【フルボイス】追放されたノーベル賞受賞の科学者、異世界に最強国家を作る ~チート無しで転生するが、現代知識で文明を再興~【エアルドネル戦記】

Naina R. Uresich

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オーディオブック(フルボイス)

【オーディオブック版】第1-3話「エアルドネルの王は、きっとあなた」

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 エアルドネル戦記、第1-3話(いちてんさんわ)[ナレ]
 エアルドネルの王は、きっとあなた[ナレ]

 ◇

 馬車に入った早苗は、その黒髪の女を見て固まる。

「生きていたのね」[心菜]
 日本語で言われた。

「心菜(ここな)、なのか……?」[早苗]
 
 ◇
 
『ジャア、情報交換です! 私はカーミット。16歳で、イスラエルから!』[カーミット(以降、カミ)]

 栗色ミディアムヘアの少女が言う。滑り出しにアクセントのある英語だ。
 握手を求められるが、早苗は返さない。
 
『オレはマックス。フロリダからだ。19歳』
 
 早苗とララは続けて自己紹介をした。
 左側には、こちらをチラチラ見て、頬を赤くしているララ。
 右側には、先ほどから無口な黒髪ロング。その彼女に小声で訊く。
 
「……心菜、だよな?」[早苗]
「どうでしょう」
「いや、心菜だ。多少相違点があるが、君は――」[早苗]
「疲れてるの、話しかけないで」

 肯定も否定もされない。

(……別人なのか)[早苗]

 彼女は、前世の恋人に、あまりにも似ていた。 
 聞きたいことが多すぎる。
 だが彼女は、明らかに会話を拒んでいる。

 シーンと静まり返った中、手をポンとするカーミット。

『疲れてます? ドコかに寄りましょう。王国からお金貰ったので、食事でも――』[カミ]

 瞬間、 ガタっと馬車が揺れ、無数の小銭が飛び出した。
 
『ウワー! 旅費が!! どこに落ちて――』[カミ]
『82枚。小さいのが1枚、靴の中に』
 
 はい? というカーミット。
 早苗は視線を合わせず続ける。
 
『銀が6枚、銅が42枚、小さいのが32枚』[早苗]
『ウワ! 本当に靴に入ってた!?』

 カーミットは、すべてを拾う。
 
『デモ、合計は80枚ですよ?』
『袋の中に2枚残ってる』[早苗]
『ソンナ、一瞬見ただけ――うわあああ、本当だ!?』
 
 そこで、マックスが気づく。
 
『オレの縄も、パッと見ただけで解いたよな』
『アア、空間認知能力ってヤツですか?』[カミ]

 そう言ったカーミットに、ジロジロ観察される。

『ウワー、いい顔。日本の俳優かアイドルのように見えますが……』[カミ]

 前かがみでガン見され、居心地悪が悪い。
 ふと――
 
『――エッ、うそ。まさかあのサナエ!?』[カミ]

 カーミットが、咄嗟に羊皮と筆を取り出す。

『一応。【8,612 × 3,224】 は?』[カミ]
『27,765,088』[早苗]

  計算式を書いた後、カーミットが続けた。

『アッテル! 本物だ。サヴァン症候群で、完璧な記憶力を持った天才科学者!!』

 だん、と彼女は立ち上がる。
 
『朝霞 早苗(あさか さなえ)! ノーベル賞受賞の日に、トラックに轢かれて死んだ世界最強の科学者!』[カミ]
「……??」[ララ]

 ほとんどの単語を理解できてないララが、こちらを見ている。

『本当ですね! アハハ! センパイ、ワタシにぜひご命令あれ! なんでもしますよ!』[カミ]

 やめてほしいが、騒ぐカーミットは止まらない。
 ふと、腕がかゆくなる。 

『………なんでもするの?』[早苗]
『ハイ! エッチなこと以外なら』[カミ]
『なら、清潔な服が欲しい。拾った服なんだ』[早苗]
『コノ世界の基準だと、もう十分清潔な服ですよ』[カミ]
『……あと石鹸と水。今すぐ全身を洗いたい』[早苗]

 と、くすくす黒髪ロングが笑った。

『あんた潔癖症だから、大変ね。この世界には石鹸も、清潔な水もないわよ』
『あれ、ココナサン、知り合いですか?』[カミ]

 そうかも? と答える黒髪。いや、その前に。

「やっぱり、心菜(ここな)じゃないか……」[早苗]
『そうかもね。ねぇ、あんたこの世界をどう思った?』
『……この世界?』[早苗]

 早苗は、困惑した。
 だが前世の恋人であろう彼女に、答える。

『……未開の世界だ。無学で衛生概念もない』[早苗]
『正解。悲惨さで言えば、この世界全体がホロコースト並みよ』
『……ココナサン。ワタシに刺さる例え、やめません?』[カミ]
『でも事実よ。全ての街で虐殺と伝染病が。死に過ぎて、そのうち死者に祈りを捧げる人間すら残らない』[心菜]
『つまり、歴史通りの中世か……』[早苗]

 早苗は絶望した。どうしてこんな世界に……

『この世界は滅亡する。でもあんたなら、現代文明を作って世界を救える。そうでしょ?』[心菜]
『……それは』[早苗]

 だが途中で遮られ、カーミットに肩を掴まれる。

『――オオ、サナエサン!!』[カミ]
『触らないでくれ』[早苗]
『ワタシ、この未開な世界が嫌なんです! 現代文明つくってください!』[カミ]
『……現代って、21世紀のことか?』[早苗]

 たぶん? と頭を傾げられる。

『……なら約束できない。19~20世紀あたりならいける』[早苗]
『ンー? どういう意味です?』[カミ]
『車や通信機は作れる。複葉機で空も飛べる。スマホやジェット機はまだ無理』

 もちろん、今想定できる条件なら、の意味だが。

『か、神……!! やっと人間らしい生活が!』
「……ん?」[ララ]

 ひとりだけ理解してないララに、カーミットが答える。何故か日本語で。

「このハンサム、1000年後の文明作ってくれるみたいです」
「えっと、どういウ……」[ララ]
「人が空を飛んで、次は宇宙かなーって時代です」[カミ]
「ええええエ!!?」[ララ]
 
 ララに、熱のこもったまなざしを向けられる。 

「きゅ、救世主さマ……」
「………」[早苗]

 視線をそらして、心菜を見た。

「君の、あの研究はどうなった? 君の体は――」[早苗]
「私は健康体よ」[心菜]

 人差し指で早苗の口元を押さえる心菜。

「……わかった。あの『研究』を続けるのが、僕にとっての全てだ。その為に、この世界に近代文明を作る」[早苗]
「なら、元の世界――21世紀に到達しないとね」[心菜]
「……はぁ」[早苗]

 見ると、ララはまだ早苗に熱いまなざしを向けていた。

 そんな中、馬車がガタガタ進んでいく。
 木材の車輪の為、誰もが腰を痛めていた。

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感想 33

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みんなの感想(33件)

ちょた
2023.07.15 ちょた

続きが読みたい〜🥲

2023.07.18 Naina R. Uresich

ありがとう! もうちょい待ってね

解除
蓬莱樹一郎
2023.06.03 蓬莱樹一郎

気球だけじゃなく腹まで膨らませるとは恐れ入った

2023.06.04 Naina R. Uresich

お上手!

解除
Lacfie
2023.05.26 Lacfie

あれ?20-1の次が21-2になってませんか?
(いきなり凄い話が飛んだと思ったら、番号ずれてる)

2023.06.04 Naina R. Uresich

すみません、今気づきました!
たぶんスケジュール投稿ミス…!

解除

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