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幽霊出没(アッシャ小話)
幽霊出没(アッシャ小話)
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これは、まだリオンが幼く、エルに会う前のお話です。(今回は三人称)
全3話。
ある日神殿内で見た幽霊。
その正体は?
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「クロスⅦ、『アッシャ』という言葉をご存知ですか?」
金色の柔らかい髪を揺らしながら、小さなリオンがクロスⅦを見上げた。
年はまだ七つほどだ。
この少年は、人の世から隔絶された場所で生きてきた。
幾重にも結界が張り巡らされた地下神殿の内だけが、この世で知っている事のすべて。
師も、似たようなものではある。
しかし勉強熱心なので、神殿内の全ての書物を読破し覚えているらしい。
師にたずねれば、大抵は納得のいく答えを示してくれる。
「アッシャ?
さぁ……記録には残されていないな。
いったいどうしたというのだ?」
答える師もまだ若い。
男のようなしゃべり方ではあるが、それは先代の、更に前――――つまり、尊敬していた亡き師・クロスⅤをまねているだけだ。
実際のクロスⅦは男どころか、銀髪の、世にも稀なる美女……いや、美女と美少女の両方の風情を併せ持つ、精霊のような女性だった。
髪の色こそ違うが、その面差しと瞳の色はリオンにもよく似ている。
「実は昨日……暗がりで何度か見たのです。
『ソレ』が自分で、そう名乗りました。
でも、すぐに闇に溶けるように消えてしまいました」
リオンの言葉を聞き、クロスⅦは「ふむ」と言ってしばし考え込んだ。
もちろんその言葉に思い当たるはずもない。
『アッシャ』という名は、アースラがすでに封じていたのだから。
もちろん神殿内にある、どの本にも示されてない。
それでもリオンは真面目で優秀な弟子。
意味無く聞いてくることはないと、師はよく知っていた。
クロスⅦは更に考え続けた結果――――不思議なことに、ハッとしたように顔を上げた。
何か『アッシャ』について知っている事でもあったのだろうか?
「そうか。暗がりで……わかったぞっ。奴の名かっ!!
神聖にして不可侵な神殿に悪霊のごとく現れる、黒くて平べったいアレの名だなッ!!
即刻成敗してくれるっ!!!」
一瞬にして青ざめたのはリオン。
そう、師はトラウマレベルで大嫌いな『アレ』の名と勘違いしてしまったのだ。
「いえ、多分違っ……髪が長くて綺麗な小さな人間で、自分で『アッシャ』と名乗ったあと『カクレンボしよう』って……。
ああ待って下さい、話を聞いて……」
リオンの言葉には耳も貸さず、クロスⅦはキッと目を吊り上げ神殿内を細かくチェックして回った。
この状態になった師に『何を言っても無駄』なのは、リオンはよく知っている。
何せ命よりも大切とされる神聖な祈りの最中でさえ、『アレ』を発見した師は即座に儀式を中断し、抹殺するべく追い掛け回す。
そのぐらい大嫌いなのだ。
幼きころ、リオン同様目隠しをして育ったクロスⅦは、靴に奥ゆかしく潜む『アレ』を踏んだ。
しかも素足。
以来、『アレ』に関しては普段の冷静さも気品もかなぐり捨て、狂乱する。
だらしない先代――――――つまり、クロスⅥが生きていた頃、『アレ』は時々、大発生していたようだ。
だからリオンの師は先代のことは軽蔑しており、更にその先代だけを『師』と仰ぎ尊敬していた。
ちなみに、だらしない先代のクロス神官は、年の離れた彼女の実兄だ。
クロス神官は、アッシャがそうだったように、ゆっくりと年をとる。
そうして20歳になれば、容姿はさほど変わらなくなる。
だから兄は、クロスⅦとよく似た姿を保ったままであった。
それが、彼女にとってはますます腹立たしい。
性格は正反対なのに、姿だけは似るだなんて。
だがクロス神官は、ヴァティールのように永遠の命を持つわけではない。
魔獣の血を赤子の頃から定期的に取り込むため、体は頑健で、最大200才程度まで生きられるとされているが『不死』ではない。
体に著しい負担をかける『善の結界』を張る使命を負うので実際は、普通の人間と同程度か、それより若くして命を終える者がほとんどだ。
全3話。
ある日神殿内で見た幽霊。
その正体は?
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「クロスⅦ、『アッシャ』という言葉をご存知ですか?」
金色の柔らかい髪を揺らしながら、小さなリオンがクロスⅦを見上げた。
年はまだ七つほどだ。
この少年は、人の世から隔絶された場所で生きてきた。
幾重にも結界が張り巡らされた地下神殿の内だけが、この世で知っている事のすべて。
師も、似たようなものではある。
しかし勉強熱心なので、神殿内の全ての書物を読破し覚えているらしい。
師にたずねれば、大抵は納得のいく答えを示してくれる。
「アッシャ?
さぁ……記録には残されていないな。
いったいどうしたというのだ?」
答える師もまだ若い。
男のようなしゃべり方ではあるが、それは先代の、更に前――――つまり、尊敬していた亡き師・クロスⅤをまねているだけだ。
実際のクロスⅦは男どころか、銀髪の、世にも稀なる美女……いや、美女と美少女の両方の風情を併せ持つ、精霊のような女性だった。
髪の色こそ違うが、その面差しと瞳の色はリオンにもよく似ている。
「実は昨日……暗がりで何度か見たのです。
『ソレ』が自分で、そう名乗りました。
でも、すぐに闇に溶けるように消えてしまいました」
リオンの言葉を聞き、クロスⅦは「ふむ」と言ってしばし考え込んだ。
もちろんその言葉に思い当たるはずもない。
『アッシャ』という名は、アースラがすでに封じていたのだから。
もちろん神殿内にある、どの本にも示されてない。
それでもリオンは真面目で優秀な弟子。
意味無く聞いてくることはないと、師はよく知っていた。
クロスⅦは更に考え続けた結果――――不思議なことに、ハッとしたように顔を上げた。
何か『アッシャ』について知っている事でもあったのだろうか?
「そうか。暗がりで……わかったぞっ。奴の名かっ!!
神聖にして不可侵な神殿に悪霊のごとく現れる、黒くて平べったいアレの名だなッ!!
即刻成敗してくれるっ!!!」
一瞬にして青ざめたのはリオン。
そう、師はトラウマレベルで大嫌いな『アレ』の名と勘違いしてしまったのだ。
「いえ、多分違っ……髪が長くて綺麗な小さな人間で、自分で『アッシャ』と名乗ったあと『カクレンボしよう』って……。
ああ待って下さい、話を聞いて……」
リオンの言葉には耳も貸さず、クロスⅦはキッと目を吊り上げ神殿内を細かくチェックして回った。
この状態になった師に『何を言っても無駄』なのは、リオンはよく知っている。
何せ命よりも大切とされる神聖な祈りの最中でさえ、『アレ』を発見した師は即座に儀式を中断し、抹殺するべく追い掛け回す。
そのぐらい大嫌いなのだ。
幼きころ、リオン同様目隠しをして育ったクロスⅦは、靴に奥ゆかしく潜む『アレ』を踏んだ。
しかも素足。
以来、『アレ』に関しては普段の冷静さも気品もかなぐり捨て、狂乱する。
だらしない先代――――――つまり、クロスⅥが生きていた頃、『アレ』は時々、大発生していたようだ。
だからリオンの師は先代のことは軽蔑しており、更にその先代だけを『師』と仰ぎ尊敬していた。
ちなみに、だらしない先代のクロス神官は、年の離れた彼女の実兄だ。
クロス神官は、アッシャがそうだったように、ゆっくりと年をとる。
そうして20歳になれば、容姿はさほど変わらなくなる。
だから兄は、クロスⅦとよく似た姿を保ったままであった。
それが、彼女にとってはますます腹立たしい。
性格は正反対なのに、姿だけは似るだなんて。
だがクロス神官は、ヴァティールのように永遠の命を持つわけではない。
魔獣の血を赤子の頃から定期的に取り込むため、体は頑健で、最大200才程度まで生きられるとされているが『不死』ではない。
体に著しい負担をかける『善の結界』を張る使命を負うので実際は、普通の人間と同程度か、それより若くして命を終える者がほとんどだ。
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