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山⑤
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山の夜は、静かで、そして息苦しい。
虫の声と川のせせらぎが外に広がっているはずなのに、わたしの耳には自分の鼓動ばかりが響いていた。
並び順は――右からしおりん、ひかりん、わたし、奈々りん、そして一番左にゆはりん。
ゆはりんは珍しく本当におとなしい。すやすやと寝息を立て、寝袋から顔半分だけ出して、夢の世界に沈んでいる。
(よかった……昨日みたいな大騒ぎにはならない)
安心したのは一瞬だけだった。
*
ひかりんが、わたしの寝袋にぐいっと身を寄せてきた。
「……ねぇ、かおりん。昨日の恋バナ、答えがあいまいだったじゃん?」
「ひ、ひかりん……近い……!」
耳元で囁かれただけで、背中がぞわっとする。寝袋ごと身をよじろうとした瞬間、今度は左から奈々りんの腕が伸びてきた。
「動くな。……静かにしてろ」
「ちょっ……奈々りんまで!?」
両側から挟まれて、まるでサンドイッチ状態。
ひかりんは笑みを浮かべ、奈々りんは真顔で冷ややか。二人の温度差がかえって心臓に悪い。
「かおりん、かわいい反応するよね。こうやって触れると……ほら」
ひかりんの指先がわたしの肩をなぞる。
「ん……!」
声を堪えるわたしの手を、奈々りんが下からぎゅっと押さえ込む。
「声、出すな。……みんな起きる」
(そっちが仕掛けてるんでしょーが!?)
抗議したくても、息が詰まって言葉にならない。
*
さらに右のほうで、しおりんの低い声がした。
「……ひかりん。ちょっと……そこ、ヤバイって」
「フフフ」
――完全に絡んでいた。
わたしを責めていたはずのひかりんが、体をひねってしおりんの寝袋に手を伸ばしている。
「しおりんってさ、強いのに……意外と弱いとこあるでしょ?」
「や、やめ――」
息を詰めるしおりんの声が、テントの暗闇にねっとりと溶けた。
ひかりんは両手を器用に使い、片方でわたしをからかいながら、もう片方でしおりんに迫っている。
(同時攻撃!? 反則でしょこれ!!)
左からは奈々りん、右からはひかりん。
しかもひかりんは、しおりんにもねっとり絡みついている。
真ん中のわたしは、完全に逃げ場を失っていた。
*
山の夜は冷たいはずなのに。
テントの中は、火照る体温と乱れる息遣いで、じっとり熱を帯びていた。
虫の声すら遠くなるほど、わたしたちの小さな世界は修羅場の気配でいっぱいだった。
両側から挟まれ、身動きのとれないわたし。
右からひかりん、左から奈々りん。しかもそのひかりんは、同時にしおりんにも絡んでいる。
「ひ、ひかりん! 手、二本しかないはずでしょ!? なんで二倍速なの!?」
「ふふ、座道部の“多重攻撃”だよ~」
「そんな極意ないから!!」
わたしが必死に抗議するのも空しく、ひかりんは楽しそうにわたしの肩をつつきながら、しおりんの寝袋にまで手を伸ばしている。
しおりんの声が低く震える。
「……お願い……そこ……ダメ」
でも口調の割に、押し返す力は強くない。むしろ、受け止めてしまっているように見えた。
(やば……しおりん、弱ってるとこ突かれてる!?)
*
左からは奈々りんの冷たい声。
「かおりん、騒ぐな。抵抗すると余計に危ない」
「え、なにが危ないの!? そっちのほうがよっぽど怖いんだけど!」
奈々りんは真顔で、寝袋越しにわたしの手をがっちりホールドしている。力強い。逃げられない。わたしの手をホールドしたまま、じっと暗闇で目を光らせている。
「……動くな。抵抗すると余計に暴れる」
「いやいや、暴れてるのはひかりんだから!」
すると奈々りんの指が、わたしの手の甲をゆっくりなぞる。ぞわぞわする。
「な、奈々りん!? なんで撫でてるの!?」
「動きを封じるため」
「それ絶対違うよね!? 絶対理由違うよね!?」
押さえつけられたまま身じろぎすると、奈々りんの顔がぐっと近づいた。
「……かおりん、意外と体温高い」
「や、やめてってば! この距離おかしいから!」
真顔のまま、奈々りんは首を傾けて囁く。
いつのまにか奈々りんの指が、服の中に入ってきて……。
「心拍数が速い。……何か隠してるな」
「そんな尋問みたいに言わないでぇぇ!」
その冷静すぎる観察と押さえ込みが、ひかりんの軽いからかいとは全く違う種類の怖さで、心臓がさらにバクバクしていった。
「……今夜は監視も兼ねて、押さえておく」
「監視!? 囚人か私は!?」
叫びたいけど、声を大きくしたらゆはりんが起きてしまう。
唯一の“おとなしい存在”が崩れたら、このテントは修羅場どころじゃなくなる。
だから必死に小声で抗議するしかない。
「ねえほんとに離してってば! 暑いよ!」
「寒がりなんで」
「うそつけー!」
*
一方その頃。
ひかりんとしおりんの攻防は、もはやドタバタを通り越して――妙な静けさを帯び始めていた。
「しおりんってさ、怒った顔もキレイだよね」
「……まずいって……ここじゃまずい……」
「でも、笑ったときのほうが好きかも」
え? なんかチュッっとか音してなかった?
テントの暗闇で、ふたりの囁きがやたら耳に刺さる。
わたしは顔を覆いたくなった。
(やめてよ……ねっとりすぎるってば……!)
*
そのとき。
「……んぅ……」
一番左のゆはりんが寝返りを打った。
わたしたちは一斉に硬直。
この子が目を覚ましたら――また昨日みたいな大暴走が始まる。
息を殺して待つ。
……でも、彼女はすぐにまた静かに寝息を立てた。
「……助かった……」
「ふぅ……」
全員が同時に安堵の息を吐いた瞬間――
「隙ありっ!」
ひかりんがさらに強引に、わたしとしおりんの両方へ腕を伸ばしてきた。
「わーーー!!?」
狭いテントで、寝袋がずるっとずれて全員が転がる。
奈々りんも「静かにしろ!」と制止しようとしたが、巻き込まれて寝袋ごとごろん。その勢いで、ゆはりんの寝袋まで揺らしてしまった。
「ん……なに……?」
ゆはりんの小さな声。
(あ、終わった……!)
*
次の瞬間、テント内は完全なカオスになった。
しおりんはひかりんに絡まれつつも「いい加減にしなさい!」と本気で怒り出すし、奈々りんは「全員整列!」と軍隊モードに突入。
ひかりんは「わたしの作戦勝ち~!」と得意げに叫びながら、寝袋を引っ張り回す。
そしてゆはりんは寝ぼけ眼のまま「かおりん……?」とわたしにすり寄ってきた。
「ぎゃーーー! もう無理無理無理ーー!!」
テントは軋み、虫の声もかき消すほどのドタバタ音が夜の山に響いた。
*
――結局その夜。
わたしたちはほとんど眠れなかった。
翌朝の目の下のクマは、全員おそろいだった。
(……この“クマ”は、絶対に誰にも言えないやつだ)
虫の声と川のせせらぎが外に広がっているはずなのに、わたしの耳には自分の鼓動ばかりが響いていた。
並び順は――右からしおりん、ひかりん、わたし、奈々りん、そして一番左にゆはりん。
ゆはりんは珍しく本当におとなしい。すやすやと寝息を立て、寝袋から顔半分だけ出して、夢の世界に沈んでいる。
(よかった……昨日みたいな大騒ぎにはならない)
安心したのは一瞬だけだった。
*
ひかりんが、わたしの寝袋にぐいっと身を寄せてきた。
「……ねぇ、かおりん。昨日の恋バナ、答えがあいまいだったじゃん?」
「ひ、ひかりん……近い……!」
耳元で囁かれただけで、背中がぞわっとする。寝袋ごと身をよじろうとした瞬間、今度は左から奈々りんの腕が伸びてきた。
「動くな。……静かにしてろ」
「ちょっ……奈々りんまで!?」
両側から挟まれて、まるでサンドイッチ状態。
ひかりんは笑みを浮かべ、奈々りんは真顔で冷ややか。二人の温度差がかえって心臓に悪い。
「かおりん、かわいい反応するよね。こうやって触れると……ほら」
ひかりんの指先がわたしの肩をなぞる。
「ん……!」
声を堪えるわたしの手を、奈々りんが下からぎゅっと押さえ込む。
「声、出すな。……みんな起きる」
(そっちが仕掛けてるんでしょーが!?)
抗議したくても、息が詰まって言葉にならない。
*
さらに右のほうで、しおりんの低い声がした。
「……ひかりん。ちょっと……そこ、ヤバイって」
「フフフ」
――完全に絡んでいた。
わたしを責めていたはずのひかりんが、体をひねってしおりんの寝袋に手を伸ばしている。
「しおりんってさ、強いのに……意外と弱いとこあるでしょ?」
「や、やめ――」
息を詰めるしおりんの声が、テントの暗闇にねっとりと溶けた。
ひかりんは両手を器用に使い、片方でわたしをからかいながら、もう片方でしおりんに迫っている。
(同時攻撃!? 反則でしょこれ!!)
左からは奈々りん、右からはひかりん。
しかもひかりんは、しおりんにもねっとり絡みついている。
真ん中のわたしは、完全に逃げ場を失っていた。
*
山の夜は冷たいはずなのに。
テントの中は、火照る体温と乱れる息遣いで、じっとり熱を帯びていた。
虫の声すら遠くなるほど、わたしたちの小さな世界は修羅場の気配でいっぱいだった。
両側から挟まれ、身動きのとれないわたし。
右からひかりん、左から奈々りん。しかもそのひかりんは、同時にしおりんにも絡んでいる。
「ひ、ひかりん! 手、二本しかないはずでしょ!? なんで二倍速なの!?」
「ふふ、座道部の“多重攻撃”だよ~」
「そんな極意ないから!!」
わたしが必死に抗議するのも空しく、ひかりんは楽しそうにわたしの肩をつつきながら、しおりんの寝袋にまで手を伸ばしている。
しおりんの声が低く震える。
「……お願い……そこ……ダメ」
でも口調の割に、押し返す力は強くない。むしろ、受け止めてしまっているように見えた。
(やば……しおりん、弱ってるとこ突かれてる!?)
*
左からは奈々りんの冷たい声。
「かおりん、騒ぐな。抵抗すると余計に危ない」
「え、なにが危ないの!? そっちのほうがよっぽど怖いんだけど!」
奈々りんは真顔で、寝袋越しにわたしの手をがっちりホールドしている。力強い。逃げられない。わたしの手をホールドしたまま、じっと暗闇で目を光らせている。
「……動くな。抵抗すると余計に暴れる」
「いやいや、暴れてるのはひかりんだから!」
すると奈々りんの指が、わたしの手の甲をゆっくりなぞる。ぞわぞわする。
「な、奈々りん!? なんで撫でてるの!?」
「動きを封じるため」
「それ絶対違うよね!? 絶対理由違うよね!?」
押さえつけられたまま身じろぎすると、奈々りんの顔がぐっと近づいた。
「……かおりん、意外と体温高い」
「や、やめてってば! この距離おかしいから!」
真顔のまま、奈々りんは首を傾けて囁く。
いつのまにか奈々りんの指が、服の中に入ってきて……。
「心拍数が速い。……何か隠してるな」
「そんな尋問みたいに言わないでぇぇ!」
その冷静すぎる観察と押さえ込みが、ひかりんの軽いからかいとは全く違う種類の怖さで、心臓がさらにバクバクしていった。
「……今夜は監視も兼ねて、押さえておく」
「監視!? 囚人か私は!?」
叫びたいけど、声を大きくしたらゆはりんが起きてしまう。
唯一の“おとなしい存在”が崩れたら、このテントは修羅場どころじゃなくなる。
だから必死に小声で抗議するしかない。
「ねえほんとに離してってば! 暑いよ!」
「寒がりなんで」
「うそつけー!」
*
一方その頃。
ひかりんとしおりんの攻防は、もはやドタバタを通り越して――妙な静けさを帯び始めていた。
「しおりんってさ、怒った顔もキレイだよね」
「……まずいって……ここじゃまずい……」
「でも、笑ったときのほうが好きかも」
え? なんかチュッっとか音してなかった?
テントの暗闇で、ふたりの囁きがやたら耳に刺さる。
わたしは顔を覆いたくなった。
(やめてよ……ねっとりすぎるってば……!)
*
そのとき。
「……んぅ……」
一番左のゆはりんが寝返りを打った。
わたしたちは一斉に硬直。
この子が目を覚ましたら――また昨日みたいな大暴走が始まる。
息を殺して待つ。
……でも、彼女はすぐにまた静かに寝息を立てた。
「……助かった……」
「ふぅ……」
全員が同時に安堵の息を吐いた瞬間――
「隙ありっ!」
ひかりんがさらに強引に、わたしとしおりんの両方へ腕を伸ばしてきた。
「わーーー!!?」
狭いテントで、寝袋がずるっとずれて全員が転がる。
奈々りんも「静かにしろ!」と制止しようとしたが、巻き込まれて寝袋ごとごろん。その勢いで、ゆはりんの寝袋まで揺らしてしまった。
「ん……なに……?」
ゆはりんの小さな声。
(あ、終わった……!)
*
次の瞬間、テント内は完全なカオスになった。
しおりんはひかりんに絡まれつつも「いい加減にしなさい!」と本気で怒り出すし、奈々りんは「全員整列!」と軍隊モードに突入。
ひかりんは「わたしの作戦勝ち~!」と得意げに叫びながら、寝袋を引っ張り回す。
そしてゆはりんは寝ぼけ眼のまま「かおりん……?」とわたしにすり寄ってきた。
「ぎゃーーー! もう無理無理無理ーー!!」
テントは軋み、虫の声もかき消すほどのドタバタ音が夜の山に響いた。
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