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18、けんたとななみくん

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弟くんからお許しを得たので、早速1枚めくってみる。

「えっ、これ七海くん?」

健太の子供の頃の写真よりも、七海くんの子供の頃の写真の方がびっくりした。

「あれ、七海くん知ってるの?」

「うん!高校同じだし、よく健太から話聞くから!さっきもここまで送ってもらった!」

「じゃあ、この写真すごく驚いたでしょ」

「うん...」

全然笑わなくて、クールで、ずっと本を読んでいる今の七海くんとはあまりにかけ離れていた。

その写真の七海くんは、女の子かと勘違いするほど可愛くて、無邪気に笑っている。

「可愛すぎる...」

私のぼそっと呟いた言葉に、弟は苦笑いしながら部屋に入ってきて私の横に座った。

「今の七海くんはすごく冷たいもんね」

「私も知り合ってそんなにたたないけど、笑ってたの1回しか見たことないよ!健太も笑わないって言ってた!」

「いつから知り合ってるの?」

「えーっと、昨日!」

「昨日!?」

「そう!さっき送ってもらったときによく分かんないけど笑ってた!」

弟くんは目をぱちくりさせて、「ここ2、3年笑ってるところ見たことないよ」と言った。

それじゃあ私、相当レアなもの見ちゃったってこと!?

「写真ではこんなに笑ってるのにね」

「それは...」

弟くんは何か言いかけて、口をつぐんでしまった。

何言おうとしたの、と聞ければそんなに簡単なことはないけれど、なんとなく聞いちゃいけないような気がして私も口をつぐんだ。




「優人ぉー帰ったぞ.......え!?みな!?」

「健太!」

やっと、健太が帰ってきたようで。

弟くん、優人くんっていうのか。

「あれ!?おれ、駅まで送ったよね!?」

混乱したように優人くんと私の顔を交互に見ている。

「スマホ忘れちゃって!」

「まじか!ちゃんと確認してなくてごめん!」

「いーよいーよ!私が忘れちゃっただけだし!」

「この部屋が汚すぎるからこんかことになるんだよ、兄ちゃん」

いたずらっ子のように笑って部屋の隅の塊を指さした。

「そんなこと...あるか」

申し訳なさそうに私の顔を覗き見る健太がかわいくて「そんなことないよ」と抱きしめたくなった。

「だがしかし!俺は16年の時を経て、この部屋を綺麗にすることを決意した!」

得意げに、両手に持っている袋を持ち上げて笑う健太を「すげぇじゃん!兄ちゃん!」と優人くんが褒める。

どっちが兄ちゃんなんだか。
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