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冬の魔女が魔王に愛された幸せになるお話
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むかし昔、ある所に四人の魔女の加護を受けた国がありました。
春の魔女は、目覚めと緑を。
夏の魔女は、力とひかりを。
秋の魔女は、慈しみと実りを。
そして冬の魔女は、孤独と雪を。
この四人の魔女によって、国は平和に保たれていました。
それぞれの季節になると、登城し、一定の期間城に留まることとなっていました。しかし冬の魔女は孤独と雪を操ります。そのせいで冬の魔女は皆から嫌われていました。冬の魔女とは、名だけでは無く、魔女自身も冷たくて、孤独でした。
いっそのこと、居無くなってほしい。幾度となく、謂れのない非難を浴びる。それが、冬の魔女でした。
そんなある日、平和だった国に魔王が現れました。魔王は人々の生活を脅かしました。火の魔法を操る魔王はあちこちを焼き付くし、人々は大切な人や物を失い、悲しみました。
そこで、王様は思いつきました。
「冬の魔女よ。そなたは雪の魔法が使える。どうか魔王を倒してきておくれ」
「はい、畏まりました。喜んでまいりましょう」
冬の魔女は、人々を救えるのならばと進んで魔王退治に向かいました。
それが、厄介払いだと知っていても。
□□
「あっ、あぁ……まお、さま」
「……お前の身体は冷たくて心地がいい」
魔王の城の奥のまた奥。そしてまた奥の、私室。誰も寄せ付けない場所に似合わない甘い空気が充満していた。魔王と呼ばれる男は、冬の魔女の細い身体を抱き寄せ、胸元に顔を埋める。お互い何も身につけていない状態のせいか、触れ合う肌に熱が帯びる。氷のように冷たい冬の魔女の身体に、絡まる熱。比喩ではなく、魔王の身体はすべてを溶かしつく灼熱を持っていた。
「っ、あつ、い……あぁっ」
冬の魔女の嬌声が広い部屋に響く。潤んだ瞳で自身を貫く魔王……男を見つめた。孤独と冷たさに覆われた自身を見つめる瞳の奥には、情欲という炎が宿っている。それを見つけた瞬間、冬の魔女の中に突き立てられた塊が奥を刺激した。
「あっあぁ……だめ、だめ……」
「お前だけだ……この、熱を沈められるのは……」
魔王は、一人だった。
冬の魔女が来た時も、一人この部屋の中で苦しんでいた。闇夜のような黒い髪に、炎のように燃え盛る瞳……。どんなに恐ろしい化け物かとおもいや、見た目は普通の人間だった。内なる魔力を抑えきれず、それが災となって国を襲っていたのだ。
冬の魔女は、魔王と呼ばれた男に近づいた。熱にうなされる魔王の頬に、手を伸ばして指先が触れる。
その瞬間、魔女は熱いと感じた。魔王は、冷たいと感じた。
初めての感覚だった。
目があった二人は、引き寄せられるようにお互いを求めた。
魔王の熱い塊が魔女の蜜壷を突く。聞いたことのないような水音が木霊する。その音に混じった魔女の柔らかい声は、魔王の劣情をさらに煽る。初めての熱に溺れる魔女。初めての冷涼感に溺れる魔王。お互い孤独の中で生きてきた二人にとって目の前の人物は、喉から手が出るほど望んでいたものだった。
「サティア、サティア……」
「レノ……ヴァレルノ……!」
言葉は必要なかった。お互いがお互いの名を呼び、熱を分け合う。二人にとってそれだけで十分だった。真の名を与えた魔女は、魔王に仕える。真の名を与えた魔王は、魔女に仕える。
孤独と冷たさ。
孤独と灼熱。
二人で孤独を埋め、分け合う。
二人だけの世界が完成した。
「サティア、愛している」
「……レノ……私も」
誰もいない、誰にも邪魔をさせない世界で二人は愛を誓った。
魔王のすべてを焼き尽くす炎は、冬の魔女の身体によって抑えられた。
そして、国はまた平和を取り戻した。
□□
ある所に、三人の魔女に守られた平和な国がありました。
春の魔女は、目覚めと緑を。
夏の魔女は、力とひかりを。
秋の魔女は、慈しみと実りを。
少し前までもう一人の魔女がいましたが、国を守るためと果敢にも魔王の元に向かいました。そして、魔王の脅威から国を守ったのです。
しかし、誰もそれを認めません。
冬の魔女はそれほど嫌われていて、厄介者だったのです。
「あいつは逃げたのだ」
誰もがそう噂をしていました。
冬の魔女無き後、人々はそれはそれは楽しく暮らしていました。もう、雪と寒さと孤独に怯えなくていいからです。
しかし、その日は突然やってきました。
川が干上がり、作物が取れなくなりました。あちこちで干ばつが起きました。家畜たちは死に、人々の生活が脅かされるようになりました。
そして、害獣たちが人々を襲うようになったのです。
王様は魔女達に言いました。
「たいへんだ。川が干上がり、作物が取れない。どうにかしておくれ」
「かしこまりました。王様」
三人の魔女は、力を尽くしました。しかし、何も解決しません。
何故でしょうか。
冬の魔女が居なくなったから、と気がついたのは春の魔女でした。
冬の魔女が作り出す、雪は春には溶け、水となる。水が新たな実りをさずけ、人々の生活に潤いをもたらしていた。
それを知った時には、もう遅かったのです。
大地の潤いは消え去り、ぎらぎらと照りつける太陽にみな焼かれていきました。他の魔女にはどうにも出来ません。ただ、崩れ落ちていく国を見ていることしかできませんでした。
春の魔女は、目覚めと緑を。
夏の魔女は、力とひかりを。
秋の魔女は、慈しみと実りを。
そして冬の魔女は、孤独と雪を。
この四人の魔女によって、国は平和に保たれていました。
それぞれの季節になると、登城し、一定の期間城に留まることとなっていました。しかし冬の魔女は孤独と雪を操ります。そのせいで冬の魔女は皆から嫌われていました。冬の魔女とは、名だけでは無く、魔女自身も冷たくて、孤独でした。
いっそのこと、居無くなってほしい。幾度となく、謂れのない非難を浴びる。それが、冬の魔女でした。
そんなある日、平和だった国に魔王が現れました。魔王は人々の生活を脅かしました。火の魔法を操る魔王はあちこちを焼き付くし、人々は大切な人や物を失い、悲しみました。
そこで、王様は思いつきました。
「冬の魔女よ。そなたは雪の魔法が使える。どうか魔王を倒してきておくれ」
「はい、畏まりました。喜んでまいりましょう」
冬の魔女は、人々を救えるのならばと進んで魔王退治に向かいました。
それが、厄介払いだと知っていても。
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「あっ、あぁ……まお、さま」
「……お前の身体は冷たくて心地がいい」
魔王の城の奥のまた奥。そしてまた奥の、私室。誰も寄せ付けない場所に似合わない甘い空気が充満していた。魔王と呼ばれる男は、冬の魔女の細い身体を抱き寄せ、胸元に顔を埋める。お互い何も身につけていない状態のせいか、触れ合う肌に熱が帯びる。氷のように冷たい冬の魔女の身体に、絡まる熱。比喩ではなく、魔王の身体はすべてを溶かしつく灼熱を持っていた。
「っ、あつ、い……あぁっ」
冬の魔女の嬌声が広い部屋に響く。潤んだ瞳で自身を貫く魔王……男を見つめた。孤独と冷たさに覆われた自身を見つめる瞳の奥には、情欲という炎が宿っている。それを見つけた瞬間、冬の魔女の中に突き立てられた塊が奥を刺激した。
「あっあぁ……だめ、だめ……」
「お前だけだ……この、熱を沈められるのは……」
魔王は、一人だった。
冬の魔女が来た時も、一人この部屋の中で苦しんでいた。闇夜のような黒い髪に、炎のように燃え盛る瞳……。どんなに恐ろしい化け物かとおもいや、見た目は普通の人間だった。内なる魔力を抑えきれず、それが災となって国を襲っていたのだ。
冬の魔女は、魔王と呼ばれた男に近づいた。熱にうなされる魔王の頬に、手を伸ばして指先が触れる。
その瞬間、魔女は熱いと感じた。魔王は、冷たいと感じた。
初めての感覚だった。
目があった二人は、引き寄せられるようにお互いを求めた。
魔王の熱い塊が魔女の蜜壷を突く。聞いたことのないような水音が木霊する。その音に混じった魔女の柔らかい声は、魔王の劣情をさらに煽る。初めての熱に溺れる魔女。初めての冷涼感に溺れる魔王。お互い孤独の中で生きてきた二人にとって目の前の人物は、喉から手が出るほど望んでいたものだった。
「サティア、サティア……」
「レノ……ヴァレルノ……!」
言葉は必要なかった。お互いがお互いの名を呼び、熱を分け合う。二人にとってそれだけで十分だった。真の名を与えた魔女は、魔王に仕える。真の名を与えた魔王は、魔女に仕える。
孤独と冷たさ。
孤独と灼熱。
二人で孤独を埋め、分け合う。
二人だけの世界が完成した。
「サティア、愛している」
「……レノ……私も」
誰もいない、誰にも邪魔をさせない世界で二人は愛を誓った。
魔王のすべてを焼き尽くす炎は、冬の魔女の身体によって抑えられた。
そして、国はまた平和を取り戻した。
□□
ある所に、三人の魔女に守られた平和な国がありました。
春の魔女は、目覚めと緑を。
夏の魔女は、力とひかりを。
秋の魔女は、慈しみと実りを。
少し前までもう一人の魔女がいましたが、国を守るためと果敢にも魔王の元に向かいました。そして、魔王の脅威から国を守ったのです。
しかし、誰もそれを認めません。
冬の魔女はそれほど嫌われていて、厄介者だったのです。
「あいつは逃げたのだ」
誰もがそう噂をしていました。
冬の魔女無き後、人々はそれはそれは楽しく暮らしていました。もう、雪と寒さと孤独に怯えなくていいからです。
しかし、その日は突然やってきました。
川が干上がり、作物が取れなくなりました。あちこちで干ばつが起きました。家畜たちは死に、人々の生活が脅かされるようになりました。
そして、害獣たちが人々を襲うようになったのです。
王様は魔女達に言いました。
「たいへんだ。川が干上がり、作物が取れない。どうにかしておくれ」
「かしこまりました。王様」
三人の魔女は、力を尽くしました。しかし、何も解決しません。
何故でしょうか。
冬の魔女が居なくなったから、と気がついたのは春の魔女でした。
冬の魔女が作り出す、雪は春には溶け、水となる。水が新たな実りをさずけ、人々の生活に潤いをもたらしていた。
それを知った時には、もう遅かったのです。
大地の潤いは消え去り、ぎらぎらと照りつける太陽にみな焼かれていきました。他の魔女にはどうにも出来ません。ただ、崩れ落ちていく国を見ていることしかできませんでした。
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