《完結》幼馴染の女上司と異世界召喚された僕ですが、勇者じゃなく“標的”でした ~殺し屋に命を狙われるとか聞いてない~

月輝晃

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第一章 田中悠斗

報酬

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 街の広場は、ワイバーン討伐のニュースで大いに沸き返っていた。
 松明の明かりが金色に揺れ、夜空には紙灯籠が舞っている。
 人々の歓声と楽器の音が入り混じり、まるで祭りのようだ。
 焼き菓子やスープの香りが漂い、腹がぐうと鳴る。
 
 子供たちが「英雄! 英雄!」と駆け寄ってきて、僕らの周りをはしゃぎながら飛び跳ねている。
 
「英雄だ!」「ワイバーンを倒したぞ!」
「見ろ、あれがドラゴンの鱗だ!」

 どこからともなく拍手が湧き起こり、歓声が夜空に反響した。
 まるで街全体が祝福してくれているみたいだ。
 少し照れくさいけど……悪くない。いや、かなり悪くない。

 僕らは戦利品の詰まった袋を担ぎ、ベルフォードの中央広場へと凱旋した。
 袋の中でワイバーンの鱗がカチャリと鳴るたびに、人々の視線が集まる。
 みんなの期待と尊敬の入り混じった眼差しに、胸が少し熱くなった。

「ミャウ! ユート、みんなに愛されてるニャ!」

 ウミャウが僕の手を握ったまま、尻尾をくるくると回して笑う。
 猫耳がピコピコ動くたび、近くの子どもたちが「かわいいー!」と叫んで群がった。
 ウミャウは誇らしげに胸を張り、得意顔で言う。
「ミャフフ、ウミャウ人気もすごいニャ!」
「たぶん、ユート人気より高いニャ!」
「そんなわけあるか!」
 ……でも実際、子どもたちは完全にウミャウに夢中だ。

 サーラも負けじとポーズを決める。
「ヒョウ! こっちもかっこいいヒョウ! ほら、この爪! ドラゴンの鱗を貫いたヒョウ!」
 ポーズが微妙に決まらず、子どもに「それ、猫パンチ?」と言われて微妙な顔をする。

 広場の中央では、すでにギルドの式台が設けられ、
 松明の灯りに照らされた壇上でギルド長ガルド・ベリウスが待っていた。
 分厚い胸板と白い髭をたくわえた巨漢――声だけで地面が揺れそうな男だ。
 その隣には、いつも優しく微笑む受付嬢のミリアさんが立っている。

「おお、よくぞ戻った! ベルフォードの英雄たちよ!」

 ガルドの重低音が響くと、広場に再び拍手と歓声が広がった。
 僕たちの背中を押すように、人々の「おめでとう!」の声が重なっていく。

 エリルが書類袋を握りしめ、ぱあっと顔を輝かせて僕の肩を叩いた。
「悠斗さん、報酬楽しみにしててくださいね! 今回は相当の高額ですよ!」
「お、おう……(エリルの“高額”って単語、妙に心が踊るな)」

 彼女はすぐに式台へ駆け寄り、査定書を差し出した。
 ガルドが重厚な指で紙を受け取り、顎をなでながら唸る。
「ふむ……ワイバーンの鱗、爪、心臓。どれも上等だ。
 ……こいつはまるで、王都の竜素材商が泣いて喜ぶレベルだな」

 ミリアさんが計算書をくるりとめくる。
「悠斗さん、みなさん、お疲れ様でした! ワイバーンの鱗、爪、そして――この心臓、どれも素晴らしい品質です! 特に心臓は魔法素材として最高級! これで報酬は……」

 仲間たちが息をのむ。僕も喉がカラカラになる。

「――5000ゴールド! そして討伐報酬の3000ゴールドを加えて、合計8000ゴールドです!!」

 その瞬間、広場が「おおおおお!」とどよめいた。
 
 ミリアさんが弾んだ声で報告してくれる。
「合計、八千ゴールドになります!」

 ――八千ゴールド! これはでかい!
 思わず拳を握る。広場がどよめき、仲間たちの顔が一斉に輝いた。

「ミャウ! ユート、めっちゃ金持ちニャ!」
 サーラは「ヒョウ! 肉が一生分買えるヒョウ! 焼いて、煮て、干して保存ヒョウ!」と尻尾をブンブン振る。
「いや干し肉にする気か!」

 ウミャウとサーラが飛び跳ねながらはしゃぎ、子どもたちまで「お肉! お肉ー!」と真似し始めた。

 セレナは腕を組み、静かに頷く。
「王国の威信を守ったのだ。当然の報酬だ。……ふふ、少し飲みたい気分だな」
 するとテレミーが、どこからともなく割って入ってくる。
「団長、まさかまた“打ち合わせ”とか言って飲みに行くつもりじゃないでしょうね?」
「ま、まさか! 私はあくまで部下との親睦を――」
「はいはい」

 リネットは目を輝かせて「すごいです! これで宿代も……あっ、貯金もできます……!」と感動中。
 
 エリルは満面の笑みで両手を広げる。
「さすが悠斗さん! これで私たち、ベルフォードのトップパーティですよ!」
「トップパーティ!? そんな……大げさな……いや、嬉しいけど!」

 ガルドが豪快に笑いながら、金貨袋を僕の手に渡す。
「若いの、よくやった。ドラゴン退治など滅多に聞けん偉業だ。
 ベルフォードの名を汚すどころか、輝かせてくれた! 感謝するぞ!」

 僕は両手で袋を受け取り、深く頭を下げる。
「こちらこそ、皆さんの支えがあっての勝利です。
 次も――この街を守るために、戦います」

 その言葉に、ガルドはにやりと笑った。
「……ふっ、いい目をしておる。ならば、次はもう少し“難しい依頼”を回してやろう」
「や、やめてくださいそれ!」

 僕は笑って、みんなを見渡した。
「とりあえず、報酬はみんなで公平に分けよう。装備やアイテムは後で相談して決めよう」

 僕が言うと、みんなが頷き、笑顔でハイタッチだ。
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