30 / 437
第4章 鳥篭の外へ
5.鳥篭の外へ
しおりを挟む
次の日の早朝、俺は用意していた下働きの少年用の服を持ってリオンの所に行った。
本当は『正当な王子』として仕立ての良い立派な服を選んでやりたかったが、目立ってしまうのでそうもいかない。
リオンはずっと、存在を隠されて育ってきた。
王でさえ、その姿を目にしたことは無いという。
ならば、下働きの少年の格好をさせてうつむかせ、密かに連れ出せば、いぶかしむ者はいないはず。
「え、これを僕に……?」
渡された服を触ったリオンは、驚きの声を上げた。
「ああ。もうお前をいじめるクロスⅦはいない。早くこの服を着てみてくれ」
「……は、はい、兄様。神官服以外のお衣装、初めて着るので緊張します」
そう言って弟は、おずおずと神官服を脱ぎ始めた。
俺たちは兄弟だし、別に着替えの場に同席していてもいいはず。
だからそのまま何となく見ていたのだが……服を脱いでも、リオンはまるで女の子みたいだった。
肌の色はとても白く、透き通るよう。
それなのに所々ほのかに色づいていて、何だかドキドキさせられる。
どうしたんだ俺!!
リオンは弟っ!!
何で赤面しなきゃならないんだよ!!
ありえないだろっ!!
心の中で自分に突っ込みを入れながら、目をギュッと瞑って顔を背ける。
アレは弟! 弟! 弟!
心の中で百回ぐらい呟いてみる。
それでもドキドキが止まらない。
おまけに性別を除けば、今まで夢見ていた『俺の理想の相手』の条件にバッチリ当てはまることにまで気がついてしまった。
でも――――――それでもアレは、弟なのだ。
心を落ち着かせるために、別のことを考える。
昨日の夕食は、魚料理が美味しかった。
近隣を流れるレグルス川は魚の宝庫で、様々な魚料理が考案されては食卓に乗る。
昼食は、旬の山菜をつかったエスクレプ風の盛合わせが目にも鮮やかで美味かった。
友人の中には野菜嫌いの奴もいたが、俺は野菜はむしろ好きな方。
もちろん、肉や魚だって大好きだが。
朝食は……えっと、特に珍しいものは出てこなかったな。
おとといの夕食は……という具合に、一生懸命ここ10日ほどのメニューを思い出していく。
その途中、
「……兄様」
弱々しく呼ばれて思わず振り、また赤くなる。
これはマズイ。
何だかマズイ。
渡した服を下着姿のまま抱えた弟は、なんかとてつもなくドキドキさせる風情で、俺はどうして良いのかわからなくなる。
「あの兄様……お恥ずかしいのですが、いただいた服の着方がわかりません。
どのようにしたら良いのでしょうか…………?」
こんな基礎的なことも知らなかった事が余程恥ずかしかったのか、リオンは真っ赤になって立ち尽くしている。
えっと…………この場合は、手伝うのが正解なんだよな…………?
でも、どうしよう。
なるべく弟の肌を見ないよう、注意して着せていくが、ドキドキが止まらない。
教育係エドワードの、
「実の弟の下着姿を見て、ドキドキするような変態に育てた覚えはありません」
という、冷たい空耳が聞こえたような気がした。
うわ~ん、誤解だっ。
誤解なんだってば!!
それでも服を着せてしまうと、動悸は徐々に静まってきた。
ホッとして改めて弟を見る。
結論から言おう。
リオンに手渡した服は、リオンには全く似合わなかった。
城の少年たちがよく着る、一般的なものを選んだつもりだったけど、どう見ても女の子が男装してるようにしか見えない。
せめて肌の色がもう少し黒ければ…いや、腰まであるふわふわの長い髪が悪いんだろうな、きっと。
思いきって、髪を短くしてしまうか!?
でも切るには惜しい、綺麗な髪だ。
「あの……兄様?」
黙りこくった俺に、不穏なものを感じたのだろう。
リオンがおずおずと口を開いた。
「……やっぱり……おかしかったでしょうか?
クロスⅦは『兄様はとても美しい方』だとおっしゃっていました。でも僕は、きっと醜いのでしょうね。
ごめんなさい。醜い弟で……」
そう言うとリオンは、悲しげにシクシクと泣き出した。
本当は『正当な王子』として仕立ての良い立派な服を選んでやりたかったが、目立ってしまうのでそうもいかない。
リオンはずっと、存在を隠されて育ってきた。
王でさえ、その姿を目にしたことは無いという。
ならば、下働きの少年の格好をさせてうつむかせ、密かに連れ出せば、いぶかしむ者はいないはず。
「え、これを僕に……?」
渡された服を触ったリオンは、驚きの声を上げた。
「ああ。もうお前をいじめるクロスⅦはいない。早くこの服を着てみてくれ」
「……は、はい、兄様。神官服以外のお衣装、初めて着るので緊張します」
そう言って弟は、おずおずと神官服を脱ぎ始めた。
俺たちは兄弟だし、別に着替えの場に同席していてもいいはず。
だからそのまま何となく見ていたのだが……服を脱いでも、リオンはまるで女の子みたいだった。
肌の色はとても白く、透き通るよう。
それなのに所々ほのかに色づいていて、何だかドキドキさせられる。
どうしたんだ俺!!
リオンは弟っ!!
何で赤面しなきゃならないんだよ!!
ありえないだろっ!!
心の中で自分に突っ込みを入れながら、目をギュッと瞑って顔を背ける。
アレは弟! 弟! 弟!
心の中で百回ぐらい呟いてみる。
それでもドキドキが止まらない。
おまけに性別を除けば、今まで夢見ていた『俺の理想の相手』の条件にバッチリ当てはまることにまで気がついてしまった。
でも――――――それでもアレは、弟なのだ。
心を落ち着かせるために、別のことを考える。
昨日の夕食は、魚料理が美味しかった。
近隣を流れるレグルス川は魚の宝庫で、様々な魚料理が考案されては食卓に乗る。
昼食は、旬の山菜をつかったエスクレプ風の盛合わせが目にも鮮やかで美味かった。
友人の中には野菜嫌いの奴もいたが、俺は野菜はむしろ好きな方。
もちろん、肉や魚だって大好きだが。
朝食は……えっと、特に珍しいものは出てこなかったな。
おとといの夕食は……という具合に、一生懸命ここ10日ほどのメニューを思い出していく。
その途中、
「……兄様」
弱々しく呼ばれて思わず振り、また赤くなる。
これはマズイ。
何だかマズイ。
渡した服を下着姿のまま抱えた弟は、なんかとてつもなくドキドキさせる風情で、俺はどうして良いのかわからなくなる。
「あの兄様……お恥ずかしいのですが、いただいた服の着方がわかりません。
どのようにしたら良いのでしょうか…………?」
こんな基礎的なことも知らなかった事が余程恥ずかしかったのか、リオンは真っ赤になって立ち尽くしている。
えっと…………この場合は、手伝うのが正解なんだよな…………?
でも、どうしよう。
なるべく弟の肌を見ないよう、注意して着せていくが、ドキドキが止まらない。
教育係エドワードの、
「実の弟の下着姿を見て、ドキドキするような変態に育てた覚えはありません」
という、冷たい空耳が聞こえたような気がした。
うわ~ん、誤解だっ。
誤解なんだってば!!
それでも服を着せてしまうと、動悸は徐々に静まってきた。
ホッとして改めて弟を見る。
結論から言おう。
リオンに手渡した服は、リオンには全く似合わなかった。
城の少年たちがよく着る、一般的なものを選んだつもりだったけど、どう見ても女の子が男装してるようにしか見えない。
せめて肌の色がもう少し黒ければ…いや、腰まであるふわふわの長い髪が悪いんだろうな、きっと。
思いきって、髪を短くしてしまうか!?
でも切るには惜しい、綺麗な髪だ。
「あの……兄様?」
黙りこくった俺に、不穏なものを感じたのだろう。
リオンがおずおずと口を開いた。
「……やっぱり……おかしかったでしょうか?
クロスⅦは『兄様はとても美しい方』だとおっしゃっていました。でも僕は、きっと醜いのでしょうね。
ごめんなさい。醜い弟で……」
そう言うとリオンは、悲しげにシクシクと泣き出した。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
目覚ましに先輩の声を使ってたらバレた話
ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
サッカー部の先輩・ハヤトの声が密かに大好きなミノル。
彼を誘い家に泊まってもらった翌朝、目覚ましが鳴った。
……あ。
音声アラームを先輩の声にしているのがバレた。
しかもボイスレコーダーでこっそり録音していたことも白状することに。
やばい、どうしよう。
【完結】男の後輩に告白されたオレと、様子のおかしくなった幼なじみの話
須宮りんこ
BL
【あらすじ】
高校三年生の椿叶太には女子からモテまくりの幼なじみ・五十嵐青がいる。
二人は顔を合わせば絡む仲ではあるものの、叶太にとって青は生意気な幼なじみでしかない。
そんなある日、叶太は北村という一つ下の後輩・北村から告白される。
青いわく友達目線で見ても北村はいい奴らしい。しかも青とは違い、素直で礼儀正しい北村に叶太は好感を持つ。北村の希望もあって、まずは普通の先輩後輩として付き合いをはじめることに。
けれど叶太が北村に告白されたことを知った青の様子が、その日からおかしくなって――?
※本編完結済み。後日談連載中。
悪役会計様に転生した俺は、生徒会長に媚び売って生き残る
桜城 寧
BL
【第1部完結しました。第2部更新予定です!】
処刑された記憶とともに、BLゲームの悪役会計に転生したことに気付いた主人公・カイル。
処刑されないために、チャラ男の仮面を被り、生徒会長に媚びを売り、能力を駆使して必死に立ち回る。
だが、愛された経験がない彼は、正しい人との距離感を知らない。
無意識の危うい言動は、生徒会長や攻略対象、さらには本来関わらないはずの人物たちまで惹きつけ、過剰な心配と執着、独占欲を向けられていく。
——ただ生き残りたいだけなのに。
気づけば彼は、逃げ場を失うほど深く、甘く囲われていた。
*カクヨム様でも同時掲載中です。
邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ
零
BL
鍛えられた肉体、高潔な魂――
それは選ばれし“供物”の条件。
山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。
見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。
誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。
心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。
龍の寵愛を受けし者達
樹木緑
BL
サンクホルム国の王子のジェイドは、
父王の護衛騎士であるダリルに憧れていたけど、
ある日偶然に自分の護衛にと推す父王に反する声を聞いてしまう。
それ以来ずっと嫌われていると思っていた王子だったが少しずつ打ち解けて
いつかはそれが愛に変わっていることに気付いた。
それと同時に何故父王が最強の自身の護衛を自分につけたのか理解す時が来る。
王家はある者に裏切りにより、
無惨にもその策に敗れてしまう。
剣が苦手でずっと魔法の研究をしていた王子は、
責めて騎士だけは助けようと、
刃にかかる寸前の所でとうの昔に失ったとされる
時戻しの術をかけるが…
記憶を無くしたら家族に愛されました
レン
BL
リオンは第三王子で横暴で傲慢で侍女や執事が少しでも気に入らなかったら物を投げたり怒鳴ったりする。家族の前でも態度はあまり変わらない…
家族からも煩わしく思われたていて嫌われていた… そんなある日階段から落ちて意識をなくした…数日後目を覚ましたらリオンの様子がいつもと違くて…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる