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6、図々しい
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目が合ってしまった今、目をそらすのもここから離れるのも不自然な気がして、固まったまま動けなくなってしまった。
「お前、またか」
そう言った彼の目から涙がこぼれてつーっと頬を伝った。
その涙は床に落ちて、それが私の見た幻覚では無かったことが証明される。
「なんだこれ」
黒い学ランでグイッと涙を拭いて、私に背中を向けようとしたとき、準備室のドアが開いた。
そこから水谷先生が出てきて、私がいることに驚いてから、先生の顔になる。
「横田か。驚かせちゃったか?ごめんな」
私でも分かるくらいに引きつった愛想笑いを浮かべながら後ろ手にドアを閉めた。
「ただのよくある兄弟喧嘩だから、あんまり気にするなよ」
じゃあこれで、とでも言うように私たちとは反対側に歩いていって、見えなくなった。
「こっち見んな」
さっき泣いていたのが嘘かのように私を睨みつけて、それがなぜか見たことがあるような気がした。
「見ないから」
今度は私が背を向けて、声を絞り出した。
「誰も見てないところでいいから、ちゃんと泣いて」
「...あ?」
「泣かなきゃだめ」
「......なんだお前、誰だ」
もしかして、今、名前を聞かれた?
前も聞いたのに、そう思っても口は自然と「横田六花」と言ってしまっていた。
「ふーん」
「図々しい女」
その言葉は思いもよらない冷ややかな声で、思いっきり突き飛ばされたようなショックだった。
背中ごしに去っていく足音を聞いて、なんだかこっちが泣きそうになる。
「図々しい...って」
言われた言葉をもう1度繰り返して、なんだか悲しくて傷ついたような気持ちだった。
「六花ー?」
遠くで菜月の呼ぶ声が聞こえた。
私は無かったことにしようと思って、菜月の方に走っていった。
「お前、またか」
そう言った彼の目から涙がこぼれてつーっと頬を伝った。
その涙は床に落ちて、それが私の見た幻覚では無かったことが証明される。
「なんだこれ」
黒い学ランでグイッと涙を拭いて、私に背中を向けようとしたとき、準備室のドアが開いた。
そこから水谷先生が出てきて、私がいることに驚いてから、先生の顔になる。
「横田か。驚かせちゃったか?ごめんな」
私でも分かるくらいに引きつった愛想笑いを浮かべながら後ろ手にドアを閉めた。
「ただのよくある兄弟喧嘩だから、あんまり気にするなよ」
じゃあこれで、とでも言うように私たちとは反対側に歩いていって、見えなくなった。
「こっち見んな」
さっき泣いていたのが嘘かのように私を睨みつけて、それがなぜか見たことがあるような気がした。
「見ないから」
今度は私が背を向けて、声を絞り出した。
「誰も見てないところでいいから、ちゃんと泣いて」
「...あ?」
「泣かなきゃだめ」
「......なんだお前、誰だ」
もしかして、今、名前を聞かれた?
前も聞いたのに、そう思っても口は自然と「横田六花」と言ってしまっていた。
「ふーん」
「図々しい女」
その言葉は思いもよらない冷ややかな声で、思いっきり突き飛ばされたようなショックだった。
背中ごしに去っていく足音を聞いて、なんだかこっちが泣きそうになる。
「図々しい...って」
言われた言葉をもう1度繰り返して、なんだか悲しくて傷ついたような気持ちだった。
「六花ー?」
遠くで菜月の呼ぶ声が聞こえた。
私は無かったことにしようと思って、菜月の方に走っていった。
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