その牙は喰らいついたら離しません

ぐるもり

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結婚までの紆余曲折

1(渥美視点)

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 望、あんたは勘違いしてるよ。

 喰らい付いたら離さないのはきっと私の方だ。



 ぱちんとシートから錠剤を一粒取り出す。飲み慣れた硬水で錠剤を流し込む。

 望と付き合うようになってから、習慣が一つ増えた。低用量ピル。これが私の精一杯考えた結果だ。




 望は本当に地元に帰ってきて、本社勤務となった。三年目では異例のことらしい。しかし、本人はへらっと笑っていた。大したことない。と、他の人が聞いたら羨む言葉とともに。

 望の新居は、ベッド、キッチン用品、三口のコンロ(横に並んでいた)などなど。数え上げたらキリがないくらい私の好きなもので埋め尽くされていた。

 流石望。私の事を本当によく分かっている。私のお気に入りで埋め尽くされた空間は、すぐに私の帰る場所となった。



「ただいま!今日は渥美のが早かったね」

 私と付き合うようになってから、望は私の事を名前で呼ぶようになった。前の『あっちゃんと』に呼ばれるのも気に入っていたが、子供っぽいという理由で却下された。

「ご飯出来てるよ。着替えて手を洗って来なさい」
「はーい」

 今日は寒くなってきたので、ごま豆乳鍋にした。既製品のスープでは使用しておらず、自分で一から作ったもの。これは望の次兄直伝レシピ。初めて食べた時に気に入って教えてもらったものだ。
 ねりごまに豆乳、白味噌にこんぶ茶、あとは野菜とお肉からいい出汁が出てくれる。

「渥美、これ好きだよね」
「うん、大好き」
「僕は?」
「ばかなこと言ってないでお皿用意して!」
「ちえー」

 台所に立って料理をしていると、望は隙あらばお尻を触ってくる。その触り方も、ソフトタッチではなく、私の快感を誘うように揉んでくる。それだけで私の身体は熱を持ってしまう。今一番困っていることだ。
 やっとの思いで望の手を払いのける。あっちに行けと私は手を振る。すると、望は唇を少し尖らせてすごすごと離れていった。

 そんな日常の中で、時々望はふざけて私の気持ちを確かめようとしてくる。

「ねぇ、渥美。僕のこと、好き?」
「……の、ぞみ」
「うっそ。そんな深刻な顔しないで?」

 こんな風に。
 

 私はとっくに望に堕ちてしまっている。彼の優しさや私への愛情は、惜しむ事なく私に注がれている。
 望の気持ちを利用して、自分の自尊心を満たす目的で始まった関係だった。
 けれども、望の存在は私の足りない部分全てを満たしてくれた。言葉、態度全てが私だけを見ていてくれる。そんな人と一緒にいて、好きにならずにいられる。なんて事は無かった。
 セックスも本当に私とするまで、誰ともした事ないのかと疑うほどいい。望とのセックスを思い出し、腹の奥底に熱を孕む。じわり、と想像だけで濡れてきてしまった。
 
 そんな事を考えてぼうっとしていたら、隣でIHコンロのスイッチが切られる音がした。

「あ、まだ煮込んで……」
「渥美……今どんな顔してるかわかる?」
「……え?」
「僕とセックスしたくて堪らないって顔してる」
 
 恥ずかしさで顔の温度が一気に急上昇したのがわかる。図星だった。

「ふふ、真っ赤。かぁわいい」

 シンクに身体を押し付けられる。抵抗のない私を見て、望はにっこり笑った。するするとスカートをたくし上げられる。太ももに触れる手が冷たくて、子犬のような声が出てしまう。

「いまの声、すごくイイ。ごめんね冷たくて。でもそのうちあったかくなるよ」
 唇が触れそうな位顔が近づいてくるけれど、決してキスはして来ない。
「あ…」

 キスしたい。でも言えない。そんな気持ちを込めてじっと見つめると、意地悪そう目の前の顔が歪んだ。

「なぁに?あっちゃん。教えて」

 態とらしくあっちゃんだなんて!悔しくなって、睨み付ける。すると太ももを彷徨っていた手がショーツの上から敏感な所をなぞられた。

「っあ……」

 急な刺激に嬌声があがると、すぐさま唇を塞がれた。

「っんー!」

 舌が口腔内を蹂躙し、私の逃げる舌を捕まえられる。あまりに気持ちよくて身体の力が段々と抜けていく。ずり落ちないように必死に望の首にしがみついた。

「っん、んぅ!あーっ!」

 キスに集中していると、下腹部に衝撃が走った。

「あー…イイっ!あんまりほぐれてなくってキツイよ…!」


 いつの間にやらショーツも望のスラックスも下着も取り外されていた。そして、そそり立った肉棒がまだ解れていない私の膣壁奥深くに入り込む。
 片足を望に抱えられる。さらに奥深くに入ろうと望は腰を押し付けてくる。

「あっ!いっ……」
「……痛いの?やば、狭いし処女犯してるみたい!」
「ま、って!あっ……くぅ」
「あぁ、渥美……あつみ!」

 片足では身体を支えられず、望に縋り付く。益々身体が密着し、子宮の入り口に楔を打たれているようだ。
 痛がってるのを見て興奮するなんて。この変態と罵ってやりたいが、口から出るのは喘ぎ声だけだった。
 段々と膣内が解れてきて、じゅぷじゅぷと水音もしてくる。痛みは無くなり、望の先端がイイ所を擦り始めた。

「あっあー!きもち、イイ!」

 がんがんと腰を打ち付けられ、舌が絡まる。お互い殆ど服を着たままキッチンで絡み合うこの異様なシチュエーションも、私達を高みへと押しやる要因となった。

「あつみ…でるっ!」
「あ、っんー!」

 スパートをかける様に望の動きが早くなる。ぱんぱんと肉がぶつかり合う音が部屋中に響き、お互いの嬌声がそこに重なった。

「あーっ!」

 びゅくびゅくと音が聞こえてきそうな勢いで、望が膣内へと白濁を放つ。渇望した子宮がそれをごくごくと飲み干す様に受け止める。

「……中に……でちゃったね……?」

 余韻もそこそこに、望は萎えた肉棒を抜く。その刺激で、白濁が太腿を伝って線を描いた。
 望は流れた線を指で掬い上げる。それを膣内へと押し込み、くちくちと音を立てるようにナカをかき混ぜた。ゆるゆるとした刺激が、私の快感を誘う。
 ゆっくりとナカから指が抜かれる。そして、望はそっと腹部の上から子宮のある位置を撫でた。

「ふふっ、今日はどうかなぁ」

 私はそんな望の様子をぼんやりと眺めていた。
 望が望んでいることにはならないよ。と言葉には出さずに謝罪する。

 私はずるい。
 先に進む事も後ろに戻る事も出来なくて、を続けるにはどうしたらいいかばかりを考えている。二十八個の錠剤が、私の支え。

 望が大好きだから、変わってしまうことが怖い。
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