《完結》幼馴染の女上司と異世界召喚された僕ですが、勇者じゃなく“標的”でした ~殺し屋に命を狙われるとか聞いてない~

月輝晃

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第一章 田中悠斗

ちょっと森へ行こうか①

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「……悠斗。さっき、あんたのレベル確認した時、なんかおかしかったよね?」

 唐突に声をかけられて、心臓が跳ねる。
 葵は腕を組んで、じとりと細めた目をこちらに向けていた。若い姿なのに、妙に圧がある。

「え、えっと……な、なんのこと?」
「とぼけないで。あんた、私に『今レベルいくつ?』って聞いた時、なんか確信した顔してたじゃん。私、レベル2になるのに三匹倒したんだよ? でもあんたは五匹目でレベル3。……速すぎじゃない?」

 うわ……めっちゃ見抜かれてる!
 さすが部長。観察眼がえげつない。

 誤魔化すか? いや、これは逆効果だ……。
 覚悟を決めて、正直に打ち明ける。

「……実は、僕のスキルに『2倍』ってのがあってさ。たぶん、レベルアップに必要な経験値が半分になってるんだと思う。葵が三匹でレベル2なら、僕は二匹でレベル2、五匹でレベル3……そんな感じ」

 その瞬間、葵の瞳がきらりと光った。好奇心に火がついた顔だ。

「へぇ……なにそれ。完全にチートじゃん。ずるっ! なんで私にはそういうのついてないのよ!」

「し、知らないよ! でも葵だってステータスめちゃ高いじゃん。力も素早さも、僕の五倍くらいあるし!」

「……ふん。まあ、それはそうだけど……」
 言いかけて、葵がふっと目を細める。

「――ちょっと待って。なんで勝手に“私の数値”と比べてんのよ?」
 ぎくり、と背中を冷たい汗が伝う。

「……あっ……やっぱり見たのね……」

「いやゴメン!でも意味がわからなくって。B86 W58 H85とか何の意味があるのか……」

「は!?あんた、まじで私の余計なものまで覗いたの!? しかも、その……その数字まで!?」

 葵の顔が一瞬で真っ赤になり、剣を握る手がプルプル震えてる。うわ、ヤバい! 完全に地雷踏んだ! 高校生時代の姿の葵がキレると、なんか余計に迫力あるぞ!

「はあああ!?!?!?」
 葵が素っ頓狂な声を上げた。顔は一瞬で真っ赤。耳の先まで染まっている。

「ちょ、ちょっと待ちなさいよ! あんた、よりによって……よりによってそこまで覗いたってわけ!?」
「い、いやいや! 見たくて見たんじゃなくて! 勝手に表示されたんだって!」

「黙れぇぇぇぇ!!!」
 剣の鞘ごとドンッと地面に叩きつける。ギルド前に甲高い音が響き、通りの冒険者たちが一斉にこちらを振り向いた。

「いや葵、落ち着けって! 本当に勝手に出ただけで、僕だって意味わからないんだよ! BとかWとかHとか! そもそもこの世界で単位として有効なのか!?」

「ふざけんな!! それ、私の……スリーサイズじゃん! あんた最低っ!!」
「わ、わああ! 違うんだって! 混乱してただけで――」
「言い訳で余計に恥ずかしいこと言うなぁぁぁ!!!」

 真っ赤な顔で叫びながら剣を振り上げる葵。
 その迫力はホーンないラビットの群れよりよっぽど恐ろしかった。

「待って待って! ごめん! 悪気はなかったんだ! 二度と鑑定しないから! ……でも、スタイルいいなって――」

「★※☆〇!!」

 葵の怒号に、僕は即座に口をつぐむ。
 しばらくギロッと睨まれていたが、ようやく剣を下ろし、大きく息を吐いた。

「はあ……ほんと、最悪。あんたってほんと昔からデリカシーないよね。高校の時も、私の弁当勝手に食べたりさ」

「え、あれ葵が『食べていいよ』って……それに翌日から毎日僕の分まで作ってくれて――」
「うっさい! もうその話やめ! とにかくステータス覗くのは禁止! いい!?」
「はい、了解しました……」

 なんとか怒りは収まったようでホッとする。……けど、あのスリーサイズが頭から離れない。いやいや、今考えるのは死ぬほど危険だ!

 そんな僕の心境なんて知ってか知らずか、葵は剣を肩に担ぎ、にやっと笑った。

「ねえ悠斗。だったらもっと効率よくレベル上げしようよ。この草原のウサギじゃ弱すぎ。近くに“獣人の森”があるでしょ? そこならもっと強いモンスターいるはず。絶好のレベル上げポイントじゃん!」

「獣人の森……う、うーん、ちょっと怖いけど……まあ、葵が一緒なら……なんとかなるか。よし、行こう!」
「ふふ、悠斗のビビった顔、ダサッ!」
「うっ……」

 照れ隠しのように笑う葵は、高校生の頃の姿なのに驚くほど頼もしかった。
 ステータスポイントを、力に2、素早さに2振り――少しでも追いつきたい。
 これで少しは戦いやすくなるはず。

「あの時の事は、気の迷いだったんだから……」
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