《完結》幼馴染の女上司と異世界召喚された僕ですが、勇者じゃなく“標的”でした ~殺し屋に命を狙われるとか聞いてない~

月輝晃

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第一章 田中悠斗

強くなっちゃうかも

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 僕らは次々とホーンないラビットを斬り伏せていった。
 
 白い毛玉が跳ね、短い悲鳴をあげて倒れるたび、胸の奥に妙な高揚感が生まれる。戦っているうちに、はっきりと気づいた。剣を振る腕が軽い。身体が思いどおりに動く。

 レベルアップするたびに、明らかに強くなってる。

 ――だいたい「力+1」で、米袋ひとつぶん(5kg)ぐらい余裕が増えた感じ? これ、真面目にマッチョになれるんじゃ……?
 
 しかも剣筋が速くなったせいか、ホーンないラビットの動きがスローモーションに見えてくる。跳ねるタイミング、足の着地、耳の揺れ――全部、手に取るように分かる。

 五匹目を仕留めた瞬間、またあの声が脳内に響いた。

『――レベルアップしました! レベル3に上がりました!』

「……は?」
 思わず声が漏れた。
 
 ちょっと待て。さっき二匹目でレベル2になって、今度は五匹目でレベル3? 普通のRPGなら、必要経験値はレベルが上がるごとにどんどん増えるはずだ。

 胸がざわめく。まさか――これがイリアールのチート?
 必要経験値が半分、つまり他人の2倍の速度でレベルアップする能力ってことか!?

 急いで隣を見る。

「葵、今レベルいくつ?」

 葵は軽く耳を切り落としたラビットを足で払いのけ、汗をぬぐいながら答える。
「レベル2。さっき三匹目で上がったよ。……なんで?」

 ビンゴだ。葵は三匹でレベル2、僕は二匹でレベル2、そして五匹目でレベル3。
 ――間違いない、僕だけ成長速度が異常に速い! 大体2倍くらいか。

 心臓が跳ねる。
 イリアール……シンプルだけど、恐ろしく強いチートだ。こんな効率で成長できるなら、すぐ強くなれるぞ。いずれは葵を追い越せるかもしれない……。
 
 ――レベル10くらいになったら、どうなるだろう?
 筋肉ムキムキ、剣は片手でブン回し、炎とか雷とか余裕で飛ばせるようになって……。
 横で葵が、ちょっと困った顔で僕に縋りついてくる。

『悠斗……私じゃもう太刀打ちできない。助けてよ……お・ね・が・い♥』

 葵が小さな肩を震わせて、僕の胸に顔を埋めてくる。
 え、なにこれ、デレ? しかもめっちゃ可愛い! いやいや、普段ツンツンしてるからこそ、このギャップが最高なんだよな……!

『……もう、悠斗がいないと生きていけないかも。お願い、ずっと隣にいて♥?』

 ああああ、言った! 葵がそんな弱音を俺に!?
 よしよし、任せろ。僕はもうただの社畜じゃない。異世界最強の勇者だからな!
 腕の中で甘えてくる葵の頭を優しく撫でて――

「……ちょっと、何ニヤけてんの?」

 現実の葵の声で我に返った。気づけば、僕は剣を握りしめながら口元がゆるみきっていたらしい。
 横目で睨まれ、背中に冷や汗が流れる。

 思わずニヤけてしまいそうになり、慌てて口をつぐむ。
「……いや、なんでもない。よし、もっと倒すぞ!」

 剣を握る手に自然と力がこもる。視線の先には、まだ群れをなすホーンないラビットたち。次の瞬間、葵もこちらを見て口角を上げた。

「ふん、私に負けないように頑張りな!」

 彼女の笑みは挑発的で、だけどどこか楽しそうで。
 僕は胸の奥が熱くなるのを感じながら、再び群れへと踏み込んだ。
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