シュミゲ廃人プレジデント

市場竜太郎

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第一幕

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 ――――初期設定を登録。

 ユーザーネーム、『アギ』

 ワールド……1。

 難易度選択……。


「……よいしょっと。初期設定完了……」

 一人の少年が。

 暗がりの中で。

 PCのディスプレイに照らされながら。

 しきりに何かを画面に打ち込んでいた。

 画面に映るは何かのゲーム画面、と。PCには最初からインストールされているであろうメモ帳。


「んー……この攻略の仕方はもうやったし……あと残っているのは」

 しきりにゲーム画面とメモ帳とを見比べて見落としがないか確認する。

「まぁ、間違えたとしても、またやり直すか……。俺は、このゲーム、何百週もしてるんだし」

 目の下にうっすらとクマをつくりながら少年は呟いた。

 誰もいない、暗い部屋の中で……。

 その物語は幕を開ける。


 その世界の名は、オスティア。
 五つの国からなる剣と魔法のファンタジー世界!
 主人公であるこの俺、平坂亜樹(ひらさかあぎ)ことアギは五つの国から一つを選び、その国の王となる!
 そして、王となって国を発展させつつ……他の国を屈服、あるいは滅ぼしながら、天下統一を目指す、いわゆるファンタジー世界版の信○の野望ッ!
 それがこのゲーム、【マジカルオスティア】なのだ!

「と、熱弁したのはいいものの……」

 俺は最初に行われる長ったらしいチュートリアルをぱっぱとこなしながら口笛を吹く。

 最初に言っておこう。このゲーム、俺は極めている。
 やれることは全てやり、使える裏技も全て知っている。
 ありとあらゆるクリアの方法をこなし、もう歩くwi○i先生と言っても過言ではないほどの情報量を頭の中に叩き込んでいる。

 ――――が、実は一個だけやりのこしたことがあったので、何百回もエンディングを見たであろうこのゲームを起動しているのだ。しかも始めから。

「初期幹部ユニットのみでの縛りも、幹部ユニット一人限定縛りもこなした。……でも、まさかこんな縛りがあったとは」

 自分の中で、ふつふつと期待がこみあがる。
 ……マジカルオスティアは、数年前にパソコンで発売され、今ではもう人気なんてほとんどないゲームだ。
 でも、研ぎ澄まされた自由性に、キャラクター達のストーリー! どれをとっても最近のゲームなんかにゃ負けてないと俺が断言する!
 特に、キャラ達それぞれに存在する物語が本当に泣けるものだったりする。……いや、そういうのがないネタキャラもいることにはいるんだけどな。

 それから、このゲームには少しだけ特徴がある。
 このゲームを出した会社が、元々エロゲの会社なのである。
 ……このゲームは15歳以上を対象としているのだが…………エロゲの名残か、登場人物は主人公を除いて全員女。しかもフルボイスときたもんだ。
 人気の一部はここにもある。

「やっぱりこの縛りをするなら、リースティアスかな……最初だしやりやすいのを選ぶべきか」

 チュートリアルを終えれば、次は自分が統治する国選び。
 ここを通ることでようやくゲーム本編に入れる。

 国についての特徴は今言っても混乱するだろうし、説明は後回しにするとして……さて、と。

「よし。設定完了だ」

 カーソルを合わせて完了の部分をクリックする。
 小気味いい音を立ててマウスの左がへこみ、次の画面にいくための指示がパソコンに出される。

 ――はずなのだが。

「…………あれ、バグったか?」

 画面が動かなかった。
 …………おいおい待てよ。
 このパソコン買ってからまだ二ヶ月だぞ。お陀仏するには早すぎるだろ。
 だとしたらゲームディスクの問題か?
 かれこれ3年は使っているソフトだ。確かにガタが来てもおかしくない、か……。

 呟きながら俺は少し画面を眺めて待っている。
 しかし、一向に画面は動かない。

「おいおい勘弁してくれよ……」

 幾つものバグは見つけてきたっちゃ見つけてきたが、こういう物理的なフリーズだとどうにもできない。

 俺は諦めてパソコンを強制終了させた。
 瞬間、俺の部屋が唐突に暗くなる。

「――はぁ。萎えるぜ」

 やる気がごっそり削られた気分だった。
 ……今日は、もう寝ようかな。
 なんて考えていたら。

「ん、ん?」

 体に違和感を感じた。
 それは徐々に大きくなっていって…………。

「うわっ!」

 思いっきり。殴られたような衝撃を体に受けて、ついには俺は仰向けにぶっ倒れた。

 ……大学一年生、平坂亜樹。部屋でひっくり返るなんて初めての経験です。

 しかもそれだけに留まらず、体の異変は更に促進する。
 どんどんどんどん。俺の目が重くなって意識が薄れていく。

 ……俺は結局、ひっくり返ってから一言も喋れぬまま。

 意識を失ってしまった。


 ――――――。
 ――――。


「んぁ…………?」

 目を覚ました。
 俺の目に最初に映ったのは、赤い天蓋だった。
 そして、いつの間に移動したのか、俺の下には部屋の硬いフローリングではなく柔らかなベッド。

 そして、起き上がって脂汗を垂らしながらゆっくりと前を見ると…………。

 そこには、桃色の髪をサイドテールにしてゆったりと垂らし、俺に向かって優しい笑顔を向ける…………。

「おはようございます。国王様」

 もはや見慣れまくった、オスティアの案内役さんが立っていた。

「…………めい、せき……む?」

 俺は、目をしばたかせながら、その現実を見た。
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