
「なるほど……、わかりました……!」
一部の暴走した発言が腑に落ちないものもあるが、概ね権力者は丁寧に扱うべきという点で納得させられる俺であった。
ある時のオリビアさんは強欲な大海賊のごとし。
「この金鉱石、シルバーモールカード(逆位置)がガープ銀鉱山で奇跡的に出たおかげで手に入ったんですよ~」
「なんですって! やっぱり私の目に狂いはなかったようだわ……。それで金鉱石はどこで掘れるんですか??」
ちょっとオリビアさん? 目が金貨になってますよ!
「……じゃあ今度実演してみますか?」
「はい、是非お願いします!!」
今度俺が試し掘りをしているあの場所で実演して見せる約束をする羽目になる俺であった。
そんなこんなのハプニングがありつつも、デートを重ねるうちオリビアさんの色々な一面を見ることができて、俺にとってはそれも楽しみの一つになっていた。
完全気配遮断は……、まだ言わなくてもいいか。いざとなったら、オリビアさんを守るために使えばいいんだし。虎の子は隠してこその虎の子。言うことで逆にオリビアさんもろともピンチに陥る可能性だってあるのだから。
俺が別の世界から来た人間だということも、いずれ話せるときがきたら話せたらいいな。
何でも話しができる友人がいるということは、生きていく上で本当に必要なことなんだ……。それに気付かせてくれた神様に感謝しないといけないな。
……
オリビアさんとお友達になってから20日間ほど経ったが、もちろんただ遊んでいたわけじゃない。オリビアさんがギルドで仕事をする間、俺は俺でコツコツと仕事をしていた。
鍛冶と採掘仕事をしていたらそれなりにお金も経験値も貯めることができたと思う。
Name:Hide(BaseLv11)
Job:blacksmith(JobLv7)
HP:47
MP:77
Status:S(筋力)15+2、V(持久力)5+1、A(素早さ)3、D(器用さ)5+2、I(知能)19、L(運)2+1(Rest0)
Skill:完全気配遮断、言語理解、鑑定、マイニングLv4、鉱石ドロップ、所持重量限界増加(鉱石)、武器製作Lv3、防具製作Lv3、メルトダウン(Rest0)
鍛冶熟練度:FランクLv6、EランクLv4、DランクLv2
所持金:76843arc
装備はDランクのメテオライト製の防具とメテオライト製のツルハシ、ハンマー、鍛冶道具にランクアップしている。品質は全て【劣化品】ではあるが、まだまだこれからだ。結構鉱石の売却代金があるのにお金が貯まらないのは、鍛冶道具を揃えたりDランクのレシピが高額だったりしたためだ。
メルトダウンはDランク以上の精錬製造をするのに必要なスキル。インベントリ内の石炭を消費し超高温の炎を出し、溶解した金属をハンマーで叩いて精錬するみたいな使い方をする。炎を飛ばしたりとかはできないので、ファイアーボールのような攻撃魔法的な使い方はできないようだ。
ちなみに処分できなかったCランクの金やらミスリルやらは、オリビアさんに入居させられた男臭い宿屋の物置で保管していて、中々出ないとはいえ増えていってる。
オリビアさんには鬼畜レアカードのことはまだ半信半疑ではあるものの伝えてあるし、何よりその道のプロだ。彼女と相談しつつ処分すれば問題ないだろう。
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