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アリシア外伝・窓の外の雪 

アリシア外伝・窓の外の雪 6

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 私は深呼吸を一つして、リオンにも通じそうな話し方を考えた。
 よし、これでいこう!!

「あのねっ、リオンってい~っつもあのバ……じゃなくて素敵なお兄様に買い物してもらっているでしょう?
 でも、あなたももうすぐ13歳。
 それでいいの? ちょっとは恥ずかしく思ったりしないの?」

「誇らしいですっ!!! 素敵な兄様に色々買っていただけてっ!!!」

 バカ弟は、それはそれは嬉しそうに胸を張って言いやがった。
 絶句である。

「あのね、アリシアさん。この服もこのコートもマフラーも、それからこのカバンも、ハンカチもペンも小物入れも、靴下も靴も、全~部兄様が僕に買って下さったのですよっ!
 兄様は本当に優しい方なのですっ!」

 弾丸のように一気に話すと、リオンは満面の笑みを浮かべた。
 そうだった。コイツは兄を褒めるときだけは他人にも笑うのだった。

「……ま、まさかパンツまで兄まかせじゃないでしょうね…………」

 イヤミのつもりでボソッと呟くと、

「当然です! 
 今日のパンツは薄い水色に白のラインが入っていて、と~っても可愛いのですよっ!
 それも兄様が吟味して……」

 嬉しげに喋るリオンの口を慌ててふさいだ。そうして外に引きずっていく。
 ああ、恥ずかしかった!!!

 鉄の心臓を持つと言われる私だが、13歳にもなろうかという男の子が兄に買ってもらったパンツの柄を嬉しげに喋る場面には出くわしたことが無い。

 それでなくとも美女の私と美少年のリオンは周りから常にチラチラ見られていて、さっきの会話も店中の人が聞き耳立てていたに違いない。

 ああ、他人の振りしたいっ。
 他人の振りしてダッシュで一人で帰りたいっ!!

 しかし王の好意を無にするわけにもいかないし、今後リオンと仲良くなれる機会があるとも思えない。

 我慢だ私……。
 大人になれ私っ……!!
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